中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

成功の鍵はコスト圧縮。失敗の原因もコスト圧縮。シェアリング自転車ofo

シェアリング自転車という新しいビジネスを生んだofoが経営危機にあえいでいる。ofoは徹底したコスト圧縮戦略で、奇跡とも呼べる急成長をした。しかし、成長した今、コスト圧縮が大きな足かせとなって経営が危うくなっていると沐足匯が報じた。

 

「経営悪化→デポジット返金→経営悪化」の悪いサイクル

2016年に登場し、2017年に一気に普及したシェアリング自転車ofoが追い詰められている。経営不振が報道され、デポジットの返還請求が相次ぎ、経営状態がさらに悪化をし、一部の報道では倒産の可能性まで触れられている。

シェアリング自転車ofoを利用するには、最初に199元(約3200円)のデポジットを支払う必要がある。自転車を壊す、持ち去るなどのルール違反をするとこのデポジットは没収されるが、きちんと使えば、退会をするときに全額を返金してもらえる。

ofoについての悪い報道が流れると「倒産する前にデポジットを返してもらわなければ」と退会申請をする人が増え、それがさらに経営状態を悪化させるという悪い循環に入ってしまっている。

ofoが預かっているデポジット総額は36.05億元(約580億円)。現在、求められているデポジットの返金は10.5億元から21億元(約340億円)程度だと言われている。さらに、ofoは負債が64.9億元(約1000億円)もある。デポジット返金は資金繰りを悪化させるだけでなく、退会なのだから利用者数も激減する。ofoの経営はますます厳しさを増している。

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▲ofoのデポジット返金を求める利用者の行列。ofoの経営悪化が伝えられると、多くの利用者がデポジット返金を求める取り付け騒ぎのような状況が起きている。

 

北京大学でコスト0円で自転車を集めたofo

ofoは最初にシェアリング自転車ビジネスを発想したイノベーターで、創業者は北京大学の学生だった戴威(ダイ・ウェイ)。大学の中では、学生は自転車で教室間を移動することが多いが、学生ならではのノリで、人の自転車でも勝手に乗っていってしまう。自転車を買っても、すぐになくなってしまうという問題が起きていた。

戴威たちは、この問題を解決するために、シェアリング自転車のビジネスを思いついた。スマートフォンを使って、QRコードで鍵を開け、どの自転車でも乗れるようにするというものだ。

戴威たちは、大学内に置かれている自転車の所有者を丹念に調べていって、その所有者に自転車を寄付することを求めた。「そのまま置いておいても、いつか誰かが乗っていってなくなってしまう。私たちに寄付してくれれば、永久に無料でシェアリング自転車のサービスが利用できる特別会員にします」と交渉し、コスト0円で自転車を集めてしまった。

このサービスが北京大学の学生の間で話題となり、ofoは本格的に大学の外でもサービスを展開することになった。

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北京大学在学中に起業したofoの創業者、戴威(ダイ・ウェイ)。「自転車は世界を理解するのに最も適したツール」という信念から自転車を広めようとしている。大資本からの資金提供の申し出はたくさんあるが、「投資を受けることは経営権を渡すことになり、やりたいことができなくなる」と頑なに拒んでいる。ビジネスは危うくなっているが、強い信念を持った経営者として若い世代から人気がある。

 

1600円で自転車を作れるようにした製造革命

このときに戴威が重要視したのがスピード感だった。あっという間に、中国の都市のいたるところにofoの黄色い自転車を出現させなければならない。そのために、苦心をしたのが、低コストで大量に自転車を製造することだった。最終的に1台の製造コストは100元以下(約1600円)になった。そのため、199元のデポジットをもらうので、万が一、利用者が自転車を持って帰って返却してくれなかったとしても、199元のデポジットを没収すれば、自転車を100元で仕入れて199元で売ることになる。ビジネスは必ずうまくいくはずだった。

この低コストの自転車を大量に生産して、都市に次々と投入していく。人々は突然現れた黄色い自転車に驚き、仕組みを理解すると便利さに喜んだ。すぐにMobikeなどのライバルが参入してきたが、低コストであることを最大限に活用して、敵が100万台投入するのであれば、こちらは200万台投入するという物量作戦で勝ち抜いてきた。ofoの成功の鍵は、コスト圧縮だった。

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サービス地域が広がるとともに非効率になる管理

成長期に低コストは大きな武器になった。しかし、成熟期には低コストであることが足かせになってしまった。

低コストの自転車であるということは、故障率も高いということだ。北京大学の中、あるいは主要都市でサービスを展開している間は大きな問題ではなかった。巡回をして、問題のある自転車を回収し、修理センターで修理をすればいい。

しかし、地方都市にまで展開を始めると、巡回コスト、修理センターの設置コスト、運搬コストなどが、サービス地域が分散をしたため、一気に非効率になっていった。現在、ofoはこのような管理運営をするコストが毎月3億元(約48億円)必要という高コスト体質になってしまっている。これが経営を圧迫している。

