台湾のスマホ決済の種類が多すぎて、便利なのか不便なのかわからない状態になってきている。それでも、商店主はすべての決済方法に対応しようと努力を続けていると東森新聞が報じた。
台湾では国内系決済方式だけでも10種類以上
台湾では、そもそも国内系のスマホ決済が乱立し、10種類以上が普及を競ってきた。そこに、海外の決済方式も入ってきて、主だった決済方式だけでも20種類近くになっている。
台湾は小さな島なので、貿易と観光が重要な産業であり、また、地理的な利点から、中国、日本、韓国からの観光客が多い。さらに、シンガポールや香港を経由して、欧米からの観光客もくる。台湾人特有の「なんでも受け入れる」というおおらかな感覚もあって、海外の決済方式にもどんどん対応していった。
日本からはLINE Pay、韓国からはSamsung Pay、米国からはAndroid Pay、Apple Pay、中国からは銀聯、アリペイ、WeChatペイ。外国人観光客の多い地域では、国内系決済方式に加えて、このような海外の決済方式にも対応をしている。
▲台北市内のファミリーマートには、このようなステッカーが貼ってある。16種類の決済方式に対応し、ICクレジットカード、悠遊カード(交通カード)にも対応している。さらに、ApplePay、AndroidPay、SamsungPayなどのスマホ決済にも対応していくことになるだろう。決済方法は増えていく一方だ。
店舗では決済方式をめぐって混乱も
東森新聞記者は、多くの外国人観光客が訪れる台北市永康街の商店街を取材した。かき氷店の女性店主が、支払をする客に尋ねている。「現金ですか、カードですか?」ーースマホで支払います。「街口?アリペイ?悠遊カード?」ーーありません。「ApplePayは?」ーーあります。客ごとにこんな会話を重ねてからでないと決済ができない。
しかも、決済方式によって、ICカードリーダー、NFCリーダー、バーコードリーダー、QRコードリーダーと使う器具が違ってくる。レジ操作を覚えるだけでも一苦労だ。
それでも商店主たちは歓迎をしている。永康商圏発展協会の劉鴻翔理事長は東森新聞の取材に答えた。「海外からの観光客は、みな異なる決済方式を使っています。私たちは、そのすべてに対応していかなければなりません」。種類が多すぎて、面倒はあるが、それでも消費を刺激して売り上げに貢献し、釣銭を用意する手間が省けることは大きいという。
さらに、台湾では夜市が盛んだ。夕方から夜遅くまで、露店がでる場所が市内にたくさんあり、多くの人で賑わう。夜市では、売上金の保管が以前から問題になっていた。これもスマホ決済が増えれば、解決される。
▲東森新聞による台北市永康街のレポート。「各商店は、数十種類の決済方式に対応している」という内容。
それでも受け入れているおおらかな台湾人
しかし、それにしても決済方法の種類が多すぎる。台北市のホテルに勤務する若い女性曹さんは、財布と現金を持ち歩くのをすでにやめている。「朝起きると、GOMAJIアプリを起動して、出勤途中にある朝食のお店を検索します。そこでの支払いはGOMAJIでします。ファミリーマートで買い物をするときは欧付宝で支払い、セブンイレブンではPi銭包で支払います。タクシーは楽点行動支付アプリで呼んで、このアプリで料金を支払います。病院に行ったときは医療行動支付で支払います」。
財布は持たないが、スマートフォンの中には決済アプリが10種類以上入っていて、支払い先によって使い分けをしなければならない。それでも、現金支払いよりはずっといいと言う。「現金を使っていた時は、小銭がどんどんたまって、財布が膨らんでしまいます。それがなくなりました」。台湾では商店の競争が激しく、多くの商品が10台湾ドル、20台湾ドルというキリのいい価格ではなく、9.8台湾ドルといった価格設定になっている。レジでこまめに小銭を出すようにしていかないと、あっという間に小銭がたまっていく。
▲永康街のかき氷屋でのやり取り。支払いの前に、現金→カード→スマホ決済というやり取りがあり、さらにはどの決済方式であるかによって、使用する機器が違ってくる。
乱立気味の日本は、台湾に学ぶべきことが多い
ただし、次第に、QRコードとNFCによる方式に集約されていく傾向は見え始めている。ICクレジットカードやバーコード式の決済方式は次第に減少する傾向にあるという。現在、伸びているのは、各コンビニ、レストラン、タクシーに対応した街口(QRコード方式)と、クレジットカードや悠遊カード(交通カード)が登録できるNFC方式のt walletなどで、またクレジットカード、悠遊カードをスマホのSIMカードに登録できる中華電信のNFC SIMなども利用者が増えているという。
決済種類が多すぎて、レジでのオペレーション時間が現金よりも長くなっている場面や、店舗と消費者の決済方式が合わず、支払いができずにトラブルになっている場面も街中ではときどき見かける。便利になる反面、不便も多いのが現状だ。しかし、おおらかな台湾人は、デメリットよりもメリットの方に注目し、次第に決済方式も集約されていこうとしている。
日本も今のままでは、電子決済方式が乱立し、台湾と似た状況になりかねない傾向がでてきている。私たちは、台湾の人たちのように、メリットだけに注目して、乱立を乗り越えることができるだろうか。
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