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台湾のスマホ決済が、種類が多すぎてすごいことになっている

台湾のスマホ決済の種類が多すぎて、便利なのか不便なのかわからない状態になってきている。それでも、商店主はすべての決済方法に対応しようと努力を続けていると東森新聞が報じた。

 

台湾では国内系決済方式だけでも10種類以上

台湾では、そもそも国内系のスマホ決済が乱立し、10種類以上が普及を競ってきた。そこに、海外の決済方式も入ってきて、主だった決済方式だけでも20種類近くになっている。

台湾は小さな島なので、貿易と観光が重要な産業であり、また、地理的な利点から、中国、日本、韓国からの観光客が多い。さらに、シンガポールや香港を経由して、欧米からの観光客もくる。台湾人特有の「なんでも受け入れる」というおおらかな感覚もあって、海外の決済方式にもどんどん対応していった。

日本からはLINE Pay、韓国からはSamsung Pay、米国からはAndroid Pay、Apple Pay、中国からは銀聯、アリペイ、WeChatペイ。外国人観光客の多い地域では、国内系決済方式に加えて、このような海外の決済方式にも対応をしている。

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台北市内のファミリーマートには、このようなステッカーが貼ってある。16種類の決済方式に対応し、ICクレジットカード、悠遊カード(交通カード)にも対応している。さらに、ApplePay、AndroidPay、SamsungPayなどのスマホ決済にも対応していくことになるだろう。決済方法は増えていく一方だ。

 

店舗では決済方式をめぐって混乱も

東森新聞記者は、多くの外国人観光客が訪れる台北市永康街の商店街を取材した。かき氷店の女性店主が、支払をする客に尋ねている。「現金ですか、カードですか?」ーースマホで支払います。「街口?アリペイ?悠遊カード?」ーーありません。「ApplePayは?」ーーあります。客ごとにこんな会話を重ねてからでないと決済ができない。

しかも、決済方式によって、ICカードリーダー、NFCリーダー、バーコードリーダー、QRコードリーダーと使う器具が違ってくる。レジ操作を覚えるだけでも一苦労だ。

それでも商店主たちは歓迎をしている。永康商圏発展協会の劉鴻翔理事長は東森新聞の取材に答えた。「海外からの観光客は、みな異なる決済方式を使っています。私たちは、そのすべてに対応していかなければなりません」。種類が多すぎて、面倒はあるが、それでも消費を刺激して売り上げに貢献し、釣銭を用意する手間が省けることは大きいという。

さらに、台湾では夜市が盛んだ。夕方から夜遅くまで、露店がでる場所が市内にたくさんあり、多くの人で賑わう。夜市では、売上金の保管が以前から問題になっていた。これもスマホ決済が増えれば、解決される。

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▲東森新聞による台北市永康街のレポート。「各商店は、数十種類の決済方式に対応している」という内容。

 

それでも受け入れているおおらかな台湾人

しかし、それにしても決済方法の種類が多すぎる。台北市のホテルに勤務する若い女性曹さんは、財布と現金を持ち歩くのをすでにやめている。「朝起きると、GOMAJIアプリを起動して、出勤途中にある朝食のお店を検索します。そこでの支払いはGOMAJIでします。ファミリーマートで買い物をするときは欧付宝で支払い、セブンイレブンではPi銭包で支払います。タクシーは楽点行動支付アプリで呼んで、このアプリで料金を支払います。病院に行ったときは医療行動支付で支払います」。

財布は持たないが、スマートフォンの中には決済アプリが10種類以上入っていて、支払い先によって使い分けをしなければならない。それでも、現金支払いよりはずっといいと言う。「現金を使っていた時は、小銭がどんどんたまって、財布が膨らんでしまいます。それがなくなりました」。台湾では商店の競争が激しく、多くの商品が10台湾ドル、20台湾ドルというキリのいい価格ではなく、9.8台湾ドルといった価格設定になっている。レジでこまめに小銭を出すようにしていかないと、あっという間に小銭がたまっていく。

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永康街のかき氷屋でのやり取り。支払いの前に、現金→カード→スマホ決済というやり取りがあり、さらにはどの決済方式であるかによって、使用する機器が違ってくる。

