中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

低俗と言われてもやめなかった椰樹集団のライブコマース。今では大人気に

ココナッツジュースの老舗「椰樹集団」がライブコマースを行ったところ、多くの人から女性の性を商品化している、低俗だという批判を受けることになった。しかし、椰樹集団はそのテイストを変えず、続けたところ、今では多くの人に受け入れられるようになったと首席商業知慧が報じた。

 

レトロなパッケージのココナッツジュース「椰樹椰汁」

中国で有名な飲料「椰樹椰汁」(イエシュー)。中身はさっぱり味のココナッツジュースで、子どもから大人まで飲まれている。1998年創業で、もはや定着をしているジュースのひとつだ。椰樹では昔から広告に女性を起用してきた。身体の線が見えるぴったりとしたアオザイを着た女性が体をくねらせて椰樹の缶を持っているというもので、なんとも言えないレトロ感がある。

サイトのデザインもレトロ感がある。製品のパッケージにもレトロ感がある。

▲椰樹集団の元々の広告は、南国をイメージする女性が謎のポーズを取っているというもの。このポーズを見れば、誰もが椰樹集団だとわかるようにまでなっている。

▲椰樹椰汁。中身はさっぱり味のココナッツジュースで、夏場の飲み物としては美味しく、冬はホットでも飲むことができる。

 

ライブコマースで顰蹙を買い炎上する

この椰樹が202210月にライブコマースに進出をした。その時、使ったビジュアルが、ピチピチのノースリーブシャツにショートパンツの美女が集団で、単純なダンスを繰り返すというもので、これが炎上をした。

椰樹としては以前からこういうテイストでプロモーション活動を行なっていて、そのままライブコマースでも使っただけなのだが、「性的表現としてギリギリだ」「女性を商品として扱っている」という批判が寄せられ、「低俗だ」とする声が多かった。ライブコマースを配信しているショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン)にも苦情が殺到し、ライブコマースが一時中断される事態にまでなった。

性的表現がギリギリというわけではない。露出度だけで言えば、もっと過激な映像が抖音にもいくらでもある。しかしながら、踊りもクラシックなもので、登場する美女の化粧の仕方もレトロで、なんとなく大昔のキャバレーやカラオケを想像させる。見ていて、女性が商品として扱われている感じがして、確かにもやもやするところがある。

しばらくはこのプロモーションを続けていたが、あまりに批判的な声があるために女性に今風のトレーニングウェアを着させるなどの修正を行なっていった。

▲椰樹集団の初期のライブコマース。女性が延々踊り続けるというもので、低俗だという苦情が相次いだ。

▲椰樹集団の養成学校の生徒募集広告。安くない給料がもらえ、「車と家と高給で、美男美女があなたを追いかける」というコピー。

 

女性がダメなら男性を登場させる

20233月になって、事件が起こる。椰樹はライブコマースで、女性だけでなく、筋肉ムキムキの男性チームも登場させ、男女混合で踊らせたのだ。

これが大受けとなった。男女混合で踊らせているのだから、「女性の性の商品化だ」という批判は通用しなくなる。「女性の性を商品化していると批判がございますので、平等に男性の性の商品化も行いました」と開き直っている感じもする。案の定、SNSでは、パッケージの女性の不思議なポーズを真似た自撮り写真をあげる人が増加した。

観客を入れたライブコマースでは、多くのファンが集まるようになった。女性ダンサーも男性ダンサーも人気となり、みんな一緒に写真を撮りたがるのだ。低俗と言われ、女性の性を商品化していると言われ、フェミニズムが叫ばれる現代で、椰樹は昔からやってきている自分たちテイストのプロモーションを貫いたところ、受け入れてもらうことができた。

▲女性の性の商品化だという批判を受けた椰樹集団は、男性ダンサーも起用することで、自分たちのテイストを維持した。

▲椰樹集団のライブコマース担当者は、メディアの取材に「平等に尊重しています。美しさを尊重しています」と答えた。

 

再び成長をし始めた椰樹集団

椰樹集団は、2024年の社内仕事始めで、2023年の総販売量は前年同期比10.26%70万トン、売上は3.08%増の50億元以上にまで増加したことを発表した。さらに、20241月の売上は、前年度同期比20%以上増加するなど好調が続いている。

2023年、椰樹は抖音で114回のライブ配信を行い、そのうち99回で商品を販売した。平均視聴者数は28万人、総売り上げは50万元から75万元程度だと推定されている。

独自のセンスと独自のプロモーションで、定番商品だった椰汁が再び注目され、販売も上向きになっている。

▲2013年以降、他の飲料が登場し、昔ながらの椰樹の売上は伸び悩んでいた。しかし、ライブコマースを始めた2022年以降、営業収入が再び増加をし始めた。

▲観客を入れたライブコマースを行うと、ファンが集まり、ダンサーは異常な人気ぶりとなる。

 

 

