中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

自分の本名が商標権侵害に。商標ビジネスに狙われるインフルエンサーの名前

中国で人気の網紅「敬漢卿」の名前が、商標権侵害で警告を受けた。しかし、敬漢卿は彼の本名。いわゆるグレーな商標ビジネスが網紅の名前を狙い撃ちにしているとAaahaoが報じた。

 

整備されてきた中国の知的財産権の扱い

知的財産権侵害の問題では、つい最近まで中国は常に加害者だった。海外の商品を真似る、海外のコンテンツをコピーするというのは当たり前で、海外の権利者から訴えられても、関係法規が整ってなく、有効な手を打てないという状況が続いていた。

しかし、中国の経済が成長するとともに、その状況は改善に向かっている。例えば、アニメを中心とした動画共有サイト「bilibili」、通称Bサイトでは、以前は日本のアニメを違法コピーして、そこにボランティアたちが中国語字幕をつけて、公開するということが常態化をしていた。それが現在では、きちんと著作権処理をした動画を共有するようになっている。他の動画共有サイトと同じように、違法コピーした動画をアップロードすると発見されて削除をされる。

このように多くのサービス、企業が知的財産権の問題については、国際ルールや国内法を守るようになっている。その要因になっているのが、米ナスダック市場への上場だ。違法動画を共有しているようでは、海外証券市場に上場をすることができない。大型の資金調達をするためには、国際ルールを守らざるを得なくなっているのだ。

 

自分の本名が使えなくなった網紅「敬漢卿」

中国の知的財産権関連の法律が整備されてくると、今度はその関連法を悪用して、お金儲けをしようと考える人たちもいる。そういう人たちの矛先は、中国国内に向かっている。

その中でも、ネットで大きな騒ぎになっているのが、敬漢卿(ジン・ハンチン)事件だ。敬漢卿は中国の動画で人気となった中国版ユーチューバー=網紅。彼は、本名を使って網紅となった。ところが、ある企業により「敬漢卿」が商標登録されてしまい、敬漢卿の名前で動画を公開したり、グッズを販売すると、商標権の侵害となると警告を受けたというもの。自分の本名が使えなくなるという理不尽な事態になっている。

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▲敬漢卿のbilibiliでの配信映像。熱いものを早食いする、大量に食べるなど、他愛もない内容だが、それが受けている。

 

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▲敬漢卿はbilibiliで訴えた。「22年使ってきた自分の名前が使えず、改名する必要があると言われた。どうやって自分の権利を守ったらいいのだ」というもの。敬漢卿の名前は、本名であるだけに問題は深刻だ。

 

網紅ビジネスにとって、頭の痛い問題になっている商標権

敬漢卿は、ファンが1400万人もいる網紅で、現在22歳。非常に珍しい名前で、子どもの頃から名前を珍しがられることが多く、2014年に自分で撮影した動画を公開した時から、ネットでも本名の敬漢卿を使っている。

動画の内容はいわゆるおもしろ動画だ。50個のレモンを一気食いすることに挑戦をする、使い捨てライターが何回火がつくのか、連続してつけて確かめるなど、身近な内容で人気となった。

現在、月の売上は10万元(約150万円)を超え、100万元(約1500万円)の投資資金を集めるほどになっている。個人の副業ではなく、もはや本業だ。

これが、他人によって商標権を登録されてしまったのだから、敬漢卿にとっては抜き差しならない状況になっている。改名をして続けることが現実的だが、その場合、ファンは今まで通りついてきてくれるだろうか。あるいは、敬漢卿の名前を使いづけて、法廷闘争をする道もあるが、果たして勝てる見込みはあるだろうか。

space.bilibili.com

▲敬漢卿のbilibili公式ページ。bilibiliだけでもファン数は650万人を突破している。複数メディアの累計ファンは1400万人に達する。本名なのに自分の名前が使えないという事態に追い込まれている。

 

次々と狙われる網紅の名前

このような網紅の名前が、商標ビジネスから狙われている。著名な網紅は、個人でやっている域を超えて、制作スタッフ、マネージメントスタッフを抱えた企業になっている。重要な商標である網紅の名前を登録していなかったのは、企業としての落ち度だと考えることもできる。