 

乱立気味の日本は、台湾に学ぶべきことが多い

ただし、次第に、QRコードNFCによる方式に集約されていく傾向は見え始めている。ICクレジットカードやバーコード式の決済方式は次第に減少する傾向にあるという。現在、伸びているのは、各コンビニ、レストラン、タクシーに対応した街口(QRコード方式)と、クレジットカードや悠遊カード(交通カード)が登録できるNFC方式のt walletなどで、またクレジットカード、悠遊カードをスマホSIMカードに登録できる中華電信のNFC SIMなども利用者が増えているという。

決済種類が多すぎて、レジでのオペレーション時間が現金よりも長くなっている場面や、店舗と消費者の決済方式が合わず、支払いができずにトラブルになっている場面も街中ではときどき見かける。便利になる反面、不便も多いのが現状だ。しかし、おおらかな台湾人は、デメリットよりもメリットの方に注目し、次第に決済方式も集約されていこうとしている。

日本も今のままでは、電子決済方式が乱立し、台湾と似た状況になりかねない傾向がでてきている。私たちは、台湾の人たちのように、メリットだけに注目して、乱立を乗り越えることができるだろうか。

 

中国・夢の新交通システム「巴鉄」は、大掛かりな詐欺だった模様

米タイムズ誌で、2010年に「世界で最も優れた50の発明」に選ばれた「巴鉄」(バーティエ)が、その後、順調に資金を集め、昨年には河北省秦皇島市で試験路線の建設が始まり、第1号車両も公開された。しかし、一転して、技術を衣にした詐欺事件であることが明らかになり、巴鉄投資会社の責任者以下32名が逮捕される事態になったと捜狐が報じた。

 

渋滞解消の切り札として注目を浴びた立体バス

巴鉄は、交通渋滞に悩む中国の公共交通の切り札として、国内外から大きな注目を浴びた。2階建てバスの形状をしているが1階部分は空洞となっているのが特徴だ。全長22m、幅7.8m、高さ4.8mという巨大な車両で、約300人が乗車することができ、1階空洞部分は、車高2m以下の一般自動車が通行できる。巴鉄が停車しても、一般車両はその下をすり抜けることができ、逆に一般車両が渋滞中でも、その上を巴鉄が通行することができ、交通渋滞解消の切り札として期待された。

巴鉄は、2010年に北京で開催された第13回中国北京科学技術博覧会に出品されると大きな話題を呼んだ。主要な道路の交通渋滞を25%から30%解消し、地下鉄に比べて建設費は1/10、建設期間は1/3だと説明された。また、発明者の宋有州が小学校卒の学歴しかないことも、チャイナドリームの実現として話題になった。

当時の名称は「立体快巴」(巴はバスの意味)だったが、専門家からはさまざまな疑問も寄せられた。「カーブをどうやって曲がるのか?」「車高の高いトラックなどが通行していた場合どうするのか?」などだ。このような疑問に、発明者の宋有州は明快に答えることができず、立体快巴は次第に話題に上らなくなっていった。

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▲夢の交通システム「巴鉄」。1階部分が空洞になっていて、一般車両は1階部分を通り抜けることができる。渋滞を解消する切り札として期待されていた。

 

路線建設が集まり、800億円の資金が集まった

しかし、2016年になって、第19回北京国際科学技術産業博覧会に、「巴鉄」として出品され、再び大きな話題となった。車両のデザインは以前とほぼ同じだったが、河北省秦皇島市に試験路線を建設し、試験運行をすると発表したからだ。そして、白志明という人物が、巴鉄投資会社「華凱来」を設立、開発資金を募り始めた。

この投資会社の資料によると、調達規模は5000万元から1億元(約16億6000万円)で、年12%の配当を見込んでいた。

この投資会社は、秦皇島市政府との協議もまとめた。秦皇島市に建設する120kmの路線に必要な建設費は100億元(約1660億円)と見積もり、まず、投資会社の資金により、1kmの試験路線を建設する。2年以内に10kmのモデル路線を建設し、最終的に120kmの営業路線を建設する。モデル路線の建設に入ったところで、投資会社と秦皇島市政府の出資割合を改めて協議するということになった。そして、試験路線の建設が実際に始まり、試験車両の製造も始まった。