スターバックスで開催される囲碁大会。上海の囲碁好きがスターバックスに集まる理由

スターバックス上海市中遠両湾城店は、週に3回、囲碁愛好者が集まり、囲碁大会が行われる。自然発生的に生まれた囲碁の会だが、スターバックスとも良好な関係を築き、売上も増加していると長江日報が報じた。

 

囲碁会館となったスターバックス

上海市北部の住宅地区の中にあるスターバックス中遠両湾城店は、毎週、月、木、土の午後は、囲碁会館となる。30人から40人ほどの囲碁愛好者が集まり、対戦を楽しむ。

この集まりのきっかけになったのは韓軍(ハン・ジュン)さんという1人の囲碁愛好者だった。中国ではプロ棋士には優れた環境が与えられるが、アマチュアには囲碁を楽しむ環境が身近にはない。中国独特の中国将棋の方が一般的に人気があり、囲碁は高級さがあり敷居が高いため、愛好者の数が少ないからだ。そのため、日本のような囲碁会館、囲碁会所も少なく、多くの囲碁愛好者が対戦相手を見つけ、囲碁を楽しむ場所の確保に苦労をしている。

若い世代はオンライン対戦をするようになったが、強くなるよりも対戦を楽しみたい愛好者はやはり実際に会って対戦をしたい。

囲碁会館のようになったスターバックス。愛好者たちはルールを守るため、スターバックス側も歓迎をしている。

 

一人の囲碁愛好者が始めた囲碁大会

そこで、韓軍さんはSNS「WeChat」で囲碁仲間を募り、近所のベーカリーで囲碁を楽しむようになった。このベーカリーにはイートインコーナーが用意されていたが、パンは多くの人が買って帰り、その場で食べるという人は少ないために、イートインコーナーはいつも空いていた。そこで囲碁を楽しんだのだ。ベーカリーで買い物をする、混雑をしてきたら席を空けるというルールを自分たちで課したために、ベーカリー側も黙認をしていた。

ところが、このベーカリーが閉店をしてしまった。そこで、しかたなく近所のスターバックスに移動をしたところ、この活動が評判となった。韓軍さんの囲碁愛好グループのアカウントは瞬く間に400名を超え、集まりにも30人から40人は集まるようになった。

さらには、SNSでの評判を聞いて飛び込みでやってくる人などもいる。韓軍さんは、新顔がやってくると棋力を聞いた上で、適切な対戦相手を探し、この会の幹事を務めるようになった。

スターバックス中遠両湾城店。ここは週に3日、囲碁好きが集まって、囲碁を楽しむ場所になっている。

 

スターバックスとも良好な関係を築く

この活動がSNSで知られるようになると、ネットでは賛否両方の声が聞かれるようになった。賛の方は、とてもいい時間がすごせる素晴らしい活動だと褒めるもの。否の方は、長時間席を占有して他のお客さんの迷惑になるのではないかというものだ。

この活動の規模が大きくなると、韓軍さんはスターバックスと交渉をし、2つのことを決めた。ひとつは、大声をあげるなど、他の客の迷惑になるようなことはしないということ。もうひとつは、参加者は最低でもひとつ以上のメニューを注文することだ。スターバックスは決して安くはないが、それで昼から夕方まで囲碁を楽しむことができるため、場所代としては決して高くない。

囲碁愛好者たちは、他の客に迷惑にならないように静かに囲碁を楽しんでいる。

 

スターバックスの売上も増加

ひとつの注文で大人数が長時間居座られてしまうと、スターバックスの売上が下がってしまうのではないかと心配する声もあるが、実際はむしろ売上はあがっているようだ。この中遠両湾城店は背後に大型の公園があるという絶好のロケーションになる。店舗が囲碁活動に使われていることが評判になると、それを見にやってくる客が増えた。見学客はテイクアウトの飲み物を買って、しばらく店内で囲碁の会の様子を見た後、公園に行ってゆっくりと飲み物を楽しむ。

スターバックスのコンセプトは、サードプレイス(第三空間)。自宅、職場や学校の次の居場所を提供することだ。この囲碁活動は、そのサードプレイスのコンセプトにそったもので、今後、他の都市でも同様の活動が行われるようになるかもしれない。

SNSでこの集まりが伝えられると、ますます多くの囲碁愛好者が集まるようになっている。

 

 

東南アジアECの”黄金の一年”。TikTok Shopping、Temuの参入で市場の成長が始まった

東南アジアのECが急成長をしている。中国の4つの資本が入り、競争も激しくなる中、市場規模は16.7兆円、成長率は18.6%となっている。特に今年はさらに大きな成長が期待できる”黄金の一年”になると見る人が多いと21世紀経済報道が報じた。

 

東南アジアECの成長率は18.6%

中国の東南アジアに対する投資はこの数年、過熱気味にもなっている。2024年は、その成果が出て、東南アジアのECにとっては黄金の一年になるかもしれない。

調査会社eMarketerが公開した「Global Ecommerce Forecast & Growth Projections」(グローバルECの予測と成長予測)によると、東南アジアのEC市場の規模は2023年には1139億ドル(約16.7兆円)に達したと見られ、成長率は18.6%となり、世界平均の8.9%を大きく上回ると見られる。

