中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

Tik Tokが、インフルエンサーの介在なしに爆発的拡散力を生むテクノロジーの秘密

Tik Tokはなぜインフルエンサーの介在なしに爆発的な拡散力を生むのか。多くのエンジニアたちがその秘密を知りたがり、バイトダンスのブログやインタビュー記事などから推測を行い、情報交換をしている。それによると、鍵は人工知能と配信サイクルにあるとChenVastが報じた。

 

インフルエンサー不要の爆発的な拡散力を持つTik Tok

ショートムービー共有「Tik Tok」(抖音、ドウイン)の核心テクノロジーは、人工知能によるリコメンドエンジンだ。これにより、爆発的な拡散力が生まれた。

リコメンドを人とソーシャルマップに頼っているSNSでは、コンテンツがバズるかどうかは、結局は、影響力の大きなインフルエンサーがリツートするかどうかにかかっている。

SNSでは、名もない女の子がダンス映像を公開して、一夜にしてバズるということは原則的に起こらない。バズるには、インフルエンサーが目を止めるという偶然か、あるいはそもそもインフルエンサーに近い位置にいることが必要になる。

しかし、Tik Tokでは、ダンス映像が爆発的に拡散し、名もない女の子が一夜にして人気者になるという現象がたびたび起きている。この爆発力はどうして生まれるのか。

f:id:tamakino:20210205110946j:plain

f:id:tamakino:20210205110942j:plain

▲Tik Tokは国際版の名前で、中国国内では「抖音」(ドウイン)という名前で知られる。ライブ配信機能、ライブコマース機能もあり、もはや若い女性のダンス映像だけではなくなり、老若男女が使う国民的アプリになっている。

 

多くのエンジニアが知りたがっているTik Tokのリコメンドアルゴリズム

Tik Tokの開発元であるバイトダンスは、そのアリゴリズムについては公開をしていない。しかし、多くのエンジニアは、その秘密を知りたがり、バイトダンスのエンジニアのメディアでの発言、公式ブログなどから、そのアルゴリズムを推測しようとしている。

そして、エンジニアたちは、そのような推測情報を集めて、こうではないかという情報をまとめ、その情報がエンジニア系のSNSグループで転載されまくっている。この推測情報が正しいかどうかはわからないものの、次のような内容になっている。

f:id:tamakino:20210205110951j:plain

▲Tik Tokが学習する主な特徴量。実際の反応を見て、機械学習を進め、最適な利用者を探して配信をしていく。

 

映像内容を人工知能でタグづけし内容審査

それによると、5つのステップで、Tik Tokのコンテンツは拡散をしていくという。

ステップ0は、内容の審査だ。ここではアダルト、暴力など、規約違反にあたる映像でないかどうかが審査される。

この審査は人工知能と人手の2つで行われる。まず、人工知能が新しく投稿されたムービーを画像解析し、タグづけを行っていく。このタグには2つの用途がある。ひとつは、タグの中に、規約違反にあたるワードがあった場合は、問題映像として警告を出し、人が内容を確認することになる。もうひとつは、Tik Tokの映像タグデータベースとの比較が行われ、推薦度が設定される。すでにTik Tokに大量に存在する映像の場合、推薦度が低く設定される。

つまり、Tik Tokでは、誰かの真似は拡散しづらい。新奇性の高いユニークな映像が拡散をする。これにより、Tik Tokはサービスとしての鮮度を維持している。

人手による審査は、人工知能規約違反のアラートを出した映像を人の目で審査を行う。場合によっては、映像を削除し、アカウントの停止処理などを行う。

 

数百人のコールドスタートで反応を機械学習

ステップ1は、コールドスタートだ。ランダムで選ばれた200人から300人に映像が配信され、その反応が測定される。ある人は繰り返し見るかもしれないし、ある人は飛ばしてしまうかもしれない。

ステップ2は、このコールドスタートによる反応をデータ化して、機械学習をし、映像の評価をすることだ。使われるパラメーターは、見た人のアカウント情報(ファン数、年齢などの属性)と反応行動(最後まで視聴したか、繰り返し視聴したか、いいね、共有の数など)。

このうち、反応のいい映像は、1000人規模の利用者に配信され、同様の機械学習がされる。

f:id:tamakino:20210205110954j:plain

▲Tik Tokの配信サイクル。300人のコールドスタートから始まり、機械学習を進め、最適な利用者を選び出し、配信規模を大きくしていく。このプロセスは数時間で進むため、爆発的な拡散力が生まれる。

 

約10%の映像が、マッチングする1万人に配信される

ステップ3は、1万人規模の配信が行われるが、このユーザーはランダムではなく、そのコンテンツごとのマッチングを考えて配信される。この1万人規模の配信までたどり着くのは、だいたい投稿された映像の上位10%程度であるという。

ここでは、ユーザーの過去のデータから、どのような映像を好むかなどの情報を見て、その映像が受け入れられやすいかどうかが判断され、配信をされる。

当然ながら、この時の反応も機械学習され、映像の持つ評価特性は洗練をされていく。また、どのような特徴を持つユーザーに反応がいいかも学習され、次はより精度の高い配信が行われるようになる。

そして、次はより適合度が高い10万人が選ばれ配信が行われる。そこでも機械学習が行われ、100万人、1000万人と配信規模が増えていく。最終的には3000万人規模の配信が行われ、そこでの反応がいいと、ほぼ全員に対して配信が行われることになる。ここまでくると、いわゆる「爆発的に拡散する」状況になる。

 

機械学習プロセスのサイクルは短時間で進行する

このプロセスはきわめて短時間に行われることに注意をしていただきたい。ユーザーに映像を配信すれば、そのユーザーはすぐに映像を見て、反応データを生成する。1つのサイクルは30分以内に完了すると見られており、三百人規模の配信から3000万人の配信にたどり着くまで数時間しかかからない。これにより「一夜にして爆発的に拡散する」現象が起きるのだ。

