中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

小米と雷軍とキングソフト。シャオミー創業者の青春

2018年に香港市場に上場を果たした小米(シャオミー)の創業者、雷軍は、小米と同時に、もうひとつの企業を経営していた。そして、その企業「キングソフト」も2019年も上場に成功している。キングソフトは、雷軍にとって青春そのものだったと首席人物観が報じた。

 

中国製品のイメージを変えた小米のスマートフォン

中国のスマートフォンメーカー「小米」(シャオミー)。2011年に、スマホ「Mi one」を発売以来、コアなファンをつかみ、中国のスマホ状況を変えた。当時は「iPhoneと性能は遜色がないのに、価格は半分」と言われ、小米のスマホを見て、品質が悪いという中国製品のイメージを変えた人も多かった。

小米の成功を見て、ファーウェイや歩歩高系のOPPOvivoスマホに参入し、中国のスマホ状況は、アップルとサムスンの外国ブランドから国産ブランドへと中心が移っていった。

 

中国のジョブズが経営したもうひとつの企業

小米の創業者、雷軍(レイ・ジュン)は、スマホの発表会で、黒いセーターにジーンズというアップルのスティーブ・ジョブズ風の出で立ちで登場しただけでなく、プレゼンの方法もジョブズのやり方を真似をしたたため、「中国のジョブズ」と呼ばれた。

小米は2018年7月に香港上場を果たし、現在では総合家電メーカーとして、テレビや炊飯器といったヒット商品を次々と生み出している。

しかし、雷軍が小米を経営しながら、もうひとつの企業の建て直しに奔走していたことはあまり知られていない。もうひとつの企業とは、金山軟件(ジンシャン、キングソフト)だ。

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▲小米を起業して成功した雷軍は、もうひとつの企業「キングソフト」の経営にも携わる。雷軍が青春時代をすごした企業だ。

 

雷軍のアイドルだったジョブズと求伯君

雷軍は、1969年12月に湖北省仙桃市に生まれた。武漢大学で計算機学を学ぶ。在学中に、シリコンバレーの黎明期を描いたノンフィクション「Fire in the Valley」を読み、IT業界に憧れた。この本の中で、スティーブ・ジョブズを知り、強い関心を持ったという。

雷軍が憧れたもう一人の人物が、求伯君(チウ・ボージュン)だ。求伯君は、中国のIT業界の中で、伝説的な人物だ。24歳の時にプリントユーティリティを開発して有名となり、投資家とともにキングソフトを創業後、ワープロソフト「WPS」を開発する。

深圳のあるホテルに一年半こもり、体調を崩して合計3回の入院を繰り返しながら、12万2000行のコードを書き上げたという。

その頃、雷軍は求伯君を目撃している。求伯君はダッフルコートを着て、雷軍の横を颯爽とすり抜けて歩いていった。雷軍の目には大スターに見えた。雷軍は、求伯君と同じ職場で働きたいと思い、キングソフトに入社することにした。

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キングソフトは、求伯君というエンジニアの才能から始まった。一人でワープロソフト「WPS」を書き上げるという天才だった。雷軍は、求伯君に憧れてキングソフトに入社した。

 

Wordに負けた国産ワープロソフト「WPS

1992年、雷軍は23歳で、キングソフトの6番目の社員として入社した。当時のキングソフトは活気があった。中国で初めて広く使われた国産ワープロソフト「WPS」は売れに売れていた。価格2200元(約3万4000円)という高価なWPSが、毎年3万セットも売れ、この小さな企業の売上は6600万元(約10.3億円)にもなっていた。

しかし、1995年、マイクロソフトのWordが中国語に対応して、中国に上陸してきた。キングソフトは、スプレッドシートと辞書とWPSをセットにしたスイーツソフト「盤古」で対抗しようとし、その責任者に雷軍が選ばれた。雷軍にとっては初めての大きな仕事だった。

ところが、この「盤古」は大失敗だった。200万元(約3100万円)以上もの開発費をかけて開発した「盤古」は、2000セット程度しか売れず、計画の販売数の10分の1にも届かなかった。ここからキングソフトの凋落が始まる。

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▲1996年頃のWPS。Wordの上陸と、違法コピーに悩まされた。キングソフトの主力プロダクトだった。作者の欄に「求伯君」と書かれている。まだ、1人の天才が優れたソフトウェアを生む時代だった。

 

挫折をしたキングソフトと若き雷軍

1995年のキングソフトの売上は、前年の3分の1になってしまった。社員数も10分の1以下になった。1996年になっても、状況は改善するどころか悪化した。Wordに押されて、WPSが売れないばかりでなく、WPSの違法コピーが出回って、ますます売れなくなる。

