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社会運動とビジネスと事業の継続。スタートアップに必要なものとは。シェアリング自転車競争史

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今回は、シェアリング自転車の競争史についてご紹介します。

 

中国ではどの都市、観光地でもシェアリング自転車が利用できるようになっていることをご存知の方も多いかと思います。スマートフォンのアプリやミニプログラムから、自転車についているQRコードをスキャンすると鍵が開き、使用して、別の駐輪場に返却をすると、自動的に使用料が引き落とされるというものです。15分単位で借りられる、別の駐輪場に返すことができるということから、「最後の1km」の公共交通ツールとして定着をしています。

この領域のビジネスを興したイノベーター企業は2016年1月に創業したofo(オッフォまたはオーエフオー)です。それに続いてmobike(モバイク)が登場し、豊富な投資資金を背景に壮大な焼銭大戦を展開しました。

数々の社会問題を起こしながら、最終的に2018年にofoは破綻、モバイクは美団(メイトワン)に買収され、規模を大幅縮小することになりました。では、生き残ったのはどこなのでしょうか。それはアリババ系のHellobike(ハローバイク)でした。ofoとモバイクが華々しい焼銭大戦を繰り広げている間、ハローバイクは地方都市を中心に展開をし、激しい競争に巻き込まれないようにしていました。しかし、1位が破綻、2位が身売りと消えていったために、1位に浮かび上がっていったのです。現在、シェアリング自転車で最も大きなシェアをとっているのはハローバイクです。

 

この面白い競争史が、経営学や起業セミナーでのケーススタディの教材になっています。1位と2位が自滅をし、3位が浮かびあがりシェアを握るというのは、普通ではあり得ない経緯だからです。

中国で新しい領域のビジネスが生まれた場合、上位2社が激しい競争をし、631局面に達して競争が落ち着くというのが一般的です。631局面とはシェアが6:3:1の状態になることです。理論的な根拠があるわけではありませんが、なぜか631局面になると競争が沈静化します。1位と2位がダブルスコアになるため、2位が競争を仕掛けづらくなるからです。

例えば、フードデリバリーの世界では、美団、ウーラマ、百度外売が登場し、ちょうど6:3:1のシェアになり、百度外売はウーラマに吸収され、安定をしています。また、スマホ決済でも、アリペイ、WeChatペイ、銀聯が6:3:1の時代が続きました。ただし、WeChatペイがWeChatのビジネス利用を背景にアリペイに追いつき始め、そこにデジタル人民元が登場をしたため、シェアは大きく変動しそうです。社区団購でも、ピンドードーの多多買菜、美団優選の上位2社が激しい競争をしています。

いずれも、上位3社または2社が激しい競争をして、それを勝ち抜いた1社が市場を支配するという推移をするのが一般的です。

しかし、シェアリング自転車はそうならず、まさかのダークホースの3位が市場を制することになりました。

 

もうひとつ教材に使われる理由が、3社とも異なったミッションに基づく企業だったということです。ofoは社会運動です。創業者の戴威(ダイ・ウェイ)は、元からツーリング自転車が大好きであり、世界中の人は自転車で移動すべきだという信念を持っている人でした。自転車をもっと使ってもらうためにはどうしたらいいのか、それが起業の原点になっています。

モバイクはビジネスです。創業者の胡瑋煒(フー・ウェイウェイ)は、ウェブメディアの記者をしていましたが、10年働いても車もマンションを買えないことを嘆いて、「極客汽車」(Geek Car)というウェブメディアを立ち上げます。この取材をする中でシェアリング自転車というビジネスと出会い、株式公開を目指して起業します。そのため、美団に売却できたことは大成功であり、15億元(約300億円)のお金を得て、現在は悠々自適の人生を送っています。

ハローバイクは事業です。創業者の揚磊(ヤン・レイ)は、ofoとモバイクの派手な焼銭大戦に挟まれて、生き延びるためにはお客さんに好かれるサービスを提供する以外ないと、地道な努力を続けていきます。揚磊はサービスを運営することが楽しくなってしまったため、アリババの資金を受け入れる時も、買収されるのではなく、あくまでも投資をしてもらい、自分で運営する道を選びました。現在でも揚磊は忙しく働いています。

一言で言えば、思想か金か事業かであり、最後に勝ったのは事業という教訓話にもなっています。

 

ただし、ハローバイクが最後に市場を制したのは、道徳の時間の教訓のようなものではなく、シェアリング自転車が公共サービスの側面を持っているという点も大きかったはずです。公共サービスとしては、過度に偏った思想や、利益だけを追い求める合理性はそぐわない部分があり、地道にサービスをつくりあげていくハローバイクが適合したという部分も大きいのではないかと思います。

ofoについては、「vol.003:シェアリング自転車は投資バブルだったのか」でもご紹介していますが、ずいぶん前のことでもあるので、ofo、モバイク、ハローバイクの成り立ちや考え方についてご紹介してきたいと思います。それを知ることで、起業や事業を成長させるにはどのような考え方をすべきなのかという学びを得られるのではないかと思います。

今回は、シェアリング自転車についてご紹介します。

 

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