 

マニアックな映像を掘り起こす「墓掘り」

さらに、Tik Tokでは、通称「墓掘り」という仕組みも存在している。それは大量配信には至らないが、少数のユーザーの間での反応がいい映像だ。いわゆる一般受けはしないけど、特定のユーザーには深く刺さるマニアックな映像。マイナー作品に特化したオタク映像などがその例だ。このような少数受けの映像は、次の配信プロセスに進みづらいが、特定のユーザー群に深く受け入れられていると評価されると、次の配信プロセスに進むことがある。この場合、一夜にしてではないが、1週間、1ヶ月経って、突然映像が爆発的に拡散することが起こり得る。

また、特定の映像が大規模配信されると、その映像の配信主の過去の映像の評価もあげられる。これにより、1つの映像が拡散すると、過去に投稿した他の映像も拡散し始めるという現象が起きる。

f:id:tamakino:20210205110936p:plain

▲バイトダンスの最初のヒットプロダクト「今日頭条」。ニュースキュレーションアプリだが、編集者は一人もいない。すべては人工知能が自動でその人に最適な配信を行なっている。中国では最もよく使われているニュースアプリになっている。

 

見たい映像が無限に出てくるTik Tok

バイトダンスは、このようなアルゴリズムを、Tik Tokの前のプロダクトであるニュースキュレーションアプリ「今日頭条」で洗練をさせてきた。それをショートムービーに応用することで、インフルエンサーの介在なしに爆発的に拡散する仕組みを実現し、ユーザー側にとっては「見たいと思っていた映像が無限に出てくる」高揚感を提供することに成功した。

バイトダンスは、今、このアルゴリズムを別に分野にも応用しようとして開発を進めている。それが何であるかはわからないが、メディアは、オンライン教育とライブコマースに応用していると報道している。

 

 

若き天才ハッカーが拼多多を辞職。突然死、飛び降り自殺が続く拼多多に何が起きているのか?

中国だけでなく国際的に有名なホワイトハッカーFlankerが、拼多多を辞職した。しかし、そのタイミングが16億円分に相当する株式が取得できる満5年直前であったことから、この辞職についてさまざまな憶測がされていると黒客Anonyが報じた。

 

深夜帰宅の女性従業員が死亡

中国で最も成長が著しいソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)にいったい何が起きているのだろうか。

2020年12月29日、拼多多が始めた新しい社区団購サービス「多多買菜」の23歳の女性社員が夜11時半に帰宅途中で腹痛を起こし、同僚が救急車を呼び、ウルムチの病院で6時間の救命活動が行われたがそのまま死亡をした。

この問題は、世間から大きく注目されることとなった。ひとつは北京にいる友人が当人と連絡を取っていて、倒れた時刻が午前1時半だとSNSで発信をしたこと。帰宅時間が午前1時半というのはあまりにもひどいと大きな関心を呼んだ。

しかし、これは新疆ウイグルでは、新疆時間を非公式に導入しているため、現地時間は午後11時半だった。しかし、新疆時間は非公式であるため、報道では「北京時間午前1時半」と表記するため、多くの人が誤解をし、非難をした。

 

拼多多公式から発せられた無情なコメント

もうひとつ、決定的だったのが、Q&Aサイト「知乎」に立った「ネットで伝えられた拼多多の残業突然死をどう見るか?拼多多は責任を取るべきか?」というスレッドに、「拼多多公式」のアカウントがひどい返答をしたことだ。

その内容は「社会の底辺を見れば、みな命をお金に変えている。これは企業の問題ではなく、社会の問題だ。この時代に、安楽な暮らしを選ぶことはできるが、その安楽な生活の結果は受け入れなければならない」というもので、豊かな暮らしを得るために、命を削って懸命に働くことは仕方のないことだ、それは企業の責任ではなく、社会の責任だと主張しているように読める。これが、彼女の死に責任がある企業の言葉とは思えないと炎上をした。

この発言は、すぐに削除され、拼多多は「関係のある業者の社員が、公式アカウントに侵入して書き込みをしたもので、拼多多の意見ではない」と否定した。

さらに、飛び降り自殺をする従業員も現れ、拼多多の労働環境が過酷すぎるのではないかと疑いを持たれている。

f:id:tamakino:20210204094726j:plain

▲Q&Aサイト「知乎」に投稿された拼多多公式のひどいコメント。命を削ってお金を稼ぐことを肯定し、それは企業の責任ではなく、社会の責任だと述べている。拼多多は乗っ取りにあった偽のメッセージだと主張している。

 

著名ホワイトハッカーの不可解な辞職

それだけではなく、拼多多に席を置いていた天才ホワイトハッカーが、拼多多を辞職したが、これが拼多多の株式を取得できる勤続5年の直前であったことから、何か事件が起きて、解雇されたのではないかという話になっている。

この天才ハッカーとはFlanker。国際的なハッキングコンテスト「Pwn20wn」で、モバイル部門とPC部門の2冠を取ったこともある国際的に有名なハッカーだ。15歳で飛び級浙江大学に入学し、コンピューター科学を専攻した。19歳の時には、トップハッカーが集まる国際的なハッカー会議DEFCON(デフコン)のハッキングコンテスト「DEF CON CTF」で決勝に進み、中国人で初めての決勝進出者となった。

26歳の時に、拼多多に入社し、CSO(Chief Security Officer)として、拼多多のセキュリティを担当してきた。ところが、Flankerはもう少しで勤続5年になるところで拼多多を退社した。勤続5年になると、拼多多の株式をボーナスでもらえる契約で入ったので、その権利を失うことになった。具体的な株式譲渡の額は明らかにされていないが、1億元分(約16億円)を上回ると見られているため、この権利をみすみす捨てての退職が、さまざまな憶測を呼んでいる。

f:id:tamakino:20210204094734p:plain

▲若き天才ホワイトハッカーFlanker。16億円に相当する株式が取得できる満5年直前で辞職をした。普通はあり得ないタイミングであり、さまざまな憶測を呼んでいる。

 

拼多多が違法なハッキングを命令?