キングソフトでは、給料の遅配も起きた。開発部のエンジニアの3分の2が、辞職をして去っていった。さらに、マイクロソフトが、キングソフトの要である求伯君を、年棒70万元(約1000万円)でヘッドハンティングをしようとして、社員の間に動揺が広がった。普通であれば、キングソフトは、中国IT業界の黎明期の伝説企業として、退場することになるはずだった。

この時、雷軍は27歳。「夢を失った」と言って、雷軍も一度はキングソフトを辞職する決意をした。しかし、求伯君に強く引き止められ、結局、6ヶ月の長期休暇をもらうことになった。

 

不動産業に転身するか、避妊具を売るか、開発を続けるのかの三択

雷軍は、6ヶ月の休暇の間、海外に行って自分をもう一度見つめ直し、これからのことを考えようかと思ったが、結局、考えることはキングソフトのことばかりだった。彼のアイドルである求伯君とキングソフトを愛してしまっていたのだ。

長期休暇が終わってキングソフトに戻ると、会社は今後の方向性をめぐって激しい議論が行われている最中だった。3つの道が模索されていた。

ひとつはこのままWPSの開発を続けて、ソフトウェア開発企業として生き延びていくこと。最も熟知している業界だが、現状は悲惨なことになっている。かなり厳しい道になることは明らかだった。

思い切って、別の事業に転換すべきだという議論もあった。有力な事業が2つあった。いずれも当時の中国では、前途が開けている事業だった。ひとつは不動産業で、もうひとつは避妊具の製造販売だった。

キングソフトは、最も厳しい道であるソフトウェア開発を続ける道を選択した。

 

敵がやらないことをやり、闘う力を蓄える雷軍の戦略

求伯君は自分の別荘を売却して、開発費を捻出し、雷軍をリーダーとして、WPS97の開発を始めた。10人ほどのチームは、毎日12時間働き、休日はなかった。

この開発で、雷軍は、ITエンジニアとしての能力が開花しただけでなく、経営者としての能力も開花した。雷軍は「毛沢東選集」を読み、現状のキングソフトは井崗山だと定義した。

井崗山とは、1927年に毛沢東が開いた紅軍の根拠地だった。山の中にこもり、革命軍はひたすら力を蓄えることに専念した。国民党軍が討伐にやってくるが、地形を活かして、ゲリラ戦で撃退する。毛沢東が井崗山を出た時、1万2500kmを徒歩で走破する長征が始まり、中国建国の革命が始まったとされる聖地のひとつだ。

雷軍は思い切った提案をした。「敵であるマイクロソフトがやらないことで戦うべきだ。そこで戦うことで、本戦を闘う力を蓄えよう」と主張した。

つまりは、WPS以外のソフトウェアを開発し、それでWPSの開発資金を稼ぐということだった。音楽と映像のプレイヤー「金山影覇」、辞書ユーティリティ「金山詞覇」、ロールプレイングゲーム「剣侠情縁」を開発して発売した。これがいずれも成功した。これにより、キングソフトは当面の危機を凌ぐことができた。

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▲Wordに押されてWPSの売り上げが落ちると、雷軍はWPSを無料にし、辞書ツールなどの周辺ソフトウェアで収益を上げる戦略をとった。

 

成功したWPS97

1997年10月、WPS97が発売された。Windows用の国産ワープロソフトとしては第1号の製品となった。2ヶ月で1.3万セットが売れ、それからは多くの中国企業が、業務ツールとして使い始めた。翌年には、国のコンピューター関連の資格試験に出題されるソフトウェアのひとつとなった。

この成功により、レノボが900万ドル(約9.8億円)の投資を申し出てきた。その資金を得て、キングソフトWPS 2000の開発を始め、マイクロソフトのOffice 2000よりも5ヶ月早く、価格は4分の1の国産のスイーツ製品を発売することに成功した。北京市政府が1万1143セットを購入したのを皮切りに、公的機関や企業で使われる定番ソフトに成長していった。

雷軍の「敵がやらないことをやる」戦略で、キングソフトは再び成長の軌道に乗ることができた。

 

上場を目指した途端に業績が悪化。疲弊する雷軍

1999年、キングソフトは上場の準備を始める。そのプロジェクトの責任者に雷軍が選ばれた。雷軍はこの時30歳だった。

しかし、上場準備を始めた途端に、キングソフトの状況は再び悪化をする。違法コピーが大量に出回ってしまい、収益が悪化していったのだ。一方で、マイクロソフトは地道にシェアを広げていく。中国が発展をし、海外企業との取引が多くなると、多くの企業が業務ツールをWPSからマイクロソフトOfficeに切り替えていく。

ここで、雷軍は再び思い切ったことをやる。2005年にWPSWindows版を無料にしたのだ。もはやWPSに収益を期待することはできない。であるなら、WPSを無料にして使ってもらい、その周辺ソフトウェアで収益を上げようと考えた。再び「敵がやらないことをやる」戦術をとった。

