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無料貸し出しでも返却率は95%以上。中国人自身が驚く、中国人の民度の改善ぶり

スマホ決済「アリペイ」が、4都市で商品を無料貸し出しを行う社会実験を行った。4年前の返却率は63%だったが、今回の実験では95%以上となり、中国人の信用に対する民度が劇的に改善されていると経済視野網が報じた。

 

無料貸し出し実験。返却率は95%以上

スマホ決済「アリペイ」が面白い社会実験を4都市で行った。それは、玩具や雨傘などを誰でも持っていけるように、街中の棚に置き、無料貸し出しを行う。さて、何人ぐらいの人がちゃんと返しにくるだろうかというものだ。

実験は、鄭州、上海、成都、東莞の4都市で行われたが、結果は95%の人がちゃんと返しにきた。東莞では100%の人がちゃんと返しにきたというのだ。

 

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▲4都市で行われた社会実験の様子。ノートに名前と連絡先を書くだけで借りることができるというもの。返却時間に間に合わなくても、連絡をしてくる、バイク便で返却するなどで、返却率は95%以上になった。

 

4年前の返却率は62%。民度の向上に寄与した「芝麻信用」

4年前、アリペイは似たような実験を行なっている。この時の返却率は62%にすぎなかった。1/3以上の人が、返しにこなかったのだ。

この違いは、間違いなくアリペイの芝麻信用(ジーマクレジット)信用スコアが影響している。

芝麻信用は、「身分特質」(社会的地位や高級品の消費量)、「履約能力」(支払い、返済履歴)、「信用歴史」(クレジット利用歴)、「人脈関係」(知人の信用スコア)、「行為偏好」(消費行動の傾向)の5つの観点から、個人の社会信用スコアを最低350点から最高950点まで算出するもの。高得点になると、ホテルのデポジットが免除されたり、ビザの取得申請、出国手続きが簡略化されるなどの特典を受けることができる。

この社会スコアは、行動をとるたびに少しずつ変化をしていく。ゴマ粒を集めるようにして作る信用スコアなので「芝麻」(ゴマ)というネーミングになっている。具体的にどのような行動をすると、どの程度スコアが上下するのかは非公開だが、支払いや分割払いの返済をきちんとすることが高得点に結びつくことは明らかで、中国人の社会信用のあり方を大きく変えたサービスとも言われている。

4年前には、1/3以上の人が、勝手に商品を持って行ってしまったのに、芝麻信用がある現在では、ほぼ100%の人がきちんと返却をしにくるという結果が出て、改めて芝麻信用による中国社会の変貌ぶりが明らかになり、当の中国人ですら驚いている。

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▲4年前にも同様の実験が行われている。この時の返却率は62%だった。1/3の人は返しにこなかった。

 

バイク便を使って返却する人も

鄭州では、幼稚園の前に玩具を並べた棚を置き、借りたい人は名前をノートに書くだけで24時間借りられるという実験を行なった。朝7時から実験を始めると、続々と子供たちが集まってきた。中には「借りるってどういうこと?買うのとは違うの?」と尋ねて、他の子どもが「借りるということは返さなければならないということだよ」と教えている微笑ましい情景もあった。

成都では、雨傘を並べた棚を街頭に置いた。都合よく雨が降り始めたため、観光名所ともなっている春熙路を歩いている人たちが続々と傘を借りにきた。これも名前をノートに記入するだけで借りることができる。夕方の返却時間になってもまだ雨が降っていたが、多くの人が自分の傘をどこかで手に入れて、借りた傘を返しにきた。成都に観光にきていたあるカップルは、ここで雨傘を借りたが、帰りの列車の時間ギリギリになってしまい、返しにくることができなかった。しかし、二人はわざわざネットでバイク便を探し、駅から春熙路まで傘を配送した。

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鄭州市では、幼稚園の前に子どもの玩具を提供した。すぐに子どもたちが見つけ、多くの子どもが集まってきた。返却率は100%だった。

 

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成都市では雨傘を提供したが、列車の時間に間に合わなくなった観光にきたカップルは、わざわざバイク便を使って返却をした。

 

返却時間が遅れても、事前に電話連絡をしてくる

東莞では、マッサージ機や美容家電の貸し出しを行った。近くの工場に勤める女性たちが集まり、38個の商品が借りられらたが、夕方の返却時間までに返ってきたのは34個だった。3個は約束の時間を数分遅れて返しにきた。1個は未返却だった。しかし、ポスターに記載していた電話番号に電話がかかってきて、「カーラーを借りたものですが、忙しくて返しにいく時間がない」と告げて、30分返却時間を延ばしてほしいと頼んできた。そして、30分後にその女性はカーラーを返しにきた。

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▲東莞市では、美容器具の貸し出しを行った。近くの工場で働く女性たちが借りにきたが、返却率は100%だった。

 

わずか4年で、急速に高まった中国人の民度

今回の実験では、借りるときにノートに名前と連絡先を記入するだけで、返さなかったからといって信用スコアが下がるようなことはない。しかし、信用スコアが広まるにつれて、「借りたものは返す」「約束の時間は守る」という習慣が根付いてきている。雨傘、モバイルバッテリー、自転車などジーマクレジットと連動させるレンタルサービスでは、返却率が99%を超えている。

わずか4年の間の変貌ぶりに、当の中国人も驚きをもって、このニュースを受け止めている。