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中国人の旅行が変わった10のこと

中国の改革開放政策が始まって、今年は41年目になる。そのため、昨年から「改革解放の40年間を振り返る」企画が相次いでいる。旅行サイト携程(CTRIP、シートリップ)は、「改革開放40年。変わる中国人の10大旅行方式」というレポートを発表したと中国新聞網が報じた。

 

毎年平均3.7回旅行をする中国人

40年前、普通の中国人は旅行をしようなどとはまず考えなかった。仕事関係の出張か、親戚の結婚式ぐらいでしか都市間を移動しない。なぜなら、列車の切符を買うにも職場の紹介状が必要で、普通の人はホテルに泊まることなどできず、国営の招待所に宿泊をしなければならなかった。

80年代から次第に旅行を楽しむようになり、2017年の国内旅行者数は50億人、旅行収入は4兆5661億元(約73兆円)となった。中国人は平均年に3.7回の旅行に行き、旅行関係業に従事する人は8000万人。

1978年には、ホテルは全国で300軒しかなかったが、今では1.22万軒ある。定期運行する空港は70カ所しかなかったが、今では228カ所ある。

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▲旗を掲げて、団体でぞろぞろ歩く団体旅行は海外旅行では次第に下火になりつつある。国内旅行では、観光地を効率よく巡りたい人が団体旅行を使っている。

出国者数は35倍、入国者数は76.8倍

海外旅行も爆発的に増えた。1983年に香港とアモイの親戚に会うための旅行が許可され、1988年にはタイへの海外旅行が認められ、以降、可能な渡航先が増えていった。1993年と2017年を比べると、出国者数は374万人から1.31億人と35倍に増えている。

海外からの観光客も1978年には180.9万人だったものが2017年には1.39億人となり、76.8倍になっている。インバウンド収入は2.6億ドルから1234.17億ドル(約13.5兆円)と475倍になっている。

 

変わったこと1:オンラインによるホテル予約

1999年、ゴールデンウィークの制度が始まるとともに、オンライン旅行予約サイトが次々と登場し、ネット予約をするのが当たり前になった。それまでは、ホテルの予約は直接出向く必要があったため、旅行先の知り合いに頼むしかなかった。それができない人は、国営の招待所を利用するしかない。オンライン旅行予約サイトが登場して、普通の人でもホテルを気軽に利用することができるようになった。

 

変わったこと2:団体旅行から個人旅行へ

旅行の自由化が認められても、特別な場合を除き、個人旅行は認められていなかった。そのため、団体旅行が主流となり、現在でも団体旅行を利用する人は多い。特に海外旅行では7割の人が団体旅行を選んでいる。しかし、その内容は大きく変わってきている。

2009年からは、団体旅行であってもすべて自由行動で、個人旅行と変わらない「透明団」と呼ばれる団体旅行が始まり、実質個人旅行化している。

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▲2018年の人気旅行先は、団体旅行では名所旧跡、観光ポイントの多い大都市が上位にくるが、個人旅行では三亜、アモイ、珠海などのリゾート地が上位にくる。

 

変わったこと3:オーダーメイドの個人旅行

2003年からは、完全な個人旅行が始まった。自分で、交通機関やホテルを選んで組み合わせられる方式だ。

団体旅行と個人旅行の行き先を見ると、団体旅行では観光都市が多く、個人旅行では風光明媚なリゾート地が多い。観光名所を巡る時は団体旅行を使い、リゾートに行く時は個人旅行というのが定番になりつつある。

 

変わったこと4:世界一周旅行

2010年、CTRIPが台湾の易遊網、香港の永安旅遊と合同で、「世界一周60日間」を50万元(約805万円)で20名分を売り出したところ、9分間で売り切れた。その後、「66日間66万元」「80日間101万元」を売り出したところ、それぞれ30秒、17秒で完売した。

さらに、南極、北極旅行も人気となり、人数は多いとは言えないものの、世界旅行商品は売り出すとともにすぐ完売するほどの人気商品になっている。

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▲募集人数は多くはないものの、世界旅行はすぐに売り切れる人気商品になっている。88万元は約1400万円。それを夫婦で、あるいは家族で申し込む人がいる。

 