しかし、それは簡単ではなかった。8年間、雷軍は奔走し、2007年にようやくキングソフトを香港証券市場に上場させることに成功したが、この時、キングソフトの収益源の70%近くはゲームになっていた。

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▲2007年に香港に上場した時のキングソフトワープロソフトが主力だったキングソフトは、この時、ゲームソフトが主力になっていた。この上場プロジェクトの責任者が雷軍(左端)だった。

 

塩害の畑で作物を育てることはできない

雷軍は、キングソフトに入社して16年、38歳になっていた。上場プロジェクトにより疲弊しきっていた。

雷軍は、テンセントや百度が現れて、起業からわずか6年で上場に成功しているのを見て、「なんで、あんなに簡単に上場できるのだ?」と疑問に思っていたという。雷軍も疲弊していたが、キングソフトも疲弊していた。上場はしたものの、再びつらい戦いを続けて、生き延びていくしかない。

上場プロジェクトには8年もかかってしまったが、なんとか成功をさせ、責任は果たした。雷軍は、今度こそキングソフトを辞職することを決意した。それを16年間、雷軍の直属上司だった張旋龍に話すと、16年間一度も声を荒げたことのない張旋龍が怒鳴って、雷軍をなじったという。

しかし、雷軍の決意は固かった。雷軍にとっては、これ以上キングソフトで働くことは、塩害に襲われた畑で、作物を育てるような虚しさを感じていたのだ。大学時代に読んだシリコンバレーの黎明期企業のように、自分の夢を思い切り実現してみたかった。

雷軍もこの時38歳になっていた。夢を実現するにはラストチャンスだった。

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▲創業時の小米。質の高いスマートフォンを発表し、「中国製品は品質が悪い」というイメージを変えた。小米の成功を見て、ファーウェイやOPPOvivoなどのメーカーがスマホ市場に参入をした。

 

小米を起業した雷軍を訪ねてきた昔の仲間たち

2010年4月、キングソフトを辞職して2年半後、雷軍は、北京の中関村の銀谷ビル807号室で、10数人の仲間と小米を起業した。雷軍は41歳になっていた。そして、Mi oneでヒットを飛ばした。

その時、キングソフトの以前の部下たちが訪ねてきて、助けてほしいと訴えた。キングソフトでは、求伯君がCEOを務めていた。求伯君はエンジニアリングの天才だったが、経営者としての才能はなかった。キングソフトは案の定、八方塞がりになっていたのだ。

雷軍は考えた末、Mi one発売のわずか1ヶ月後、キングソフトに復帰をし、求伯君の代わりに経営をしていくことを決断した。昔の部下や上司に請われて、雷軍は断ることができなかったという。雷軍は小米の成功の陰で、キングソフトの建て直しをしていたのだ。

雷軍は、再びWPSを主力製品にし、プロダクトラインを整理することにした。社内ではKPI制度を導入し、働き方を改革していった。さらに10億ドルを調達し、キングソフトクラウドを設立し、新しい時代にあったビジネスに変えていった。WPSもソフトウェアではなく、クラウドサービスに変え、モバイル版の開発も始めた。

クラウドWPSとモバイルWPSを主力製品とする新生キングソフトを分離し、独立させ、2019年、新生キングソフトは再び上場することに成功した。そこには、求伯君、雷軍が顔を揃えていた。

現在、WPSの月間アクティブユーザーは3.1億人を超えている。

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▲2019年に、新生キングソフトは再び上場することに成功する。雷軍は、人生で3つの会社を上場させたことになる。中央が雷軍。その左隣が求伯君。

 

私の青春はすべてキングソフトにあった

小米とキングソフトを立て続けに上場させた雷軍は、2018年の暮れにウェイボーにひとつのメッセージをあげた。キングソフトの30周年を祝うものだった。

キングソフト30周年。昔の仲間が集まり、深い記憶の中に浸ると、ひとつひとつの出来事が目の前に浮かんでくる。私の青春はすべてキングソフトにあった」。

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▲2018年、キングソフト30周年の時の雷軍のメッセージ。「私の青春はすべてキングソフトにあった」。

 

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住宅も3Dプリンターで「印刷」。仮設事務所建設などに利用

中国建築第二公定局が、世界で初めて、3Dプリンターを使って、二階建ての建物を「印刷」して建築することに成功した。構造が単純な事務所などであれば、わずか30時間で建築ができると辛東方が報じた。

 

世界初の3Dプリンターによる二階建て住宅の「印刷」

3Dプリンターで建築された建物は、広さ230平米、2階建ての高さ7.2m。建設したのは、中国建築第二公定局。現在は民間企業だが、前身は人民解放軍華東野戦軍歩兵部隊だ。その広東建設基地に、世界で初めてとなる、3Dプリンターによる二階建ての建物が建設された。

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▲建築された建物。枠組みがプリンターにあたる。わずか30時間で建築が終わる。人手がほとんどかからないので、建築作業の安全性に大きく寄与する。

