京東は、創業以来ほぼ赤字運営だ。2019年、2020年はコロナ特需で黒字化をしたものの2021年には再び赤字転落をしている。それでも投資が集まり、株価は安定をしている。その秘密はキャッシュフローにあると捜狐が報じた。
株価の優等生「京東」
中国大手EC「京東」(ジンドン)。アリババのライバルであり、経営が安定していることから、株価の優等生とも言われる。2014年5月に米国のナスダックに上場して以来、株価は非常に安定をしている。
投資も順調で、高瓴資本(ヒルハウスキャピタル)、テンセント、ウォルマートなどが投資をしている。
赤字経営でも投資家から信頼される京東
しかし、業績を見ると、営業収入は順調に成長しているものの、最終的な純利益は惨憺たるものだ。創業以来、赤字運営が続いていて、2019年にようやく黒字化を果たした。2020年には493億元(約9380億円)という巨額の純利益を出したが、2021年には再び赤字転落をしている。
つまり、純利益を見ると、とても安定経営には見えない。それでいて、なぜ株価は安定しているのだろうか。さらには、ヒルハウスやテンセント、ウォルマートはなぜ京東に投資をし続けるのだろうか。
京東の強みはキャッシュフロー
京東の経営の強みは、利益はなくキャッシュフローにある。常に大量の現金を保有するビジネスモデルになっている。
京東は、商品を仕入れ、販売をし、配送をするという家電や電子製品の小売店がオンライン化をしたものだ。一般的な小売店では、まず商品を仕入れるのに元手が必要になる。テレビを8万円でメーカーから仕入れるには8万円のお金がいる。これをなんとか用意しなければならない。そして、店頭に置き、来店客が12万円で買っていく。ここでようやくお金が手に入り、次の仕入れができるようになる。
しかし、売れなかったらどうするのだろうか。価格を下げるしかない。場合によっては仕入れ値の8万円を切る価格で売らざるを得ないこともある。すると、次の8万円の商品の仕入れはできなくなり、借金をしなければならくなる。つまり、商品が動かないとあっという間に経営が破綻する構造になっている。
元手なしで商売が回る仕組み
京東の強みは、メーカーに対して、仕入れ代金の支払いを、商品納入後60日にしたことだ。先に商品を納入させて、後からお金を払う。このようなことが可能になったのは、京東が強い販売力を持っているからだ。メーカーも大量に売ってくれる小売チャンネルに対しては、支払いを多少であれば待つことができる。
納品された商品は、すぐにECで販売をする。京東の棚卸資産回転日数(在庫回転日数)は35日前後で、最近は30日前後にまで改善されている。つまり、納品された商品は平均して30日で売れることになる。
これが京東の強いキャッシュフローを産んでいる。0日目に商品が納入される。+30日に商品が売れ、その場で消費者は決済をするので商品代金が京東に入る。そして、+60日に仕入れ先に対して仕入れ代金を支払う。つまり、一般的な小売店とは逆に、先にお金をもらって、後から支払いをする仕組みになっている。
強いキャッシュフローにより新規事業に投資ができる
この仕組みにより、京東の内部には売上が大きくなればなるほど莫大なキャッシュがあふれることになる。仕入れに必要な元手がなくても、仕入れることができ、商売ができるのだ。
この膨大なキャッシュを、EC事業を強化する業務に投資することができる。物流、金融、健康医療、クラウド事業など、次々とEC事業とシナジー効果がある事業を広げていくことができる。新しい事業の当初は赤字であるのが当たり前だ。しかし、京東の主力事業であるECは元手なしで商売ができるので、新事業の赤字補填をしても怖くない。
この経営の強さがあるために、株価は安定をし、投資機関は安心をして投資をすることができている。