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▲製造コストを圧縮し、低コストで大量に自転車が作れるようにし、大量に投入していくという手法であっという間にシェアリング自転車を普及させた。その一方で、大量の廃棄自転車が生まれ、社会問題にもなっている。

 

管理問題がユーザー体験に悪影響を与え始める

ofoはこの管理コストもなんとか圧縮しようと努力をしてしまった。当然の帰結として、管理レベルの低下を招いた。利用者がofoの自転車を利用しようとしても、鍵を開けたら故障している自転車であることがわかったとか、乗っている途中に故障するというトラブルの比率が上がっていく。利用者は、目の前にofoと他社の自転車が並んでいるときは、自然とofo以外を利用するようになる。

利用率の低下が如実になった2017年10月、ofoは利用率の低下に歯止めをかけようと、「59元(約950円)で1年乗り放題。デポジット不要」というサービスを始めた。デポジットを支払う必要はなく、最初に59元を支払えば、1年間無料でいくらでも乗れるというものだった。デポジットを支払うということがハードルになってしまっている新規利用者を取り込もうというものだった。

ところが、結果は、すでにデポジットを支払っている会員が退会をしてデポジットを返金してもらい、それで乗り放題プランに再加入するということが大量に発生をした。

 

土俵際のofoは生き残れるか?

ofoの成功の秘密はコスト圧縮であり、失敗の理由もコスト圧縮だ。かといって、コストをかけた高品質の自転車を最初から採用していたら、この急成長もなく、シェアリング自転車というサービスが生活の中に定着することもなかった。

理屈を言えば、どこかの時点で、管理コストのかからない故障しない自転車に転換をしていく必要があったのだろう。しかし、わずか2年ほどで全国をカバーするという急成長のジェットコースターに乗りながら、その判断をするタイミングを見つけるのは簡単なことではない。

ofoは追い詰められているが、まだ死んではいない。戴威の経営者としての資質が試されている。戴威は、若く、新しい発想と強い信念を持っている経営者として、若者からの人気は高い。そのため、ofoがこのまま死んでほしくない、戴威に逆転の一手を見せて欲しいという期待からもofoの行く末が注目されている。

 

800以上のスタートアップが生まれている「アリババ・マフィア」

中国のIT企業アリババは、社員がスピンアウトをして起業することが多い。有名なところではライドシェアの「滴滴出行」の創業者、程維(チャン・ウェイ)が元アリババの社員だ。このようなアリババ出身者のスタートアップはすでに800社を超え、アリババの事業に協力をするアリババマフィアともいえる集団になっていると上観新聞が報じた。

 

トップ500企業のうち200社をアリババ系にしたい

「中国で優秀な企業トップ500のうち、200程度の企業のCEOがアリババ出身者になることを希望しています」と、退任が決まっているアリババ会長ジャック・マーが102班の席上で語った。

102班とは、アリババが組織しているOB会で、世界各地のアリババ出身者が集まり、ジャック・マー会長の教えを受け、親睦を深める集まり。現在、約1000名が参加している。

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▲アリババ出身者企業の企業価値ランキング。圧倒的に大きいのがライドシェア滴滴出行。約4500億円の企業価値がある。

 

800社を超えるアリババマフィア

アリババは、製造企業をマッチングさせるBtoBの「アリババドットコム」、CtoCの個人ECサイトタオバオ」、BtoCのECサイト「Tmall」が主要事業で、さらにスマホ決済「アリペイ」を運営している。

しかし、アリババの強さは、これら主要事業だけでなく、アリババ出身者がスピンアウトをして起業し、そのような企業がアリババと協働して新しい市場を開拓していくということにある。

アリババが創業して19年間、アリババを退職したOBは10万人に達する。ネガティブな退職ばかりではなく、起業をするために退職した人も多い。そのような企業はアリババと良好な関係を保ち、新しいビジネスを開拓していく。有名なところでは、ライドシェアの滴滴出行がある。

このようなアリババ出身者による起業は800社を超え、「アリババマフィア」とも呼べる集団を作っている。アリババは、新しい事業に挑戦するときに、このようなアリババマフィア企業の助けを借りることができる。これがアリババの強さのひとつになっている。

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▲アリババ出身者のスタートアップはやはり浙江省に多い。アリババ本社が浙江省杭州市にあるためだ。

 

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▲業務分野としては、BtoBサービスが圧倒的に多い。多くがアリババのシステムの一部を担っている。アリババのピラミッドは、日本企業にありがちな下請けの裾野ではなく、技術革新の裾野が広い。これがアリババの強さを支えている。

 

成長速度が異常に速いアリババマフィアスタートアップ

アリババ出身者の起業がここまで多い理由は、間違いなくアリババという土台があるからだ。起業をするパートナー、人探しもアリババの社内で行い、スタートアップに最も重要な資金もアリババから調達することが可能。アリババは事業遂行する企業でありながら、スタートアップのインキュベーターとしても機能している。