実際、敬漢卿の名前も、7社から商標登録の申請が出されていた。また、ゲーム実況をして300万人のファンがいる「落星解説」も、敬漢卿に商標権侵害の警告を出したのと同じ企業から商標登録され、警告を受けている。

この企業は、安徽省蕪湖市に2017年8月29日に創業した企業で、資本金はわずか20元という不思議な企業だ。創業後、すぐにさまざまな商標権申請を始め、現在までに103の商標を申請している。敲笑辣条哥、農人Y頭などの有名な網紅の名前も含まれている。この被害にあった網紅によると、使用禁止の警告を受けた後、35万元(約530万円)で商標権を買い取る話を持ちかけられたという。

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▲ゲーム実況で人気の網紅「落星解説」も、敬漢卿の商標を登録した企業から、同じように商標登録され、被害を受けている。

 

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▲同じく名前を商標登録されてしまった網紅「農人Y頭」。農村に生まれ、農村の生活を動画で配信して人気になっている。

 

法廷闘争を選んだPapi醤、改名を選んだ王老吉

この問題がどのような決着を見せるのかはまだ不透明だ。2017年、網紅の草分け的存在である「Papi醤」も、同じように名前を商標登録され、関連グッズを勝手に発売されたことがあった。しかし、この時は商標審議委員会に提訴をして、結局、この悪意のある商標登録は無効にされている。

また、王老吉事件を引き合いに出す人もいる。王老吉(ワンラオジー)というのは、中国で有名な涼茶ドリンク。漢方が入っているお茶で、かなり甘い冷たい飲み物だ。特に辛い料理を食べる時、食べた後の飲み物として人気がある。

この王老吉は、広州白雪山医薬集団が販売をしていたが、これに食品総合企業「加多宝」がライセンス契約を結び、王老吉を販売をし、これが爆発的な人気になった。10年のライセンス契約が切れ、契約を更改する際、広州白雪山医薬集団の総経理が賄賂をもらい、ライセンス料を不当に安く設定した汚職事件が発覚、有罪判決を受けた。広州白雪山医薬集団と加多宝の間で、更改したライセンス契約の有効性を巡って訴訟になっていた。

結局、加多宝では、ドリンクの名前を「加多宝」に変えて販売を続けることになった。この顛末が大きな話題になったこともあって、多くのファンは名前が変わっても加多宝を飲み続けた。敬漢卿も名前を変えて、配信を続ければ何の問題もないと見る人もいる。

しかし、網紅の名称が、商標ビジネスからターゲットにされていることは間違いない。網紅も、企業としてきちんと対策をしていく必要に迫られている。

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▲中国の網紅のビジネスを切り開いたPapi醤。Papi醤もかつて名前を商標登録され、関連グッズを勝手に発売されるという被害にあっているが、法廷闘争を経て、自分の名前の権利を取り戻している。

 

 

iPhoneの顔認証を頭部モデルで突破。アリペイでの決済に成功したという動画が話題に

南斗星仿真ロボットの王峻CEOが、iPhoneの顔認証を、3Dプリンターで作成した自分の頭部モデルを使って突破し、実際にアリペイを使って列車のチケットを購入する動画を公開した。ネットでは顔認証の安全性を不安視する声が広がり、アリペイ運営が公式にコメントする事態になっていると移動支付網が報じた。

 

頭部モデルを使って顔認証を突破したのはロボット企業の創業者

顔認証を突破したと主張し、証拠の動画を公開したのは、南斗星仿真ロボットの創業者である王峻(ワン・ジュン)CEO。名前も知られている人だけに、信憑性も高く、ネット民の間では「顔認証のセキュリティは大丈夫なのか?」と議論になっている。

王峻氏は、自分の顔を3Dスキャンし、高精度3Dプリンターで顔のモデルを作成。さらに伝統工芸の技術を使って、義眼を埋め込んだ。さらに、皮膚素材を貼り、髪や眉、ヒゲなどを植え込んでいくという相当の手間をかけて、自分そっくりとの頭部モデルを作成した。

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▲頭部モデルを使って、AppleのFace IDを突破したと主張する南極熊こと王峻氏。南斗星仿真ロボットの創業者という知名度のある人の動画であったため、ネットでは大きな話題になっている。

