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諸葛孔明の木牛流馬の国、中国で盛んになる四足歩行ロボットの開発

ボストンダイナミクスが開発した四足歩行ロボットSPOTの販売が開始されている。中国では、四足歩行ロボットと言えば、諸葛孔明が開発した木牛流馬が有名だ。ボストンダイナミクスに刺激を受け、中国ではさまざまな研究チームが四足歩行ロボットを開発し、スタートアップ企業も生まれていると兎兎正能量が報じた。

 

ボストンダイナミクスのビッグドッグに刺激された中国

MITからスピンアウトして創業されたボストンダイナミクスが、数々の驚異的なロボットを発表してきたことはよく知られている。その中でも有名なのが2005年に発表された四足歩行のロボット「ビッグドッグ」だ。山岳地帯を踏破する兵士を追尾して、180kgの荷物を積載して、時速5.3kmで歩行することができる。

三国志が好きな人は、このビッグドッグを見て、すぐに諸葛孔明の「木牛流馬」を連想した。もちろん自律的に走行することはできず、手押し車のようなものだと考えられているが、兵糧を運ぶのに使われていたと考えられている。

当然ながら、中国人であればこのタイプのロボットは自分たちが元祖だと考えることだろう。大学、軍事関連企業で一斉にビッグドッグ的な四足歩行ロボットの開発が始まっている。

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諸葛孔明が考案をした木牛流馬。兵糧などの物資輸送に使われたことはわかっているが、その原理や構造などは不明だ。

 

軍事兵器開発企業が開発した木牛流馬

その中でも開発が進んでいるのが、2014年6月に、中国兵器工業集団中国北方車両研究所に、兵器地面無人プラットフォーム研究開発センターが設置され、9月には中国版ビッグドッグを発表している。

自重は130kg、荷物積載量は50kg、最大速度は時速6.0km、後続時間は2時間、登坂能力は30度というものだ。

この他にもさまざまな企業、大学で四足歩行ロボットの研究開発が進められている。

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▲中国版ビッグドッグも、山岳地帯を行軍する際の物資輸送に使われることが想定されている。

 

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▲中国版ビッグドッグの外観は、ボストンダイナミクスのものとよく似ている。

 

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▲中国版ビッグドッグと米国版ビッグドッグの性能比較。中国版がやや劣る。

 

杭州宇樹科技(Unitree)

2017年から四足歩行ロボットLaikagoを発売している。スプートニク2号に乗せられて、地球軌道を周回した最初の動物となった犬「ライカ」の名前に因んでいる。大学や科学博物館、テック企業などに販売されている。半分以上が海外の需要だという。


Laikago: a four leg robot is coming to you」

 

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杭州宇樹科技のLaikago。キャスター付きスーツケースを引っ張るデモが行われている。

 

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▲Laikagoは、荒れた地面も問題なく歩行できる。

 

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▲LaikaGoのバランス試験。

 

杭州雲深処科技(DeepRobotics)

浙江大学の四足歩行ロボット研究開発チームがスピンアウトをして企業。絶影シリーズを販売している。


浙大造四足机器人:摔倒后可自行站立

 

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杭州雲深処科技の絶影には、さまざまなバリエーションが用意されている。新型では、頭部のセンサーが強化された。

 

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杭州雲深処科技の絶影。浙江大学の研究チームが中心になって起業したスタートアップ。

 

南京蔚藍智能科技(WEILAN)

2019年に創業したばかりのスタートアップ。アルファドッグシリーズを販売していて、毎秒3mという高速で走ることができ、蔚藍によると世界最速だという。


Motion Control Highlights of AlphaDog’s Daily Test

 

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▲南京蔚藍智能科技のアルファドッグ。毎秒3mという高速で歩行することができる。

 

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▲アルファドッグもさまざまなバリエーションが用意されている。

 

山東優宝特知能機器人(Yobotics)

山東大学ロボット研究センターなどからのスピンオフ企業。YoboGoを販売している。学生の研究向け需要が多い。

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山東優宝特知能機器人のYoboGo。山東大学の研究チームが中心になって起業したスタートアップ。研究用用途が多い。

 

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▲横から蹴るという試験は、四足歩行ロボットのデモでは定番になっている。

 

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▲バク転をするYoboGo。

 

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▲カートを牽引するYoboGo。

 

大学でも四足歩行ロボットの研究が盛ん

このほか、銀弗科技(INNFOS)、深圳智擎新創科技など、アクチュエーターなどのパーツメーカーも四足歩行ロボットを開発し、発売をしている。

さらに、このようなロボティクス企業を生むインキュベーターともなっている大学でも盛んに四足歩行ロボットの開発研究が行われている。浙江大学知能系統制御研究所ロボット実験室、山東大学ロボット研究センター、北京交通大学、ハルビン工業大学、ハルビン理工大学、上海交通大学、北京理工大学、華中科技大学、国防科技大学などに研究開発チームが存在する。

その多くが、中国北方車両研究所の軍事用を除けば、ロボティクス学習、研究用途で、実用用途は広くないが、ボストンダイナミクスに刺激され、木牛流馬の国である中国では四足歩行ロボットの研究開発が盛んになっている。アトムの国の日本が二足歩行ロボットの開発が盛んになったのと似た状況になっている。