アリババという強力なバックグランドがあるため、アリババマフィアは異常に成長が速い。米国の統計によると、シードラウンドからAラウンドまでは平均で15ヶ月、AラウンドからBラウンドまでは平均で17ヶ月となっている。ところがアリババマフィアのスタートアップはそれぞれ12ヶ月、13ヶ月と3ヶ月以上早いのだ。中には新小売コンビニ「ゴリラコンビニ」のようにエンジェルからAラウンドまで58日間、小電科技は10日間という例もある。創立したその日にエンジェル投資を受けるというアリババマフィアスタートアップも少なくない。

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▲アリババ出身者の企業には、上場企業がすでに15社もある。上場予備軍でもあるBラウンド(事業拡大フェーズ)も105社。「中国トップ企業500のうちを、200社をアリババ系にしたい」というジャック・マーの希望もあながち空想とも言えない。

 

テクノロジーではなく、その背後にある夢が社会を変える

アリババマフィアは、このような起業環境にも恵まれているが、もうひとつ大きいのがジャック・マーを全員が信奉をして、彼の考え方を共有していることだ。ジャック・マーはこう言っている。「テクノロジーは私たちの生活を変えたりはしない。テクノロジーの背後にある私たちの夢が生活を変えるのだ」。

アリババマフィアは、「テクノロジーがあるから、これで何かビジネスをしよう」という発想はしない。「生活をこう変えたいから、それに必要なテクノロジーを探してくる。なければ自分で作る」という考え方をする。

中国トップ企業500社のうち200社がアリババマフィアで占められるというジャック・マーの夢、あるいは予言はただの空想ではないかもしれない。

 

中国人の旅行が変わった10のこと

中国の改革開放政策が始まって、今年は41年目になる。そのため、昨年から「改革解放の40年間を振り返る」企画が相次いでいる。旅行サイト携程(CTRIP、シートリップ)は、「改革開放40年。変わる中国人の10大旅行方式」というレポートを発表したと中国新聞網が報じた。

 

毎年平均3.7回旅行をする中国人

40年前、普通の中国人は旅行をしようなどとはまず考えなかった。仕事関係の出張か、親戚の結婚式ぐらいでしか都市間を移動しない。なぜなら、列車の切符を買うにも職場の紹介状が必要で、普通の人はホテルに泊まることなどできず、国営の招待所に宿泊をしなければならなかった。

80年代から次第に旅行を楽しむようになり、2017年の国内旅行者数は50億人、旅行収入は4兆5661億元(約73兆円)となった。中国人は平均年に3.7回の旅行に行き、旅行関係業に従事する人は8000万人。

1978年には、ホテルは全国で300軒しかなかったが、今では1.22万軒ある。定期運行する空港は70カ所しかなかったが、今では228カ所ある。

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▲旗を掲げて、団体でぞろぞろ歩く団体旅行は海外旅行では次第に下火になりつつある。国内旅行では、観光地を効率よく巡りたい人が団体旅行を使っている。

出国者数は35倍、入国者数は76.8倍

海外旅行も爆発的に増えた。1983年に香港とアモイの親戚に会うための旅行が許可され、1988年にはタイへの海外旅行が認められ、以降、可能な渡航先が増えていった。1993年と2017年を比べると、出国者数は374万人から1.31億人と35倍に増えている。

海外からの観光客も1978年には180.9万人だったものが2017年には1.39億人となり、76.8倍になっている。インバウンド収入は2.6億ドルから1234.17億ドル(約13.5兆円)と475倍になっている。

 

変わったこと1:オンラインによるホテル予約

1999年、ゴールデンウィークの制度が始まるとともに、オンライン旅行予約サイトが次々と登場し、ネット予約をするのが当たり前になった。それまでは、ホテルの予約は直接出向く必要があったため、旅行先の知り合いに頼むしかなかった。それができない人は、国営の招待所を利用するしかない。オンライン旅行予約サイトが登場して、普通の人でもホテルを気軽に利用することができるようになった。

 

変わったこと2:団体旅行から個人旅行へ

旅行の自由化が認められても、特別な場合を除き、個人旅行は認められていなかった。そのため、団体旅行が主流となり、現在でも団体旅行を利用する人は多い。特に海外旅行では7割の人が団体旅行を選んでいる。しかし、その内容は大きく変わってきている。

2009年からは、団体旅行であってもすべて自由行動で、個人旅行と変わらない「透明団」と呼ばれる団体旅行が始まり、実質個人旅行化している。

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▲2018年の人気旅行先は、団体旅行では名所旧跡、観光ポイントの多い大都市が上位にくるが、個人旅行では三亜、アモイ、珠海などのリゾート地が上位にくる。

 

