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利用料金の値上げが続くシェアリングサービス。価格が上昇する理由とは

シェアリング自転車、モバイルバッテリーなどの利用料金の値上げが続いている。利用者が減ってしまうのではないかと心配する声もあるが、サービス提供側から見ると価格の最適化を行っているにすぎないと解読網が報じた。

 

値上げが続くシェアリングサービス

今年2021年になって、シェアリングエコノミーサービスの値上げが続いている。飲食店などにおいてあるシェアリングモバイルバッテリーは、以前は1時間1元程度の利用料金であったものが、現在は3元から4元程度となり、繁華街など人の多い場所では6元から10元が相場となっている。

シェアリング自転車も以前は1時間0.5元から1元というのが相場だったが、現在では15分ごとの計算となり、1時間あたり4.5元から6.5元になっている。

これだけ値上げをしてしまうと、利用する人が減り、提供企業の収入はかえって下がってしまうのではないかという声もある。

専門家は、これは値上げではなく、適正料金になったのだと解説する。サービスの収益は客数×客単価で決まる。客数が下がっても客単価が上がれば収入は変わらない。価格を上げることで客単価を高めても、さほど客数は減らない。そのため、総収入としては以前より増える、と提供企業は見ている。だから、価格が上がっていくのだ。

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▲病院の待合室に設置されているシェアリングバッテリー。待ち時間の多い場所では、一定の需要がある。

 

便利なサービスの登場が不便さを認識させるようになる

シェアリングエコノミーが存在しなかった頃、公共交通を使い、最後の1kmは歩くのが当たり前だった。しかし、シェアリング自転車が登場してからは、多くの人が最後の1kmでシェアリング自転車を利用するようになった。料金が高くなると使わなくなる人も出てくるが、その人は歩きながら「遠い」と感じることになる。以前は、不便だとは特に感じず、当たり前のように歩くしかなかったものが、シェアリング自転車の登場によって不便だと感じるようになってしまった。値上げをしたといっても、15分あたりの価格は1.5元(25円)程度にすぎない。多くの人が使ってしまう。

価格が安い時のように半日使うという使い方は減っているものの、短時間利用はさほど減らない。一度、自転車を使う習慣ができてしまったために、それを変えられない人がほとんどなのだ。

値上げというようり、そもそも短時間利用が多いため、料金体系を短時間利用に合わせて最適化をした。自転車一台あたりの利用回転率も高くなり、全体の収益が増えることになる。

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▲街中に設置されているシェアリング自転車。長時間利用は減ったものの、短時間の利用は今でもさほど減少していない。

 

モバイルバッテリーの利用は場所に依存する

シェアリングモバイルバッテリーは、このような習慣化ということは起こらない。毎日、仕事帰りに寄った飲食店で必ず充電をするという人はほとんどいない。そのような人は、60元か70元を出せばモバイルバッテリーが購入できるので、シェアリングモバイルバッテリーを利用するよりも、自分のものを持ち歩いた方が賢い。

ところが、モバイルバッテリーの場合、価格よりも場所により利用率が決まる。最も利用率が高いのが、繁華街にあるバーだ。バーにくるのは夜が多く、充電もなくなりがちになっている。酒を飲むということは少なくても1時間程度は滞在をする。バーでは少額の料金を高いか安いか気にする人は多くない。そのため、バーに設置されているシェアリングモバイルバッテリーの利用料金は高めに設定されている。

 

利用率の高い場所では、店舗への分配率も高くなる

といっても、顧客の足元を見て、ぼったくり料金にしているわけではない。モバイルバッテリーを置くには、その飲食店などに対して家賃を払う必要がある。以前は、売上をシェアリング企業と飲食店で1:1に分けるのが一般的だった。しかし、バーのように利用率が高いところでは、競合他社がより有利な条件を出してくる。その競争により、シェアリング企業と飲食店の分配率は、6:4から7:3、中には8:2という契約例まであるという。

シェアリング企業では、コスト割れを起こしてしまっては意味がないので、分配率に応じて、利用料金を設定していくことになる。それにより、利用率が高い場所では料金が高くなっていく。

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▲シェアリングモバイルバッテリーは、置く場所によって利用率が大きく違ってくる。利用率の高い場所では料金も高く設定されるダイナミックプライシングが始まっている。

 

シェアリングは需要の多い場所では料金が高くなる

ネットでは、「シェアリングエコノミーは広めるだけ広めて、利用する習慣がついたら値上げをして資金を回収しようとしている」という批判的な見方をする人が多く、そのような面も否定はできないが、それ以上に、利用実態に合わせた価格設定の最適化による部分が大きい。

そのため、シェアリングエコノミーは、需要が少ない場所、シーンでは相変わらず安く利用できるが、需要が強い場所、シーンでは今後も価格は上昇していくと見られている。

シェアリングエコノミーは、統一料金ではなく、場所やシーンによるダイナミックプライシングの時代に入っている。