中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

車をロボットが収納していくスマート駐車場

駐車場不足に悩む中国で、ロボットを使ったスマート駐車場ビジネスが興り始めている。既存の駐車場よりも運営コストが低く、駐車容量は最大40%もアップすることができると杭州網が報じた。

 

駐車場不足に悩む中国の大都市

次々と奇想天外なビジネスが誕生している中国。そこにまた新しいビジネスが登場した。スマート駐車場だ。

中国の都市部は、どこも駐車場不足に頭を悩ませている。中国の都市というと、片道5車線もある広い道路が東西、南北に走り、道路事情はよさそうに見えるが、あれは交通目的ではなく、治安維持のため。有事の際は戦車の通路となり、戦闘機の滑走路となる。また、市民暴動が起きた際は、幹線道路にバリケードを築き、ブロックを分断して抑え込むというものだ。

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▲中国都市の大通りは、片道5車線もある広いものだが、一歩、裏通りに入ると歩道もなく、狭い。

 

車で出かけると止めるところがない

幹線道路以外の支線は、いきなり歩道もない裏道になる。都市そのものが自動車を想定せずにデザインされたために、大きな駐車場を備えている施設は少なく、最近の再開発でショッピングセンターなどの地下に大規模な駐車場ができるようになった。

そのため、つい最近まで、自動車は裏道に路上駐車するか、歩道に乗り上げて止めておくしかなかった。それも今では取り締まりが厳しく、車で出かけたはいいが止めるところが見つからないということが頻繁に起きている。ライドシェアが進んでいるのも、このような状況と無関係ではない。

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▲中国の都市では駐車場が圧倒的に足りていない。一方で、取り締まりは厳しい。自動車で出かけた時は、駐車場探しが悩みのタネになる。

 

ロボットが車を運んで収納する

このスマート駐車場は、旧式の駐車場の容量を40%も増やすことができる。わずか10cm足らずの板なのだが、2.6トンまでの自動車(一般的に7人乗りまでの乗用車)を乗せて、走ることができる。

駐車する車は、この板の上に乗せ、後は板が自走して、空いている場所に移動する。車のように走行するのではなく、直角に真横に走ることもでき、その場で回転することもできる。そのため、走行レーンはギリギリまで狭くできる。

人が降りてからロボットが駐車スペースに運ぶので、隣の車との間隔をギリギリまで詰めることができる。駐車場から出すときは、入り口で自分の車を呼ぶと、板が自走して入り口に出てくるという具合だ。

しかも、この自走板は1つの駐車場に数台でかまわない。車は台の上に乗せ、自走板は台ごと車を運び、所定の位置で、台を置いてくるだけ。パーキングタワーなどと比べても、極めて低コストで済み、何より、空間さえあれば、少しの改修でスマート駐車場にできるのが魅力だ。

すでに杭州極木科技が、この駐車ロボットを開発し、数千万元の投資資金を獲得することに成功している。また、海康威視は、すでに陝西省烏鎮でスマート駐車場を開業している。

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▲ロボットは、真横に走ることも、その場で回転することもでき、走行スペースもギリギリまで狭くすることができる。

 


厉害!中国人工智能停车场!海康威视的自动泊车机器人 2分钟停好精度误差小于5mm 完美停车问题!| 一闪科技

▲海康威視のスマート駐車場を取材したニュース映像。誤差5mmで車を収納できると報じられている。

 

車を台に乗せ、台ごと運ぶことで実現化

レノボの副総裁だった祁衛博士は、車を駐車場に入れるたびに思っていた。「なんでこんな面倒で、つまらない仕事をロボットにやらせないのだろう?」。そして、2016年7月に杭州極木科技を設立し、自走板式の駐車ロボットの開発を始めた。

技術開発は簡単ではなかったという。ひとつは、車の下に入れるロボットだから厚みを持たせるわけにはいかない。それで十分な強度をだし、軽快に自走させる技術開発は簡単ではなかった。

もうひとつの問題が、駐車ロボットと自動車をどうやって接続するかだ。ただ乗せただけでは、自動車の底面を傷つけてしまう。

途中に台をかませて、車をこの台の上に乗せ、台を運ぶというアイディアが出た時に、開発が前に進み始めた。

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▲海康威視が開発したシステム。すでに烏鎮で、スマート駐車場を開業している。

 

駐車容量は最大40%もアップ

このスマートパーキングでは、駐車容量が30%から40%もアップする。祁衛博士は、杭州網の取材の応えた。「車を転回するスペースが不要で、ドアの開け閉めをするスペースも不要です。車を隙間なく並べることができるため、駐車場の容量は30%から40%程度増加します」。

平均的な都市の駐車場では、車の出し入れに約120秒程度だという。これはタワーパーキングとほぼ同じ時間だ。

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杭州極木科技が開発したロボット。海康威視のものよりさらに薄くなり、厚みは10cmに満たない。

 

設備も照明も不要。空間さえあればいい

「統計によると、中国全体で100万箇所以上の駐車場がありますが、そのうちの10分の1程度の駐車場で、この駐車ロボットを導入することができます。市場はものすごく大きい」と祁衛博士は期待をする。

さらに、スマートパーキングでは、ロボットが自走するので、指示標識、レーンマーク、信号、車止めなどの施設も不要だ。さらに、祁衛博士によると「照明も不要」。ただ空間さえあればいい。運営コストは極限まで絞り込むことができる。

真っ暗な空間の中を駐車ロボットが走行し、車を“収納”していく。中国の駐車場は様変わりしていくかもしれない。

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▲海康威視のシステムは、宅配物流の仕分け場でも応用されている。

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