変わったこと5:新幹線の利用

1964年に日本で新幹線が誕生して以来、急速に世界中に普及をし、中国では高鉄の総延長が世界一となり、毎年15億人が利用している。その理由は、海外の新幹線と同じ速度でありながら、乗車賃が4分の1だからだ(注:高鉄が日本発祥であるという記述は、中国新聞網の原記事にあるもの)。団体旅行、個人旅行ともに、高鉄は主要な移動手段になっている。

 

変わったこと6:テーマパーク人気

80年代、中国人が観光をすると言えば、万里の長城兵馬俑、桂林などだった。2015年になって、国家A級景観地区は7951箇所になり、年間37.7億人が訪れる。チケット収入は1316億元(約2.1兆円)に達している。

しかし、このような景観地区は、当時は現地に行って、行列に並ばなければチケットを購入することができなかった。2013年になって、CTRIPがこのようなチケットをネットで予約できる仕組みを導入していった。これにより、A級景観地区だけでなく、ディズニーランドなどのテーマパークを訪れる人が急増している。

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▲景観地とテーマパークの人気ランキング。圧倒的に強いのが上海ディズニーランドだ。上海の中心部から高速道路で30分ほどという立地もあり、人気になっている。ランキングの多くをテーマパークが占める。

 

変わったこと7:クルーズ旅行の急増

2006年に米国のクルーズ旅行会社「カーニバルクルーズライン」が中国に上陸し、それ以来、クルーズ旅行は中国人の夢のひとつになり、現在では世界第2位の市場となっている。

特に人気なのが、日本を中心としたアジアを回るクルーズ旅行だ。

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▲中国人にとってクルーズ旅行は憧れ。特に日本をめぐるクルーズ旅行には人気が高い。一週間の休みで楽しめることが大きい。

 

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▲米国のクルーズ会社「カーニバルクルーズライン」は、早くから中国が大きな市場となると考え、進出をしていた。これがきっかけで、クルーズ旅行が中国人の憧れになっている。内陸部の人が多く、海を見たことがない人が多いことが影響しているのかもしれない。

 

変わったこと8:専属ガイド旅行

CTRIPでは、2016年から個人ガイド旅行の販売を始め、人気商品となっている。約5000名の個人ガイドが登録をしている。個人ガイド旅行は、フルオーダーメイドの旅行で、旅行者がガイドに希望を伝えると、ガイドがスケジュールから交通機関などの手配の一切をおこなってくれ、現地まで同行をして案内をしてくれる。価格はかなり高くなるものの、旅を満喫できると急増していて、2018年は昨年の120%増という急成長になった。

 

変わったこと9:爆買いから体験へ

中国人の旅行といえば「爆買い」だったが、それはすでに終わっている。海外製品であっても、国内のECサイトを利用して、価格差もほとんどなく購入できるようになったからだ。爆買いの対象になる商品を製造しているメーカーは、すでに国内の小売店から中国の越境ECサイトに軸足を移している。

一方で、旅先では、登山、スキーといった体験型レジャーが好まれ、「成長体験」と呼ばれる子ども向けの体験キャンプや大人の体験イベント(陶芸、森林保護活動など)も好まれている。

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▲旅行先では買い物ではなく、体験を楽しむようになっている。特に子どもの成長体験が人気になっている。旅行先で自然観察教室や陶芸体験など、さまざまな体験教室に子どもを参加させて、親子で楽しむ人が増えている。

 

変わったこと10:現地ガイドの活用

一般的なガイドは、中国から同行する、または旅行社を通じて現地ガイドと現地で落ち合うという方式だった。CTRIPでは、2016年から個人営業の現地ガイドとマッチングするサービスを始め、人気を得ている。提携している現地ガイドは90カ国以上、9000名以上で、2018年には50万件の利用があった。

このサービスのいいところは、旅行先で現地ガイドを簡単に探せるようになったことだ。つまり、パック旅行や個人旅行で、とにかく現地まで行ってしまい、自力で観光できるようならするし、ガイドがいた方がいいと思えば、旅先でガイドを探すことができるようになった。

 

スマートフォンの登場で、自力で旅の移動が可能になった

中国人の旅行熱は止まるところを知らない。その理由は、40年前に自由に旅行ができるようになって以来、旅行がどんどん進化をしていることだ。スマートフォンさえあれば、どこに行っても困らない。今まで、個人ではいけないようなところまで行けるようになる。中国人の旅行世界は、どんどん広がっている。旅行費用も豊かになる中国人にとっては、相対的にどんどん安くなっているように感じられ、それが中国人の旅行熱を支えている。