主要なプレイヤーは4つに絞られてきている。シンガポールを拠点にする地元系のShopee(ショッピー)、アリババが傘下に収めたLazada(ラザダ)、そこに中国系のTikTok Shopping、Temu(ティームー)が加わる。Shopeeの親会社であるSEAはテンセントの資本が入っており、結局、中国のテンセント、アリババ、バイトダンス、拼多多(ピンドードー)の代理戦争のような形になっている。

▲2023年の小売(黒)とEC(赤)の地域別成長率。東南アジアは、小売の成長率も高く、最も伸びが期待できる地域になっている。

 

TikTokは3倍の成長、GMVは1.9兆円

特に目立つのがTikTok Shoppingの急成長と2023年上半期から東南アジア展開を始めたTemuだ。2023年、TikTokの東南アジアでの流通総額(GMV)は130億ドル(約1.9兆円)を超え、2022年の3倍以上となった。TikTokの周受資(ジョウ・ショウズー、チュー・ショウ)CEOは、TikTokの影響力を強化するために、今後3年から5年で数十億ドルを投資すると述べている。

インドネシアで、国内小売業を保護するため、一時期TikTok Shoppingが禁止になるという問題も発生したが、結局、禁止をしたところで国内小売業を守ることはできず、むしろTikTokに関わる国内業者の収益を奪うことになることから、この問題も解決をした。

アリババも2023年12月には、ラザダに6.34億ドルを投資した。アリババはこれまでラザダに対して累計で74億ドル以上を投資している。

Temuが東南アジア市場に参入をしたのは2023年下半期からだが、すでにその低価格が受け、利用者数を大きく伸ばしている。

受けて立つ形となるショッピーの親会社SEAの創業者である李小冬(フォレスト・リー)は、社内メールで「ショッピーは高次元の敵からの強い挑戦に直面している」と述べ、従業員に総力戦モードに入ることを呼びかけた。

▲世界のEC成長率ランキング。フィリピン、インド、インドネシアと東アジアの国々が並ぶ。

 

実体店舗への影響を不安する声もある

東南アジアで激しいプラットフォームの競争が始まるのは確実だが、実体店舗が受ける影響を不安視する見方もある。なぜなら、東南アジアではこれまで基本的に商品が常に不足をしていたため、小売店は消費者を獲得する競争をあまりしてこなかった。店頭に商品を陳列すれば、それは確実に売れてしまうのだ。そのため、マーケティングや広告ということが発達せずに、小売店はいかに仕入れ先を確保するかの競争をしてきた。

それがECによって、中国から大量の商品が流れ込むようになっている。小売店も消費者も「モノが有り余るほどある」という初めての体験をして、そこでの競争が始まろうとしている。

▲世界の小売(赤)とEC(黒)の成長率の変化の実績と予測。ECはコロナ禍以降、成長率を落としているが、それでも小売全体よりも高い成長率を保つと見られる。東南アジアはさらに高い18.6%となった。

 

 

儲かるUI/UX。実例で見る、優れたUI/UXの中国アプリ

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今回は、中国のUI/UXの考え方についてご紹介します。

 

UI/UXとはUser Interface(ユーザーインタフェース)、User eXperience(ユーザー体験)のことです。一般的な定義では、UIとはソフトウェアの画面設計のことで、ボタンの形状やフォントをどう選ぶかなどです。UXは、ユーザーがそのソフトウェアを使ってどのような快適さを得るかということです。UIとUXは不可分なものですが、UIがデザイナー視点寄りの考え方、UXがユーザー視点寄りの考え方ということになります。

このような考え方を広めたのはアップルですが、それもあって、UI/UXは誤解をされている面もあります。それは、おしゃれな画面構成にして、ユーザーに「こんな素敵なアプリを使っている」という心地よさを提供することだと勘違いされていることです。もちろん、そういう心地よさも大切ですが、UI/UXの重要さは、より実用的なところにあります。それは「ユーザーの脳に負荷を与えないこと」ということです。わかりやすく言うと「イライラさせないこと」です。

例えば、最近多く見られるアプリ内のポップアップ広告で、30秒見ないと閉じるボタンが出てこない、しかも、そのボタンが小さくてしばしば押し間違いをし、広告のランディングページに飛んでしまうというやっかいなものがあります。これはUI/UXが非常に悪い見本です。もちろん、デザイナーは広告を見せ、ランディングページを見せるために、わかっていて悪いUI/UXを意図的に設計しているのです。

また、最近の証券会社のオンラインサービスでは、ログインパスワードと取引パスワードという2つのパスワードを設定させる例が増えています。サービスに入る時にはログインパスワードを使い、具体的な取引を注文するときには取引パスワードを使うというやり方です。しばしば、ユーザーはどちらのパスワードを使うのか間違えます。当然ながら、脳への負荷は高く、心地よくないわけです。