この状況を見て、個人投資家や企業が次々と巴鉄に投資を始めた。4万人が投資をし、48億8600万元(約810億円)が集まったと報道されている。

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▲披露された試験車両1号。確かに乗用車でも高さぎりぎりであり、トラックなどが通行するときはどうするのか疑問に思える。投資家はそこに気づかず、出資をしていた。

 

明らかになった社長のスキャンダル

ところが、この白志明はいわくつきの人物だった。過去に「スーパー水稲」を発明したとして資金を集めたことがある。1ヘクタールの水田から2万4000kgの米を収穫することができ、米に含まれるタンパク質の量は鶏卵よりも多いという触れ込みだった。日本の水田でも、1ヘクタールあたりの収穫量は豊作でも6000kg程度なので、常識外の数字だ。実際に、黒竜江省宝清県の農民に協力をしてもらい、大々的に栽培が行われたが、すべて育たず、収穫量は0だった。

このような報道が新聞などで行われるようになると、資金を引き揚げる巴鉄投資家も現れ、配当が遅れ始め、問題が大きくなっていった。投資会社は、不動産を処分をして、返還金を確保すると公表したが、すべての不動産を処分しても、投資金額の30%ほどにしかならない。

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▲公開された車内。駅は巴鉄の高さに合わせて設置される。まさに夢の交通システムの雰囲気だが、まったくの詐欺に利用された。

 

32名が出資法違反で逮捕され、800億円が消えた

さらに専門家から巴鉄に対する技術的な疑問も相次いで寄せられた。

大きな問題は車高だ。中国の法律では、車両の車高は最高でも4.5mと定められているのに、巴鉄は4.8mある。この最高車高4.5mに合わせて、信号機や標識が設置されているので、そのままでは、巴鉄が信号機などに当たってしまう可能性がある。

一方で、1階部分の空洞は2mしかないが、一般車両の車高は最高3.5mまでが許されている。車高の高いトラックなどが通行していた場合は、接触してしまう可能性がある。さらに、車両重量は100トンを超えると推測され、一般的な道路はこの重さを支える設計になっていないので、陥没などの事故が起こることが予想される。

投資会社は、このような問題は解決できると言っているが、道路強度を補強し、信号機や標識をより高い位置に付け替える、トラックやバスなど車高の高い車両の専用レーンを設けるなどの対応策をとった場合、建設費は地下鉄と変わらなくなってしまうのではないかという疑問も出された。多くの専門家が「高架式の都市交通システムを建設した方が賢い」と指摘した。

一部の投資家は、投資資金の返還を投資会社に申し入れたが、白志明代表との連絡がつかなくなった。7月になって、北京警察は、6月末に白志明以下32名を出資法違反の容疑で逮捕したと発表した。同時に、出資者保護のため、出資資金の保全を急ぐと公表したが、未だに48億元の行方がどうなっているかは解明されていない。

夢の交通システム「巴鉄」は、文字通り夢で終わることになった。

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▲車輪にはボギー機構などが付いているように見え、カーブも曲がれそうだ。車両後尾には信号機が点いていて、道路の信号と連動するという。

鉄道時刻表の暗号を解く (光文社新書)

鉄道時刻表の暗号を解く (光文社新書)

 

 

 

中国杭州市に無人スーパーが開店。Amazon Goより先に「レジなし」を実現

アリババのジャック・マー会長が、以前から「無人スーパーを開業する」と公言していたが、中国ネットワーカーからは「ホラ吹き」とまで言われるほど実現が疑問視されていた。しかし、7月8日、浙江省杭州市の杭州博覧センター内に「アリババ無人販売店」=無人スーパーが正式営業を始め、入場待ちの行列ができるほどの盛況だったと捜狐が報じた。

 

レジ処理不要のスタッフレススーパーは大盛況

杭州市に開業したアリババ無人販売店の一号店は、広さ約200平米で、同時に50人が買い物ができる。入り口には自動改札があり、スマートフォンに表示したECサイトタオバオ」またはアリペイのQRコードをかざすことで入場ができる。