Flankerは退職の理由、事情について何も語ることはなく、ただ「私はすでに拼多多にはいない」とメッセージを出しただけだが、多くのホワイトハッカーたちは、他社へのハッキング攻撃を命令されて、それを拒否したことから解雇されたのではないかと見ている。

なぜなら、辞職する直前、Flankerは、ウェイボーで3つの謎のメッセージを唐突に発信しているからだ。それは「計算機の情報を破壊する行為は、中華人民共和国の刑法第286条に触れる」として、285条の計算機情報破壊罪を解説したメッセージを公開したからだ。これは、違法行為を命令されたFlankerが悩んで、メッセージを公開したのではないかと見られている。

これだけならたまたまの偶然ということもあるが、Flankerと親交のあるホワイトハッカーたちが、Flankerについてメッセージを公開している。

「一部の企業は、超えてはいけないラインを考えない。そのことを私はみなさんよりよく知っている。恐らくFlankerは、拼多多を解雇されたのだ。多くの人は、拼多多を恐ろしい企業だと感じたことだろう」というものだ。これは無名のネット民のものではなく、黙安科技の創業者兼CTOで、中国のホワイトハッカー界での著名人物。

さらに、「私たちホワイトハッカー界の天才がpdd(拼多多の隠語)により、1億元にのぼるボーナスを取得できる権利を踏み倒された。資本は、従業員を搾取することに懸命で、底辺の従業員は死に、技術の従業員は迫害死をする」とメッセージを公開したのは、情報安全専門家のsunwear。

さらに、テンセントのKEENチームの創始者、王琦は、2019年にFlankerから「拼多多が違法な任務を命令しようとしている」と悩んでいることを打ち明けられたという話をネットに投稿した。

f:id:tamakino:20210204094730j:plain

▲拼多多のオフィス。もともとハードワークで有名ではあったが、突然死、飛び降り自殺などが続き、拼多多の労働環境が問題視されるようになっている。

 

エンジニアからの評価が地に落ちる拼多多

いずれも中国のセキュリティ業界では名前のある人たちで、自分たちの世界に現れた若い才能に酷い仕打ちをした拼多多を非難している。そして、拼多多との労働契約に基づいて、事情を語らないFlankerを誠実な人物だと称賛している。

もちろん、周辺のホワイトハッカーたちの発言もあくまでも推測であり、本当の事情はFlankerと拼多多しか知らない。しかし、ホワイトハッカーやエンジニアの間では、短期間に成長したテック志向の企業として憧れの存在だった拼多多の評価は地に落ちている。この件に関して、拼多多は今のところ、コメントを出していない。

 

 

2020年、10大テクノロジー応用。非接触、無人化をAI、5Gで実現(下)

南方都市報商業データは、2020年の10大テクノロジーの応用をまとめた。2020年は新型コロナの感染拡大が大きなできごとであり、それに関連する無接触無人化に関係し、人工知能、5Gに関するテクノロジー応用が選ばれている。

 

6:無人配送(京東)

昨2020年2月5日、京東(ジンドン)は、新型コロナが感染拡大をする武漢市で、新型コロナ対応病院である武漢第九病院に対して、配送拠点から物資を無人カートを使った配送を始めた。

京東では、無人カードだけではなく、物流のプロセスすべてで無人化を進めている。2020年6月には、アジアで初となる無人配送センター「京東物流北斗新倉」を天津市で稼働させた。すべての荷物はコード読み取りされ、人工知能が仕分けをする。これにより、中国華北地区の配送時間は2時間から3時間程度短縮された。

f:id:tamakino:20210203132931j:plain

▲京東の無人配送カート。以前から一部で実戦投入されていてが、2020年に武漢市の病院への物資配送で使われて、全国的に有名になった。

 

7:生鮮食品トレーサビリティシステム(市場監督管理総局など)

2020年12月、市場監督管理総局は、輸入生鮮食品の低温物流のトレーサビリティシステムを稼働した。現在稼働しているのは9省のみだが、これで低温物流の90%はカバーできるという。輸入した段階で、コードが印刷されたシールが貼られ、以後、すべての流通でコード読み取りが行われ、どのような経路で消費者の元に届いたかをスマートフォンから確認できるようになった。

同時に、テンセントクラウド、アリクラウドも、生鮮食料品のトレーサビリティシステムを稼働させている。トレーサビリティシステムが次々と導入されるのには、新型コロナの感染拡大で、食品に対する安全性にも注目が集まっているからだ。

 

8:リモートワーク(アリババなど)

新型コロナの感染拡大で、リモートワークが一気に進んだ。チャット、ファイル共有、リモート会議などの機能があるアリババのリモートワークツール「釘釘」(ディンディン)は、1000万社以上で採用され、2億人のビジネスマンに利用されるようになった。

この他に、飛書(バイトダンス)、WeLink(ファーウェイ)、大象(美団)などのリモートワークツールも人気で、合計すると、2020年の春節後には、1800万社、4億人がリモートワークを行なった。

終息後は出勤に戻っている企業も多いが、リモートワークと出勤の併用をしているところが多く、中国は一気にリモートワーク社会に移行をした。今後も、デスクワークはリモートワーク化、ブルーカラーワークは無人化と遠隔監視が進んでいくことになる。

f:id:tamakino:20210203132925p:plain

▲アリババのリモートワークツール「釘釘」。音声、チャット、データ共有だけでなく、自宅ワークでも、スマホ顔認証による出退勤管理も可能。管理者は、さまざまな出退勤情報などを一覧して管理することができる。

 

9:自動運転ロボタクシー(百度など)

