中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

コンテンツのプロはいらない。エンジニアと機械学習で成長したバイトダンス

中国のテックジャイアントBATの座を狙う新御三家としてTMDという言葉が使われるようになっている。バイトダンス、美団、滴滴の3社のことだ。最初に成功したニュースアプリでは、ニュースのプロは雇わなかった。エンジニアと機械学習で人とニュースをマッチングさせることに専念したことが成功に結びついたと富人靠科技が報じた。

 

BATに続く新御三家TMD

中国のテックジャイアントを表す言葉にBATがある。百度バイドゥ)、アリババ、テンセントの頭文字をとったものだ。このBATを脅かす新御三家として、TMDという言葉もよく使われる。頭条(トウティアオ)、美団(メイトワン)、滴滴(ディーディー)の頭文字をとったものだ。

このうちの頭条は、社名ではなくニュースキュレーションアプリ「今日頭条」のこと。開発した企業は字節跳動(ズージエティアオドン、バイトダンス)という。最初に「今日頭条」がヒットをしたため、通称として「頭条」と呼ばれることが多い。

バイトダンスは2012年3月に北京で創業された。半年後には「今日頭条」が広く普及し、一気に名前が知られるようになった。

 

百度を追い落とすTik Tokのバイトダンス

その後、2016年9月にショートムービー「抖音」(ドウイン)を開始、これが瞬く間に広まり、海外にTik Tokとして展開をしている。

2019年の売上額は1400億元(約2.1兆円)。そのほとんどは広告収入だ。コンテンツのリコメンド技術に人工知能を使ったことが核心技術となっており、圧倒的な効率で広告効果をあげている。そのため、検索広告大手だった百度は市場を蚕食され、業績を落としている。最近では、BATのBは百度ではなく、バイトダンスだとも言われるようになり始めている。

 

大学時代にソフトウェアに目覚めた張一鳴

創業者の張一鳴(ジャン・イーミン)は、1983年に福建省龍岩で生まれた。父親は東莞市で電子製品の工場を運営し、母親は看護師だった。父親がテクノロジー好きだったため、家庭でも海外の新しいテクノロジーや新しい製品についての話をすることが多かったという。

2001年に、張一鳴は天津にある南開大学に入学し、電子工学を専攻したが、成績は芳しくなかった。正弦波生成装置を組み上げるのに2時間もかかった上に、できあがった装置は期待通りには動かなかったという。それで、ソフトウェア工学に転科をした。これがよかったのか、張一鳴はソフトウェア開発にのめり込み、プリント基板を自動化するソフトウェアを開発して、大学生コンテストで入賞したこともある。

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▲バイトダンスの創業者、張一鳴。検索というスタイルが古く、それに変わるものとして、人と情報を機械学習でマッチングさせるという発想を得たことが、バイトダンス創業の基礎になっている。

 

不動産検索サイトの起業から出発した張一鳴

2005年に卒業した頃は、ネットバブル崩壊の影響がまだ残っていたが、それでもアリババやテンセント、百度といった新興企業が成功するのを見て、張一鳴はあこがれた。張一鳴は、マイクロソフトに在籍したこともあるが、すぐに辞めている。大企業の中でエンジニアとして働くことは、自分の目指すべきことではないと悟ったのだという。

そこで、同級生2人と開発チームを結成し、起業を目指したがすぐに失敗。そこで2006年2月に旅行検索サイト「酷訊網」に入社し、旅行用検索エンジンの開発を行った。これにより、業界では張一鳴の名前が知られるようになる。

2008年9月、張一鳴は、SNS「飯否」の経営に参加をする。その後、2009年10月に、不動産検索サイト「九九房」を起業、2年で150万人の会員を集めた。そして、2012年3月にバイトダンスを起業した。

 

ニュースのプロはいない。全員がエンジニアの会社

このバイトダンスという企業は風変わりにも程があった。なぜなら、全員がエンジニアだったのだ。最初のプロダクトは「今日頭条」。各メディアからニュース記事を収集して、利用者個人に適した記事だけを表示してくれるというニュースキュレーションアプリだ。

通常、このようなキュレーションを行うためには、ニュースに精通した人が必要で、既存の新聞社などからプロの編集者や記者を雇うものだ。バイトダンスにそのような「プロ」はまったくいなかった。ライバルたちは、鼻で笑って、バイトダンスは早晩消えてしまうスタートアップだと見ていたという。

しかし、張一鳴の信念は違った。どの記事を選ぶかは、プロの目ではなく、アルゴリズムで自動的に選ばれるべきなのだと考えていた。プロが上目線で、利用者のために「記事を選んであげて、押し付ける」のではなく、客観的なアルゴリズムで利用者と記事のマッチングがされるべきだと考えていた。勝負どころは、その精度をどこまで上げられるかだけだと考えていた。

そこに人工知能機械学習というテクノロジーが実用レベルになってきた。張一鳴は機械学習で、コンテンツと利用者をマッチングさせることをバイトダンスの中核テクノロジーとして定め、今日頭条、火山小視頻、Tik Tok、西瓜視頻などのプロダクトをリリースし、中国国内ではどれも広く使われるアプリになっている。

どのアプリも「なぜだか、自分の見たいコンテンツが次から次へと出てくる」という評判を得ている。

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▲バイトダンスの最初のヒットアプリ「今日頭条」。ニュースキュレーションアプリだが、ニュースのプロは介在しない。すべて機械学習により、記事と利用者がマッチングされる。

 

検索の時代は終わる。マッチングの時代が始まる

張一鳴は酷訊網のために検索エンジンを開発しているときに、検索というスタイルが終わることを感じたという。当時、列車のチケットは駅に行って窓口に並んで購入するしかなく、ネットで購入できるのは旅行社や個人が転売で出品するチケットだけだった。しかし、いつ出品されるのかわからない。そのため、タオバオなどのアプリに頻繁に開き、出品されているかどうかを、毎回検索して確かめなければならなかった。

自分が帰省をするチケットを買うときに、この手順に煩わしさを感じた張一鳴は、昼休みの1時間を使って、簡単なスクリプトを書いた。それは、一定時間ごとにタオバオを検索し、チケットの出品を見つけたら、携帯電話にメッセージで通知するというものだった。

この経験から、人が検索をしてコンテンツを探すのではなく、人とコンテンツが自動的にマッチングされる仕組みが必要だと感じた。そこに機械学習というテクノロジーが登場した。

このような経験が、バイトダンスの起点になっている。

検索大手の百度機械学習マッチングのバイトダンス。手法は異なるが、サービス領域は重なっている。そして、広告収入で百度は売上を落とし、バイトダンスは売上を急成長させている。検索は、インターネットの入り口ではもはやなくなっている。

 

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