変わったこと3:オーダーメイドの個人旅行

2003年からは、完全な個人旅行が始まった。自分で、交通機関やホテルを選んで組み合わせられる方式だ。

団体旅行と個人旅行の行き先を見ると、団体旅行では観光都市が多く、個人旅行では風光明媚なリゾート地が多い。観光名所を巡る時は団体旅行を使い、リゾートに行く時は個人旅行というのが定番になりつつある。

 

変わったこと4:世界一周旅行

2010年、CTRIPが台湾の易遊網、香港の永安旅遊と合同で、「世界一周60日間」を50万元(約805万円)で20名分を売り出したところ、9分間で売り切れた。その後、「66日間66万元」「80日間101万元」を売り出したところ、それぞれ30秒、17秒で完売した。

さらに、南極、北極旅行も人気となり、人数は多いとは言えないものの、世界旅行商品は売り出すとともにすぐ完売するほどの人気商品になっている。

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▲募集人数は多くはないものの、世界旅行はすぐに売り切れる人気商品になっている。88万元は約1400万円。それを夫婦で、あるいは家族で申し込む人がいる。

 

変わったこと5:新幹線の利用

1964年に日本で新幹線が誕生して以来、急速に世界中に普及をし、中国では高鉄の総延長が世界一となり、毎年15億人が利用している。その理由は、海外の新幹線と同じ速度でありながら、乗車賃が4分の1だからだ(注:高鉄が日本発祥であるという記述は、中国新聞網の原記事にあるもの)。団体旅行、個人旅行ともに、高鉄は主要な移動手段になっている。

 

変わったこと6:テーマパーク人気

80年代、中国人が観光をすると言えば、万里の長城兵馬俑、桂林などだった。2015年になって、国家A級景観地区は7951箇所になり、年間37.7億人が訪れる。チケット収入は1316億元(約2.1兆円)に達している。

しかし、このような景観地区は、当時は現地に行って、行列に並ばなければチケットを購入することができなかった。2013年になって、CTRIPがこのようなチケットをネットで予約できる仕組みを導入していった。これにより、A級景観地区だけでなく、ディズニーランドなどのテーマパークを訪れる人が急増している。

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▲景観地とテーマパークの人気ランキング。圧倒的に強いのが上海ディズニーランドだ。上海の中心部から高速道路で30分ほどという立地もあり、人気になっている。ランキングの多くをテーマパークが占める。

 

変わったこと7:クルーズ旅行の急増

2006年に米国のクルーズ旅行会社「カーニバルクルーズライン」が中国に上陸し、それ以来、クルーズ旅行は中国人の夢のひとつになり、現在では世界第2位の市場となっている。

特に人気なのが、日本を中心としたアジアを回るクルーズ旅行だ。

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▲中国人にとってクルーズ旅行は憧れ。特に日本をめぐるクルーズ旅行には人気が高い。一週間の休みで楽しめることが大きい。

 

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▲米国のクルーズ会社「カーニバルクルーズライン」は、早くから中国が大きな市場となると考え、進出をしていた。これがきっかけで、クルーズ旅行が中国人の憧れになっている。内陸部の人が多く、海を見たことがない人が多いことが影響しているのかもしれない。

 

変わったこと8:専属ガイド旅行

CTRIPでは、2016年から個人ガイド旅行の販売を始め、人気商品となっている。約5000名の個人ガイドが登録をしている。個人ガイド旅行は、フルオーダーメイドの旅行で、旅行者がガイドに希望を伝えると、ガイドがスケジュールから交通機関などの手配の一切をおこなってくれ、現地まで同行をして案内をしてくれる。価格はかなり高くなるものの、旅を満喫できると急増していて、2018年は昨年の120%増という急成長になった。

 

変わったこと9:爆買いから体験へ

中国人の旅行といえば「爆買い」だったが、それはすでに終わっている。海外製品であっても、国内のECサイトを利用して、価格差もほとんどなく購入できるようになったからだ。爆買いの対象になる商品を製造しているメーカーは、すでに国内の小売店から中国の越境ECサイトに軸足を移している。

一方で、旅先では、登山、スキーといった体験型レジャーが好まれ、「成長体験」と呼ばれる子ども向けの体験キャンプや大人の体験イベント(陶芸、森林保護活動など)も好まれている。

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▲旅行先では買い物ではなく、体験を楽しむようになっている。特に子どもの成長体験が人気になっている。旅行先で自然観察教室や陶芸体験など、さまざまな体験教室に子どもを参加させて、親子で楽しむ人が増えている。

 

変わったこと10:現地ガイドの活用

一般的なガイドは、中国から同行する、または旅行社を通じて現地ガイドと現地で落ち合うという方式だった。CTRIPでは、2016年から個人営業の現地ガイドとマッチングするサービスを始め、人気を得ている。提携している現地ガイドは90カ国以上、9000名以上で、2018年には50万件の利用があった。

