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スマホ決済が解決する病院の長い行列問題

浙江省杭州市の浙江大学医学部付属第一医院が、診療費の支払いでアリペイに対応をした。それも、最初にQRコードを登録することで、自動で支払えるという方式で、支払いに行列をする必要が一切なくなった。従来、2時間40分かかっていた診療が1時間以内で終わるようになったと浙江新聞が報じた。

 

スマホ決済のもうひとつの重要機能「先消費、後支払」

中国で決済手段の主役となったスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」には、電子マネー機能以外にも、さまざまな機能が歓迎されている。

ひとつは、入れておくだけで4%程度の利息がつくMMF機能。そして、もうひとつが消費者金融機能「花唄」だ。

消費者金融機能といっても、借金が簡単にできるというだけではない。クレジットカードがほとんど普及しなかった中国で、分割払いやリボ払いのような支払い方法ができる機能だ。

このような機能は「先消費、後支払」として、多くの消費者から歓迎されている。先消費、後支払だと、使いすぎを心配する人もいるかもしれないが、ここで社会信用スコア「芝麻信用」が効いてくる。信用スコアの得点(信用度)により、先消費のショッピング枠が決められるので、統計的に使いすぎて破綻することは極めて少ない。スマホ決済側から見れば、焦げ付きの心配なく貸し付けることができる。

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中国の病院はお金が先。支払い行列にならばされる

この芝麻信用は、中国の社会問題ですら解決しつつある。病院だ。中国の病院では、デポジットが必要で、これを支払わないと診療が始まらない。さらに、検査、薬などの前にもまずお金を支払う必要がある。

問題は、支払いのたびに行列にならばされることだ。記事に挙げられる伝統的な病院では、診察時間10分、検査20分、薬の受け取りに10分の計40分の診療のために、2時間行列に並ばなければならない。

これなどまだ時間がかかるだけの話だが、最悪なのは、お金をあまり持っていない時、急に具合が悪くなった場合だ。病院に駆け込んでも、お金が支払えないので、治療をしてもらえない。家族か知り合いに頼んで、お金を持ってきてもらう必要があるのだ。

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▲中国の病院では、支払いに行列をしなければならない。この写真は、特別混雑しているもので、どの病院でもこの状態というわけではない。しかし、日本ではここまでひどい状態といのはまずありえない。

 

支払いはすべて自動。分割払いも可能に

浙江省杭州市の浙江大学医学部付属第一医院では、アリペイと花唄、芝麻信用を組み合わせて、この問題のある方式を変えた。

まず、アリペイアプリの中から、診察の予約ができるようにした。診察待ちの行列の長さもわかるようになっているので、それを参考にくれば、待ち時間なく、診察をしてもらえる。受付は自動受付機で行い、アリペイのQRコードを登録。そして、診察、検査、薬の支払いは、すべてアリペイから自動的に支払われるので、支払いに並ぶ必要がなくなった。

以前であれば、2時間40分かかっていたものが、53分で終わることになる。

また、芝麻信用が650点(普通より少し高い程度)がある場合、自動的に花唄で1000元(約1万7000円)の先消費枠が与えられる。そのため、アリペイの中にお金が入っていない場合でも、1000元以内であれば、医療費を自動支払いすることができる。

この花唄は41日間は無利息で、返済の分割回数も自由に設定できる。

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▲現金支払いとアリペイ支払いの比較。上が現金支払い、下がアリペイ支払い。

 

病院の外に出るだけで、支払いが済んでいる

病院を利用した劉さんは、浙江新聞の取材に応えた。「医療費の支払いがこんな便利になったとは思いませんでした。ネットタクシーを利用した時のよう感じです。車を降りるだけで、料金はアリペイが自動で支払っている。あの感覚ですね」。

浙江大学医学部付属第一病院の王偉林院長は、浙江新聞の取材に応えた。「この方式は患者の病院での時間の60%を節約してくれます。病院のワンストップサービス改革の大きな助けになっています。将来は、顔認証技術も導入したいですね」。

すでにアリペイによる診療費の支払いには、4つの省立病院、13の市立病院、56のコミュニティ保健センター、900近い薬局が対応をしている。

このアリペイ、芝麻信用、花唄を組み合わせた「先消費、後支払」は、単なる消費拡大だけでなく、社会問題をも解決しようとし始めている。

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