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独身の日セールの宅配便は39.65億件。航空機よりも利便性の高い貨物新幹線

11月1日から11日まで開催された独身の日セールでは、39.65億件の小包、宅配便が発生した。この膨大な荷物をどうやって配送するかが毎年大きな課題になっている。国家鉄路では、2017年から中国版新幹線「高鉄」を利用して輸送するプロジェクトを行っている。今年は、貨物専用列車も登場し、航空機貨物に対する高い競争力が証明されたと観察者網が報じた。

 

独身の日セールで発生した宅配便は39.65億件

今年2020年の11月11日独身の日セールも、いずれのECも記録を更新した。アリババの天猫(Tmall)は4982億元(約7.9兆円)、京東は2715億元(約4.3兆円)の売上をあげた。さらに、今年は11月1日から11日までセール期間が続き、11月11日だけの例年は「双11」と呼ばれていたが、今年は「双11+1」とも呼ばれるようになった。

国家郵政局は、11月11日当日に発生した小包、宅配便の量は6.75億件に達し、11月1日から11日までのセール期間では、39.65億件の小包、宅配便が処理されたと発表した。昨年は23.09億件であったので、宅配便量も大幅に記録更新となった。

国土交通省によると、平成30年度の日本の年間の宅配便料が43.07億件となり「宅配便クライシス」と呼ばれるようになった。独身の日セールは、日本の年間宅配便量1年分をわずか10日間のセール期間で発生させていることになる。

 

中国版新幹線「高鉄」を貨物車両に改造

この宅配便量をどうやって処理していくかも、毎年、物流関係者が悩むところだ。国家鉄路では、2016年からこの時期に特別プロジェクトを組んで対応している。

今年は、10日間の特別プロジェクト期間を20日に延長し、いよいよ中国版新幹線「高鉄」の貨物列車版が運行することになった。

毎日600路線で、1000本の貨物専用高鉄を走らせ、80以上の都市を結んだ。通常の客車から座席を取り払い、貨物車に改造し、専用の保冷ケースも開発し、食品や医薬品の配送にも対応した。

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▲改造された貨物専用車。座席を取り払い、荷物を乗せるフレームを設置しただけだが、じゅうぶん機能した。

 

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▲荷物が満載された貨物高鉄車両。今年は1日に600路線で1000本の貨物高鉄列車が走った。

 

貨物高鉄は20日間満載状態

北京の鉄道物流を扱っている京鉄物流によると、11月1日の段階で、すでに1日3万件の荷物を運んだという。これは昨年の11月1日と比べて74.09%増え、セール期間全体では60万件以上を扱い、昨年から165.96%増と2倍以上になっている。11月1日から20日まで、広州、上海方面の貨物高鉄は満載状態が続くという。

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▲今年は、貨物専用車両を用意し、機能的に輸送が行われている。

 

航空貨物に対して高い競争力がある貨物新幹線

高鉄で宅配便を運ぶ試みは2017年から行われている。当初は、通常の客車に荷物を載せるというものにすぎなかった。

その試験運用から、航空機貨物に対する競争力があることがわかってきた。航空貨物は、荷物を空港まで輸送し、航空機に乗せるまでに時間がかかる。貨物高鉄であれば、市街地と郊外の中間的な位置にある高鉄駅まで運び、ホームで作業ができる。

航空機貨物では、すべての荷物に安全ベルトをつけ、傾斜による荷崩れに対応する必要があるが、静かで安定した走行ができる高鉄では、ケースに工夫をしておけば、積み重ねるだけで輸送ができる。積み下ろし作業時間も大幅に短縮できる。

さらに、深夜に走行ができるため、走行時間は長くても、トータルでの配送時間では、航空機とじゅうぶんに対抗できる。高鉄駅は、空港よりも都市に近い場所に市をしているため、荷物の集荷、配送にかかる時間も短い。

また、航空機は天候によって遅延が起きることがあるが、貨物高鉄では、よほどの悪天候でない限り遅延が生じない。

貨物高鉄は、航空機貨物に比べて数々の利点があるため、各地の鉄路物流では、今後も、貨物高鉄を伸ばしていく計画だ。

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▲ホームで作業ができるため、荷物の上げ下ろしが航空機に比べて短時間で済む。また、高鉄駅は空港よりも都市に近い場所にあるため、地域での配送時間も短縮される。

 

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▲2017年の貨物高鉄の様子。一般座席に荷物を乗せるという荒っぽいものだった。