アリババ系列のネット銀行「浙江網商銀行」の2018年の利益は、主だった銀行の中で図抜けて低い6.7億元だった。しかし、この儲けていない「ジャック・マーの銀行」に市民から称賛の声があがっていると創業投資家が報じた。
各銀行の中で最低の利益だった「ジャック・マーの銀行」
2015年6月に開業した浙江網商銀行（MYBank）の2018年の利益が6.7億元（約100億円）となり、主だった銀行の中で最低となった。最高額の工商銀行の2976.76億元（約4.7兆円）と比べると、浙江網商銀行の1年分の利益は、工商銀行の1日分にも及ばない。
▲2018年の主だった銀行の利益。ジャック・マーの「浙江網商銀行」は、グラフの棒もないほど、図抜けて利益が少ない。
創業資金の貸付判断に3ヶ月を要したジャック・マーの起業
浙江網商銀行は、アリババ傘下のアントフィナンシャルが出資をして設立したネット銀行。俗に「ジャック・マーの銀行」と呼ばれる。
アリババのジャック・マー会長は以前から自分の銀行を作りたいと公言していた。1992年、ジャック・マーはアリババの前に別の企業を起業しようとしていた。起業資金の3万元を借りるために、あらゆる書類を用意して3ヶ月という時間をかけて銀行に交渉をした。しかし、結果は貸付を拒否されたのだ。
貸付の可否を判断するのに3ヶ月もかかるとはどういうことなのか。「もし、判断が1日で済む銀行があれば、どれだけ多くの人が成功できるだろうか」。
それ以来、ジャック・マーの中で、この気持ちが消えることはなかった。その思いが浙江網商銀行の設立に結びついた。
中国版マイクロファイナンスの浙江網商銀行
浙江網商銀行の利益は、銀行の中で最低水準だったが、これは想定内のことだ。各銀行が貸し付けた零細中小企業の数を見ると、浙江網商銀行は1227万件と他の銀行の10倍から80倍になっている。
浙江網商銀行は、そもそもが個人営業者や零細企業が、事業を立ち上げるために貸付をする中国版マイクロファイナンス銀行を目指しているのだ。
河南省蘭考県で鶏を買い卵を生産している農家の金琳琳は、浙江網商銀行から資金を借り、飼育しているダチョウが病気になった時の治療費をまかない、鶏の飼料を購入した。
湖南省平江県の農家の夫婦は、2万500元（約32万円）を借り、家の裏手に温室を作り、生活は大きく改善された。
▲浙江網商銀行の貸付顧客数は群を抜いて多い。農家、個人業者、起業などに貸し付ける中国版マイクロファイナンスを目指しているからだ。
▲浙江網商銀行を利用しているのは農民が多い。運転資金を借りたり、畑などを整備する資金を借りて、収入を増やすことにつながっている。
▲この夫婦は自宅の裏手に温室を作り、商品作物を生産することで、生活が大きく改善された。
3分で審査完了、1秒で貸付実行、人の介在は0の「310方式」
浙江網商銀行は、「310方式」と呼ばれる貸付方式をとっている。すべてはスマホアプリからできるようになっていて、３分で申し込みと審査が終了し、1秒で貸付が実行され、人の介在は0人というものだ。
アプリは顔認証ログインに対応しているため、アカウントやパスワードの管理というリテラシーの高くない人が苦手とする煩わしさもなく、またパスワードが流出するというリスクも低い。アリペイやアリペイの信用スコア「芝麻信用」（ジーマクレジット）と連動しているため、貸付可否が瞬時に判断できる。
▲浙江網商銀行は、310方式を採用している。スマホから申し込むことができ、審査は３分、貸付実行は１秒、人の介在は０というものだ。アリペイの社会信用スコア「芝麻信用」（ジーマクレジット）があるために、審査が自動化できている。貸付金利も他行に比べて圧倒的に低い。
中国でいちばん儲けていない銀行に称賛の声
貸出の利息は、各利用者の信用スコアによって異なるが、日利息0.03%前後であり、一般の銀行よりもかなり低い。
ネットでは、多くの人から浙江網商銀行に対する称賛が寄せられ、ジャック・マーに感謝をする声が挙がっている。2018年の各銀行の決算が公開され、浙江網商銀行が銀行の中で「最も儲けていない銀行」であることが明らかになると、再び称賛の声が起きている。
浙江網商銀行は、3年以内に、中国すべての個人事業主、露天商、農家を顧客にすることを目指している。
