中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

WeChatへの大転換を可能にしたテンセントと創業者のポニー・マー

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明日、vol. 037が発行になります。

 

テンセントのSNS「WeChat」(微信、ウェイシン)は、中国の小売業を大きく変えました。SNSでメッセージがやりとりできるだけでなく、スマホ決済「WeChatペイ」により、アリペイとともに、中国を一気にキャッシュレス先進国に押し上げました。

WeChatの中からは、さまざまな生活サービスが利用できます。鉄道や飛行機のチケット予約購入、ホテルの予約、水道光熱費の支払い、フードデリバリーの注文、ECの利用。生活周りのサービスであれば、ほとんどが利用でき、支払いもWeChatペイでできてしまいます。

SNSと決済が結びついたというのは大きなことでした。まず、WeChatの利用者同士で、簡単にお金を送金しあえるようになりました。これにより、中国版ユーチューバーが職業して成立するようになりました。面白い動画を公開して、WeChatで投げ銭を送ってもらえるのです。

さらに、デジタルコンテンツがビジネスになるようになりました。音楽や映画、書籍を購入するのにもWeChatペイで支払えばワンタップです。中国はコンテンツを平気で違法コピーすることで有名な国でしたが、それは購入したくても、近くに店がない、ネットでのデジタルコンテンツは決済手段がないことも大きく影響していたのです。ゲーム内課金なども大きなビジネスになってきています。

さらに、SNSとECを組み合わせて、ソーシャルECという新しいECを生み出すプラットフォームになりました。ソーシャルECというのは、同じ商品を購入する人をSNSで探して、まとめ買いをすると安く購入できるというものです。ピンドードーなどが、WeChatと連携してソーシャルECサービスを行っています。

 

また、WeChatの機能を大きく拡張したのがミニプログラムです。ミニプログラムの実態は、WeChat専用のウェブアプリですが、ストアからダウンロードするアプリとは異なり、ダウンロードしてインストールする必要がありません。さらに、サービスへのアカウント登録の必要もありません。WeChatのアカウントがそのまま使われる仕組みです。また、決済が必要なサービスでも決済方式を登録する必要はありません。自動的にWeChatペイで支払われます。

つまり、アプリと違って、初めて使うサービスでもすぐに開いて、利用し、決済ができることから、ファストフードやカフェ、小売店がミニプログラムを公開し、新規顧客の獲得ツールとして利用をしています。

街を歩いていて、喉が乾いたら、「付近のミニプログラムを検索」を実行すると、位置情報から近隣に店舗があるサービスのミニプログラム一覧が表示されるので、その中からカフェなどを選んで、モバイルオーダーしておくことができます。店舗に到着した頃には、飲み物ができあがっていて、支払いも済んでいるので、受け取ってすぐに飲むことができるのです。

このようなミニプログラムがすでに240万件以上存在し、中国の小売業の仕組みを大きく変えています。

 

アップルは、iOS14からApp Clipsという仕組みをスタートさせます。これは、実装方法は異なりますが、ミニプログラムとほぼ同じコンセプトものです。iPhoneでもWeChatミニプログラムと同じように、初めてのカフェでも、AppleIDで自動ログインし、ApplePayで決済をし、モバイルオーダーできるという世界が始まろうとしています。それほどWeChatミニプログラムはポテンシャルを持っている機能なのです。

といっても、日本に住んでいる限り、WeChatを使う必要性はないので、実際に使っている方はそうは多くないでしょう。インストールすることはできますが、身分証(パスポートなど)を使って、本人確認をしなければ、ほとんどのサービスは利用できないので、あまり意味がありません。

WeChatを理解するには、日本のLINEをイメージしてください。LINEのようにメッセージをやり取りできるというのがWeChatの基本です。LINEも当然、WeChatをよく研究していて、LINE PayやLINE Miniアプリを始めています。

 

ところで、中国のデジタル事情に詳しい人は、WeChatについて、ひとつの疑問を持たれていると思います。それは、テンセントという企業は、もともとPCベースのSNS「QQ」で大成功した企業でした。多くの人が複数アカウントを持っていましたが、それでもアカウント数は8.5億人を超えるというお化けのようなサービスでした。スマートフォンが登場する前の中国では、ほぼ全員がQQを使っていたといっても過言ではありません。

これがスマートフォンが登場すると、スマホに対応したQQモバイルアプリが登場します。ところが、テンセントは同時期に、ほぼ同じSNSである「WeChat」を開発して、サービスを開始したのです。結局、それまでの膨大な資産を持っているQQを捨てて、成功するかどうかもわからないWeChatに大転換をしました。なぜ、このような思い切った転換をしなければならなかったのか。

 

この疑問に明快な答えはありません。しかし、結果から見れば、あの時、WeChatに大転換をしたことでテンセントは、中国テック企業のトップに登り詰めることができました。QQにこだわっていたら、そこそこの規模の企業ではあったかもしれませんが、もっと事業規模は小さかったかもしれません。

また、ゲームが好きな方は、テンセントは世界最大のゲーム企業であることをご存知かと思います。いったい、QQやWeChatのようなSNSとゲームはどう関わっているのか。この辺りもわかりづらいところです。

そこで、今回は、テンセントの歴史をたどりながら、テンセントのビジネスがどのように進化をしてきたのかをご紹介します。そうすると、WeChatというSNSがいかに大きな影響力を持っているかもわかってくるはずです。

今回は、テンセントとWeChatをご紹介します。

 

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