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カルフールが中国から撤退。売却先はテンセント

中国カルフールが中国事業をテンセントに売却することになった。カルフールの名前は残るもののフランス本社は中国事業から撤退する。事実上の敗走だ。カルフールは、テンセントに売却され、「新小売戦略」(ニューリテール)のパーツとして組み込まれていくことになると快捷金融服務が報じた。

 

カルフールが中国市場から撤退

7月24日、カルフールは中国事業をテンセントに売却することを明らかにした。同時に2400人のリストラを行う。カルフールが中国事業から撤退することになった。1995年、カルフールは中国で1号店を開店して以来、中国にスーパーマーケット文化をもたらしてきた。2006年には100店舗を超え、ある程度の都市であれば、どこにいってもカルフールがある状態になった。

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▲中国の代表的な大型スーパーだったカルフールの中国事業が、テンセントに売却されることになった。新小売に向けての再編が進むことになる。

 

北京五輪が曲がり角、ウォルマートに追い上げられる

しかし、曲がり角は2008年の北京五輪だった。北京五輪聖火リレーがパリで行われた時、チベット騒乱に抗議する団体が聖火リレーを妨害、予備の聖火をバスで運び、数回にわたってリレーの聖火を消す事態となった。

この事件により、それまで良好だったフランスと中国の国民感情が悪化、フランス系のスーパーであったカルフールの来客数が大きく減った。

これは一時的なことだと思われたが、同じく中国に進出していた米ウォルマートが新規出店を進め、カルフールは毎年10%規模で売上を落とし続けることになった。

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▲2008年、北京五輪聖火リレーでは、パリを始めとするヨーロッパ各地で、チベット弾圧に抗議する市民グループが妨害をする事件が起きた。中国カルフールの凋落はここから始まった。

 

新小売に追い詰められる既存スーパー

しかし、そのウォルマートも近年、経営が苦しくなっている。「Excelと現金と店長の勘」で運営されているスーパーは、「クラウドスマホ決済とビッグデータ」で運営される新小売に太刀打ちができなくなってきたのだ。

新小売の代表格であるアリババの「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)は、店舗+レストラン+宅配という業態だが、顧客を宅配(EC)に誘導する施策を取っている。すでに売上の50%以上が宅配で、単位面積当たりの売上は同規模の旧小売スーパーの3.7倍に達している。

実店舗だけでは限界のある売上を、宅配ECにシフトすることで、大きな成長空間を確保しているのだ。

 

 

新小売に対抗するも力つきる

カルフールも手をこまねいていたわけではない。7月18日には、配達サービス「美団」との提携を発表している。美団は、全時、ファミリーマート、ローソン、隣家、京東、快客などのコンビニ、カルフール、京客隆、O!e、ロータスなどのスーパーと提携し、宅配ECを広範囲で行うプラットフォームの設立を表明した。このプラットフォームにカルフールも加わり、新小売に対抗しようというものだった。

しかし、一転して、カルフールは中国事業をテンセントに売却。今後は、テンセントが美団と協同して、カルフールを新小売に対抗できるスーパーに改革していくことになる。

中国の小売業界、消費者にとって、この事件は大きな転換点になる可能性がある。

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▲生鮮食料品を大量に陳列し、宅配ECを組み合わせるという新しい業態のスーパー「フーマフレッシュ」を中心に、中国小売業界の再編が進みつつある。

 

※注

このような報道が流れた後、カルフールは正式表明をしていないという報道も流れています。状況はまだ流動的なようです。