百度の自動運転プラットフォーム「アポロ」に基づいたロボタクシーが量産段階に入った。すでに、百度長沙市、滄州市、北京市で、全面開放の試験営業を始めている。市民であれば、百度地図アプリから誰でも無料でロボタクシーを利用できる。すでに累計21万人がロボタクシーを利用した。

これに刺激をされて、文遠知行(WeRide)、滴滴出行、高徳などもロボタクシーの試験営業を始めている。これらのロボタクシーは、安全監視員が同乗し、万が一の場合には人が運転に介入することになっているが、AutoXは、深圳市で完全無人のロボタクシーの試験走行を始めている。ディープラーニング専用チップを搭載したことで、自動運転の性能が飛躍的に高まったとしている。

百度は、今後3年で、乗客を乗せた試験営業を30都市に拡大する予定で、問題が発生しなければ、順次、正式営業に移行をしてく計画だ。

f:id:tamakino:20210203132928j:plain

長沙市などで、乗客を乗せた試験営業を始めている百度のロボタクシー。現在3都市で試験営業が行われているが、今年は営業する都市を拡大していくことになる。

 

10:バーチャルスタッフ(捜狗、新華社など)

捜狗(ソウゴウ)と新華社は、AIアナウンサー「新小微」(シンシャオウエイ)を開発した。CGのスタジオに登場するバーチャルアナウンサーで、ニュース原稿を入力すると、自然な合成音声で読み上げ、文脈を理解し、アナウンサーらしい表情も見せる。

また、百度と浦発銀行は共同で、AI銀行員「小浦」(シャオプー)を開発した。ロボット型の案内スタッフで、銀行を訪れた人と会話をし、用件を聞き出し、適切な案内をする。このようなロボット型の受付スタッフは、病院などの公的機関でも導入が始まっている。

f:id:tamakino:20210203132939j:plain

▲捜狗と新華社が共同開発したAIアナウンサー「新小微」。ニュース原稿を入力すると、文脈に合わせて表情をつくり、合成音声でニュースを読み上げてくれる。

 

https://www.bilibili.com/video/BV15Z4y147GZ

浦発銀行のAI銀行員「小浦」と来店客の会話。おしゃべりを楽しんでいるが、本来は来店理由を尋ねて、適切な窓口の案内をするのが仕事。

 

 

Echo Show 5 (エコーショー5) スマートディスプレイ with Alexa、チャコール

Echo Show 5 (エコーショー5) スマートディスプレイ with Alexa、チャコール

  • 発売日: 2019/06/26
  • メディア: エレクトロニクス
 

 

 

2020年、10大テクノロジー応用。非接触、無人化をAI、5Gで実現(上)

南方都市報商業データは、2020年の10大テクノロジーの応用をまとめた。2020年は新型コロナの感染拡大が大きなできごとであり、それに関連する無接触無人化に関係し、人工知能、5Gに関するテクノロジー応用が選ばれている。

 

1:AIによるmRNAの二次構造の推定(百度

昨2020年5月に、百度はLinearDesign(http://rna.baidu.com)を全世界に向けて公開した。これにより、世界各国での新型コロナワクチン製造に大きな貢献をした。

従来のワクチンは、ウイルスを不活化したものを人体に注入する。人の免疫システムがタンパク質でできたウイルスの殻の部分に反応して、抗体が作られ、免疫を獲得する。しかし、免疫の獲得効率は決して高いものではなかった。

そこで、新型コロナでは、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用したワクチンが製造された。ウイルスの殻の部分の設計図を人体に注入して、人体の細胞がウイルスの殻部分を生産することで、効率的に免疫を獲得しようというものだ。

生命の設計図であるDNAは、互いに補う2本の鎖が結合することで、物質としての安定を保っている。mRNAはこのDNAからコピーをして作られるが、1本鎖であるため物質として不安定な状態になる。そこで、結合可能な塩基部分が結合をして二次構造=立体構造を取ることで物質として安定しようとする。これがどのような構造になるかで、細胞内のタンパク製造装置であるリボゾームとの結合効率が異なってくる。つまり、二次構造によって、免疫獲得効率が違ってくるのだ。

mRNAの配列は、シンセサイザーを使って人工合成できるので、最も好ましい二次構造を取る配列にする必要がある。しかし、どのような二次構造になるのかは、順列組合せで膨大な可能性があり、総当たりで計算をするのには膨大な時間がかかる。

そこで百度バイドゥ)のLInearDesign(リニアデザイン)では、AIテクノロジーを使って、最も安定する二次構造を短時間で予測をする。百度によるとmRNAワクチンに使われるmRNAでは16分程度で二次構造を予測することができるという。最も免疫効果が得られる二次構造になるように、配列を変え、最適なmRNAワクチンを見つけることができる。短期間でのワクチン製造に大きく貢献をした。

f:id:tamakino:20210203132944p:plain

百度のLinearDesign。RNAの配列を入力すると、その配列が取る確率の高い立体構造を人工知能が推測する。最大でも16分で計算が終わるため、最適の配列を探すための試行錯誤ができるようになった。

 

2:健康コード(アリババ他)

中国が、いまだに小規模のクラスターを発生させながらも、新型コロナの抑え込みに成功したのには、この健康コードの貢献がある。スマホアプリやミニプログラムの形で提供され、その人の感染リスクを評価し、「緑、黄、赤」の3種類で示すというものだ。運用は都市によって異なるが、多くの場合、黄色や赤(高リスク)になると、公共交通機関が利用できなくなる。公共施設や商店などでも、入館時に健康コードをチェックし、黄色や赤では入館拒否されるのが一般的だ。

具体的な仕組みは非公開になっているが、位置情報とBluetoothによる接触履歴に基づき、機械学習で感染リスクの判定をしていると言われている。

全員で自粛をしたら経済が立ち行かなくなる。かといって、全員で経済を回したら感染が拡大する。この感染抑制と経済の矛盾を、少数の高リスクの人の行動を制限し、多数の低リスクの人で経済を回すという手法で、中国はコロナ禍を乗り切ってきた。

f:id:tamakino:20210203132951j:plain

▲中国の新型コロナ対策に大きな貢献をした健康コード。感染リスクが高いと判定されると健康コードが赤になる。赤になると、公共交通機関の利用ができなくなる。

 

