中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アリババ、京東、拼多多が繰り広げる激しい争い。京東と拼多多はチキンレースの様相

EC業界の上位が変化の時期に入っている。従来は、1位アリババ、2位京東が不動の位置にいたが、ソーシャルECという新しいスタイルで登場した拼多多が、流通総額、月間アクティブユーザー数などで第2位に躍り出た。しかし、営業収入で見ると京東が1位になる。それぞれに異なるスタイルであるため、複雑な競争状態になってきていると新京報が報じた。

 

下沈をするアリババ、上行をする拼多多

中国のEC3巨頭は、アリババ、京東(ジンドン)、拼多多(ピンドードー)の3つ。しかし、それぞれに性格に違いがある。

アリババのCtoC「淘宝」(タオバオ)、BtoC「天猫」(Tmall)は、マッチングサービスであり、物流は宅配便企業に委託をし、アリババは原則在庫をもたない。日本で言えば、楽天に近いスタイルだ。京東は在庫を持ち、物流センターをもち、配送まで行う。日本で言えば、アマゾンが自前で配送までするようなスタイル。拼多多はソーシャルECという独特のスタイルをとっている。複数人で共同購入をする仕組みで、共同購入者を募るためにSNS「WeChat」で商品情報が拡散をしていく。

もうひとつ大きな違いが、アリババと京東は、都市住人を基本顧客としている。しかし、以前から頭打ち感が出ているため、地方都市や農村へ拡大しようとしている。このような方向性は、「下沈」(市場を下側に求めていく)と呼ばれる。

一方の拼多多は、低価格の商品を中心にし、ECの空白地帯になっていた地方都市や農村で成功をした。現在では、アリババや京東とは逆に、都市へ進出しようとしている。このような方向性は、「上行」と呼ばれている。

現在のEC業界は、この下沈と上行が交錯をして、次第に同じところに収斂するというプロセスが進んでいる。


頭打ちのアリババ、急成長の拼多多

各ECが新たな市場拡大を急いでいるのは、少子化の影響により人口ボーナスが消失をするからだ。中国の世代人口は20代後半をピークに減少に転じる。10代後半では、20代後半の4割近く人口が減少する。このため、各ECは新たな市場を獲得して、人口ボーナス消失に対応しようとしている。

2019年はその頭打ち感が鮮明になった。

アリババの流通総額(GMV)の成長率は2015年が46%であったのに、2019年は19%に低下をした。京東では78%だったものが24.36%に低下をした。

一方で新興の拼多多は急成長中だ。2017年にGMVが1412億元であったものが、2019年には1兆0066億元(約15.3兆円)となり、わずか3年で1兆元の大台を突破した。アリババが1兆元を突破するのには14年かかっていて、京東が1兆元を突破するのには20年かかっている。拼多多がEC界の台風の目になっていることは疑いようがない。

一方で、営業収入を見ると、物流配送まで行う京東が最大になっていて、マッチング手数料のみのアリババ、拼多多は小さい。特に拼多多は、低価格商品が中心になっているため小さい。利用者数、GMVでは第2位になった拼多多だが、企業としての売上である営業収入の面ではまだまだアリババ、京東の足元にも及ばない。そのため、「拼多多は第2位のEC」と言う時、厳密には「注釈付きの第2位」にならざるを得ない。

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▲流通総額ではアリババが圧倒的だが、販売業者と消費者のマッチングのみのサービスなので、営業収入はさほど大きくない。一方で、在庫を持ち、物流まで自社で行う京東は営業収入が大きく、京東の強みとなっている。拼多多は資金を優待施策に惜しみなくつぎ込んでいるために、営業収入はきわめて小さい。

 

利用者数は3巨頭とも伸ばしている

3巨頭はいずれも方向は違うものの新しい市場へと拡大しているため、利用者数は順調に伸ばしている。2019年、アリババは7500万人、京東は5670万人、拼多多は1.67億人の新たな利用者を獲得した。

これにより、各アクティブユーザー数は7.11億人、3.62億人、5.85億人となり、拼多多が第2位のECに躍り出た。それだけではなく、2020年に第1位のアリババ を抜くかどうかが注目されるほどになっている。

アリババと京東の新規利用者の6割から7割は下沈市場からのもので、市場拡大策がうまくいっていることを示している。拼多多のGMVのうち、都市住人によるものは2019年頭では37%のものが、2019年末では48%に増加をしている。こちらも市場拡大策がうまくいっていることを示している。

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▲月間アクティブユーザー数の変化。アリババが1位であることは揺るがないが、2018年Q2に拼多多が京東を抜いて、EC業界が大きく動こうとしている。

 

拼多多が始めた「百億補助」が広まる

拼多多が急成長をしている理由のひとつが「百億補助」キャンペーンによる。これは拼多多が買い物に補助金を出すというもので、実質的な割引価格となる。特に、iPhoneのように納入価格が高いために割引をしづらい商品も実質的な割引価格となるため、これをきっかけに拼多多のユーザーとなる人が多い。2019年の独身の日セールでは、最新のiPhone 11に大幅な補助をし、実質、他ECと比べて5000円から1万円も安く購入できるようにした。これで、拼多多は独身の日セールで、40万台のiPhoneを販売した。

2020年になっても、拼多多はこの「百億補助」キャンペーンをさらに進め、「百億補助節」というお祭りにし、500万件の商品に対して、20%から50%の補助金を出している。

アリババ、京東も、これに対抗して、アリババは2020年1月から、京東は2019年の11月から「百億補助」キャンペーンを始めている。

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▲拼多多は、大型の優待施策を行うため営業費用が大きく、流通総額の増加とともに営業費用も膨らんでいる。一方で、京東も拼多多に対抗するために営業費用が増加傾向にある。

 

拼多多の「投資資金燃焼戦略」は今年も続く

拼多多の創業者、黄崢(ホワン・ジャン)によると、2020年の最大優先事項は「投資資金の獲得」だと言う。つまり、拼多多は2019年と変わらず、百億補助などの大盤振る舞いのキャンペーンを継続し、市場拡大を最大の目標にしていくことになる。

しかし、当然ながら、このような補助金を出すということは、経費が膨らみ、利益は圧縮されていく。そのため、拼多多は現在でも赤字で、豊富な投資資金を燃焼しながら市場を拡大している状況だ。「百億補助」キャンペーンで拼多多を追従する京東も営業費用が上昇傾向にあり、どこかで脱出をしないと、将来、財務体質を弱める、あるいは破綻をさせかねない。京東と拼多多は、チキンレースの消耗戦に入っていて、これをどのように収束させるかが注目されている。

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