国税庁の確定申告のオンラインサービスも同様です。近年、マイナンバーカードをスマートフォンNFCスキャンして本人確認ができるようになり、非常に便利になりましたが、本人確認の回数が多すぎます。確定申告の1時間ほどの作業の間に10回近くはマイナンバーカードを取り出して、本人確認をしなければなりません。確定申告をするには、申告書の他に決算書など通常、2種類から3種類の申告票を作成しなければなりません。どうも、申告票を変えるたびに本人確認をする仕様のようです。

 

このような悪いUI/UXは、イライラすることによりミスを誘発します。特に、日本の場合は、本人確認、本人認証まわりでUI/UXが悪いサービスが多いように感じます。複数のパスワード、過剰な本人確認を求められると、多くの人は、パスワードをメモした手帳やマイナンバーカードをデスクの上に置いたまま作業を続けるようになります。自宅の個室で作業をしているのであればともかく、セキュリティー的には非常に危うい状況です。カフェなどパブリックな場所で作業することはできません。

また、本人認証を過剰に行うということは、認証情報を何回もネットワークに通すということで、盗聴や漏洩のリスクも高くなります。UI/UXの観点からは、最悪のデザインなのです。

日本の本人認証系のUI/UXが悪いのは、セキュリティーに対する考え方が「事故を起こす確率を下げる」よりも「事故が起きた時に、サービス提供側の責任を問われないようにする」ことの方が優先されているからです。何か事故が起きても、「それはユーザーが不適切な使い方をしたことが原因であり、弊社は免責される」と言える設計になっています。つまり、UX=ユーザー体験がほとんど考えられていないということになります。

しかも、このような過剰な本人認証を行うサービスが、日本では「堅牢な設計」と勘違いをされているため、民間のサービスでも、“堅牢な設計”を採用してしまうケースが少なくありません。そのような考え方があまりにも長く続いたため、ユーザーの中にも「そのような複雑なサービスを使いこなせることがリテラシー」だと思い込み、操作に戸惑ってしまう初心者や高齢者をバカにする風潮まで生まれています。

近年、ATMやセルフレジ、飲食店のセルフオーダータブレットが普及をし始めていますが、だいたいどれを見てもUI/UX上の問題を抱えています。それでも、その悪いUI/UXを使いこなせることがリテラシーの高い人であり、使いこなせない人はIT時代の脱落者だとする考え方が広がりつつあります。

 

このような、ある意味、国全体と市民の意識がIT時代に対応できていない最大の要因は、日本のソフトウェア開発が委託開発が中心になってしまっているからです。

もちろん、ソフトウェア開発というのは専門性が高い作業ですから、プロフェッショナルに依頼をすること自体は悪いことではありません。しかし、自分たちのサービスに使うものなのですから、どのようなものをつくってほしいのか、明確に伝え、希望通りにものに仕上げてもらう必要があります。

そこをきちんとやればいいのですが、往々にして、委託開発企業側が提案してきたものをほぼそのまま受け入れてしまいます。

中国の場合、ここの考え方が大きく違います。アリババや京東の事業の本質は小売業ですが、関連するソフトウェアは自社開発をするのが当然で、アリババの場合、半数以上の従業員がエンジニアです。京東も全国配達網のスタッフの数が多いですが、それを除けばやはり半数以上がエンジニアです。他の企業でも同様で、ITサービスを活用する大手企業は、どこもエンジニアの比率が高くなっています。サービスに関わるものは自分たちでつくるというのが自然なこととして受け入れられているのです。

 

サービスアプリは、小売業にとっての店舗にあたるものです。小売業を始めるにあたって、店舗を居抜きで借りて、そのまま使うことはまずないでしょう。元がうどん屋であるのに、テーブルやレジや厨房をそのまま使って、ベーカリーを始めるなどということはあり得ません。すべての調理器具や什器を出して、まったく新たにリノベーションすることになります。具体的な作業は、それぞれのプロに依頼をするにしても、どのような店舗にしたいかは店主の中に明確なイメージがあり、設計者や作業者に指示を出すはずです。場合によっては、水道やガスの配管からやり直してもらうことや、客席の採光を考えて、壁を壊して大きなガラス窓を入れるということもごく普通にするかと思います。

日本でも、委託開発の課題が議論されるようになり、優れた企業はエンジニアを採用し、内製化を進める傾向が生まれてきていますが、中国では最初から、配管レベルのことから自分たちでつくるというのが常識になってきました。

その理由は単純です。UI/UXのできが売上に直結をするからです。ですので、UI/UXはつくって終わりではなく、継続的に改善をしていっています。つくってみて、運用してみて、お客さんの反応、現場スタッフの反応を受けて、改善をする。それを継続していくことが事業を成功させる重要な要素になっているということがしっかりと認識されているのです。

 

そのため、中国のアプリと日本のアプリを使い比べてみると、圧倒的に中国のアプリの方が使いやすく感じます。一方、見た目の洗練度、オシャレ度は日本のアプリの方がはるかに優れています。そもそも漢字という文字が、情報量が多すぎて、洗練されたデザインに仕上げることが簡単ではありません。そのため、中国のアプリは一見するとどれもダサく見えます。しかし、使ってみると、よく考えられたUI/UX設計になっているのです。