 

ネットに顔認証の安全性を不安視する声が広がる

この頭部モデルを自分のiPhoneのFace IDに登録をし、次にアリペイで南京から宝華までの9.5元のチケットを買う。パスコードか顔認証が必要になるので、頭部モデルを見せて、うまく買うことができたという内容だ。

手が込んでいるとは言え、制作した頭部モデルで顔認証決済ができてしまったというところから、ネットでは大きな話題になっている。中には、SNSで公開した写真を集めれば、そこから3Dデータを解析し、他人の頭部モデルを作成して、その人のアリペイで買い物ができてしまうのではないかと心配する人もいた。スーパーやコンビニには、アリペイの顔認証ユニットが導入され始めている。その安全性を疑う人もいる。

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3Dプリンターで頭部モデルを作り、そこに着色、植毛、義眼を入れるという手間をかけている。

 

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▲頭部モデルを使って、アリペイにより9.5元の列車のチケットを実際に購入するところを動画で公開した。

 

アリペイがコメント。悪用することは現実的ではない

この問題に対して、運営元のアリペイは正式にコメントをした。王峻氏が公開した動画では、アリペイで列車のチケットを購入しているが、突破をされたのはAppleのFace IDであって、アリペイは無関係だ。Face IDは、パスワードを入力する代わりに使われているだけにすぎない。

しかし、この動画がきっかけとなって、コンビニ、スーパーなどに設置されているアリババの顔認証ユニットについても安全性を不安視する声が大きくなったため、コメントをしたのだと思われる。

要点は3つだ。ひとつは、この動画がほんとうに正しいのか、現在解析をしている最中だというもの。もうひとつは、この動画の内容が正しいとしても、アリペイの顔認証決済を有効にするには、まずアリペイにパスコードを設定することが条件になる。そして、アリペイがインストールされているスマートフォンで、一度は通常のQRコード決済やオンライン決済をしないと、顔認証決済は使えるようにならない。最後に、顔認証決済の精度は99.99%であり、非常に小さな確率で事故が起きる可能性は否定できないが、その場合は、アリペイが全額を補償するというもの。

他人の顔データを入手して、頭部モデルを作成すること自体が普通の人には難しいことだし、頭部モデルができたとしても、実際に顔認証決済に悪用することは難しい。コンビニなどの顔認証決済ユニットで悪用をするには、頭部モデルを持ち込まなければならない。顔認証決済レジには、スタッフがいるし、監視カメラも配備されている。

王峻CEOのように、スマホのアリペイからオンライン決済をするには、本人のスマホを手に入れるか、新しいスマホに本人のアカウントでアリペイをセットアップする必要がある。いずれの場合も、アリペイのパスコードがわからなければ、やりようがない。

 

王峻CEOの動画に対する疑問の声も

王峻CEOの動画にも疑問が提出されている。それは別の動画で、頭部モデルでアップルの顔認証Face IDが突破できたという内容を公開しているが、この動画では、自分の顔ではなく、頭部モデルをFace IDに登録をしている。そして、自分の顔でもロック解除ができていることを示しているが、何か不自然だ。顔認証を突破したというのであれば、まず自分の顔をFace IDに登録をして、頭部モデルでロック解除ができることを示すのが自然だ。なぜ、このような手順なのか。

アリペイが「現在動画の内容を解析中」と言っているのは、このあたりの検証をしているのではないかと思われる。

▲王峻氏が公開した顔認証を突破する動画。しかし、頭部モデルをFace IDに登録をし、自分の顔でロック解除をしている。

 

映画の登場人物の顔を自分の顔に置き換えるアプリ「ZAO」

中国ではZAOというアプリが大きな話題にもなった。これは映画やテレビドラマに登場する俳優の顔を自分の顔に簡単に置き換えることができるというアプリだ。単にオーバーレイするだけでなく、角度や表情の動きまでも合わせてくれることから大きな話題になった。

より大きな話題になったのが、自分の顔データの扱いだ。ZAOの約款では「運営元に帰属し、運営元が第三者に譲渡、再ライセンス可能」となっていたことだ。多くのユーザーから、自分の顔データが売られてしまう、悪い人間の手に渡ったら、顔認証決済をされてしまうという非難の声が上がった。