 

すべての建築工程が自動化。施工30時間+養生3日+内装工事で完成

3Dプリンターで建築するメリットは、コスト圧縮だという。建築材料は60%程度で済み、建築機器に必要なエネルギーも小さくなる。さらに、すべての工程が自動化されているため、必要な作業員が半分になる。建築に必要な時間も、施工30時間+養生3日+内装工事と短くなる。

最も重要なのは、作業員の負担が大きく減り、建築現場の安全性が格段に上がることだという。

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▲鉄筋を入れ、二重の壁を3Dプリンターで印刷をしていく。インクにあたるのは、特殊な薬剤を添加したコンクリートだ。

鉄筋をコンクリ特殊インクで挟んでいく工法

中国建築技術センター材料工程研究所の霍亮所長補佐が、3Dプリンターによる建築の仕組みを解説してくれた。「基本的な原理は、紙にインクで印刷するプリンターと変わりません。必要なのはプリンター、ノズル、インク、紙です」。

まず、建設する建築物を取り囲むように金属の枠組みを作る。これがプリンターにあたり、可動式のノズルをつける。

インクにあたるのは、コンクリートだが、特殊な薬剤が配合されている。

重要なのは、紙に当たるもので、これは地面に鉄筋を立てる。この鉄筋を内と外から挟むように、コンクリートを、幅5cm、暑さ2.5cmで吹き付け、積み重ねていくことで建築をしていく。

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▲印刷中の3Dプリンター。厚さ2.5cmのコンクリートを何層にも積み重ねていくことで建築をする。


3Dプリンター建築ならではの工夫が必要

しかし、リアルな建築物は、ミニチュア模型を作るように単純ではない。実際に人が中に入ることができるリアルサイズの建築物となると、さまざまな課題に直面する。

ひとつは、コンクリートそのままだと、乾かないうちに上の層が載せられることになり、下層の強度が足りなくなってしまう。そのため、速乾性を生む薬剤を添加している。

2つ目は作業工程がまったく違ってくるということだ。3Dプリンターで建築できる建物は、構造が単純な事務所が向いている。従来このような建築物は、工場内でパーツを生産し、現場では組み立て作業が主体になる。しかし、3Dプリンター建築では、現場で3Dプリンター関連作業(コンクリートの補充、水分量の調整など)が主体になる。作業員の養成、人員配置、確認作業などもまったく違ってくる。作業フローが大きく変わる。

3つ目は、形として建築物が作ればいいというものではなく、中に住む人のことを考える必要がある。そのため、壁は内外の二重壁になっている。隙間を開けることで、断熱材を後から入れたり、水道や電気、通信などの配管、配線ができるように工夫をしている。

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▲ノズルからコンクリートを絞り出すことで壁を作っていく。

 

3Dプリンター建築は、従来工法を補うもの

霍亮所長補佐は、3Dプリンター建築は、従来の工法を置き換えるものではなく、互いに補うものだということを強調した。3Dプリンター建築は、複雑な構造の建築物を作るのには向いていないため、個人住宅やデザイン性の高い建築物は、この先も従来工法で建築されていく。

しかし、複雑さを要求しない事務所、寮、店舗といったものは、低コストで済む3Dプリンター建築が使われていくことになる。3Dプリンターは、さまざまある建築工法のひとつなのだということを重ねて強調した。

 

圧倒的な中国AI産業の特許件数。有力企業による集約化が今後の鍵

知的財産プラットフォーム「滙桔網」と調査会社「胡潤百富」は、共同で「2019中国人工知能産業知的財産権発展白書」を公開した。AI関連の特許件数を国際比較してみると、この数年で中国企業がAI分野で急速に発展していることが明らかになった。

 

中国AI企業のトップ3は「ファーウェイ」「テンセント」「百度

「2019中国人工知能産業知的財産権発展白書」は、特許件数などの知的財産権からAI関連産業の発展ぶりを俯瞰したもの。知的財産のみで産業の発展ぶりを測ることはできないものの、有力な目安にはなる。

この白書の中で、各企業のAI関連事業の競争力(企業基本情報、企業リスク度)、イノベーション度(IP保有数、IP価値、近々3年の取得数の伸び)、技術成熟度(特許取得年数)の3つを点数化し、中国のAI企業トップ100ランキングを掲載している。

これによると、第1位はファーウェイ、以下、テンセント、百度、小米、アリババと、中国テック企業の大手の名前が並ぶ。

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▲中国テック企業のAI分野での競争力トップ100のうちの上位10社。保有している特許件数や保有年数を数値化してランキングにしたもの。ファーウェイが1位となった。

 

以前はAI先進国だった日本

この白書では、「計算機視覚」「自然言語処理」「機械学習」というAI3分野の特許件数について、国際比較を行っている。ここから、ここ数年での、異常とも言える中国AI産業の進展ぶりが見て取れる。