このサービスのいいところは、旅行先で現地ガイドを簡単に探せるようになったことだ。つまり、パック旅行や個人旅行で、とにかく現地まで行ってしまい、自力で観光できるようならするし、ガイドがいた方がいいと思えば、旅先でガイドを探すことができるようになった。

 

スマートフォンの登場で、自力で旅の移動が可能になった

中国人の旅行熱は止まるところを知らない。その理由は、40年前に自由に旅行ができるようになって以来、旅行がどんどん進化をしていることだ。スマートフォンさえあれば、どこに行っても困らない。今まで、個人ではいけないようなところまで行けるようになる。中国人の旅行世界は、どんどん広がっている。旅行費用も豊かになる中国人にとっては、相対的にどんどん安くなっているように感じられ、それが中国人の旅行熱を支えている。

 

顔認証搭載のAI観光バスが上海に登場。AIが通訳も

12月18日、百度バイドゥ)と上海新高度旅遊が、世界初となる人工知能観光バスの試験運行を始めた。顔認証で乗車できるだけでなく、主要言語の翻訳機能、観光関連の音声による問い合わせに答える機能などがあると環球網が報じた。

 

顔パスで乗れるAI観光バス

観光バスは、各観光地に寄り、観光をするため、1日に何回も乗り降りをする。長期ツアーでは複数日に渡ることもある。乗車するたびに、スタッフに乗車チケットを見せるのは煩わしく、チケットを紛失してしまう可能性もある。そこで、このAI観光バスでは、顔認証の機能を搭載した。運転手横の場所に、顔認証ユニットが設置され、それに顔を見せるだけで、正規の乗客であることを認証する。チケットは不要となるので、手ぶらで観光を楽しめるようになった。

顔写真の登録は、チケットにプリントされたQRコードスマホで読み込むことで行う。これでWeChatなどのミニプグラムが起動し、顔写真が撮影される。あとは、チケットレスで観光バスに乗ることができる。

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百度と上海新高度旅遊が共同で運行したAI観光バス。現在、伝統的な中国を楽しむコースと近代的な中国楽しむコースの2路線に投入されている。

 

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▲顔認証で正規の乗客であるかどうかを認証する。観光ポイントで何度も乗り降りをする観光バスで、毎回チケットを見せる不便さが解消された。

 

主要10言語の音声を中国に自動翻訳

また、バス内には2台のWiFi接続の翻訳機も2台搭載されている。主要10言語で話しかけると、それを中国語に翻訳してくれる。スタッフが中国語で答えると、乗客が話した言語に翻訳をしてくれる。スタッフとの意思疎通が円滑になる。

また、観光関連の問い合わせも音声で可能になっている。上海の歴史や近くの有名レストランなどの情報を音声で問い合わせると、音声で答えてくれる。

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▲AIユニットは主要10言語の音声を中国語に翻訳をする機能もある。中国人の運転手やガイドと翻訳機を通じてコミュニケーションをとることができる。

 

百度は、人工知能+モビリティーに注力をする

この人工知能は、百度が開発している百度大脳。百度大脳もバージョン3.0になり、自然言語への対応が大幅にアップグレードされ、各業界への応用が始まっている。AI観光バスはその中のひとつとなる。

上海は、金融都市でもあるが、観光都市でもある。旧市街には豫園などの伝統的な中国、外灘では西洋各国の建物が並ぶ近代の中国、浦東地区では高層ビルが並ぶ現代の中国が楽しめる。

現在は、旧市街の1路線、浦東地区の1路線の合計2路線で、AI観光バスを試験運用し、1月には20台のAI観光バスを投入する予定だ。

検索広告の事業が伸び悩んでいる百度も、旅行、教育、環境、安全、監視などの分野に人工知能を応用する開発を進めていて、自動運転車「アポロ」とともに、主力事業に育てていきたい思惑がある。

上海市政府も、外国人による観光を重視しているため、今後、外国人向けのAI観光バスの路線が増えていくことになりそうだ。

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▲AI観光バスが走るルート。旧市街と新開発区を巡る2つのルートがある。1月中にさらに20台のAI観光バスを投入する予定だ。

 

 

3分リストラ。30歳以上の履歴書はゴミ箱直行。人材調整が始まったIT企業

中国IT企業のリストラが始まっている。実際の業績は数字に表れるほど悪化はしてなく、リストラ人数も大きくはないが、組織改編などがあると、それがSNSを通じて「大規模リストラ」の噂につながっている。実際の採用状況よりも、企業と求職者が過敏な状態になっていると21世紀商評網が報じた。

 

尾ひれ、デマも起きているIT企業のリストラ

中国IT企業のリストラが深刻化している。各企業とも新規採用人数を絞りはじめているのはすでに数字にもはっきりと現れ、2018年後半はリストラも始まった。深刻なのは、実際のリストラ人数の問題よりも、企業も社員も軽いパニック状態になりつつあることだ。