3:AI老人モデル(百度など)

昨2020年11月、国務院はデバイスメーカーに対して「老人モデル」に対応するように通知を出した。高齢者が、日常生活の中で、スマホなどのデジタルデバイスを利用できる工夫をすることを求めた。

そこで注目されたのがAIアシスタントだ。百度の「小度」、小米(シャオミ)の「小愛同学」などがよく知られている。この数年で、機械学習を用いることにより、音声認識の精度が大きく向上した。以前は、ノイズの多い屋外では誤認識が多発をしていたが、現在では道路脇や地下鉄構内でも、ほぼ問題なく音声認識ができるようになっている。「病院に電話して」「スーパーへの道順を教えて」から始まり、「京劇の動画を見せて」「咳が出るけど、どうしたらいい?」など、音声だけでもデジタルデバイスが利用できるようになっている。

f:id:tamakino:20210203132935j:plain

▲小米(シャオミ)の音声アシスタント「小愛同学」は、公式キャラクターも作成されている。スマホだけでなく、スマートスピーカースマートテレビなどにも搭載されている。

 

4:ディープラーニングプラットフォーム(百度

ディープラーニングを正しく設計し、正しく学習させることができれば、判別や予測などに高い精度を出せることはよく知られているが、実際には、設計には深い知識とノウハウが必要で、学習には膨大な計算時間がかかる。

百度の飛漿(フェイジャン、https://www.paddlepaddle.org.cn)は、ディープラーニングクラウドプラットフォームで、既存モデルを組み合わせてニューラルネットワークの構築ができ、データを転送することでクラウドで高速に学習をしてくれる。学生の学習用ではなく、産業応用ができるレベルのディープラーニング学習ができるのがポイントで、通信、医療、都市管理、民業、工業、林業などの領域で10万社に利用されている。

この飛漿で開発されたAIで、最も有名になったのが、百度のCT画像から新型コロナ感染を判別するシステムだ。肺炎のCT画像を入力すると、学習をした新型コロナの特徴から、そのCT画像の人が新型コロナに感染しているかどうかを高い精度で判定してくれる。

f:id:tamakino:20210203132956p:plain

百度ディープラーニングプラットフォーム「飛漿」。すでに基本的なニューラルネットワークモデルが用意されていて、それを組み合わせたり、パラメーターを変えることで、用途に適したディープラーニング学習モデルが構築できる。すでに多くの企業での人工知能学習モデル開発に使われている。

 

5:5Gによるクラウド現場監督(中国聯通、中央電子台)

中国では5G通信網の拡大が進んでいるが、具体的な5Gの産業応用についてはまだまだこれからだ。その中で、多くの市民から注目をされたのが「クラウド現場監督」という仕組みだ。

2020年、新型コロナの感染爆発が起きた武漢市では、「火神山」「雷神山」という2つの新型コロナ専用病院が急遽建設をされた。その建設の様子は、中国聯通と中央電子台の協力で、24時間ライブ中継をされた。撮影した4K映像を5Gで転送し、いつでもスマホから見られるというものだ。市民の誰もが建設状況を見ることができる「クラウド現場監督」と呼ばれた。

このライブ中継は、市民の不安を取り除くため、当局が積極的に行ったものだが、多くの市民が公共事業の建築物などにも、この5Gを利用したクラウド現場監督の仕組みを導入してほしいと希望している。24時間ライブ中継をすることで、不正工事などが激減することが期待されているからだ。

f:id:tamakino:20210203132912g:plain

▲中央電子台が行った新型コロナ専用病院「雷神山」の24時間ライブ配信。専用病院の建設風景を公開することで、人々の新型コロナに対する不安が緩和された。

 

明日に続きます。

 

 

再び成長を始めたTik Tok。テンセントのWeChatと正面から激突

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 058が発行になります。

 

今、中国で最も勢いのあるテック企業はソーシャルECの「ピンドードー」とTik Tokを運営する「字節跳動」(バイトダンス)です。

ピンドードーは、ソーシャルECという今までになかったスタイルのECで急速に成長をしてきました。ポイントは、全国流通のノウハウを持っていない地方企業の製品を大量に驚きの価格で販売するということでした。詳しくは「vol.002:第2位のECに浮上した拼多多とは何ものか?」でご紹介していますが、月間アクティブユーザー数では、京東(ジンドン)を抜き、アリババに次ぐ第2位のECサービスとなりました。ただし、ピンドードーは低価格というのが売りであるため、客単価は低く、流通総額ではまだ京東を抜いていません。

2015年9月に創業し、わずか3年後の2018年に米ナスダック市場に上場したピンドードーは、上場しても手を緩めず、むしろ調達できる資金が増えたため、積極策を次々と打っています。2019年には「100億補助」キャンペーンを行いました。これはピンドードーが100億元(約1600億円)の補助金を用意し、商品の購入を補助し、実質大幅な割引価格で購入できるようにするというものです。ピンドードーではiPhoneをこの手法で販売をしたため、ほとんど割引ができないiPhone 11を相場の5000元から1万元も安く販売し、2019年の独身の日セールでは、40万台のiPhone 11を販売しました。

現在は、「9.9元搶購」を実施しています。これは抽選にはなりますが、商品が9.9元(約160円)で購入できるというもので、iPhone 12や電気自動車(EV)も対象になっているため、ネットでは「これは本当なのか?」と話題になっています。

ただし、前回の「vol.057:テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題」でもご紹介したように、従業員の突然死、飛び降り自殺などの問題が相次ぎ、今後、社内の労働環境整備に労力を割かなければならなくなっています。