「計算機視覚」「自然言語処理」の2分野では、特許件数の国際ランキングを見ると、富士通キヤノンソニーパナソニックなどの日本企業が上位を独占している。この点で、日本はAI先進国だということができる。

しかし、時系列での推移を見てみると、日本の特許取得件数が最も多かったのは、計算機視覚では2006年、自然言語処理では1998年となっており、それ以降減少傾向が続いている。

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▲計算機視覚(画像処理など)の特許件数トップ企業。この分野では日本は圧倒している。

 

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▲ところが、日本(緑色)は2006年以降、特許取得件数が低下をし始め、それと入れ替わるように中国が異常な伸びを示している。

 

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自然言語処理の特許件数トップ企業。この分野でも日本は世界を圧倒している。

 

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▲しかし、1998年をピークに日本は特許取得件数が低下をしている。やはり2006年以降、中国が異常な伸びを見せている。

 

ヒントン以前の日本、ヒントン以後の中国

現在のAI産業の起点となっているのは、2006年にトロント大学のジェフリー・ヒントンのチームがディープラーニングで目覚ましい成果をあげたことだ。このブレイクスルーにより、AI研究の世界は「ヒントン以前」と「ヒントン以後」に明確に分割できると言っても間違いではない。

日本の企業は、ヒントン以前の時代には世界のAI研究をリードしていたが、ヒントン以後は精彩を欠いている。中国は、ヒントン以前は、AI研究はされていないに等しい状態だったが、ヒントン以後にAI研究が進み、特にこの数年は異常とも言える進展ぶりを見せている。

 

機械学習の分野では米国と中国が独占

ヒントン以後に急速に注目された「機械学習」の分野では、この傾向がさらにはっきりとする。特許件数の国際ランキングでは、IBMを筆頭に、米国の企業と中国の大学で占められている。

近年の機械学習系の論文の多くが、米国大学と中国大学の共同研究だったり、米国大学の論文であっても、筆者に中国人名が含まれていることが多い。このような米国の大学でAIの研究をした中国人留学生が、帰国をし、中国企業に入ったり、中国の大学に籍を置いたりして、AIの種を播くという流れができあがりつつある。

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▲2006年のディープラーニング以降、注目されるようになった機械学習の分野では、米国と中国の独占状態になっている。

 

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機械学習の分野でも、中国が異常な伸びを見せている。

 

中国のAI特許は分散をしている

3つの分野で、近年の中国AI産業が取得する特許件数の数は異常とも言えるほど多い。しかし、これだけ膨大な数の特許を取得しているのに、「計算機視覚」と「自然言語処理」の2分野では、トップ10ランキングに入っている中国企業がひとつもない。

これは、特許を取得する企業の数も多く、特許が分散しているということだ。2018年に特許を出願した中国企業は、計算機視覚で3528社、自然言語処理で2343社、機械学習で4172社もある。1社あたりを単純計算すると、1件から3件程度になってしまう。

AI企業トップ100ランキングに入っている企業の創業年を可視化してみると、その多くが2006年のヒントン以後の創業であることがわかる。つまり、比較的新しいスタートアップ企業、ベンチャー企業が積極的に特許取得に動いていることが想像できる。

機械学習の分野で、国際ランキング上位を占めるIBMマイクロソフト、グーグルの3社は、自社で研究開発を行い、それを製品に結び付けている。中国のAI産業は知的財産が小さなベンチャー企業に分散をしてしまい、ワンポイントでAI技術を使ったプロダクトやサービスには強いものの、米国企業のように、それを統合して大きなサービスに育てることがまだできていない。

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▲AIトップ100企業の創業年の統計。ヒントン以後の2006年以降、AI企業が急速に誕生していることがわかる。

 

中国の課題は、特許技術の集約化、統合

一方で、IP競争力トップ10の中国企業は、いずれも「ヒントン以前」の創業だ。ヒントン以前の企業がなぜAI分野で、強い競争力を持てるのか。AIスタートアップやAIベンチャーに、積極的に投資をすることで、AI関連の知財の集約を進めているからだ。

特許件数だけ見ると、中国は米国を圧倒している。しかし、その特許が分散をしているために、米国ほどAI分野で目立ったサービスやプロダクトに結びつけることはまだできていない。

しかし、トップ企業の投資による知財の集約化を進めることで、中国のAI産業は米国に追いつき、追い越そうとしている。

 

海外の都市から発送された海外ブランド品。製品も偽物なら、宅配便情報も偽物

11月11日独身の日セールに、海外から発送されてきた海外ブランド品であるのに、実は国内生産、国内発送の偽ブランド品だったという事例が相次いでいた。国内生産した偽ブランド品を、宅配便のシステムを騙して、あたかも海外都市から発送したかのように偽装をするため、消費者はまったく疑うことがないと閩南生活網が報じた。

