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アリババに巨額罰金。独占を防ぐことで、市場は停滞をするのか、それともさらに成長するのか

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4月10日、中国国家市場監督管理総局(市場監管総局)が、アリババに対して、独禁法に触れる行為があったとして、182.28億元(約3000億円)の罰金を課したというニュースが大きく報道されました。

今回は、この問題について、どのような行為が問題になったのか。そして、今後、中国テック市場に与える影響はどのようなものであるかをご紹介します。

 

アリババの件で問題にされたのは、「二選一」(二者択一)と呼ばれる行為です。アリババは、2015年前後から、自社のEC「淘宝網」(タオバオ)で商品を販売する業者に対して、タオバオ以外に出店しないことを求めてきました。いわゆる囲い込みをして、専属契約をする業者を増やし、他社のECと差別化をしたいということです。そのために、専属になってくれた業者に優遇措置を取るのは違法ではありません。

しかし、それを拒否し、他のECプラットフォームでも出店する業者に対して、不公正な冷遇をすることは違法となります。ここは線引きが難しいところで、何が公正なのかの判断は簡単ではありません。しかし、アリババは、利用者動向のデータ提供を簡略化したり、アルゴリズムなどの技術的手段を使って冷遇したといいます。つまり、専属を拒否する業者は、販売計画を立てるのに必要なデータ提供が得られず、利用者が商品検索をしても下位にしか表示されず、商売上がったりになってしまいます。

つまり、タオバオを取るか、他のECを取るか、二者択一しかなくなってしまいました。これは販売業社の選択の権利を侵害しているとして、2019年の営業収入の4%にあたる3000億円が罰金として課せられました。

 

一部の報道では、「大きくなりすぎたアリババの力を弱めるための狙い撃ち」というニュアンスも伝えられていましたが、処罰を受けているのはアリババだけではありません。

4月13日に、市場監管総局は企業行政指導会を開催し、百度バイドゥ)、テンセント、滴滴(ディディ)、京東(ジンドン)、ピンドードー、美団(メイトワン)、字節跳動(バイトダンス)、携程(シートリップ)など34の主要テック企業が呼び出され、自社内に独禁法違反行為があるかないかを調査し、1ヶ月以内にその結果を公表することを求めました。万が一、違反行為があった場合は、その内容に応じて、当該年の営業収入の3%から4%の罰金などの処罰が課せられることになります。

実際、3月3日には、現在、新しいビジネスとして競争が激化している社区団購(地域で生鮮食料品などを販売する個人商店に商品を卸すプラットフォームビジネス)で、アリババ、テンセント、ピンドードー、滴滴、美団の主要テック企業がそれぞれに出資をしている5社に対して、不当廉売などの行為があったとして、50万元から150万元(約2500万円)の罰金を課しています。

 

市場監管総局は、2020年の活動内容を公開しています。それによると、2020年には独禁法違反で109件の処分を行い、罰金の総額は4.5億元(約76億円)でした。また、経営者の告発も485件行なっています。

つまり、毎週のように処分を行なっているのです。アリババの罰金額が大きかったのは、アリババの営業収入が桁外れに大きかったせいで、特別高額にしたわけではありません。

なお、独禁法は、中国では「反壟断法」と呼ばれます。壟断とは土手とか畝という意味で、孟子の言葉から使われるようになったそうです。「必ず壟断を求めて之に登り、左右を望して市利をあみせり」。市場に集まった業者を尻目に、土手に登り、全体を見回して、自分の商売を有利にすることです。商人は同じ条件で取引をすべきで、高いところから市場全体を見回すのはずるいことだというなのでしょう。

 

では、アリババはなぜ違法性を問われることを知りながら(知らなかっということはありえません)、危ない行為を続けてきたのでしょうか。また、他の企業はどうなのでしょうか。そして、一部企業の独占でどのような問題が生じていて、市場監管総局(というより中国政府)は市場をどのようにしようとしているのでしょうか。そして、各テック企業はこれからどのような競争をしていくことになるのでしょうか。次々と疑問が湧いてくるかと思います。

そこで、今回は、この独禁法問題と、独占による弊害、そして今後の競争のあり方がどうなるかを考えてみます。

 

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