新型コロナウイルスの感染拡大で、中国はさまざまなテクノロジーを一気に投入した。位置情報から感染リスクを自動計算する感染コードも200都市以上で採用されている。投入されたテクノロジーはそれだけはなく、今後も新しい日常の中で定着をしていくものがたくさんあると伝感器技術が紹介している。
01:陰圧救急車
患者を密閉ドーム内に入れ、陰圧にすることで、患者の呼気が外に出ないようにし、救急隊員の二次感染を防止するもの。ドーム内の空気は回収され、浄化してから車外に排出する仕組みになっている。
また、救急車のキャビン内も10-30hPa減圧されていて、万が一、キャビン内が汚染されても、救急車の外に汚染が及ぶことはない。
2020年2月1日に、江鈴汽車が陰圧救急車を武漢市に提供し、合計10台を寄贈した。さらに、2月16日には上海汽車大通汽車が104台の陰圧救急車を湖北省に提供するなど、感染拡大で陰圧救急車の需要が急増した。
▲江鈴汽車は陰圧救急車を武漢市に10台寄贈した。キャビン内が陰圧になっているため、汚染された空気を車外に出すことなく、患者を搬送できる。
▲陰圧救急車の中には、患者を入れる密閉ドームが設けられている。救急車に同乗する医療従事者の感染を防止する。また、キャビン内全体も陰圧されていて、万が一の場合でも、汚染された空気を車外に出さない。
02:無人カート
感染が拡大をした武漢市では、人と人との接触を断つため、京東が物資輸送に無人カートを投入した。すでに各都市の一部で無人配送は行われていたが、固定路線や施設敷地内など、安全性に配慮をして、走行区域を限定していた。それが感染拡大により、期せずして本格運用をすることになった。
主に医療機関に対する配送を受け持ち、1台で一度に24個分の荷物を運べる。エンジニアが地図上で配送ルートを指定し、自動運転。監視員がリアルタイムで運行を監視するという方式で行われた。
また、ファーウェイも5Gによるリモート監視が可能な自動運転車を投入した。人も乗せることができ、隔離地区への人と物資の輸送に使われた。
また、一部のレストランで採用されていた食事配送カートも病院や隔離施設内で広く使われた。入院患者に食事や薬などを運搬した。
▲京東が投入した無人配送カート。すでに一部の固定路線で、配送に利用されていたが、封鎖された武漢市に投入された。主に医療施設への配送を担当した。
▲ファーウェイによるリモート監視可能な自動運転車も投入された。医療従事者や患者などを搬送する目的で使用された。
▲配食カートは病室の前に到着すると音声で通知。患者自身が必要な食事、医薬品などを受け取る。カートにも触れる必要がないため、医療従事者の感染防止に役立った。
03:消毒ロボット
隔離地区の消毒は、感染リスクが高い作業であることから、消毒ロボットも投入された。紫外線を照射して、消毒液を噴霧しながら、必要地域を移動していく。消毒ロボットは、ドアを自分で開け、エレベーターにも乗り、バッテリーや消毒液が少なくなると、自動的に充電ステーションに戻ってくるなど、人の操作をほとんど必要としない。
▲医療施設などでは、消毒ロボットが活用された。部屋を無人にして、紫外線を放射して部屋を消毒する。
▲広域を消毒するためにドローンが活用された。農薬散布と同じように、下に向かって消毒薬を噴霧する。
04:人工知能電話
社区(コミュニティー、町内会)では、地域住民の状況を知る必要があるが、多くの場合、一軒一軒電話をして状況を尋ねるという形になるが、これは膨大な作業となり、ボランティアだけでは賄いきれない。
そこで、多くの社区が百度のAI電話ロボットを導入した。自動的に電話をかけ、合成音声で相手と会話をし、質問に対する答えを聞き取り、テキスト化して自動的に集計してくれるというものだ。
人間が行なった場合、3人が8時間電話業務を行ったとしても、200件から300件が限界。しかし、百度のAI電話ロボであれば、100回線を使って、2時間で8000件から1万件をこなすことができる。
05:簡易検査キット
博奥生物(キャピタルバイオ)は、清華大学、四川大学などの協力を得て、新型コロナウイルスを含む6種類のウイルス性呼吸疾患を同時に判定できる検査キットを開発し、広く使われた。口や喉から採取した分泌物により検査ができ、1時間半で結果が判明する。
複数の疾病を同時に判定することで、医療機関の負担を大きく減らすことができた。
▲博奥生物が開発した簡易検査キット。新型コロナウイルスを含む6種類のウイルス性呼吸器疾患を1時間半で特定できる。実践投入され、陽性検査に活用された。
06:無接触スーパー
武漢市に10日間で建設された火神山、雷神山の2つの入院施設には、医療従事者、入院患者のために無接触スーパーが併設された。中百倉儲とアリババ傘下の淘鮮達が共同して、24時間で設備設置、商品の搬入が行われた。
販売しているものは衛生関連用品とインスタント食品が中心。店員もいない、レジ要員もいないという無人で、スタッフの感染リスクがないため、入院患者も利用ができる。レジはセルフレジになっていて、スマホ決済。レシートも発行されないため、感染リスクは最小限に抑えられている。
▲武漢市に建設された入院施設には、24時間無接触スーパーが開設された。レジスタッフなどは存在しない無人スーパーであるため、入院患者も利用ができる。わずか24時間で準備され、開店をした。