多くの「リストラ事件」は、ネットに端を発する。社員や関係者と称する人物がSNSなどで「リストラが行われている」という発言をし、それを企業が否定するというパターンが多く、デマと事実が入り乱れ始めている。実際にリストラをしているケースもあれば、元々定期的に成績不良者に対する離職勧告がリストラだとして騒ぎになっているケースもあるようだ。

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▲2018年後半にSNSなどで拡散したIT企業のリストラの噂。ほとんどの企業が、通常の成績不良者の解雇にすぎないと答えている。

 

「3分リストラ」の噂が拡散した美団

このため、ネットで伝わる話には尾ひれがついている。その中でも拡散しているのが美団(メイトワン)の「3分リストラ」だ。2018年に上場したばかりの美団では、直属の上司ではなく、その上の上司から電話呼び出しを受け、離職同意書にサインすることを求められる。要する時間はたった3分で、反論することも話し合うことも許されず、拒否をすれば悪い条件で解雇されるだけだ。直属上司に訴えると、上司もそんなことになっているとは知らなかったという。

しかし、美団は、このSNSで拡散した話を否定した。美団では、通常から成績不良者に対して離職勧告を行っている。その割合は約0.5%で、現在も正常な範囲で離職勧告は行っているが、ネットで言われるような大量リストラは行っていないと回答した。

 

「30歳以上の履歴書は見ない」アリババの噂

アリババも採用人数を絞り始めている。ある女性が2018年12月にアリババ系列の阿里口碑から誘われた時、人事部門から「アリババは採用人数を大幅に削減する。入社したいなら、これが最後のチャンスだ」と言われたという。その女性は今勤めている企業が年末にボーナスを出すことになっていたので、そのボーナスをもらってから阿里口碑に転職しようと回答を引き延ばしていたところ、阿里口碑の人事部門から「アリババは、30歳以上の求職者の履歴書はもう見なくなる。来年になると、あなたも30歳になり、アリババに入社できなくなる」と催促されたという。この女性は、21世紀商評網の取材に応えて、「結局、阿里口碑への転職をあきらめました。アリババの仕事はきつく、体力的にも心配です。それで、報酬が今よりもすごくよくなるというわけでもないのです」と語った。

 

解雇補償を受け取ると、二度と就職できない?

テンセントを離職したばかりのある女性は、リストラは行われてはなかったが、それに近いことは日頃から行われているという。この女性がテンセントに入社したばかりの頃、人事部門からこう言われた。「試用期間中はいつでも会社都合で解雇ができる。試用期間の残り分の給与は通常の1.5倍が補償として支払われるが、それを受け取ると、二度とテンセントで働くことはできなくなる」。

組織改変、配置転換の際に、成績不良者は必ず解雇される。IT企業は、株価を下げかねない大規模リストラをしなくても、業績が悪化したら、大規模な組織改変を行えばいい。不良部門を閉鎖して、その成績不良者の下位何%かを解雇することで、外面的には「通常通りの人事異動」で、リストラができる仕組みになっている。

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▲BATJ4社の従業員数。順調に増えているように見える。

 

従業員数は増えているものの、伸び率は下がっている

有価証券報告書からこのBATJ(百度、アリババ、テンセント、京東)の従業員数を見てみると、本業が不調になっている百度をのぞいて、どの企業も従業員数は順調に伸びているかのように見える。

しかし、従業員数の伸び率でみると、どの企業も2017年に急速に増え、2018年になって伸び率が落ちていることがわかる。2017年は、シェアリング自転車などのシェアリングエコノミー関連、アリババの新小売戦略など、さまざまな新事業が登場した年だった。そのため、BATJ各社とも従業員数が大幅に伸びた。しかし、2018年は新規事業の淘汰の時期になった。各社とも、無制限の増員ではなく、人材を選び始めていることは確かだ。

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従業員の伸び率は、京東を除いたBAT3社は低下している。調整の時期に入っていることは間違いないようだ。

 

調整の時期を迎えている中国IT企業

中国IT企業は厳しい局面を迎えているが、それは成長の時期が終わったということで、今すぐ倒産や撤退というところまで結びつくものではない。しかし、成長一辺倒だったIT企業が、調整の時期を迎えて、従業員や求職者の間では軽いパニックになっていることも間違いない。ネットで流布されるリストラ話には、デマや尾ひれがついた話も多いが、それは従業員や求職者の心理を反映したものなのだ。

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行列をリピーターに転換する。中国茶カフェ「喜茶」のスマホ注文活用

中国で「行列ができるカフェ」として人気の「喜茶」(HEY TEA、ヘイティー)がWeChatミニプラグラム「喜茶GO」をリリースした。このミニプログラムを使うと、スマホから注文、決済することができ、行列に並ぶことなくドリンクを購入できる。喜茶は行列を戦略的に活用していると科技新角が報じた。

 