驚くのは、レジがなく、精算処理が不要なことだ。自分で商品を選び、そのまま、精算用の通路を通るだけで、外に出られる。購入した商品が自動認識され、代金はアリペイから自動的に引き落とされる。

ジャック・マー会長は、以前から「Amazon Goよりも先進的な無人スーパーを開業する」と発言していたが、中国ネットワーカーたちからは、「無理だ」「ジャック・マーはホラを吹いている」と揶揄されていた。しかし、突如、その無謀な計画を実現したため、ネットワーカーたちは一転して「小売業の革命が起こった!」と絶賛することになった。

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▲アリババ無人販売店の様子。スマートフォンを使って、改札を通ることで、入場できる。奥にはカフェなども併設されている。同時に約50人が買い物ができる。

 

アリババが開発し、ワハハが販路を広げるTakeGo技術

この無人スーパーで使われている精算システムは、TakeGoと呼ばれ、深蘭科技が開発したものだ。スーパーの営業主体は、中国飲料メーカー最大手の哇哈哈(ワハハ)。約7000社の販売代理店と契約する巨大企業で、このチャンネルを通じて、TakeGo無人レジ技術を販売していく。数年内に2000店舗の無人スーパー開業を目指している。

TakeGo技術は、まだ発展途上にある。商品の識別はRFIDタグ(近距離無線タグ)で行うが、来店客の識別は、監視カメラによる顔認識で行う。そのため、商品棚やイートインの椅子、テーブルなどあらゆるところにカメラが設置されている。

最大の問題は、精算処理に数秒がかかることで、精算専用通路を歩かせるのは、歩いている時間で、処理に必要な時間を確保するための工夫だ。

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▲精算は不要で、精算専用の通路を通って外に出る。精算処理には数秒かかるため、歩く時間で処理時間を確保している。外に出ると、自動的にアリペイから代金が引き落とされる。

 

人件費が高騰する中国で発揮される強い競争力

システムは大掛かりだが、それでも営業コストは同規模スーパーの1/4程度だという。商品補充スタッフ、管理スタッフなどは、1人で10店舗を担当できる上、レジ要員が不要となるためだ。特に、現在の中国では、レジ要員のコストが最低でも一月5000元(約8万3000円)は必要で、毎年20%程度上昇し続け、この傾向は変わらないと見られている。人件費コストが上がれば上がるほど、無人スーパーは有人スーパーとの競争で優位に立てることになる。

この点がAmazon Goとコンセプトが異なっている点だ。Amazon Goは、レジに並ばなくていいというユーザー体験と、店内での行動を把握することで精密なマーケティングデータを取得することに主眼が置かれている。しかし、アリババ無人販売店は、人件費コストを抑えることで、競争力を高めることに主眼が置かれている。

先日、紹介した無人コンビニBingoboxも市民から歓迎され、これから中国は、無人店舗の時代に入っていく可能性がある。

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▲購入は一般のスーパーと同じ。商品棚には、カメラが埋め込まれていて、常時、顔認識により、個人識別が行われている。商品はひとつひとつにRFIDタグがつけられている。

すぐ分かるスーパーマーケット使える計数ハンドプック (すぐ分かるスーパーマーケットハンドブック)

すぐ分かるスーパーマーケット使える計数ハンドプック (すぐ分かるスーパーマーケットハンドブック)

 

 

 

 

中国の無人コンビニBingoboxが、1年で5000店舗出店を計画

Amazon GoなどのICT技術を使った無人店舗が話題を呼んでいるが、中国ではすでにBingoboxが10店舗を運営し、今後1年で5億元(約83億円)を投じて、5000店舗を開設する予定だと澎湃新聞が報じた。

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▲Bingoboxの外観。ガラス張りで、開放的な店舗デザイン。コンテナ設置方式なので、設置も移動も簡単だ。

 

すでに10店舗が営業中のスタッフレスコンビニ

現在、中国では24時間営業の無人スーパー、無人コンビニのスタートアップが乱立し、激しい競争をしている。その中で、頭ひとつ抜けてきたのが、Bingobox(ビンゴボックス)だ。昨年8月、広東省中山市に1号店を開設し、現在、中山市と上海市で合計10店舗を運営している。

