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わずか8時間でミニプログラムを開発。コロナ感染封鎖地区の生活を支えたフーマフレッシュ

中国で再びコロナ感染が拡大し、陽性者が出た地区を封鎖するという事態になっている。その地区の住人は、外に買い物に行くこともできず、地区内の商店には物資も供給されない陸の孤島となってしまう。そこに、アリババの新小売スーパー「フーマフレッシュ」は、わずか8時間で専用の注文ミニプログラムを開発し、食料品を供給する仕組みを構築し、地区住人の生活を支えたと南方報が報じた。

 

対コロナ厳戒態勢が続く広東省

中国広東省では、広州市を中心に2021年6月から再び感染が拡大をしている。毎日10人前後の新規陽性者が見つかる状況が続き、デルタ株の感染だと思われる。全土では、新規陽性者が100人を突破するようになり、各地で厳戒態勢のモードに入っている。

対応策はすでにパターン化をしていて、まず省外に出る移動を制限する。どうしても出る必要がある場合は、直近のPCR検査による陰性証明が必要になる。さらに、陽性者が出た地区は封鎖をして、人の出入りを禁じる。そして、全国から人員を派遣し、住民全員にPCR検査を行い、陽性者を炙り出して隔離をしていくというものだ。

感染元は、海外からの入国者、帰国者で、水際対策で漏れた感染者から感染が広がっている。これが国内にいる市民から市民への市中感染に広がるかどうかが勝負どころとみて、陽性者数は少なくても、全力の対策を行なっている。

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▲陽性患者が発生した地区は一時的に封鎖をされ、住人全員のPCR検査が繰り返し行われる。ここで新たな陽性患者が炙り出され、隔離が行われる。陽性がゼロの日が一定期間継続すると、地区の封鎖は解除される。

 

陸の孤島となる封鎖地区に生鮮品を供給するフーマフレッシュ

しかし、封鎖された地区の住人にとって、生活は大きく制限される。日々の食材を買いに地区の外に出ることもできない。地区の中に小売店があっても、外からの配送が行われない。広州市荔湾区では、龍津街道、石囲塘街道、冲口街道、白鶴洞街道などの地区が封鎖され、14万人が移動を制限された。

アリババが運営する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)では、この14万人に食料を供給する仕組みを構築した。

その地域の社区職員が、住民の注文を電話やSNSで聞き、それを集計してミニプログラムで注文。フーマはその地区の社区事務所まで配送をするというものだ。住人は社区事務所まで取りに行くか、社区職員が届ける。

この仕組みのメリットは、社区職員が取りまとめをするので、スマートフォンを持っていない人、使い方がよくわからない人もカバーできるという点だ。社区職員が、若い世代にはSNSで注文を聞き、スマホが苦手な人には電話などの方法で注文を聞き、それを取りまとめる。このやりとりが、住民の健康状態や生活状態を確認することにもつながっている。

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▲フーマフレッシュは、食料品の注文を受け、それを社区事務所まで配送することで、住民と接触せずに、食料品を供給している。

 

フーマでは8時間でミニプログラムを開発

しかし、このやり方はすぐに破綻をした。社区職員は住民全員の注文を取りまとめる作業に忙殺されるようになり、本来の健康管理業務が滞るようになってしまった。しかも食料品が事務所に到着をすると各家庭に連絡をしなければならない。

フーマフレッシュの配送は迅速に行われるため、社区事務所の倉庫には大量の食料品が積み上げられる。しかし、すべての住民がすぐに取りにくるわけではなく、冷蔵設備のない事務所に最大で2時間置かれることもある。食品によっては傷んでしまうこともあった。

社区職員は、住民からボランティアを募り、食料配送業務を手伝ってもらったが、限界だった。そこで、フーマでは、わずか8時間で社区団購の仕組みを使ったミニプログラムを開発し、それを提供した。

これにより、スマホが利用できる住人は個別に注文ができるようになり、社区職員はスマホが利用できない住人の注文のみを取りまとめればよくなった。個人注文と社区事務所注文は合計されフーマに注文が入り、食料品が配送される。スマホ注文をした人には到着の通知が行くために、多くの場合、すぐに取りにきてくれる。事務所から注文した分は、社区職員が連絡するか配達をする必要があるが、スマホが利用できないのは高齢者が多く、健康状態や生活状態の確認も同時に行える。スマホが利用できる若い世代は事務所に食品を取りにくるので、その時に簡単な健康状態の確認が行える。

これで、社区職員の負担が大きく減り、うまく回るようになった。

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▲社区事務所には各自受け取りにくるのが基本だが、高齢者や感染リスクの高い人には、社区事務所職員と住民ボランティアが個別配送をする。

 

社会貢献をしながらプロモーションにもなっている食糧供給プロジェクト

この動きは、フーマだけでなく、生鮮EC「叮買菜」(ディンドン)、「美団」にも広がり、専用ミニプログラムを急遽開発し、同様の方式で、社区事務所まで食料品を届けるようになっている。

このような活動は、社会貢献のひとつだが、同時に社区団購や生鮮ECのお試し体験になっている。封鎖が解除されても、その利便性を体験した住民の多くが、社区団購や生鮮EC、新小売スーパーに入会してくれることが期待される。

中国では全国各地で、外から入ったデルタ株の小規模な感染が起き、地区封鎖、全員検査という対策が行われている。この広州モデルによる食糧支援は全国に広がっていくと見られている。