4時間行列するのは当たり前。大人気の中国茶カフェ「喜茶」

喜茶は、中国に現在106店舗を展開する中国茶カフェ。岩塩入りのクリームチーズを中国紅茶に入れた斬新なドリンクで大人気となった。夏には、中国茶にふんだんにフルーツを入れたドリンクを提供するなど、伝統的な中国紅茶を現代的にアレンジすることで若い女性を中心に人気となっている。

また、カップやペーパーバッグ、店内インテリアなどもしゃれていて、いわゆる「インスタ映え」することを狙っていて、その人気はSNSで拡散し、どの店舗でも行列ができる状態になっている。

人気は過熱気味で、平日でも2時間ほど並ぶのは当たり前、休日には4時間並ぶとか、最高で7時間並んだという話まである。

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▲喜茶に並ぶ行列。平日でも2時間、休日には4時間ほど並ぶのが当たり前になっている。

 

認知度を上げるフェーズでは行列は大きな力となる

飲食店にとって、行列は両刃の剣だ。認知度を上げる初期段階では、行列はどんなプロモーションよりも効果がある。近くを通る人に注目をしてもらえるし、行列そのものがSNSで拡散して話題になる。さらに、人はその価値を人に伝える時には、獲得コストが高ければ高いほど、本来価値よりも高く伝える傾向がある。つまり、獲得したものがただの水であっても、行列に2時間並んで獲得したものであれば、人には特別な水であるかのように伝えるのだ。

飲食店は行列を演出することで、「一度味わってみたい」と考える一見客を次から次へと引き寄せることができる。

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▲喜茶のドリンクは、見た目にもインスタ映えをする。フルーツたっぷりの中国茶は、湿気の高い中国の夏場に飲むと素晴らしく美味しい。いずれも今までに飲んだことのない味を実現している。

 

リピートフェーズでは行列はマイナス要因でしかない

しかし、リピーターが生まれる定着期になると、行列はマイナス効果をもたらす。簡単なことで、ただ紅茶を飲んで休みたいだけに2時間もの行列という獲得コストをかけるのは馬鹿らしいと誰もが思うようになる。何回か利用すれば、その商品の価値も自分の中で評価できていているので、商品価値と獲得コストを天秤にかけて、別の選択をしてしまう人が出始める。

そのうち、別の流行カフェが登場し、人々はそちらに流れていくようになり、こうなるとどうやっても客を引き戻すことができなくなる。

飲食店は、行列ができるというのは初期段階での成功には違いないが、すぐにどうやってこの行列を効率よくリピーターに転換をしていくのかを考えないと、ある日突然行列が消えて、閑古鳥が鳴くことになりかねない。

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▲喜茶のペーパーバッグ。軽妙なイラストがあしらわれ、ただのペーパーバッグなのにグッズとしての人気もある。

 

行列をリピーターに転換する秘策は

科技新角が、平日昼間の正午ごろに、北京三里屯黒金店、北京朝陽大悦城店に行ってみると、だいたい150人程度の行列ができていて、待ち時間は2時間前後だった。喜茶のカウンターでは、1分間に4杯から5杯のドリンクを作ることができる。テイクアウトの客は、1人で何杯も注文をし、平均2杯程度注文すると、150人で2時間待ちというのは計算が合う。

しかし、「長い行列が人気の証」と喜んでばかりはいられない。すでにメディアは、喜茶の長い行列を、人気というよりは「奇異な現象」として扱い始め、若い女性はなぜそこまで熱中するのかと、やや否定的なニュアンスを入れて報道し始めている。また、ネットの掲示板などでは、男性を中心に「ばかばかしくて並んでいられない」という声や、「行列はやらせ」説までもっともらしく語られるようになっている。

喜茶は明らかに、行列をリピーターに転換しなければならない時期を迎えている。

しかし、スタッフを増やして行列を減らすことは難しい。調理スタッフを倍にしても、製造能力が倍になるだけ。2時間待ちが1時間待ちになるだけにすぎない。

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▲喜茶のメニュー。岩塩クリームチーズを紅茶に入れたオリジナルドリンクが大人気となった。価格も30元以内とコーヒーよりも安目。

 

スマホ注文を導入することで、リピート率は3倍に

そこで、喜茶は今年の5月から「喜茶GO」というWeChat用のミニプログラムを提供している。スマートフォンから、注文、決済、出前、予約などができるというもので、先にスマートフォンで注文をしておけば、行列に並ぶことなく、ドリンクを受け取ることができる。

リリース後わずか1ヶ月で、50万人以上の人が利用し、喜茶全体のリピート率は2倍以上に伸びた。一度飲んで気に入ったけど、もう一度あの行列に並ぶのは嫌だという人がミニプログラムに飛びついたのだ。