 

代理購入の厳格化後、初の独身の日セール

11月11日の独身の日セールは、アリババが始めたものだが、アリババ以外のECサイトも便乗をして、ほぼすべてのECで大セールが行われる日になっている。

ECサイトばかりでなく、個人で海外から商品を個人輸入して転売をする代理購入業者もセールを行う。海外製品の代理購入業者は、中国国内で海外の製品を個人購入するという建前で輸入をし転売するケースと、海外に在住して、現地で商品を買い付け、中国国内に持ち込む、発送するケースがあった。

しかし、偽ブランド商品が販売されるケースも多く、中国政府は2019年1月から中国電子商務法を施行し、代理購入をする場合であっても営業許可書の取得を求め、税関の審査を厳格にすることにした。

代理購入は、あくまでも「自分のために購入する」という建て付けで、商品を輸入、持ち込みをするため、税関の審査が甘く、関税を徴収されないケースが多かった。それゆえに利益が出て、個人としては儲かるビジネスだった。新法の施行で、営業許可証と関税が必要となり、怪しげな業者が淘汰され、消費者を保護することを狙っていた。

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▲中央電視台の報道番組「新聞1+1」。偽物スニーカーが国内で生産されていること、宅配便のシステムを騙して、発送地を偽装することなどが特集されている。以前から問題になっていたこの「国内産海外製品」は、2019年の独身の日セールにも大量に出回ったと推定されている。

 

海外輸入製品を買ったら、国産の偽物だった!

独身の日セールには、代理購入業者から海外製品を買った人も多かった。中央電視台の報道番組「新聞1+1」で、30分もの長さで「物流データも捏造、海外製品を買ったら、国産の偽物だった」という特集が放映され、消費者の間で話題になっている。

つまり、海外製品を輸入して販売をしても、関税がしっかりと徴収されるため利益が出づらい。そこで、国内生産をした偽海外ブランド品を「海外から輸入した製品」と偽って販売をするケースが増えてしまったのだ。

この番組では、代理購入業者が販売したナイキやアディダスニューバランスのスニーカーの多くが偽物だったということが報道されている。

 

セール中なら価格が安すぎても怪しまれない

一般に、偽物スニーカーは、正規品に比べて、価格が3割ほど安い。通常であれば、価格が安すぎるために「なにか怪しい」と気がつくのだが、独身の日セール前後では、あらゆる商品が割引をしているため、安くても不思議に思わない。

しかも、送られてくる宅配便の送り状を見ると、発送地が香港や海外の都市になっているため、不審に思わない。まさか、国内で製造した偽物をわざわざいったん香港や海外に運んで、そこから発送しているとは誰も思わないからだ。

さらに、商品の質が悪くない。素人では正規品と見分けがつかない出来栄えだ。消費者の中には、本物か偽物かは気にせず、質の高い商品が安く手に入ったのだから構わないと考える人もいる。

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▲宅配便の情報を見ると、旧金山(サンフランシスコ)から発送をされ、税関も通過したということになっている。しかし、実際は国内から発送されていた。

 

偽物スニーカーの生産拠点、莆田市

このような偽物スニーカーの多くは、福建省莆田市で生産されている。報道によると、中国国内に流通する偽物スニーカーの内、9割はこの莆田市で生産されたものだという。

莆田市は、そもそもは、国際ブランドのスニーカーの正規の生産拠点だった。事実上のOEM生産をしている業者も多く、技術力は高い。しかし、正規品を作る横で、同じラインの製品を非正規品として横流しする事象が多発し、国際ブランドは、生産拠点を再構築し、1つの拠点で完成品まで製造するのではなく、生産拠点を分散し、最後は自社直営工場で完成させるという方向に進んでいる。

そのため、莆田市では仕事が減り、中国国内に向けて、偽物スニーカーを生産することになっている。

元々、正規品を作っていた人たちが作っているので、正規品と変わらない出来栄えだということも、偽スニーカーがなくならない理由のひとつだ。

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福建省莆田市は、元々国際ブランドのスニーカーを正規に生産する拠点だった。そのため技術力は高い。そのような正規品を製造していた業者が、偽物を製造するために、偽ブランド品がなかなか根絶できない。偽物だとわかっていても、購入する消費者がたくさんいるためだ。

 

個人で偽物スニーカーを扱っても、月の売上は150万円以上

ある代理購入業者は、2014年2月から莆田の偽スニーカーの販売を始め、5年になる。10以上もの製造企業から商品を仕入れ、3000名以上の顧客を抱えている。高級スニーカーが毎月100足程度が売れ、月の売り上げは10万元(約155万円)以上だという。

