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利益率70%。盛り上がる骨董品オンライン取引市場。最大手「微拍堂」が香港上場へ

近年の国潮(中国伝統文化への回帰)現象を受け、骨董品市場が好調だ。2022年5月25日、国内で最大の骨董品取引プラットフォーム「微拍堂」が、香港証券取引所に上場申請を行った。微拍堂は営業利益率が70%にもなるという驚異的なビジネスを行っていると鉛筆道が報じた。

 

利益率70%を超える骨董品オンライン取引

「微拍堂」(ウェイパイタン、https://www.weipaitang.com)は、2014年、杭州市で創業した骨董品取引プラットフォーム。2021年のオンライン骨董取引の市場規模は1662億元(約3.4兆円)にも達し、微拍堂はそのうちの24.4%のシェアを握っている。

それ以上に驚くのは、香港証券取引所に提出された目論見書によると、微拍堂の営業利益率が70%を超えるということだ。この点で、この「古くて新しい」ビジネスに、個人投資家機関投資家の注目が集まっている。

▲微拍堂の公式モバイルサイト。20代の若者でも骨董品を趣味にする人が増え、従来の高齢者の趣味という感覚は薄くなっている。

 

オンラインやライブコマースで骨董品を出品/購入

微拍堂が扱っている品目は「茶器」「翡翠装飾品」「文具」「古銭・切手」「絵画・彫刻」「茶葉、古酒」「工芸品」「ハト・鯉・観葉植物」など。これをオークションまたはライブコマースオークションで取引するプラットフォームを提供している。

微拍堂が注目されているのは、そのあまりにも優良すぎる経営内容だ。多くの人が骨董品取引というのはここまで儲かるのかと驚いている。

2021年の微拍堂の流通総額(GMV)は405億元。同年の骨董品取引市場の規模は9634億元(約19.4兆円)。そのうちの1662億元がオンライン取引であるため、微拍堂はオンライン骨董取引市場の24.4%のシェアを持っていることになる。

 

コアユーザーが大量に購入をする

さらに驚くのが利益率だ。微拍堂の目論見書によると、2019年、2020年、2021年の利益率がそれぞれ71.9%、76.1%、76.9%と普通の小売業からすると、あり得ない数字が並んでいる。

微拍堂の会員数は7415万人、出品業者は33.1万社だが、利益率が高い秘密は、活発なコアユーザーを確保していることにある。月間アクティブユーザー数は500万人。全体の平均落札額は475元だが、アクセス頻度の高いアクティブユーザー390.6万人に限ると、平均単価は10374元にもなる。

この390万人が投資目的で骨董品を高値で買うために、微拍堂のGMVは大きくなり、それに比例をして販売手数料も大きくなり、脅威の営業利益率が生まれている。

▲骨董品といっても、数百元の安いものもの大量に販売されている。ここからオークションで価格は上がっていくものの、平均単価は475元。この単価が安いことがハードルを下げ、若い世代が入りやすくなっている。

 

骨董文化そのものも成長空間が大きい

このような特定の分野に特化をした垂直ECは、今まで投資家は一歩引いて見るような態度をとってきた。なぜなら、成長は早いが、天井に突きあたるのも早いからだ。市場が小さく限定されているため、早い段階で主要な利用者を獲得してしまい、それ以上利用者が増えなくなる。

しかし、骨董市場は市場そのものが急成長をしている。2017年から2021年は市場が63.4%も成長し、2022年から2026年も22.5%成長をすると予測をされている。

骨董は元々、限られた人の趣味だったが、近年の国潮ブームにより、骨董を趣味とする人が増えている。さらに、骨董市場が活発になると、投資や投機の対象として見る人もこの市場に参入をし始め、成長が続いている。

微拍堂の創業者、林志明(リン・ジーミン)は、この波を見逃さなかった。林志明は1999年に杭州巨浪計算機ソフトウェアを創業し、2007年には杭州途勝を創業したテック畑のシリアルアントレプレナー。国潮ブームを見逃さず、2014年に微拍堂を創業し、市場の成長とともに成長をしてきた。

 

死角は贋作、模倣品

しかし、死角はある。偽物の出品だ。購入はネットで行うために、どうしても偽物をつかまされるということが起きる。骨董品に偽物はつきもので、贋作により儲けようという悪意のある出品者の排除は可能であっても、出品者本人も真作だと信じきっているような場合は防ぎようがない。

また、模倣品も立派な美術品であり、取引の対象となるが、その価値をどのくらいに見積もるかは、状況により、環境により大きく異なってくる。

昨2021年、中央電視台の報道番組「経済半小時」は、微拍堂の問題を取り上げた。中国美術家協会に所属する有名画家、馬海方の初期の作品が190元で出品をされていた。また、同じく中国美術家協会に所属する有名画家、李毅の「南疆秋韵図」も500元程度で出品をされていた。通常であればあり得ない低価格だ。中央電視台の記者はこの2枚の絵を落札し、画家本人に鑑定してもらったところ、いずれも贋作だった。

また、同様に出品されていた低価格の宝石類も落札し、北京大学宝石鑑定センターで調べてもらったところ、偽物であることが判明をした。

ただし、記者がいずれも品質問題を理由に、微拍堂に返品を申請したところ、1週間ほどで返品が可能になったという。微拍堂としては返品を幅広く認めることで、贋作問題に対応しようとしているようだ。

ただし、消費者が消費者問題を投稿できる「黒猫投訴」には2496件のクレームが投稿されていて、その多くは誇大広告と返品不能の問題に集中をしている。

▲中央電視台の報道番組「経済半小時」が報じた微拍堂の贋作問題。微拍堂はこの報道後、鑑定サービスを無料化した。

https://www.bilibili.com/video/BV1DK4y1T7NZ/

 

鑑定サービスを無料化

2021年9月、微拍堂は新しいサービスを始めた。鑑定後発送サービスで、落札時に鑑定を依頼をすることができるようになった。微拍堂が鑑定をするのではなく、第三者の鑑定期間が鑑定を行う。鑑定費は無料だ。この鑑定をした上で、届いた商品が贋作などであった場合は、それを証明できれば、無条件で全額が返金される。

 

若い世代にも浸透し始めた骨董文化

このような問題はあるものの、骨董市場は有望な市場だと見られている。というのは20代、30代という若い世代が、低価格の骨董品を楽しむようになっているからだ。盲盒(マンフー、ブラインドボックス形式のフィギュア)などでコレクションする楽しみが広がり、その対象が玩具や公式グッズだけでなく、骨董品の世界にも広がり始めているからだ。

微拍堂はオンライン骨董取引サービスとしては初の上場企業になったが、その他の数社も上場をうかがっている。大きな市場に成長することが確実視をされている。