中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

フードデリバリーの「付近のお店」検索順位の背後にあるアルゴリズムとは

フードデリバリーで最もよく使われる「付近のお店」検索。この検索順位は一定のアルゴリズムで決定される。そのアルゴリズムは飲食店に公開されているため、飲食店は検索順位をあげる施策をとることで、人気店になれるように設計されていると易旨語餐飲商学院が報じた。

 

フードデリバリー利用経験者は43.7%

美団(メイトワン)、餓了麼(ウーラマ)のフードデリバリーを使うのはすっかり普通のことになっている。特に昨年はコロナ禍による外出自粛もあり、フードデリバリーの利用経験者が4億人の大台を突破し、今年に入って5億人に近づいている。スマートフォンを使っている人の43.7%が利用していることになる。

特に80后、90后と呼ばれる20代から30代の利用が多く、昼は会社に、午後はコーヒーを、夜は自宅にという「1日3回」利用する人も珍しくなくなっている。20代、30代に限れば60%以上の人が利用したことがある。

利用者へのリコメンドになっている「付近の飲食店」表示

頻繁に利用される第1の理由は、もちろん、持ってきてくれるという利便性。さらに、さまざまなクーポンが配布をされ、実質配送料が無料になることが多いことなどがある。

もうひとつの理由が、「付近の飲食店の検索」だ。自宅などの同じ場所で検索をしても、表示される飲食店の内容が変わる。しかも、距離が近い順ではなく、総合格付けが高い順に並ぶため、上から選んでいけばほぼ失敗をしない。付近の検索に新しい飲食店が登場をすると、利用してみたくなるのだ。

この順位は、顧客からの評価だけでなく、さまざまな指標が総合されて決められている。飲食店はこの順位決定アルゴリズムに敏感に反応をする。順位が上になればなるほど、利用者の目に留まり、売上が増えていくからだ。

f:id:tamakino:20210224090637p:plain

▲美団の「付近のお店」検索。単なる距離順ではなく、複雑なアルゴリズムで順位は刻々と変わる。順位が変わることで、利用者は新鮮さを感じ、コンバージョンがあがる。

 

リコメンド指標に使われる5つの指標

この順位は主に5つの指標で決められている。

1:売上と注文数

2:店舗の格付け指標

3:コンバージョン

4:時間帯

5:利用者特性

 

人気のある優良店ほど検索上位になる

店舗指標のうち、最も大きいのがデリバリーの売上と注文数だ。売上が大きく、注文数が大きいことはすなわち人気店と見なすことができるため、最も順位に影響を与える指標になっている。特に直近7日間の売上と注文量が大きく影響する。

次に影響を与えるのが、店舗の格付けだ。味、包装、配送時間などを利用者が星で評価する。全利用者の平均値がその飲食店の格付けとなる。ウーラマでは過去すべての平均ではなく、直近90日間の平均をとっている。この格付け評価は、順位に大きく影響をするため、極端に低い格付け評価をした利用者がいると、飲食店の担当者がメッセージを送り、謝罪などの対応を取り、格付け評価を削除してもらうこともある。

さらに店舗異常率も考慮される。注文の取消率、注文の訂正率、配送の遅延率、クレーム率などだ。また、営業時間は長ければ長いほど有利になる。

さらに重要なのが、クーポンの割引率だ。キャンペーンなどで割引クーポンを配布すると、割引率指標が上がるため、検索順位が上位に移動することになる。

 

コンバージョン、リピート率も順位に影響

コンバージョンも順位に大きく影響する。利用されるコンバージョンは、入店コンバージョンと注文コンバージョンの2つだ。店舗リストを見た人のうち、店舗ページを開いた人の割合が入店コンバージョン、入店した人のうち注文をした人の割合が注文コンバージョンだ。

さらに、同じ利用者が、同じ店舗を再度利用するリピート率も考慮される。

 

時間帯別に検索順位は再計算される

時間帯は5つに分類されている。朝食、昼食、おやつ、夕食、夜食だ。この時間帯によって、順位指標の計算が別々に行われるため、時間帯によって付近検索の順位はがらりと変わる。例えば、朝食時にはおかゆの店が上位にきて、午後にはカフェが上位にくるということが起こる。

さらに、この順位は全員に対して同じではない。利用者の利用履歴などから、格付け評価の高いジャンルの飲食店の指標が高くなるように設計されている。

 

検索順位を上げることが優良店になる目安になっている

このような順位アルゴリズムであるため、利用者から見ると、自分の好きなジャンルで、割引率が高く、評判もいい飲食店が上位にくるようになる。しかも、時間帯によって内容がガラリと変わり、朝食やカフェなど、シーンに合わせたないようになる。つまり、フードデリバリーのミニプログラムを開いて、付近の検索の上位を見て、利用したことのない飲食店を安心して利用することができる。

飲食店にとっても、このようなアルゴリズムは営業の指針となる。フードデリバリーのセミナーなどで、このような指標は詳しく解説されるため、それをKPIとしてそれぞれの指標を高める工夫をしていくことができる。それが検索順位をあげることにつながり、売上を増やすことになるのだ。

消費者がより利用をするようになり、飲食店がより売上をあげられるようになるということは、フードデリバリープラットフォームの売上もあがることにつながる。

フードデリバリーが生活に定着をし、いまだに成長を続けているのは、このような三者ウィン・ウィン・ウィンになるようなアルゴリズム設計がなされていることも大きい。