莆田市での一般的なスニーカー仕入れ価格は10数元で、100元程度で販売すればじゅうぶんに利益が出る。定価300元、400元程度の正規品にあたるスニーカーが売れ筋で、これを200元から250元程度で販売すると、セール価格だと勘違いされ、よく売れ、なおかつ利幅も大きくなる。

 

宅配便システムを騙す「異地上線」サービス

では、宅配便の送り状はどうするのだろうか。確かに香港や海外都市が発送地になっているため、消費者は輸入品だと信じてしまう。莆田には「異地上線」「国際上線」サービスを行う業者がたくさんいる。

このような業者は、宅配便の送り状を作成し、宅配企業のオンラインシステムに登録する時に、発送地の記号を香港や海外都市にして、宅配物流に乗せてしまう。システム上は、香港や海外都市から発送されたように見えることになる。

このような異地上線業者によると、海外都市用の宅配便受付機器を手に入れて、システムを騙すのだという。その入手には、宅配便企業内部の人間が関与していると証言しているが、各宅配便企業はいずれも強く否定している。

そのため、公式サイトで、宅配便の荷物番号で経由地を検索すると、実際は、莆田から発送しているにも関わらず、海外から発送をし、税関まで正しく通過したという情報が表示される。一般の消費者には、これが偽情報だと気づくことはできない。

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▲偽物生産地には、「異地上線」をうたうサービスがあちこちにある。宅配便のシステムを騙して、あたかも海外の都市などから発送したかのように偽装をして、宅配便を送れるサービスだ。

 

代理購入のいたちごっこは今後も続く

2019年1月の中国電子商務法の施行は、偽ブランド品、粗悪品の排除が目的だった。スニーカーならまだしも、粉ミルクや化粧品、食品といったものの場合、健康や生命に関わる問題を引き起こす可能性がある。

同時に、税関は審査を厳格化し、個人輸入でもしっかりと関税をかけるようになった。このため、個人でやっている代理購入業者は、利益が激減してしまい、廃業をするものも多かった。

しかし、今度は、関税とは無縁の「国内生産の海外製品」が出回るようになった。当局、宅配便企業や消費者保護関連機関は対策を急いでいる。

 

 

顔認証レジの利用率は2割程度。顔認証普及を阻む2つの壁

コンビニやスーパーの多く、さらには学校やオフィスビルなどに、顔認証が続々と導入されている。しかし、店舗でも利用率は半数程度であるといい、アリペイの広報によると利用率は2割程度にとどまっているという。利用率を上げるには、優待などの認証とは別のメリットを付加する必要があると中国経営報が報じた。

 

顔認証レジを導入している店舗は増えてきたものの…

顔認証レジを導入しているコンビニも増えてきたが、すべてのコンビニが顔認証レジに積極的とはいかないようだ。

中国経営報の記者が、北京市の地下鉄、草房駅付近の店舗を調べてみると、中国系のコンビニ「全時」、パンのチェーン「味多美」に、アリペイの顔認証ユニット「蜻蜓」が導入されていた。しかし、コンビニ「便利蜂」は独自のセルフレジを使い、セブンイレブンは有人レジによるQRコード決済と現金のみの対応だった。

ショッピングモール「朝陽大悦城」では、店舗によって、顔認証レジを導入しているところがある。

この他、スーパーでは「ロータス」「カルフール」「ウォルマート」などが、顔認証レジを導入していた。

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▲コンビニ「便利蜂」が導入しているセルフレジ。顔認証には対応していない。有人レジも用意されている。

 

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▲チェーンのパン屋「味多美」では、アリペイの顔認証レジを導入しているが、利用率はまだ半分以下だという。

 

スマホ決済でも大きな不便は感じない

朝陽大悦城の中にあるアイスクリームチェーン「デイリークイーン」の店員によると、顔認証決済は、来店客が希望した時のみ使い、特に利用を促すようなことはしていないという。ただし、WeChatペイのキャンペーンで、「初めて顔認証を決済をすると、10元以上の利用で、5元割引」というのが行われることがあり、その時期には顔認証を希望する来店客が増えるという。

バーガーキングでも同じような状況だという。バーガーキングのエリア担当者によると、バーガーキングでは、以前から大型ディスプレイのセルフ注文機を導入していた。注文するのに、レジに並ぶのではなく、入り口付近にあるディスプレイで注文をし、QRコードをかざしてそのままスマホ決済ができる。商品が用意できたら、レジで受け取る。

このセルフ注文機が顔認証に対応しているが、顔認証を使っている人はほぼ半数ぐらいだという。QRコード決済でも特に不便は感じないので、なかなか顔認証を使う人が増えていかないという。

エリア担当者は言う。「顔認証は安全ではないと考える人もいますし、事前に顔を登録しなければならないのが面倒に感じている人もいるのではないでしょうか」。デイリークイーンの店員は、QRコードと現金の決済でも、ピーク時にも特に問題は感じていないと言う。

