中国でも中高年を狙った詐欺が横行している。アリペイではこのような詐欺被害を守るため、最高24時間まで送金を遅らせることができる機能、不審な送金をすると息子、娘などのスマートフォンに通知が飛ぶ機能などを用意していると北京日報が報じた。
発生件数は横ばいでも、被害金額が急増中
中国でも特殊詐欺はあるどころか、横行をしている。特にスマホ決済が普及してからは簡単に送金ができるようになったため、被害者が続出していて、大きな社会問題になっている。
セキュリティプラットフォーム「猟網プラットフォーム」が、把握をしている特殊詐欺の件数は2018年で2万1703件。これはプラットフォームに通報があって分析対象になった件数のみなので、実際にはこの何倍の規模になっているのかわからない。
発生件数はこの5年間、ほぼ横ばいだが、一人当たりの被害額が2万4476元(約41万円)となり、急増している。この5年間、被害額は毎年記録を更新している状況だ。
▲ここ5年間の詐欺通報件数と平均被害額。件数は横ばいであるものの、平均被害額が急増している。
中高年の出資詐欺、若者の就職詐欺が横行
最も多い詐欺は、偽の投資話を持ちかける出資詐欺だ。年利◯◯%で配当がつくという上手い話を持ちかけて、大金を送金させる。主に50代、60代の女性が被害者になっている。
次の多いのが、就職詐欺。有名企業の名前を騙って、就職の世話をするが、その前に登録料、研修費用などを送金させるというもの。一件あたりの被害額は大きくないものの、若者が狙われている。
詐欺から守るアリペイの時間差送金
特に問題になっているのが、中高年向きの出資詐欺だ。スマートフォンやスマホ決済が次第に中高年の間にも普及すれにつれ、中高年の被害件数が急増している。
これを防ぐために、スマホ決済「アリペイ」には、以前から「延時転帳」という機能がある。
これは、アリペイから他のアカウントへの送金、銀行口座への送金を、2時間または24時間遅延させるというものだ。送金予約をするような感覚で、時間内に詐欺であることが判明したら、送金をキャンセルできるというものだ。
ただし、簡単にキャンセルできてしまうと、今度はそれが悪用されかねないので、送金キャンセルの手続きは厳格だ。まず、警察に行って被害相談をしなければならない。警察の方で、詐欺被害の可能性が高いとなると、受理証明を発行してもらえるので、その受理番号をアリペイのサポートに伝える。これで送金が凍結される。
さらに警察が詐欺被害であると認定すると、返金してもらえるというものだ。
現在では、アリペイ側で送金先の口座情報を自動分析し、不審な動きをしている口座だと、通常の送金をしようとしても「延時転帳」を勧める警告が表示されるようになっている。
▲アリペイの延時転帳設定。2時間または24時間を設定しておくと、送金が設定した時間、遅らされる。その間に詐欺の疑いがあった場合は、警察に被害届を出すことで、凍結、キャンセルできる。
不審な送金は、守護者に通知が飛ぶ
もうひとつの機能が「安全守護」だ。これは中高年向きの機能で、守護者を指定する必要がある。一般には、息子や娘が守護者となる。
この設定をしておくと、対象者が送金をした時に、アリペイ側が対象口座を分析して、特殊詐欺の可能性がある場合は、守護者のスマホにプッシュ通知が送られる。対象者が「延時転帳」の設定をしていれば、この時点で守護者が対象者と連絡を取って、適切な処置をとることができる。
また、金額を設定し、一定額以上の送金をした場合、新しいスマホで対象者のアリペイアカウントが使われた場合に、守護者に通知をする機能もある。
▲安全守護機能の解説。息子や娘を守護者に定めておくと、不審な送金があった場合に、守護者のスマートフォンに通知が飛ぶ。
犯罪者を兵糧攻めにすることで犯罪をなくす
特殊詐欺がなくならない理由。それは騙される人が大量に存在するからだ。多くの詐欺グループは、国外に拠点を持ち、中国国内に対して詐欺を行うため、犯人逮捕には限界がある。スマホの機能を使って、騙されない、騙されても送金されないという防止策を講じることで、詐欺が割に合わない犯罪になっていけば、特殊詐欺は自然に消えていくことになる。
送金や決済の利便性が高いスマホ決済は、犯罪者にとっても利便性が高い。善意の利便性を高め、悪意の利便性を抑えていく方策を取らない限り、どのようなキャッシュレス決済手段も、現金決済を超えることはできない。
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