 

一方のバイトダンスは、今日頭条、Tik Tok(中国版は抖音ドウイン)の成功により、次の成長までの小休止をしているかのように見えました。そして、米国でのTik Tok事業剥離問題が起こります。

しかし、バイトダンスは、海外の事業で問題が起きる一方で、国内事業の次の成長のために力を蓄えていたようです。昨年後半からは本格的にEC(ライブコマース)に進出をし、今年1月にはドウイン支付という独自の決済手段をスタートさせました。これがもし海外でも使えるようになると、英語名はTik Tok Payになるはずのものです。

 

さらに、バイトダンスは、Tik TokのSNS機能を強化して、アリペイやWeChatのようなスーパーアプリ化を目指すということを公言するようになりました。スーパーアプリとは、ひとつのアプリで、生活の1シーンがすべて賄えてしまえるようなアプリのことです。アリババのアリペイ、テンセントのWeChatでは、決済だけでなく、タクシー配車やフードデリバリーなどもアプリの中からできるようになっています。つまり、中国を代表するアプリであるアリペイ、WeChatに、Tik Tokも肩を並べようとねらっていることになります。

テンセントはこの動きに機敏に対応をしています。WeChatのメジャーアップデートが行われ、ユーザー間でショートムービーを送りあったり、共有したりができるようになりました。Tik Tokはショートムービーを共有して楽しむというものですが、WeChatではショートムービーをスタンプなどと同じようにコミュニケーションツールとして活用しようというものです。WeChatの中のショートムービーコーナーでは、Tik Tokと同じようにスワイプするだけでたくさんのショートムービーが見られるようになっていて、Tik Tokとほぼ同じ感覚で楽しめます。明らかにTik Tokを意識していることは間違いありません。

 

ピンドードーは、中国のECジャイアントである京東に迫り、アリババにすら挑戦しようとしています。一方のバイトダンスは、ネット広告の分野で百度バイドゥ)の地位を蚕食し、今、テンセントから警戒されるようになっています。つまり、この2社は、中国のテックジャイアントであるBATJに戦いを挑んでいるのです。この2社の動きによっては、中国テック業界の地図が塗り替えられることになるかもしれません。

そこで、今回は、バイトダンスというのはどんな会社なのかをご紹介し、バイトダンスの核心テクノロジーはどのようなもので、そして今、何を目指しているのかをご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

 

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.057:テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題

 

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

 

25分80%急速充電のBYDのEV。しかし、急速充電対応のステーションが見つからない

BYDのEV「漢EV」が売れている。25分で80%の急速充電に対応しているからだ。しかし、電動星球Newsが試乗をしてみると、多くの充電ステーション側が急速充電に対応していない事実が浮かびあがってきた。

 


25分で80%充電。人気になったBYDのEV「漢EV」

充電池メーカからEV自動車メーカーに転身した比亜迪(BYD)の「漢EV」が昨年7月に発売になり、生産がおいつかないほどの人気になっている。

北京での実勢価格は、22.98万元から27.95万元(約450万円)と高価だが、BYDが開発した新型バッテリー「刀片電池」(ブレードバッテリー)が搭載されているのが人気の理由だ。

刀片電池は、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーで、従来のセル型リチウムイオンバッテリーに比べて、容積効率が2倍近くになり、低コストで、なおかつ寿命が長い。さらに120kWの急速充電にも対応し、30%から80%までの充電時間は25分という短いものになっている。

多くの消費者が、EVの最大の欠点は、充電時間だと考えている。急いでいるのに充電を待たなければならないというのはマイカーとしては、きわめて使い勝手が悪いからだ。漢EVは、この問題を解決したとまでは言えないものの、許容範囲にまで高めたと言える。

f:id:tamakino:20210202105203j:plain

▲BYDのEV「漢EV」。価格は高級車の部類(約450万円)だが、80%充電が25分の急速充電に対応したことで、生産が追いつかない人気となっている。

 

急速充電の条件は気温2.7度以上

しかし、すでに漢EVを購入したオーナーから、冬の北京では充電時間がかかるという報告が、電動星球News編集部に相次いでいる。BYDでは、120kW急速充電を行うには、気温が2.7度以上必要だとしていて、零下になることが当たり前の冬の北京では、この条件を外れることが多いからだ。

そこで、電動星球Newsでは、実際に北京周辺を走行して、急速充電が可能なのか、可能でなければどのくらい時間がかかるのかを実測してレポートをした。

f:id:tamakino:20210202105034j:plain

万里の長城の観光地にもなっている金山嶺長城料金所。北京市内からは高速を使って2時間半ほどで、日帰り観光の圏内。しかし、満充電のEVでも往復をすることは難しく、どこかで充電をしなければならない。

 

高速SAでは急速充電ができなかった

まずは、満充電の状態で、北京市内を出発して、京承高速に乗り、走行をした。市内は通勤による交通渋滞が起きていたが、高速に乗ってからは、ほぼ時速120kmでの定速走行ができた。外気温は3度。

金山嶺長城料金所に到着すると、海抜380mで外気温は-7度。この時点で、バッテリー残量は2%となり、走行可能距離が13kmとなったので、近くの土溝サービスエリアに入り、充電を行なった。

充電を開始して2分で電流電圧が安定し、電流は119.2A、電圧は516.7Vとなったが、これでは充電効率は60kWで、120kWの急速充電ができていない。この充電ステーションは120kW充電に対応していると表示されているのに、結局、充電効率は60kWのままだった。

バッテリー残量が20%になったところで、充電を中止した。18分間で、バッテリー残量は18%増え、走行可能距離は121km増えた。

f:id:tamakino:20210202105018j:plain

▲漢EVの充電中のコントロールパネル。バッテリー残量と充電効率が表示される。60kWは通常充電で、急速充電は120kWにならなければならない。

 