UI/UXは「ユーザーの脳に負荷を与えない」設計のことだと最初に触れました。脳に負荷がかかると、何割かのユーザーは、そこで操作が前に進まなくなったり、イライラして使うのをやめてしまいます。アプリというのは、結局は操作をさせて、何かを買ってもらうためのものですから、そのプロセスの途中で負荷がかかると、何割かのユーザーがそのたびに離脱をしていきます。悪いUI/UXは、コンバージョンを悪化させてしまうのです。

仮に購入までに5つのステップがあって、ステップごとに10%のユーザーが離脱をするとすると、最終的に0.9^5=0.5905になってしまいます。悪いUI/UXを放置すると、4割のお客さんが逃げてしまうことになります。逆にこれはエンジニアにとっては手柄を立てやすい美味しい状況です。なぜなら、5つの悪いUI/UXの1つでも解消することができれば、0.9^4=0.6561となり、5%以上もコンバージョンを改善できるのです。つまり、エンジニアの働きにより、売上を5%もあげることができるのです。アリババ級のテック企業で、このような仕事をしたら、メジャーリーガーの年棒並みのボーナスがもらえるのではないでしょうか。

 

中国のUI/UXは、デザイン思想やデザイン潮流の中でUI/UXを重要視するようになったというよりは、より下世話な「売上に直結」という部分で重要視をされています。デザイン思想としてUI/UXを大学の講義室で学ぶと、得てしてユーザーが置き去りにされ、デザイナーの自己満足から「おしゃれで心地のよいアプリ設計をしたい」ということになりがちです。一方、中国の場合、「売上をあげる」という即物的なところから出発をしてUI/UXが考えられるようになっています。そのため、部分的には日本より進んでいるところがあり、UI/UXの学びの宝庫とも言える状況になっています。見た目がダサいからと言って、それだけで学ぶべきものは何もないと判断をしてしまうのはあまりにももったいない話です。

 

そこで、今回は、中国のアプリの中で、優れたUI/UXを実現しているものを紹介します。具体的には以下のようなアプリを紹介します。

1)拼多多:ショッピングカートのメタファー

2)庫迪(COTTI)モバイルオーダーアプリ:認証セキュリティーの考え方

3)滴滴タクシー配車:不要な要素を徹底排除する

4)KFC:ユーザーのシナリオにそったUI/UX設計

5)公安緊急通報システム:シンプルであることが最高のUI/UX

です。

今回は、中国のUI/UXの考え方を実例を出しながら、ご紹介していきます。

 

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vol.219:潜在能力は高いのに、成長ができない中国経済。その原因と処方箋。清華大学の論文を読む

vol.220:学生たちはなぜQQが好きなのか。若者に好まれるSNSの要素とは?

vol.221:地図アプリはお宝の山。アリババ「高徳地図」のお金の稼ぎ方

 

 

旅行需要の回復に伴い生まれた新ビジネス「付き添いカメラマン」

旅行需要が回復をし、陪拍という新しいビジネスが生まれている。旅行先の現地で落ち合い、プロレベルの写真を撮影してくれるカメラマンだ。しかし、その多くがSNSで見つける個人間取引であるためトラブルも増加していると法治網が報じた。

 

旅行に付き添い撮影してくれる陪拍

旅行需要が回復をする中で、注目をされているのが「陪拍」(ペイパイ)と呼ばれるビジネスだ。観光地で同行をして、写真を撮ってくれるというものだ。いわゆる観光地で待っていて、団体さんの集合写真を撮るような昔風のカメラマンは絶滅している。みな、自分のスマートフォンを持っているので、単なる記念写真なら人にとってもらう必要はないからだ。

しかし、陪拍は契約した時間だけ同行してさまざまな写真を撮ってくれる。機材もスマホから一眼レフ、さらには昔のCCDカメラなども用意し、オプションで照明や衣装、小道具なども用意して、プロならではの写真を撮ってくれるというものだ。

この陪拍と契約をするには、SNS「小紅書」(シャオホンシュー)で検索をしてみるのが一般的だ。1時間あたり45元から100元程度で、その間、写真を撮ってくれ、最後にはデータを送信してもらえる。この他、入園料、交通費などの必要経費を支払う必要があり、またレタッチ、メイク、照明などのオプションサービスを希望する場合は追加料金を支払う必要がある。

▲旅行に同行をして、プロレベルの写真を撮ってくれる陪拍。衣装や小道具なども用意してくれることもある。

 

カメラマン兼旅行のお供である陪拍

このような陪拍の多くは若い女性で、学生がアルバイトとしてやっていたり、通常はカメラマンとして働いている人、陪拍が儲かるのでもはや専業になった人などがいる。

注文をするのも、やはり若い世代が多く、グループ旅行でも利用されるが、目立つのが一人旅の若者だ。1人で旅行をすれば、すべての時間を自分のために使える自由を満喫することができる。しかし、同時に、一人旅は寂しい。そこで、陪拍を1時間とか2時間雇用し、一緒に旅行を楽しみ写真を撮ってもらうのだ。

