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時速350kmの中国版新幹線も年内に無人運転。2022年までに無人路線も拡大

中国の地下鉄などではすでに無人運転化が当たり前になりつつあるが、今度は時速350kmで走行する中国版新幹線「高鉄」の無人化試験も始まっている。2019年内には北京、張家口市間での営業運行をする計画だと新浪看点が報じた。

 

無人の方が正確。定時運行率を上げるための無人

最高速度時速350kmで走る中国版新幹線「高鉄」の無人運転の試験運転が始まっている。年内には北京、張家口市間で正式運行を始め、2022年北京冬季五輪開催までに各路線に積極的に投入していく予定だ。

人間が運転する場合、人により技量差が生まれてしまう。新人では停車位置がずれ、正しい位置に修正するなどの無駄が生まれる。しかし、自動運転ではこのようなミスが起こらないため、高鉄全体の定時運行率を上げることができる。

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▲運転席は有人のものと大きな違いはない。監視員が乗務し、緊急時には手動運転に切り替える。

 

当面は「無人運転、有人監視」

無人運転といっても、運転士は乗務をする。運転はしないが、監視をして緊急時には手動運転ん切り替える「無人運転、有人監視」のスタイルを当面は採用する。

すでに北京地下鉄燕房線、上海地下鉄10号線などでは無人運転が行われていて、車両を製造している中車四方車両は、無人運転対応車両をシンガポールなどに輸出し始めている。

しかし、路線延長が100km以内、最高速度時速100km程度の地下鉄と、長距離で最高速度時速350kmの高鉄では、要求される無人運転技術のレベルが違う。

昨年6月には、広東省の東莞市と恵州市を結ぶ都市間高速鉄道で、無人運転を正式運行している。全延長は96kmだが、最高速度は時速200kmになる。中国鉄路総公司は、低速、中速、高速のすべてで無人運転を積極的に導入していくという。


Automatic Train Control System Successfully Tested on China's High-speed Train

▲試験運転の様子を伝えた中央電視台の報道。

 

無線で車両を制御するCTCS

試験運行は、3ヶ月間、18.6万kmを予定している。

従来の列車制御方式は、レールに電気信号を流して、列車とセンターがやり取りする軌道回路方式だった。しかし、この方式では、軌道にさまざまな装置を設置する必要があり、敷設に時間とコストがかかり、軌道の安全点検が必須となる。

一方で、車両と無線でやり取りをするCTCS(China Train Control System)方式であれば、このような施設や安全点検の負担が大きく軽減できる。中国ではこのCTCS技術に早くから注目をし、欧州のETCSを参考に国産化を進め、現在、すべての情報を無線のみでやり取りするCTCSレベル3に達している。無人運転は、このCTCS3に自動運転技術を組み合わせて実現している。

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無人運転高速鉄道の拡大時期を2022年に定めているのは、冬季五輪北京大会が開催されるから。この時には、北京を起点とした高鉄の各路線が無人運転化される。

 

無人運転高速鉄道技術の国際競争が始まっている

高速鉄道無人運転化は、フランスのTGVも目指していて、今年2019年から試験運行を始め、2023年までに正式運行する予定だ。

中国はこの技術をアジア圏を中心に輸出する重点技術としており、高速鉄道無人運転技術の輸出競争が激化するとみられている。