半年たった今では、利用者数は累積500万人。リピート率もリリース後1ヶ月の3倍にさらに伸びている。1日平均18.5万人が利用している。

世界のどこでも「行列のできる」カフェ、ドーナツ店、アイスクリーム店というのが登場し、わずか数年で跡形もなく消えていく現象は珍しくない。喜茶も当初はそのような一時的な流行と見る向きもあった。しかし、最も適切な時期にミニプログラムを活用してスマホ注文を導入することで、リピーターを作り始めている。喜茶は一時的な流行では終わらない中国茶カフェになるかもしれない。

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バスに乗ると、卵がもらえるキャンペーンで、500万人が卵をゲット

スマホ決済「アリペイ」は、アリペイを使ってバスに乗車すると0.01元で乗ることができ、さらに卵がもらえるというキャンペーンを実施した。低炭素社会をアピールするユニークなキャンペーンで、500万人の人が卵を手に入れたと南京潮生活が報じた。

 

クーポンの効果が薄れ始めたスマホ決済

中国のスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」が急速に伸びたのは、サービスそのものの利便性が高かったこともあるが、大量のクーポンを配布したことも大きかった。「現金で支払うよりも得ができる」というところから始まって、次第に「現金で支払うのは損だ」という感覚になり、スマホ決済する習慣を浸透させていた。

ところが、最近、こういったポイントバックや割引手法の効果が薄れてきている。

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銀聯スマホ決済を始めていて、バスに0.01元で乗れるキャンペーンを実施している。しかし、曜日や回数の制限があり、新規利用者の獲得にはうまく結びついていないようだ。

 

伸び悩むスマホ決済乗車

今、各都市でスマホ決済で、地下鉄やバスに乗れるようになりつつある。しかし、乗客から見たら、スマホ決済にしても利便性はさほど上がらない。なぜなら、以前から地下鉄やバスは、交通カード(IC乗車券)で乗れるようになっていて、それをスマホ決済にするには、交通カードアプリをダウンロードしなければならないからだ。そもそもスマホ決済で地下鉄やバスに乗れることを知らない人も多い。

そこで、多くの都市で「1分銭乗車」というキャンペーンを展開しているが、効果はじゅうぶんとは言えないようだ。通常3元程度の乗車賃が、0.01元で乗れるというものだが、あまり話題にもならないし、新規ユーザーは伸び悩むなど、一定の効果はあるものの、目覚ましい効果があったとは言えない状況になっている。

 

バスに乗ると卵がもらえるユニークなキャンペーン

そこで、アリババが運営するスマホ決済「アリペイ」では、12月17日から12月31日までユニークなキャンペーンを始めた。アリペイを使って地下鉄やバスに乗ると、新鮮な卵がもらえるというキャンペーンだ。

地下鉄やバスに乗るときに、アリペイを使うと、アリペイアプリの中に卵券が送られてくる。この券を6枚集めると、アリババ系列のスーパーRT-Martで、卵に引き換えてもらえるというものだ。

また、卵との引換券は、卵と交換せず、懸賞に応募することもできる。当選すると、金の卵(20グラム)などが当たる。

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▲アリペイでバスに乗車をすると、卵券がもらえる。これを集め、スーパーに持っていくと新鮮な卵がもらえる。全国で500万人が卵を手に入れた。

 

大気汚染が進むと新鮮な卵が食べられなくなる

中国では、10年ほど前までは卵は栄養価が高いが高価な食品だった。そのイメージはまだ残っている。ポイントという「お得感」よりも、卵というモノの「お得感」の方が効果があるのか、注目をされている。

さらにこのキャンペーンは、低炭素社会の実現とも結びつけられている。自家用車に乗らず、公共交通を利用することで、排出ガスを減らし、大気汚染や温暖化を防ぐことができるというものだ。

卵は自然食品で、大気汚染の影響を受けやすい。空気が汚いと、安全な卵が食べられなくなるということも訴えている。

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▲アリペイのキャンペーンの説明。卵がもらえて、低炭素社会の実現に貢献できると訴えている。

 

天津市では、バスの中に養鶏場を設置

天津市では、実際にニワトリが乗ったバスも登場した。バスの客席の前半分にニワトリが乗っていて、卵を産んでいる。都市部では、養鶏場なども珍しくなり、子供たちは大はしゃぎだという。その姿はメディアによって報道され、SNSでも拡散をしている。

新規ユーザーを獲得するための優待策は、ポイントバックやクーポンではなく、体験に移ろうとしている。今後も、社会課題を提起するような内容で、なおかつメディアやSNSで拡散をしやすいキャンペーンが増えていくことになるだろう。

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天津市では、バスの中に養鶏場を作り、卵を生む瞬間を見ることができる。子どもたちは大喜びで、教育効果も高いと話題になっている。

 

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▲中国では、大気汚染が進むと、卵に汚染物質が混入すると言われている。新鮮な卵を食べるには、公共交通を使って低炭素社会を実現しなければならないというのがこのキャンペーンの趣旨。