Bingoboxは、店舗をコンテナ方式にしているので、簡単に設置、移動ができる。中型ボックスと大型ボックスの2種類が用意され、中型は4.8×2.6m、大型は6×2.6mの大きさがあり、それぞれ500種類、800種類の商品陳列が可能。

コンテナ方式なので、場所さえ確保できれば簡単に設置ができ、場合によっては人の流れによって、場所を移動することもできる。

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▲店舗内は、広くはないが、飲料、菓子類など500種類から800種類が陳列されている。

 

低コストで商品価格も安く設定されている

入店をするには、入り口でスマートフォンのWeChatペイのQRコードを読み込ませて本人確認をすると、自動ドアが開き中に入れる。店内の商品にはすべてRFIDタグ(近距離無線タグ)がつけられている。商品を選んだら、出口近くの精算用スキャナーの上に置くと、自動精算され、スマホのアリペイ、WeChatペイなどで支払いをすませると、出口の自動ドアが開く仕組みだ。

また、店内での行動は、顔認識機能がある監視カメラでモニターされているため、すでに数万人の利用者がいるが、万引きや故意による商品破損などは1件も起こっていないという。

RFIDタグの製造コストと商品への貼り付けコストは、1件あたり0.3元から0.5元程度で、全商品にタグをつけるコストは、スタッフ1人を雇用するコストもよりも小さいとBingoboxは説明している。また、コンテナ方式であるために、開店に必要な初期コストは、一般コンビニの1/4であり、営業コストは15%以下。どの商品がどれだけ売れたかというPOSデータもリアルタイムで取得するため、商品補充などの作業も効率的に行える。そのため、一般コンビニで2.5元で販売されている缶コーラが2.2元など、販売価格も一般コンビニよりも安く設定できる。

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▲店舗内は狭く、7、8人程度でいっぱいになる。左の入り口で、スマートフォンを使って本人確認をすると、ドアのロックが解除され、中に入ることができる。

 

暑さ対策、違法建築問題などトラブルも

ただし、問題も起きている。商品の誤認識により、精算金額が間違っているというトラブルが数件起きた他、上海欧尚店では、連日の暑さにより、チョコレート製品が溶けるというトラブルが起き、7月7日に営業をいったん停止した。防犯と開放的なデザインの両面から、ガラス張りの店舗デザインにしたため、直射日光が店内に入り込み、商品に悪影響を与えてしまった。エアコンは設置されているものの、利用客からも「店内が暑い」というクレームがあがっていた。「欧尚店は人気となり利用客が多かったため、エアコンの許容量を超えてしまいました。実際、10店舗のうち、このような問題が生じたのは欧尚店のみで、他の9店舗は通常通り営業しています」。

店舗前に遮光の日傘を設置する、店内のエアコンを増強するなどの措置を取り、13日に営業を再開したが、今度は上海市城市管理行政執法局から注文がついた。Bingoboxの店舗は、コンテナを運んできて置き、地面に止めているだけで、基礎を打っているわけではない。このため、建築コストが下がり、人の流れを見て、場所を簡単に移動できるという利点が生まれている。しかし、城市管理行政執法局では、基礎を打っていない建築物は違法建築の疑いがあると通知したのだ。現在、執法局の担当者とBingoboxで協議をしている。

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▲出口近くのスキャナーに商品を置くと、RFIDタグを読み取って自動清算が行われる。支払いはアリペイ、WeChatペイなどのスマホ決済。

 

1年で5000店舗の強気の出店計画

このようなトラブルはあるものの、Bingoboxは「1年以内に5000店舗」という強気の計画を進めている。必要な資金は5億元とされるが、中国系ベンチャーキャピタルからすでに1億元は調達済みだ。

集合オフィスビル、住宅小区(居住者のみ入れる集合住宅)などからの出店要請も多く、また地下鉄の出入り口の空きスペースを利用した出店も多く計画されているようだ。

中国のセブンイレブンは現在1500店舗、ローソンが1000店舗。最も出店数の多い国内系の易捷(イージエ)でも2万5000店舗。しかも、易捷はBingobox中型程度の小規模店舗が多い。1年後、中国のコンビニ地図が塗り替えられている可能性もある。