そのため、多くの陪拍が、募集広告に自分自身の写真を掲載している。陪拍を注文する時は、写真の腕前だけでなく、どんな感じの人なのかも重要になっているからだ。

▲陪拍のSNSでの広告。陪拍をする本人の写真が掲載されることが多い。ただ写真を撮るだけでなく、旅行を一緒に楽しむ面もあるからだ。

 

トラブルが起きるとネットでの応酬

一方で、陪拍が流行をすると、それに比例してトラブルも増加をする。最も多いのは、陪拍を予約したら、現地で雨が降ってきたという場合だ。機転の効く陪拍であれば、室内での撮影に切り替えて注文主を満足させるが、注文主が希望した写真が撮れなかったという不満を持つこともある。その場合、料金を割引けというようなトラブルになる。さらに、陪拍が待ち合わせ場所に遅刻をしてくる、態度が悪いなどさまざまなトラブルが発生する。

このようなトラブルは、他のサービスでも起こりがちだが、陪拍の場合は、その後が違う。トラブルが拗れた場合、陪拍の中には、撮影した写真をネットでさらしてしまい、こんな酷い目にあったと投稿するケースがある。逆に注文主もスマホを持っているため、陪拍の写真を撮り、こんな酷い目にあったとネットにさらしてしまう。

これは肖像権やプライバシー権を侵害する行為であり、さらに陪拍側は連絡用のアカウントや電話番号も公開をしているため、不快に思ったネット民から心ない攻撃を受けることもあり、弁護士を間に入れた話し合い、警察への通報といった事態にまで発展する例もある。

SNSでは、機材、価格など詳しい情報が記載されている。SNSを通じて注文を入れ、旅行先の現地で落ち合い写真を撮影してもらう。

 

ゲームのお供をしてくれる「陪玩」も人気に

陪拍のようなサービスは他にもあり、エスコート経済と呼ばれるようになっている。最も広く知られているのは、陪玩(ペイワン)だ。オンラインゲームをする時に、一緒のチームに入ってもらい、ゲームテクニックを教えてもらうというものだ。陪玩をするのも若い女性が多く、男性が注文をすることが多い。ゲームのテクニックを教えてもらうだけでなく、女性との会話も楽しむことができる。しかし、そこから恋愛感情を持ってしまう男性もいて、ストーキング行為に発展するというトラブルもある。

 

エスコート経済が広まるとともにトラブルも増加中

このようなエスコート経済は、「1人でいる自由を楽しみたいが、ずっと1人では寂しい」という若者特有の感覚から生まれたもので、食事、買い物、勉強などさまざまなエスコート経済が生まれている。そのほとんどが、SNSに広告を出して、それを見つけた人が注文するという個人取引になっており、管理をするプラットフォームがないために、トラブルになった場合は問題が必要以上に深刻になるケースが目立つようになっている。

法治網の法律の専門家は、公的機関が所管をして、苦情、通報の窓口を設置し、紛争解決メカニズムを運用するなど、公的機関の管理が必要な段階にきていると提案している。

 

 

国内旅行は回復したものの、旅行社の業績は回復しない。苦しい旅行業界の事情

2023年、国内旅行に関してはほぼ回復をした。しかし、旅行社の業績は苦しいままだという。旅行が回復をしたことで、投資資金が流れ込み、新たに起業する旅行社が増えているからだと国家旅業が報じた。

 

数年ぶりに沸いている旅行業界

2023年は、中国の国内旅行、海外旅行が回復をし、旅行業界は盛り上がっている。海外旅行に関してはまだまだ弱含みの面があるが、国内旅行に関してはコロナ前にかなり近づいている。大型連休の時の旅行者数は2019年を超えるケースもあるが、通常の時期の旅行者数がまだ回復しきっていないという状況だ。

これに伴い、旅行業が、投資、起業のホットスポットになっている。中には「空中旅行社」と呼ばれるものまで現れた。空中旅行社は、旅行業の資格がない人でも始められるビジネスで、WeChatなどのSNSを使って旅行する人を募り、やり取りをしながら旅行の計画を組み上げていき、手配をするというものだ。つまり、旅行商品の代理購入という建て付けであるため、旅行業の資格がなくても手数料を取ることができる。ただし、個人が開業するため、人によっては質の高い旅行商品が格安で購入できることもあれば、お金だけ送らせておいて旅行商品が手配できないというトラブルも起きている。

それほど旅行業界は沸いている。

 

国内旅行はほぼ回復

旅行業界はどこまで回復をしているのか。2019年上半期と2023年上半期のデータを比較してみよう。

国内旅行の旅行者数は30.80億人だったものが、23.84億人となり、回復率は77.4%となった。

また、旅行収入は2.78億元だったものが、2.30億元となり、回復率は82.7%となった。

2023年下半期の国慶節などでは、2019年以上の旅行者数となったため、2023年通年の統計が出てくれば、ほぼ回復か、場合によっては2019年を上回る可能性もある。国内旅行はほぼ回復をした。

