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中国でも始まったゴミの分別回収。代行サービスや人工知能の活用も

上海市で7月からゴミの分別回収が始まっている。市民はいろいろと戸惑いがあるようだ。そこにウーラマはゴミの分別代行サービスを始め、アリペイは写真を撮るだけで人工知能がゴミの種類を教えてくれる機能を公開したと新民晩報が報じた。

 

上海でいよいよ始まったゴミの分別回収

上海市で、7月から「上海市生活ゴミ管理条例」が施行されている。簡単に言えば、ゴミの分別回収が始まったということだ。捨てるゴミは「リサイクルゴミ」「有害ゴミ」「生ゴミ」(湿ったゴミ)「その他」(乾いたゴミ)に分けて捨てなければならない。また、政府機関、企業、レストランなどで、使い捨ての文房具、食器などを極力使わないように求めている。

上海市では、ゴミの回収地点1.7万カ所に対して、生ゴミ回収車900台、有害ゴミ回収車17台を投入し、1日あたりのゴミの量を、生ゴミ5520トン、リサイクルゴミ3300トン、その他のゴミ21000トン以内におさめる計画だ。

違反をすると、個人に対しては50元から200元(約2900円)の罰金、企業に対しては5000元から5万元(約74万円)というかなり厳しい罰金が科せられる。

現在、分別回収が行われているのは上海市のみだが、全国45都市で分別回収の準備に入っているという。

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▲街中のゴミ箱も4種類に。生ゴミとその他の分類がわかりづらいと戸惑いがあるようだが、正確には「くさるゴミ」と「その他のゴミ」。水分を含んで腐る可能性のある生ゴミと、水分がないその他のゴミに分けるだけなので、思ったよりは難しくはない。

 

もうタピオカミルクティーは飲めない!

日本人にとっては、要はペットボトルなどの「リサイクルゴミ」、乾電池などの「有害ゴミ」を分けて、あとは生ゴミとその他なのだから、さほど難しく感じないが、上海市民の間では、軽いパニックになっている。それまで中国では分別という考え方はほとんどなく、すべてのゴミをまとめて出していた。街中には複数のゴミ箱が設置され、一般ゴミとリサイクルゴミなどは分けて捨てることになっていたが、あまり守られていない。

ネットでは、「もうタピオカミルクティーが飲めなくなる」と話題になっている。なぜなら、タピオカミルクティーのタピオカは残すのが当たり前になっていて(糖質なので太ると言われている)、今まではそのまま捨てていた。しかし、これからは飲み残しのミルクティーだけをシンクなどに流し、タピオカを生ゴミに捨て、それからカップをリサイクルゴミに捨てなければならない。

日本人にとっては、ごく自然なことだが、今までそういう習慣のなかった中国人にとっては相当に面倒なことに映っているようだ。ネットでは、にわかに「日本に学べ」という話も出てきている。日本は「分別大魔王」と呼ばれていて、日本の分別回収が非常に細かいことはよく知られているからだ。

 

分別代行サービスを始めた外売「ウーラマ」

この分別回収に対して、さまざまなサービスが登場している。外売(フードデリバリー)の「ウーラマ」は、ゴミの分別代行回収サービスを始めた。拠点から3km以内の地域であれば、ゴミを引き取り、ウーラマ側で分別をして捨ててくれるというものだ。価格は1回12元(約180円)。

ウーラマがこのようなサービスを始めるのには理由がある。なぜなら、そもそも外売が普及をしたために、ゴミの分別問題が起きてきたからだ。デリバリーされる料理は、プラ容器に入れて届けられる。これはリサイクルゴミだが、本来は残った料理を生ゴミとして捨て、容器に付着したソースなどを洗い、それからリサイクルゴミとして捨てなければならない。

しかし、多くの人が面倒に感じるため、ソースが付着したまま捨ててしまう。これが臭いの元になったり、虫が湧いたりする元になっていた。

また、プラ容器はかさばるため、ゴミの体積を増やす原因にもなっている。ゴミ問題の要因となっていた外売が分別代行をするのは自然なことだ。

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▲早速あちこちでゴミの分別代行サービスが始まっている。このマンションでは、5階や6階の住人でも、月50元(約740円)で今まで通り分類せずにゴミを出せる。

 

アリペイは、人工知能がゴミ分類を判別

市民が分別回収に対して頭を悩ませているのが、「このゴミはどれに分類すればいいの?」という問題だ。日本では、自治体が詳細なパンフレットを配ったり、ウェブで案内をしているが、中国ではARや人工知能を利用した分類アプリ、ミニプログラムが人気だ。

その中でも、よく使われているのがスマホ決済「アリペイ」に搭載された機能。決済の時にQRコードをスキャンする画面で、QRコードではなく、ゴミを撮影すると、数秒でそのゴミがなんであり、どのゴミに分類すればいいかを教えてくれる。

これから人工知能が学習をして、精度は上がっていくのかもしれないが、現在のところは精度も低く、実用的とは言えないが、面白がってよく使われているようだ。すでに上海以外の都市の利用者もあり、使用したユーザー数は100万人を超えたという。

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▲アリペイの人工知能を使ったゴミ分類判別機能。目的のゴミをカメラで撮影すると、人工知能がゴミの種類を教えてくれる。

 

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▲タバコのパッケージはリサイクルゴミに分類された。パッケージを覆っているフィルムを感知したのだろうか。

 

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▲丸めたティッシュは、なぜか「貝殻」と判別された。ゴミ分類としては「その他」(水分がなく腐らないゴミ)なので、偶然にも合っている。まだまだ学習が必要なようだ。

 

分別がわからない第1位は「エビの殻」

このアリペイの分別判定機能は、音声や文字で対象物の名前を入力しても、分別の判定をしてくれる。アリペイでは、分別回収施行3日後の時点で、検索回数のランキングを発表している。つまり、多くの市民がどう分類すればわからないと感じているもののランキングだ。

これによると、1位は「エビのカラ」、2位は「フェイスパック」、3位は「ひまわりの種のカラ」(おやつとして、歯でひまわりの種を割って、中身を食べる)となっている。ちなみに正解は、生ゴミ、その他、生ゴミだ。

今後もこのようなユニークなサービス、アプリが登場し、中国でも分別回収の感覚が広まっていくことになる。

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▲アリペイが公表した分別ゴミ分類の検索回数ランキング。エビの殻が1位。流行のタピオカやザリガニもよく検索されている。

 

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