郊外で高速を下り、充電をする

市内に戻り、高速の北六環出口あたりで、一般道に下り、再度充電を行なった。この時はバッテリー残量が10%以下になっていたからだ。

ちなみに、第6環状線はまだ北京市街とは言えない郊外にある。北京在住のEVオーナーが日帰りで郊外に出かけた場合、六環出口で高速を降りて、充電をすることが多くなっている。この辺りで、バッテリー残量が少なくなること、週末の場合はその先高速の渋滞が起こりがちであること、市街地で充電ステーションを探すのは、空きがないことが多く苦労をすることなどがあるため、郊外の高速出口付近の充電ステーションを利用し、休憩をし、それから下道を通って市内に戻るというのが、ひとつの定番パターンになっている。

f:id:tamakino:20210202105027p:plain

▲充電ステーションのパネル。120kWと書いてあれば、本来は急速充電ができるはず。しかし、実際にはできないことが多い。

 

急速充電対応ステーションでも急速充電はできなかった

ここでも120kW対応の充電ステーションを探して充電を行なった。しかし、結局60kWでの充電しかできなかった。電圧は問題がないようだが、電流が100A以上にあがらない。

よく見ると、この充電ステーションは1台で2台のEVが充電できる仕様だった。充電器は120kWであっても、1台あたりは最高60kWなのではないかと思われる。

f:id:tamakino:20210202105042p:plain

▲120kW対応充電ステーションといっても、1台から2つの充電ケーブルが出ていることが多い。この場合、それぞれ最大60kW(通常充電)という意味で、急速充電に対応しているということではないようだ。

 

急速充電対応でも安全を考えて制限をかけている?

そこで、1台の充電器に1台の充電ができる120kW対応の充電ステーションに移り、再度充電を試みた。しかし、それでも最高の充電効率は105.1kWにすぎなかった。

結局、120kW対応の充電ステーションであっても、安全を考慮して、100kW前後に制限をかけているようなのだ。

f:id:tamakino:20210202105031p:plain

▲急速充電対応のステーションで充電をしたが、最高で100kW程度で、バッテリー残量が60%を超えたあたりから充電効率が抑えられていく。結局、バッテリー残量14%から99%にするまでに54分かかっている。

 

結局、急速充電はできず

電動星球Newsでは、外気温の影響を調べるため、漢EVを一晩外に駐車をし、翌日の朝方充電をするという試験を行なった。

朝8時の北京の外気温は-6度。車内の温度も2度までに下がっていた。この状態で、750V、250Aに対応している充電ステーションで充電を行なった。

朝8時9分に充電を始め、8時44分にバッテリー残量80%になったところで、充電が終了した。しかし、充電効率は54.5kWにすぎなかった。

さらに続けてバッテリー残量80%の段階から再度充電を行なった。この状態では、先ほどの充電によって、バッテリー温度は20度まで上昇している。しかし、それでも充電効率はやはり54.4kWだった。そして、10分間で、バッテリー残量が86%まで増えたところで、充電が終了した。

f:id:tamakino:20210202105023p:plain

▲気温の影響を見るため、冬の北京の屋外に一晩放置して、翌朝充電をした。最初の数分間で電力があがり、最高で70kWほどになるが、80%になったところで充電効率が低下する。安全を考えて、充電能力を最大にしない工夫がされているようだ。

 

f:id:tamakino:20210202105038p:plain

▲充電を80%でいったん終え、再度充電をしてみた。この時点ではバッテリーの温度が上がっているので急速充電の条件を満たしているが、やはり60kWにも至らない。充電ステーション側が対応をしていないようだ。

 

充電ステーションの急速充電対応が急がれる

この数年のEVの進化は著しい。数年前は満充電の航続距離が200kmから300kmが一般的で、現実にはこれ以下しか走れないため、高速道路でバッテリー切れにより立ち往生しているEVを見かけることがよくあった。それが現在では、500kmから600kmが一般的になっている。平均時速40kmだとすれば10時間ほど走れることになり、「昼間走って、夜充電」という1日のサイクルが成立するようになる。

そこに、漢EVの急速充電は、多くの消費者の目を惹いた。充電ステーションの場所や航続距離をあまり気にせず、ガソリン車に近い感覚で乗れるEVだと思えたのだ。

しかし、実際は、充電ステーションの方が120kW充電に対応をしていないことが多いという事実が浮かび上がってきた。自宅や会社に急速充電設備を用意することもできるが、それはあまり意味がない。自宅や会社では、通常充電でもよく、急速充電が使いたいのは出先でなのだ。

さらに有機溶剤を使わない全個体電池も登場し、幅広い温度で性能を発揮し、発火の危険性も少なく、さらに超急速充電が可能になると期待をされている。しかし、現実には、充電ステーションの側が対応をしなければ宝の持ち腐れになる。充電ステーションが置き換わるのには、数年はかかる。この問題を解決しなければ、結局、EVの人気はどこかで失望に変わることになると電動星球Newsは指摘している。

 

 

ライブコマースの女王「薇娅」。その影響力の秘密は、商品を見極める目(下)

コロナ禍で急速に盛り上がるライブコマース。しかし、ライブコマースの世界には「女王」と呼ばれる桁外れの配信主が存在する。1日ライブコマースをやれば、マンションが買えると言われる薇(ウェイヤー)だ。その人気の秘密は、芸能人などとは違い、商品を見る目に対する信頼だと霓虹風筝的人物長廊が報じた。

 

失敗を恐れたら必ず失敗する。西安に移る2人

2008年、北京五輪が近づいてくると、北京の物流が滞り始めた。テロ対策などで検査が厳しくなり、五輪関係の物流が優先されたためだ。また、海外の服飾ブランドが北京に直営店を開くようになり、次第に2人の店の売上も下がっていった。

2人は先のことを考え、西安に移転することにした。6年間商売をした店舗を売却し、西安で一から店を育てることにした。「私はいつも思いついたらすぐ行動します。失敗は恐れません。遅くなることを恐れています。失敗することを恐れていたら、必ず失敗してしまうものです」。

