中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国ApplePayが、商品50%引き、ポイント50倍の大キャンペーンを実施

7月18日から24日までの1週間、中国ApplePayが指定した店舗での購入を50%割引、登録した銀行カードに付与されるポイントを50倍にするなどの大キャンペーンを実施すると、愛范児など複数のメディアが伝えた。中国ネットワーカーの間では「Appleがぶっ壊れた」「ポイントの稼ぎ時」などと盛り上がっている。

 

中国で大苦戦するApplePay

アップルがこのような大キャンペーンを実施する理由は、ApplePayが厳しい状況に追い込まれているから。市場調査会社「易観国際」の調査によると、昨年第四四半期のモバイルペイメントシェアは、アリペイ(アリババ)51.1%、財付通(WeChatペイ、QQ銭包など。テンセント)37.0%となっており、ApplePayはその他の1.88%の中に含まれてしまい、個別のシェアが記載されていないレベル。昨年2月、サービスイン直後は開始12時間で3800万枚の銀行カードが登録されたなど景気がよかったが、それきりになってしまった。

アリペイ、WeChatペイはQRコードで決済ができるため、店舗側ではタブレットスマートフォンのカメラを利用すれば、特別な機器を用意する必要がない。そのような決済方式が普及している中に、NFCリーダーを用意しなければ対応ができないApplePayは店舗から敬遠された。中国ApplePayは、アリペイ、WeChatペイを上回る利点を、消費者にも導入店舗にも示せないままの状態が続いている。

 

半額とポイント50倍。アップルのぶっ壊れ大盤振る舞い

そこで、アップルが一気に巻き返しを狙ったのが、この夏の大キャンペーンだ。北京、上海、広州、深圳の4都市で、Apple Payを使って決済をすると、支払金額が半額になるという大盤振る舞いだ(ただし、各チェーンにより上限金額が設定されている)。

半額になるのは、スターバックスセブンイレブンバーガーキングカルフール、GAP、ゴディバピザハットハーゲンダッツ、ワトソンズなど、アジア圏ではおなじみの店舗チェーン。また、ApplePayに登録している銀行カードに付与されるポイントも最高50倍になる。

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▲中国Appleの公式サイトでの告知。ApplePayとしては初の大型キャンペーンとなる。

 

シェアを落とした銀聯スマホペイに参戦。最終決戦が始まった

中国では、個人信用の問題からクレジットカードが限定的にしか普及しなかった。そこで一気にシェアを伸ばしたのが銀聯カードだ。銀聯カードは、40数行の銀行が連合したデビットカードで、使い勝手はクレジットカードとほぼ同じ、決済は即時、ショッピング上限額は銀行口座残高というもので、中国人が海外旅行に行く時の必須アイテムとなった。

しかし、アリペイ、WeChatペイといったモバイルペイメントが登場すると、銀聯はシェアを急落させる。モバイルペイメントは、店舗側が、スマホ1台を用意すれば対応できることから、大都市ではほぼ100%の店舗が対応している。銀聯は、導入コストがかかることから、一般商店、特に零細小売では対応していない店舗がまだ多い。このため、消費者はより便利なモバイルペイメントに流れたのだ。大都市では、万が一のときのためにカバンに50元札を1枚入れておき、それ以外は財布やお金を持たないという若者が珍しくなくなっている。

昨年2月に、ApplePayが中国でサービスをスタートさせた時、銀聯はApplePayへの対応を表明し、巻き返しを狙った。しかし、昨年12月には、銀聯QRコードを使ったモバイルペイメント市場への参入を表明した。これで、中国のペイメント市場が、プラスティックカードではなく、QRコードを使ったスマホ決済が主流になることが決定的になった。ApplePayは同じスマホ決済といっても、NFCリーダーを必要とし、店舗内ネットワークをセキュリティ基準に対応させる必要がある導入コストが高い決済方法になってしまったのだ。

今回のApplePayの大キャンペーンは、アップルにとって、この悪い流れを引き戻そうとする試みであることは間違いない。しかし、中国の専門家たちは「もう、銀聯やアップルが座る椅子は用意されていない。1年遅かった」と見ている。

今後の中国ペイメント市場がどちらに向いて行くのか、今回のApplePayキャンペーンの成功いかんによって、流れは決定的になるかもしれない。アップルは、最終決戦だと感じていることだろう。