バーガーキングのある来店客は、「顔認証は、顔情報を取得されるというところに問題を感じています。顔情報がどこに蓄積されて、どのように利用されているのかがよく分からないからです。もし流出したら、取り返しのつかないことになりますから」。

利用客は、顔認証は利便性が大きく変わるとは感じられない上に、生体情報の扱いがよくわからず、なんとなく不安を感じているようだ。

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バーガーキングでは、セルフ注文機がスマホ決済と顔認証決済に対応しているが、顔認証を使うのは半数程度。利用客にとって、スマホ決済と比べて特段大きなメリットが感じられないからだ。

 

顔認証普及を阻むのは、導入コストと新しい習慣の定着

アリペイ広報の葉文添によると、現在、顔認証決済は2つの壁に直面しているという。

ひとつは顔認証決済を導入するコストは、QRコード決済の導入コストよりも高くなるということだ。もうひとつは、新しい習慣が定着するのには時間がかかるということだ。アリペイのQRコード決済が普及するのには4年から5年の時間が必要だった。しかし、顔認証決済は始まってからまだ1年しか経っていないのだ。

葉文添によると、現在は、大雑把に言って、2割が顔認証決済を利用し、8割が現金とQRコード決済を使っている状況だという。

また、現在は安全性を求める利用者の声に応えて、登録をした顔情報は12ヶ月後に完全に削除をするようにしているという。

 

学校にも導入される顔認証ゲート

北京では、北京大学北京市第二十中学でも、校門に顔認証ゲートを導入している。しかし、北京大学の東南門の守衛に取材をすると、顔認証ゲートを使うのは半分程度で、残りの半分は、QRコードを使ってゲートを通過しているという。

第二十中学では、面白い現象が起きている。登校するときは、ほとんどの学生が、顔認証ゲートを使わず、直接学校の中に入っていくが、下校するときはほとんどの学生が顔認証ゲートを利用する。下校時に顔認証ゲートを通過すると、その時刻などが保護者に通知される仕組みがあるからだ。

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▲顔認証ゲートを導入している学校、企業も増えている。不審者の侵入を阻み、安全を確保できるという大きなメリットがあるからだ。

 

屋外では太陽の向きによっては誤認識率があがる

中国経営報の記者が、北京大学の東南門で観察をしていると、1分間の間に9人の学生が顔認証ゲートを使って、大学の中に入って行った。そのうちの1人の女子学生は、顔認証に2回失敗をし、ゲートを変えてようやく入ることができた。入るのに10数秒かかっている。

ある男子学生は自転車に乗ったまま顔認証をしようとして失敗し、髪の毛を書き上げて試しても失敗し、眼鏡を外して、ようやく顔認証ゲートを通過することができた。

そのあとも、顔認証に失敗をし、結局、守衛に学生証を見せて入って行った学生も数人いた。

北京大学の顔認証の設備責任者によると、東南門の顔認証ゲートは問題を抱えているという。朝の早い時間は逆光になるため、顔の認識率が低下してしまうのだという。この問題については、顔認証ゲートを開発した漢柏科技のエンジニアが現場を確認して、プラスティックのボードなどを設置して、逆光を遮る工夫をすることになっているという。

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▲大学などでは、顔認証ゲートを屋外に設置するため、太陽光の方向により誤認識が起きている。このため、学生が避ける傾向にある利用率はなかなかあがっていない。スマホを使ったり、警備員に学生証を見せて通過してしまう学生もいる。

 

学内の安全には顔認証は有効。しかし、学生はメリットを感じていない

学校が顔認証ゲートを導入するメリットは大きい。以前は、守衛が、記憶に頼って「学生ではないと思われる人」に声をかけるという方法で、学内の安全を確保していた。それでは学内の安全が保てないということから、守衛が学生証を確認するようになったが、守衛の業務負担は大きく、朝方は校門が渋滞をしていた。

ICカードの学生証、学生用のスマホアプリによるQRコードなどを使って、自動化をしても、結局は、ICカードの盗難、貸し借り、QRコードの偽造などにより、不審者の侵入リスクは残ってしまう。

この点で、顔認証は最も安全性が高い。しかし、利用する学生にとっては、学内の安全というのは普段は意識をしていないため、特段のメリットが感じられない。そのため、顔認証の使用率がなかなか上がらないということになっている。

 

利用率を上げるには、別のメリットを付加することが必要

第二十中学で、下校時には多くの学生が顔認証を利用するのは面白い現象だ。顔認証ゲートを通過することで、保護者に通知が飛ぶため、学校も保護者も顔認証ゲートを使うように促すからだ。

また、ファストフードなどでも、顔認証決済を使うと優待がある時期には、顔認証決済の利用率が上がる。

顔認証の利用率を上げていくためには、安全性や効率といったシステムとしてのメリットの他に、利用者に直接返ってくるメリットを付加してやることが必要なようだ。

 

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