中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国最後の巨大市場「銀髪族」。テック企業が注目をする4.7億人市場

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明日、vol. 054が発行になります。

 

高齢者とデジタルというと、多くの人が「高齢者はデジタルが苦手」「デジタルデバイド」といった言葉を連想します。パソコンを使いこなしてブログを書いているおばあちゃんや、LINEを使って集まりの連絡をしている高齢者グループがあると、メディアは「スーパーおばあちゃん」として取り上げ、そのニュースを見た人は「元気なお年寄りもいるものだ」と驚きます。

しかし、これは明らかに間違ったイメージです。現在70歳の高齢者は1950年生まれですから、グラフィカル操作のコンピューター「Mac」が34歳の時に登場しています。インターネットが一気に世の中に広まったのは45歳の時です。インターネット第1世代なのです。

このような高齢者は、スマートフォンに触れても、最初はどんなアプリがあるのかわからず戸惑うこともありますが、しばらく使って慣れてしまえば問題なく使いこなします。ブログを書いたり、LINEで連絡を取ることなどなんでもありません。新しいサービスが登場した時に、慣れるのに、若者よりも時間がかかる程度のことです。

ただし、この世代は、今のように、ほぼ全員がデジタルに関わるという時代ではありません。Macが登場しても、インターネットが登場しても、関わることなく、年を重ねてきた人もいます。このような方は、確かにスマートフォンを渡しても、困惑するばかりでうまく使いこなせないかもしれません。それがあたかも高齢者の全員であるかのようなイメージが広がってしまいました。

 

なので、現役時代からパソコンやインターネットを使っていた人は、70歳になっても当たり前のようにパソコンやスマートフォンを使いこなします。その後、デジタルデバイスは特殊な道具ではなくなり、仕事や教育を受けるのには必須のものになり、スマホの登場によって生活の上でも必須のものになってきました。想像してみてください。私たちが70歳になっても、毎日スマホ(別のスタイルのデバイスに進化しているかもしれませんが)を当たり前のように使っていることでしょう。

あと10年もすれば、70歳の人は24歳でMacに触れ、35歳でインターネットに触れ、47歳でスマホに触れた世代になります。その時期にデジタルデバイスを使い始めた人は、70歳になっても使い続けるでしょう。老眼が進むので、スマホではなくタブレットを使うかもしれませんが、バッグに5GSIM入りのiPadを入れて散歩をし、地図アプリの周辺検索でカフェを探して休憩するという高齢者も珍しくなくなるでしょう。

 

「高齢者がデジタルデバイスが苦手」というのは、思い込みにすぎません。また、デバイスやサービスのUI/UXの進化がじゅうぶんでないということもあります。

例えば、私たちは、いまだにログインにパスワード方式という古い技術を使い続けています。本人認証をするには「記憶」「所有」「生体」の3つの要素のいずれかが必要で、可能ならば2つを組み合わせて使う二要素認証が安全だとされています。しかし、黎明期のデジタルデバイスには「所有」「生体」要素を実現する方法がない、または現実的ではないという事情がありました。そこで仕方なく、記憶要素であるパスワードを方式を採用しました。

しかし、現在のスマホは所有(携帯電話番号、機種識別番号など)、生体(指紋認証、顔認証、音声認証)が簡単に使えるようになっています。それでも、多くのサービスが古いパスワード方式を使い続けています。Yahoo! JAPANのようにパスワードを廃止してしまった先進的なサービスも登場していますが、まだまだ少数派です。

ネットサービスをひとつしか使わないのであればまだしも、複数のネットサービスを使うとなると、パスワードの管理をしなければなりません。こういうところが高齢者がネットサービスを利用する障害になっています。

 

今、中国では高齢者市場が大きな焦点になっています。高齢者は銀髪族(インファー)と呼ばれ、ECやデジタルサービスの新たな巨大市場として注目をされています。

そのため、スマホもUI/UXを進化させています。例えば、文字の入力はソフトウェアキーボードによるローマ字入力が最も多いものの、音声入力をメインに使う人が増えています。また、難しい漢字は手書き入力も可能であるため、キーボードを使わないという人が増えています。

2010年代半ばに音声認識エンジンにディープラーニング技術が使われるようになって、認識率は飛躍的に向上しました。特に屋外のノイズの多い環境での認識率が格段にあがっています。中国人は、周りの人が何をしようと気にしない文化があることもあって、街中でも音声入力を使う人をよく見かけるようになっています。

日本のLINEのように使われるSNS「WeChat」でも、テキストをやりとりするのではなく、マイクに向かってしゃべり、その音声データをやりとりして会話をしている人も珍しくありません。音声電報のような使い方です。検索をする時にも音声認識で入力し、検索をするという人が増えています。

音声入力の精度はかなり高くなっていて、誤認識の割合よりも、キーボード入力のタイプミスの割合の方が高いぐらいです。

 

これはあくまでもひとつの例で、多くのメーカー、企業がお年寄りでも使いこなせるような工夫をしています。なぜなら、銀髪族は中国テック業界にとって、最後の巨大市場だからです。

それは生活系サービスも同じです。現在テック企業が参入をして、激しい競争が起きているのが、「社区団購」(シャーチートワンゴウ)です。これはスマホで生鮮食料品や商品を注文すると、ご近所の商店に翌日配送されるので、受け取りに行くという地域密着系ECのような仕組みです。大型スーパーに買い物にいくのは疲れる、ECを使うのは難しい。そういう銀髪族が社区団購を利用し始めています。

では、そもそも、なぜ、銀髪族が最後の巨大市場なのでしょうか。そして、テック企業はどのようなアプローチをしているのでしょうか。

今回は、銀髪族市場についてご紹介します。

 

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