コンビニの傘はなぜ大きくなったのか ―コンビニファンタジスタ 知れば話したくなる、あなたの知らないコンビニ活用術26― (NextPublishing)
 

 

中国に登場した近未来テイストの睡眠カプセル

北京、上海、成都で睡眠カプセルが登場して話題になっていると、捜狐が報じた。日本のカプセルホテルにそっくりだが、違いは無人スマホで利用する点。空港や娯楽施設の空きスペースに置くことができ、今後拡大するのではないかと期待されている。

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▲広さは日本のカプセルホテルとほぼ同じ。USB、Wi-Fi完備。睡眠を促す青い蛍光灯が使用されている。

 

スマホでロック解除の無人睡眠カプセル

この睡眠カプセルは、カプセルホテルにそっくりで、広さは3平米ほど。常駐スタッフもいない。自分で、カプセルについたQRコードを専用アプリでスキャンすると、カプセルのロックが外れて中に入れるようになる。

カプセル横の棚に、ビニールパックされたブランケットの他、使い捨てのシーツと枕カバーなどが置いてあり、衛生面でも不安はない。さらに、USB充電口とWi-Fiが完備され、睡眠を促す青い蛍光灯が装備されている。内側からロックをすると、外から開けることはできず、内側からはスマートフォンで開けることができる。使用後には、自動的に紫外線消毒が行われる。

利用料金は30分6元(約100円)で、超過は1分0.2元となる。午前11時から午後2時までは、割増料金となり、30分10元、超過1分0.3元となる。

夜10時から朝8時まで利用した場合、120元(約1990円)となり、ビジネスホテルに泊まるよりも割安だ。さらに、昼間、ちょっと睡眠をとりたいというショート需要も狙っているという。

 

空きスペースに設置も可能

この睡眠カプセルの最大の特徴は、コンテナ式になっているため、空きスペースに簡単に設置ができるという点だ。一般的なホテルのシングル1室程度のスペース(10平米)に、6つの睡眠カプセルを設置することができる。

常駐スタッフは不要で、使用後に使用済みのシーツなどを回収交換し、清掃をする巡回スタッフだけで、サービスを提供することができる。

このため、カプセルホテルとして営業するよりも、空港や駅、大型娯楽施設の空きスペースに設置される需要を狙っているという。

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▲空きスペースに簡単に設置できるコンテナ構造になっている。空港、駅、娯楽施設などのほか、集合オフィスビルなどに置かれる例が多い。

 

問題はシャワーとトイレ

実際に使ってみた人が、すでにSNSに感想を投稿している。それによると、衛生面は問題ないと言っている人が多い。ただし、遮音性は十分ではなく、外の音はかなり聞こえるし、上下のカプセル内の音も聞こえ、それが気になったという人もいれば、逆に外の音が完全に遮断されると状況がわからずにかえって怖いという人もいた。

多くの利用者が問題にしたのが洗面所だ。トレイが近くにあるかどうかは、設置されている施設次第で、トイレまで遠く迷ってしまうケースもあったという。また、夜を過ごす場合、シャワーを浴びたい、顔を洗いたいということもあるが、そのような設備も、置かれている施設次第になってしまう。

それでも、大筋では歓迎されているようで、使用中は完全にロックされることから、女性の利用者も結構あるようだ。夜泊まるのに使うというよりも、夏の午後、数時間の昼寝をするために利用するという人が多いようだ。

中国にもホテルを営業するためには、安全面などの審査を受け、申請をしなければならない関係法規があるため、この睡眠カプセルは違法営業の無人ホテルではないかという指摘もある。そのため、宿泊よりも、短時間の睡眠需要を主体にし、集合オフィスビルの空きスペースへの設置を積極的に進めている。

スタンフォード式 最高の睡眠

スタンフォード式 最高の睡眠

 

 