 

西安でも大きな成功をする薇

西安でのやり方は、北京でのやり方そのままだった。薇自身がマネキンとなり、最先端の服飾を着て、来店客に見せる。西安でもすぐに薇は話題になって、店は初日から想定以上の売上をあげた。仕事は順調で、2人は正式に結婚をし、女の子も生まれた。2人にとって最も平穏で幸福な時代だった。

西安に次々と7店舗の支店を開き、不動産にも投資をした。完全な成功者だった。それでも薇はまだ20代だったのだ。

f:id:tamakino:20210201105939j:plain

西安でも北京と同じ手法で成功をする。支店も出し、20代で成功者と呼ばれるようになっていた。

 

スマートフォンの登場が、薇の転身の契機となる

2010年頃、薇は不思議な来店客を見かけた。若い女性で、店内の商品をじっくりと見ている。それだけで服飾に強い興味があることがわかる。しかし、普通であれば、薇に商品について尋ねてきたり、価格交渉をしてくるものだ。その女性はまったくそういうことをせずに、一人で黙々と商品を探している。

が不思議になって観察をしていると、その女性はバッグからスマートフォンを取り出し、何か操作をすることを繰り返している。薇にもそれが何をしているのかがわかった。店の商品と同じものをECサイトで検索をして、どちらが安いかを調べているのだ。

ネットショップ!薇はすぐに閃いた。夫の董海峰にその話をすると、夫は夫でECの進出を考えていた。これからはECの時代で、アリババの淘宝網タオバオ)に店舗を持ちたいと考え、さまざまな準備をしていたという。

 

仕入れ先が集中している広東省に移転

EC店舗を開くのであれば、場所はどこであってもいい。北京である必要はないし、西安である必要もない。服飾の仕入れ先が集中している広東省でEC店舗を運営するのがいちばん効率がいい。

2人は西安の7店舗をすべて売却し、そのお金を持って広州に引っ越した。

 

ネット小売に失敗し、無一文寸前に

の本名は、黄薇だったが、この時、タオバオのアカウントを取得するときに初めて「薇」という名前を使った。自分の名前の一文字を使い、洋風であり、中国風でもあるアカウント名だ。この薇という名前が後に、有名になっていく。

しかし、薇タオバオ店舗はうまくいかなかった。人生初の挫折だった。まったく商品は売れず、570万元(約9300万円)もの赤字を出してしまった。それを埋めるために、マンションを2つ売ったが足りない。最も厳しい時期は、手元に3万元のお金しか無くなってしまった。無一文一歩手前まで追い込まれてしまった。

 

の強みが打ち消されてしまったネット店舗

はECを甘く見ていたのかもしれない。広州に着くなり、30人もの人を雇い、EC店舗運営会社を設立した。毎週30万元も使い広告を打った。しかし、売れる商品はごくわずかでしかなかった。

それもそのはずだった。すでにタオバオには無数の店舗が存在し、薇たちと同じように広東の卸売市場で商品を仕入れ、タオバオで販売する業者がたくさんいた。2人のEC店舗はそのようなライバルたちの中に埋もれてしまっていたのだ。

北京や西安でうまくいった理由は2つあった。ひとつは「広東から最先端の服飾を仕入れて売る」というスタイルの小売店は周辺にはまったく存在しなかったことだ。競争がないので市場を独占することができた。しかし、タオバオでは無数のライバルがいる。

もうひとつは、薇自信がマネキンとなって商品を着て、それが大きな宣伝効果を生んでいたことだ。薇のようにかっこよく着こなしたいという若い女の子たちが、薇の店の商品を買い、着こなし方を薇に尋ねる。EC店舗では、このプロセスがまったくなかった。

f:id:tamakino:20210201110939j:plain

タオバオでライブコマースが始まり、薇の強みが活かせる販売手法が取れるにようになり、再び成功する。

 

ライブコマースで薇の強みが活かされた

そこにタオバオライブというライブコマースが始まった。これであれば、薇が登場して、店の商品を実際に着て、着こなし方をアドバイスすることができる。薇はすぐにタオバオライブに飛びつき、北京や西安で行なっていたのと同じように、ウェブカメラの前で商品を着て、ファッションを語った。「流行の商品を勧めたりはしない。私とお客で流行をつくっていくのだ」という薇は、あっという間にタオバオライブで最も視聴者を集め、売上を上げるライブ配信主になっていった。それ以来、薇はライブコマースの女王として記録を更新し続けている。

f:id:tamakino:20210201105933j:plain

▲薇と支えるチームメンバー。自分たちの強みは、自分たちで欲しくなる商品を紹介すること。それがブレないために、多くの視聴者から信頼をされている。

 

創業時からブレないことが、薇の成功の秘密

は、自分が扱う商品だけでなく、他店が扱う商品も紹介するようになり、商品も服飾品から宝飾品、日用雑貨、食品と広げている。薇のチームには、毎日、無数の商品が持ち込まれ、特別手数料オファーも提示される。年間、2000以上の商品が持ち込まれるという。しかし、そのうち、薇が実際に扱うのは300程度でしかない。「商品を選ぶとき、ライバル商品の種類、商品の性能価格比、ライブ配信での紹介料なども考慮しますが、いちばん大切にしているのは、自分自身が買いたくなるかどうかです」。

は自分の強みは消費者からの信頼であることを知っている。高額のオファーに目が眩み、意にそぐわない商品を紹介した途端に消費者の信頼を失い、薇の販売力が消え失せてしまうことを知っている。実際、消えていった網紅の多くが、高額オファーに惑わされ、消費者の信頼を失ったことによる。

自分はスターではなく、メディアにすぎない。視聴者と一緒に流行を作っていく。そこを外さないことが、薇が今日でも圧倒的な販売力を持っている理由だ。