中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

3分リストラ。30歳以上の履歴書はゴミ箱直行。人材調整が始まったIT企業

中国IT企業のリストラが始まっている。実際の業績は数字に表れるほど悪化はしてなく、リストラ人数も大きくはないが、組織改編などがあると、それがSNSを通じて「大規模リストラ」の噂につながっている。実際の採用状況よりも、企業と求職者が過敏な状態になっていると21世紀商評網が報じた。

 

尾ひれ、デマも起きているIT企業のリストラ

中国IT企業のリストラが深刻化している。各企業とも新規採用人数を絞りはじめているのはすでに数字にもはっきりと現れ、2018年後半はリストラも始まった。深刻なのは、実際のリストラ人数の問題よりも、企業も社員も軽いパニック状態になりつつあることだ。

多くの「リストラ事件」は、ネットに端を発する。社員や関係者と称する人物がSNSなどで「リストラが行われている」という発言をし、それを企業が否定するというパターンが多く、デマと事実が入り乱れ始めている。実際にリストラをしているケースもあれば、元々定期的に成績不良者に対する離職勧告がリストラだとして騒ぎになっているケースもあるようだ。

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▲2018年後半にSNSなどで拡散したIT企業のリストラの噂。ほとんどの企業が、通常の成績不良者の解雇にすぎないと答えている。

 

「3分リストラ」の噂が拡散した美団

このため、ネットで伝わる話には尾ひれがついている。その中でも拡散しているのが美団(メイトワン)の「3分リストラ」だ。2018年に上場したばかりの美団では、直属の上司ではなく、その上の上司から電話呼び出しを受け、離職同意書にサインすることを求められる。要する時間はたった3分で、反論することも話し合うことも許されず、拒否をすれば悪い条件で解雇されるだけだ。直属上司に訴えると、上司もそんなことになっているとは知らなかったという。

しかし、美団は、このSNSで拡散した話を否定した。美団では、通常から成績不良者に対して離職勧告を行っている。その割合は約0.5%で、現在も正常な範囲で離職勧告は行っているが、ネットで言われるような大量リストラは行っていないと回答した。

 

「30歳以上の履歴書は見ない」アリババの噂

アリババも採用人数を絞り始めている。ある女性が2018年12月にアリババ系列の阿里口碑から誘われた時、人事部門から「アリババは採用人数を大幅に削減する。入社したいなら、これが最後のチャンスだ」と言われたという。その女性は今勤めている企業が年末にボーナスを出すことになっていたので、そのボーナスをもらってから阿里口碑に転職しようと回答を引き延ばしていたところ、阿里口碑の人事部門から「アリババは、30歳以上の求職者の履歴書はもう見なくなる。来年になると、あなたも30歳になり、アリババに入社できなくなる」と催促されたという。この女性は、21世紀商評網の取材に応えて、「結局、阿里口碑への転職をあきらめました。アリババの仕事はきつく、体力的にも心配です。それで、報酬が今よりもすごくよくなるというわけでもないのです」と語った。

 

解雇補償を受け取ると、二度と就職できない?

テンセントを離職したばかりのある女性は、リストラは行われてはなかったが、それに近いことは日頃から行われているという。この女性がテンセントに入社したばかりの頃、人事部門からこう言われた。「試用期間中はいつでも会社都合で解雇ができる。試用期間の残り分の給与は通常の1.5倍が補償として支払われるが、それを受け取ると、二度とテンセントで働くことはできなくなる」。

組織改変、配置転換の際に、成績不良者は必ず解雇される。IT企業は、株価を下げかねない大規模リストラをしなくても、業績が悪化したら、大規模な組織改変を行えばいい。不良部門を閉鎖して、その成績不良者の下位何%かを解雇することで、外面的には「通常通りの人事異動」で、リストラができる仕組みになっている。

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▲BATJ4社の従業員数。順調に増えているように見える。

 

従業員数は増えているものの、伸び率は下がっている

有価証券報告書からこのBATJ(百度、アリババ、テンセント、京東)の従業員数を見てみると、本業が不調になっている百度をのぞいて、どの企業も従業員数は順調に伸びているかのように見える。

しかし、従業員数の伸び率でみると、どの企業も2017年に急速に増え、2018年になって伸び率が落ちていることがわかる。2017年は、シェアリング自転車などのシェアリングエコノミー関連、アリババの新小売戦略など、さまざまな新事業が登場した年だった。そのため、BATJ各社とも従業員数が大幅に伸びた。しかし、2018年は新規事業の淘汰の時期になった。各社とも、無制限の増員ではなく、人材を選び始めていることは確かだ。

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従業員の伸び率は、京東を除いたBAT3社は低下している。調整の時期に入っていることは間違いないようだ。

 

調整の時期を迎えている中国IT企業

中国IT企業は厳しい局面を迎えているが、それは成長の時期が終わったということで、今すぐ倒産や撤退というところまで結びつくものではない。しかし、成長一辺倒だったIT企業が、調整の時期を迎えて、従業員や求職者の間では軽いパニックになっていることも間違いない。ネットで流布されるリストラ話には、デマや尾ひれがついた話も多いが、それは従業員や求職者の心理を反映したものなのだ。

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