▲国内旅行者数は、下半期の連休では2019年以上になった時期もあるため、ほぼ回復をしていると考えられる。

▲旅行収入もほぼ同じ状況で、回復をしている。

 

旅行業界も回復へ

旅行業界も好調だ。2019年上半期、旅行社は7773.36万人の団体旅行を扱った。延べにすると2.27844億人日になる。また、7812.08万人の旅行者にガイドがつき、延べにすると1.872104億人日となる。

これが、2023年上半期には、団体旅行は5841.91万人、延べ1.425805億人日、ガイドは6922.26万人、延べ1.476984億人日となる。回復率は、団体旅行で62.6%、ガイドで78.9%になる。

これも2023年下半期は好調であったことから、ガイドに関してはほぼ2019年に戻っていると考えられる。団体旅行に関しては、多くの人が個人旅行を好むようになっているため、やや厳しい数字になっている。

▲団体旅行の利用者数は回復が弱い。団体旅行から個人旅行へのシフトがより進んだ。

▲ガイドの利用者数もほぼ回復傾向にある。個人グループ旅行でガイドをつけるというケースが増えている。

 

業界は好調でも各企業の業績は苦しい

しかし、旅行業界は3年ぶりの盛況に沸いているが、各旅行社は厳しい状況に追い込まれている。なぜなら、2023年になってチャンスがあるということから、旅行社の数が激増しているからだ。

2019年6月末の登録旅行社数は3万7794社だった。しかし、2023年6月末時点では5万780社と、34%も増加をしている。つまり、業界の規模はコロナ前と同じかやや少ない程度であるのに、ライバルが増えているために、1社あたりの業績は苦しくなっているのだ。

▲旅行業が回復をしたことにより、新規参入する旅行社が増えている。

 

一社あたりの団体旅行者数は減少

団体旅行利用者数とガイド利用者数を、旅行社1社あたりの人数に換算をしてみると、旅行社の苦境がよくわかる。団体旅行利用者数は2019年上半期に1社あたり2056.8人であったものが、2023年上半期には1150.4人まで減少している。55.9%にまで減少をしている。半減に近い。

また、ガイド利用者数も2067.0人から1363.2人となり、65.9%にまで減少をしている。

▲1社あたりの旅行社数を計算すると、大幅に減少している。これが旅行社の苦しさの原因となっている。

▲1社あたりガイド利用者数も大きく減少をしている。

 

コロナ禍により旅行社のあり方が変わる

オンライン旅行社やネットの発達で、家族旅行、友人同士の旅行で、団体旅行やガイドを利用する人は少なくなっている。オンライン旅行社で、交通機関とホテルのパッケージ商品を購入し、現地ではSNS「小紅書」(シャオホンシュー)で行く場所を探すというのが常識になってきている。

コロナ禍により、旅行をする消費者の意識が、旅行社頼りから個人旅行にシフトしている。旅行社は、団体旅行とガイドという伝統的なサービスだけでなく、現在の感覚に合う新たなサービスを開発しなければ生き残れなくなっている。

 

 

広がる食品のブラックテクノロジー。食品添加物を拒否し始めた市民たち

食品添加物の使用が広がっている。法的に許されたもので、人体に対する悪影響はないとはいうものの、これをブラックテクノジー、ヘクステクノロジーと呼び、避ける市民が増えている。合法であっても、店主の誠実さに問題を感じるからだと琳琳奇聞説が報じた。

 

歩かない鳥の肉を食べている

「あなたの食べた鳥は、一生のうち3mも歩いていない」という言葉がネットを飛び交っている。近年は中国でもケージの中で飼われたブロイラーの鶏肉が出回るようになったことを皮肉っている。以前の中国では、鶏と言えば放し飼いが基本で、いわゆる地鶏しかいなかった。そのため、KFC(ケンタッキーフライドチキン)ですら、他国のKFCと比べて美味しいと言われていた。

このような状況が消え始めている。食品業界も進化をして、さまざまな技術が使われるようになっていっているからだ。このような食品の技術は「ブラックテクノロジー」「ヘクステクノロジー」(ゲームのLoLから由来する言葉)などと呼ばれる。このテクノロジーはさまざまな場所で見られるようになっている。

 

白すぎてふわふわすぎるアルミ饅頭

中国の朝食で定番となっている饅頭。小麦の生地にさまざまな具を入れ、蒸したものだ。せいろを開けると、湯気が立ち上り、食欲をそそる香りが広がり、湯気の中から真っ白で美しい饅頭が出てくる。しかし、普通につくると、ここまで白く、ふわふわにはならないのだ。家庭でつくると、饅頭はやや黄色味を帯び、生地もつまった重たい感じになってしまう。

お店で出す饅頭は、白く美しく、ふわふわ。人々はそれは職人の技によるものだと思っていた。しかし、それは化学合成された膨張剤を入れたものだった。この膨張剤は、消化を著しく悪くするため、大量に饅頭を食べると、消化不良を起こすことになる。このような膨張剤にはアルミニウムが含まれているため、人々はこのような饅頭を「アルミ饅頭」と呼ぶようになっている。

