アプリのMAUランキングを見ると、その多くがBAT+バイトダンスの系列アプリで占められている。系列化が進むことで、新しいサービスが登場した時に、テックジャイアントの豊富な資金が流れ込むことになる。これが中国の新サービスの定着を加速していると快科技が報じた。
テックジャイアントにより進む系列化
中国のテックジャイアントの寡占化が進んでいる。調査会社Trustdataが公開した2020年10月の月間アクティブユーザー数(MAU)のアプリランキングを見ると、そのほとんどが、BAT(百度、アリババ、テンセント)+バイトダンスで占められているのがわかる。
と言っても、すべてがその企業のアプリというわけではない。例えば、テンセント系列に分類されている「拼多多」(ピンドードー)、「快手」(クワイショウ)は、テンセントが開発運営をしているのではなく独立した企業だ。しかし、テンセントが出資をし、テンセント系列になっている。
ちょうど、YouTubeがグーグル系、インスタグラムがフェースブック系になっているのと同じ感覚だ。
▲2020年10月のMAUのアプリランキング。BAT+バイトダンスの系列サービスでほとんど独占されている。
サービスの融合も進む系列化
出資というお金の関係だけなく、系列化によりサービスの融合も進む。例えば、テンセント系のソーシャルEC「拼多多」は、テンセントのSNS「WeChat」を使うことが前提になっている。
拼多多はまとめ買いECで、同じ商品を買う人が集まれば集まるほど価格が安くなる仕組み。そのため、その商品を買いたい人が、WeChatで商品情報を拡散することで、買いたい人が集まってくる。
これが商品の宣伝となり、販売側はプロモーション費用を大幅に抑えることができるため、低価格で提供ができる。SNSの拡散力を利用して大量販売を行う。WeChatがなければ成立しなかったECスタイルだ。
新規分野では、BATの代理戦争になる法則
中国のテックジャイアントがBATと呼ばれるのは、単に時価総額の大きなテック企業というだけの意味ではない。豊富な資金力を活かして、シナジー効果のある企業に資本を投入し、場合によっては子会社化をする。
そのため、新しいジャンルのビジネスが登場すると、競争をするのはスタートアップ企業であっても、その背後にBATの資金が存在していることが多い。新しいビジネス領域は、BAT、特にアリババとテンセントの代理戦争となることが多く、大規模で派手な競争になる。
その最たるものが2014年の網約車戦争だ。タクシー配車アプリの「滴滴」と「快的」が真正面からぶつかった。滴滴にはテンセント、快的にはアリババが背後につき、わずか数ヶ月で20億元分(約320億円)ものクーポンが発行された。クーポンを上手く使うと、無料でタクシーが乗れる状態となり、歩いて数分のスーパーに買い物に行くのにもタクシーを使う人まで現れたほどだった。
この網約車競争は、ウーバーの中国上陸によって、そのままライドシェア競争になった。ウーバーは最終的にこの狂乱じみたクーポン合戦についていくことができず、中国で黒字化をするのは無理だと判断をして、滴滴に売却をする形で撤退をしている。そして、滴滴と快的は合併をすることで、網約車戦争は終結する。
▲2019年の日本のMAUランキング。系列化はほとんど起きていない。Yahoo! JAPANの「天気」「乗り換え」の機能は「Yahoo! JAPAN」アプリの中からでも利用ができる。
系列化が新サービスの定着を加速させている
一方、「モバイル市場年鑑2020」(App Annie)による日本の2019年のアプリMAUランキングを見ると、このような系列化は起きていない。フェイスブックとインスタグラム程度だ。ヤフーは系列化というより、天気や乗り換え案内はヤフーアプリ内で利用できるが、単独のアプリの方が利便性が高いために併用しているという感覚だ。
中国のような系列化がいいことなのか悪いことなのかはわからない。しかし、新しいビジネスが興ると、すぐに大量の資金が流れ込み、競争をすることで消費者の耳目を引き、利用する人が現れ、それでビジネスが軌道に乗っていくという定番プロセスができあがっている。
中国で新しいビジネスが次々と生まれて、短時間で市民の間に定着をしてくのは、この系列化が大きく作用していることは確かだ。