中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国の地図アプリがユニバーサルデザインを採用へ

中国の地図アプリは、百度が提供する百度地図が最も普及をしている。しかし、そのライバルが出現した。高徳地図だ。高徳地図は、使いやすさでファンを獲得し、百度地図を追いかけていた。さらに、アリババが買収したことにより、タクシー予約やレストランガイドのプラットフォームに育ってきた。そして、視覚異常のある人にも対応するユニバーサルデザインを採用し、さらなる拡大を狙っていると環球網が報じた。

 

中国の交通事情に最適化された百度地図

中国では、長い間、百度地図が多くの人に使われていた。なぜなら、極めてよくできているからだ。グーグルマップなど、米国企業が提供している地図アプリは、車によるナビ、地下鉄などの公共交通を利用したナビが基本となり、バスなどのナビはどうしても薄くなる。しかし、バス利用をすることが多い中国の百度地図は、バスによるナビが充実しているのだ。

特に驚くのが、バス停までの徒歩のナビゲーションだ。中国の都市部は、道路の幅が広く、横断歩道が少ない。多くの場合、地下道で道の向こう側に渡る必要がある。また、立体交差が多く、目的地の建物が見えているのに、道路を渡ることができず、たどりつけないということがよくある。百度地図は、この徒歩のナビゲーションが素晴らしい。横断地下道などや立体交差下をどのように歩けばいいのかを正確に表示してくれる。旅行者だけでなく、地元に人にとっても便利な地図アプリになっている。

f:id:tamakino:20171229141810j:plain

百度地図は精密な徒歩ナビゲーションが好評。地下道などが多く、歩くルートがわかりづらい中国の都市で、きめ細かな徒歩ルートを提案してくれる。

地図をプラットフォーム化した高徳地図

百度地図の完成度が高いため、その他の地図アプリはなかなか利用者を獲得することができないでいた。しかし、最近、利用者を増やし続け、百度地図を脅かす存在になってきたのが高徳地図だ。

特に大きかったのが、2013年にタクシー配車、ライドシェアサービスの滴滴出行と提携し、高徳地図の中からタクシーを呼んだり、ライドシェアの予約をすることができるようになったことだ。さらにレストランガイドを充実させることで、「使える地図アプリ」に育っていった。百度がナビゲーション機能に重きを置いているのに対して、高徳地図は地図プラットフォームを利用してさまざまな情報提供をすることに重きを置いたものになった。

特に、2014年にアリババが買収をし、完全子会社になってからは、完成度が急激にあがっていった。今では、百度地図と高徳地図の両方を入れ、使い分けるという人も増えている。

 

中国政府が力を入れる障害者対応施設の充実

現在、党中央、国務院は、障害者問題の解決に力を入れている。特に進んでいるのが、障害者用トイレで、年の公衆トイレには、車椅子でも利用できる個室タイプのトイレが設置されていっている。ネットサービスも、障害者を考慮したユニバーサルデザインにすることが推奨されるようになった。

この動きに素早く対応したのが高徳地図で、まず、色盲視覚障害でも見やすいモードに切り替えられる機能を付け加えた。

さらに、アリババは「障害者サービス地図」サービスを提供するにあたって、高徳地図をベースにした。このサービスでは、近くの障害者対応トイレ、障害者対応教育機関など7種類の施設、3万件の場所が検索できるというもの。

f:id:tamakino:20171229141752p:plain

▲中国の地下鉄駅では車椅子対応のエレベーターはまだ多くない。このような情報は障害者から歓迎されている。

 

f:id:tamakino:20171229141757p:plain

▲障害者対応トイレなど障害者対応施設の検索もできるようになった。利用者が自分で障害者対応施設を登録することもできる。


車椅子でも移動できるルート検索

さらに、障害者用のナビゲーションにも力を入れ始めた。今年8月、障害者337名連名で、高徳地図のナビゲーションを改善する陳情があった。高徳地図により地下鉄の駅の入り口にナビゲーションされたが、そこはエスカレーターのない出入り口であったために、地下鉄に乗ることができなかったというのだ。

高徳地図の開発チームは、すぐに動いて、手分けをして主要地下鉄入り口にエスカレーターがあるかどうかの確認作業をし、障害者がナビゲーションを利用した時は、エスカレーターやエレベーターのある出入り口に誘導するようにした。

また、運営チームだけでは調査に限界があることから、利用者から車椅子が通行可能かどうかを知らせることができる仕組みも採用した。

f:id:tamakino:20171229141744p:plain

▲障害者モードでは、車椅子対応エレベーターを利用した徒歩ルートが検索される。

 

生活インフラとなっている地図アプリ

12月、高徳地図はこのような取り組みを整理した新バージョンの地図アプリを公開した。中国視覚障害者協会、中国聴覚障害者協会、中国障害者芸術団の3団体は、高徳地図を支持するという声明を発表している。

高徳地図は、利便性のみの追求ではなく、社会貢献をすることで生活インフラのひとつとして認められることを目指す戦略を取り始めている。

f:id:tamakino:20171229141804p:plain

視覚障害のある人にも見やすいユニバーサルデザインを採用した。