現在では、市場監督局が違法な添加物を使っていないかどうか定期的に検査をするようになっており、添加物を使わないことをアピールする饅頭店も登場しているが、まだ隠れて使っている店は存在している。あまりにも低価格で販売されているのに、白くて美しくてふわふわの饅頭だったら、食べるのを避けた方が賢明だ。

▲白くてふわふわの饅頭。しかし、普通につくると色は黄ばみ、食感はぼってりとするのが普通。技術で白くふわふわにするのは簡単ではない。そのため、ベーキングパウダーがよく使われる。

▲ベーキングパウダーを使うと、饅頭が白くふわふわになる。現在ではアルミ無添加のパウダーが販売されるようになっている。

 

羊の頭を掲げて鴨の肉を売る飲食店

羊頭狗肉=羊の頭を掲げて犬の肉を売るという古事成語は今でも生きている。使われるのは安価な鴨肉だ。昨年2023年9月、ある火鍋屋が市場監督局から指導を受けた。火鍋の具材として提供されていた羊肉ロールのDNA検査をしたところ、鴨肉の成分が検出をされたのだ。

チェーン「張亮マーラータン」でも、羊肉から鴨肉の成分が検出されている。さらに問題なのは、内モンゴル大学の食堂でも羊肉から鴨肉の成分が検出をされたことだ。内モンゴル自治区には回教徒が多く、戒律により食べられる食材が決まっている。鴨肉を回教徒は食べることはできるものの、ハラールによって鴨肉の処理方法が厳格に定められている。このような偽造羊肉に使われた鴨肉は正しい処理方法がとられているかは不明で、回教徒にとっては、知らない間に戒律を犯していたかもしれないのだ。

ネットでは羊肉と鴨肉の見分け方などが出回っているが、専門家は、色や質感は簡単な処理で偽装することができるため、自分の感覚だけに頼ることは推奨していない。怪しいと思ったら、市場監督局などに通報、相談をして、科学的な調査をしてもらう必要があるとしている。

▲羊肉串の店では、高価な羊肉ではなく、安価な鴨肉が混ざっていることがある。

 

コンデンスミルクで白濁させる牛骨スープ

牛骨スープは真っ白で、食欲をそそる香りがして、味わいも深い。しかし、牛骨スープが真っ白になるまでは、長時間牛骨を煮込まなければならない。その間、調理師は鍋に気を配っていなければならないし、朝早く起きて、開店に間に合うように仕込みをしなければならない。

そこで、賢い方法が蔓延をしている。それは牛骨を煮込んだ後に、スプーン一杯のコンデンスミルクを入れるという方法だ。このミルクがきっかけになり、牛骨スープは一瞬で白濁をする。まるで化学の実験を見ているようだ。

ミルクを入れるだけなので、人体に有害ということはないにしても、煮込みが不十分な牛骨スープを飲まされることになる。

▲牛骨スープが白濁するには時間がかかる。コンデンスミルクを入れると、透明な牛骨スープが一瞬で白濁する。

 

食品添加物を使った地ビール

中国のビールと言えば、青島ビールが有名で、これはドイツ人が主体となって設立したビール醸造所が元になっている。また、もうひとつ有名なのがハルピンビールでこちらはロシア人が主体となって設立したビール醸造所が元になっている。

中国のビールはこのような海外由来のものが多かったが、近年増えているのが小さな醸造所で製造するクラフトビールだ。各地に醸造所が設立され、いわゆる「地ビール」が人気になっている。

ビールと呼べるのは、水、麦芽、ホップ、酵母の4つの食材だけから醸造したものだが、食品添加物を使った偽ビールがクラフトビールとして出回っている。難しいのは価格だ。クラフトビールは1本20元ほどで販売されているが、製造原価は10元以上になるために利益は非常に薄い商品となる。しかし、偽ビールは3元ほどの原価しかかからないのに18元前後で販売されている。多くの人が、価格から、ちゃんとしたビールの割引販売、あるいはちゃんとしたビールでコストダウンにがんばったビールと認識してしまう。

地ビールがブームになっているが、食品添加物が使われたビールが多く出回っている。

 

食品添加物の表示義務を望む声があがっている

この問題が根深いのは、食品添加物の多くが合法であるということだ。そのため、大手食品メーカーは使用している食品添加物の情報をウェブなどで開示をしている。しかし、現場で食品をつくる食堂などの場合は、店主が「使っていない」と言えば、調査をしても添加物を検出することは非常に難しい。隠し撮りでもして、添加物を入れている瞬間を撮影でもしない限り、摘発することも難しい。健康の問題よりは、飲食店の顧客に対する誠実さの問題なのだ。そのため、監督官庁も、表示義務違反程度でしか摘発をするすべがない。

市民の間から、食品添加物のすべてをウェブなどで表示することを義務づける法律を制定してほしいという声があがっている。