テンセントが新しい車載用ナビゲーションシステムを発表した。3D表示が基本となったことが大きな特徴だ。3D表示になったのは、これからのナビゲーションシステムは、自動運転車にルート指示をし、その結果を人間に表示するというものになっていくからだと量子位が報じた。
テンセントが発表した新世代ナビシステム
2021年11月3日に、複数の都市、クラウド上の会場で、騰訊(タンシュン、テンセント)のデジタルエコシステムサミットが開催された。この中で、テンセントの新しい車載用地図システム「テンセントスマートドライブマップ」が公開された。
多くの人が注目したのが、3D表示が基本となったことだ。メートル以下の精度で、道路状況、街並みが再現され、その中を自分の車が進んでいく。メタバースやデジタルツインという考え方に近づいている。
また、車線情報を把握するだけでなく、追い越し禁止、車線変更禁止などの車線規制情報も埋め込まれている。さらに、ADAS(Advanced Driver Assistance System、先進運転支援システム、エーダス)に対応し、対応している自動車であればセンサー情報などから他車の存在なども表示をされる。
ドライバーをナビゲートする2D地図
カーナビの地図表示は、2Dを好むか、3Dを好むかは人により異なる。2D地図であれば縮小すれば、全体のルートが一目で把握ができ、拡大すれば細部がわかるということから、2D表示を好むドライバーは多い。
しかし、時代は3D表示に移ろうとしている。3D表示は、高速の出口や右左折専用車線への車線変更といった直近の運転操作をするにはわかりやすいが、全体のルートを把握したり、行程の内、どのくらいのところまできているのかという大局は把握しづらい。
しかし、2D地図と3D地図には、考え方に大きな違いがある。2D地図は運転手という人をナビゲートするが、3D地図は人ではなく車をナビゲートするという発想なのだ。
車をナビゲートする3D地図
テンセントの「テンセントスマートドライブマップ」は、人ではなく、自動車をナビゲートする前提で設計されている。つまりは、自動運転を意識したナビゲーションシステムになっている。そのため、目的地を入力した後は、ルート選定やドライブの戦略はナビゲーション側が主体となって決定し、自動車が自動運転に対応しているのであれば、運転は自動化される。人に対しては、「今何をしているのか」をナビゲーション画面で表現することになる。これには3D表示が適している。人間が目の前に広がる現実空間とそっくりなデジタルツインがディスプレイ上で表現されるため、自動車が何をしているのか、何をしようとしているのかを理解しやすいのだ。
残念ながら、自動運転システムが搭載されていない自動車では、人間を自動運転AI代わりに使わざるを得ない。「右に車線変更」「速度を下げる」など細かい指示を出すため、これも現実とそっくりの3D表示の中で指示をする方が人間が理解をしやすい。
ToB領域で高いシェアをとるテンセント地図
中国では複数の地図アプリが存在し、最もよく使われているのはアリババ系の「高徳地図」で、その他「百度地図」を使う人も多く、「テンセント地図」はその次あたりのポジションだ。しかし、ToBの領域ではテンセント地図が圧倒的に高いシェアを占めている。美団(メイトワン)、京東(ジンドン)、滴滴(ディディ)、貨拉拉(フオラーラー)などがテンセント地図を採用し、配達、配送などを行っている。
このような企業に、テンセントが出資をしているということもあるが、WeChatなどやテンセントが提供するビジネス支援ツールとの連動が可能な点が評価をされている。そして、このような企業は、どこも自動運転に積極的で、さまざまな実証実験、そして一部で営業運行を始めている。
テンセント地図が刷新されたということは、このような自動運転の精度があがるということであり、より自動運転が可能なシーンが広がることになる。テンセントの地図システムは、いち早く自動運転を意識したものに進化をした。