中国ApplePayが、商品50%引き、ポイント50倍の大キャンペーンを実施

7月18日から24日までの1週間、中国ApplePayが指定した店舗での購入を50%割引、登録した銀行カードに付与されるポイントを50倍にするなどの大キャンペーンを実施すると、愛范児など複数のメディアが伝えた。中国ネットワーカーの間では「Appleがぶっ壊れた」「ポイントの稼ぎ時」などと盛り上がっている。

 

中国で大苦戦するApplePay

アップルがこのような大キャンペーンを実施する理由は、ApplePayが厳しい状況に追い込まれているから。市場調査会社「易観国際」の調査によると、昨年第四四半期のモバイルペイメントシェアは、アリペイ(アリババ)51.1%、財付通(WeChatペイ、QQ銭包など。テンセント)37.0%となっており、ApplePayはその他の1.88%の中に含まれてしまい、個別のシェアが記載されていないレベル。昨年2月、サービスイン直後は開始12時間で3800万枚の銀行カードが登録されたなど景気がよかったが、それきりになってしまった。

アリペイ、WeChatペイはQRコードで決済ができるため、店舗側ではタブレットスマートフォンのカメラを利用すれば、特別な機器を用意する必要がない。そのような決済方式が普及している中に、NFCリーダーを用意しなければ対応ができないApplePayは店舗から敬遠された。中国ApplePayは、アリペイ、WeChatペイを上回る利点を、消費者にも導入店舗にも示せないままの状態が続いている。

 

半額とポイント50倍。アップルのぶっ壊れ大盤振る舞い

そこで、アップルが一気に巻き返しを狙ったのが、この夏の大キャンペーンだ。北京、上海、広州、深圳の4都市で、Apple Payを使って決済をすると、支払金額が半額になるという大盤振る舞いだ(ただし、各チェーンにより上限金額が設定されている)。

半額になるのは、スターバックスセブンイレブンバーガーキングカルフール、GAP、ゴディバピザハットハーゲンダッツ、ワトソンズなど、アジア圏ではおなじみの店舗チェーン。また、ApplePayに登録している銀行カードに付与されるポイントも最高50倍になる。

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▲中国Appleの公式サイトでの告知。ApplePayとしては初の大型キャンペーンとなる。

 

シェアを落とした銀聯スマホペイに参戦。最終決戦が始まった

中国では、個人信用の問題からクレジットカードが限定的にしか普及しなかった。そこで一気にシェアを伸ばしたのが銀聯カードだ。銀聯カードは、40数行の銀行が連合したデビットカードで、使い勝手はクレジットカードとほぼ同じ、決済は即時、ショッピング上限額は銀行口座残高というもので、中国人が海外旅行に行く時の必須アイテムとなった。

しかし、アリペイ、WeChatペイといったモバイルペイメントが登場すると、銀聯はシェアを急落させる。モバイルペイメントは、店舗側が、スマホ1台を用意すれば対応できることから、大都市ではほぼ100%の店舗が対応している。銀聯は、導入コストがかかることから、一般商店、特に零細小売では対応していない店舗がまだ多い。このため、消費者はより便利なモバイルペイメントに流れたのだ。大都市では、万が一のときのためにカバンに50元札を1枚入れておき、それ以外は財布やお金を持たないという若者が珍しくなくなっている。

昨年2月に、ApplePayが中国でサービスをスタートさせた時、銀聯はApplePayへの対応を表明し、巻き返しを狙った。しかし、昨年12月には、銀聯QRコードを使ったモバイルペイメント市場への参入を表明した。これで、中国のペイメント市場が、プラスティックカードではなく、QRコードを使ったスマホ決済が主流になることが決定的になった。ApplePayは同じスマホ決済といっても、NFCリーダーを必要とし、店舗内ネットワークをセキュリティ基準に対応させる必要がある導入コストが高い決済方法になってしまったのだ。

今回のApplePayの大キャンペーンは、アップルにとって、この悪い流れを引き戻そうとする試みであることは間違いない。しかし、中国の専門家たちは「もう、銀聯やアップルが座る椅子は用意されていない。1年遅かった」と見ている。

今後の中国ペイメント市場がどちらに向いて行くのか、今回のApplePayキャンペーンの成功いかんによって、流れは決定的になるかもしれない。アップルは、最終決戦だと感じていることだろう。