運営元では、プライバシーに配慮して、ポリシーを改定することを宣言したが、中国ではなにかと「顔のプライバシー」に敏感になっているようだ。それだけ、顔認証、顔認証決済が身近になっていることを実感しているからだ。

▲映画などの登場人物の顔を、簡単に自分の顔に置き換えができるZAO。大きな話題となり、多くのウェブメディアが取り上げている。

 

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郵便番号の廃止も検討。住所ではなく個人を示す番号体系に

中国でも、日本と同じような考え方の郵便番号が使われている。しかし、郵便番号は郵便局のIDであり、宅配時代にそぐわなくなってきている。そのため、個人をベースとする新しいIDの研究が始まっていると江干発布が報じた。

 

時代にそぐわなくなってきた郵便番号=郵便局ID

中国で、郵便に使う郵便番号の廃止が検討されている。中国国家郵政局は、信書、小包などに6桁の郵便番号を使ってきた。原理は日本の郵便番号とほぼ同じで、郵便局のピラミッド構造をそのまま番号化し、最終的に配達を受け持つ郵便局を数字で指定するものだ。いわば郵便局のID番号だった。

国家郵政局発展研究センターと北京大学時空ビッグデータイノベーションセンターは、共同して郵便の個人ID技術の研究を始めている。まだ研究段階だが、この個人IDの使用が始まれば、従来の郵便番号は不要となり、自然と廃止されることになるという。

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▲中国でも郵便物には6桁の郵便番号が使われている。しかし、これは郵便物流に合わせた郵便局のIDになっている。宅配企業は異なる物流網を構築しているため、郵便番号を使わず、独自のコード体系を使っている。

 

実は郵便局のIDだった郵便番号

その背景となっているのは、年間600億個を超える宅配便の量だ。しかも、ECが地方都市に普及をし始めているので、宅配便量はますます増加をすることが見込まれ、なおかつ地方配送が増え、配送効率が低下していくことが予想される。

宅配便にとって、もはや郵便番号は効率の悪いコードになってしまっている。郵便番号は、配達地域をコード化しているように見えて、実は郵便局のID番号になっている。例えば、226156という郵便番号は、最初の22は江蘇省を表しているが、次の6は南通郵便区を表し、次の1は海門県郵便局を表し、次の5が東興郵便支局を表し、最後の6が配達郵便局を表すという具合になっている。郵政は、郵便番号に従って、郵便や荷物を振り分けていけば、最終的に配達すべき郵便局に届くことになる。そこからは住所を見て配達をする。

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▲中国の郵便番号の仕組み。一見、住所を示しているように見えて、実は末端配送を受け持つ郵便局のIDになっている。

 

宅配企業は独自コード体系を使用。統一コードが喫緊の課題

つまり、郵便番号は郵政の物流に合わせたコード体系であり、多くの宅配企業は郵政とは異なる物流網を構築しているため、効率的ではないのだ。そこで、多くの宅配企業は、郵便番号や住所などの情報から、自社物流に適した独自コードを使って、配送作業を行なっている。

しかし、すでに宅配企業が単独で配送をすることは限界に達している。現在では、宅配企業同士で、荷物を相互委託するようになっている。配送が滞った時に他企業の力を借りる、基幹路線に空きがあれば委託をして輸送してもらうなどだ。この時、それぞれの宅配企業が独自コードを使っているため、委託をするために、配送コードの付け直し処理をしなければならない。

そこで、統一コードの研究が始まったのだ。

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▲宅配企業の仕分けセンター。お掃除ロボットのような走行ユニットに荷物を乗せると、配送先を読み取り、適切な「穴」に落としていく。穴の下には、大型の配送袋がセットしてあり、これをトラックで輸送する。

 


【多维新闻】中国的快递分拣系统逆天了:机器人5分钟计算量,相当于一个繁忙机场

▲中国の宅配企業の多くが、仕分けセンターの自動化をしている。完全無人にはならないが、少人数で大規模センターの運営が可能になっている。

 

配送先の個人と3D位置情報を織り込んだコードが有力視

どのようなコードになるのか、現在はまだ議論が始まったばかり。しかし、北京大学時空ビッグデータイノベーションセンターの程承旗主任によると、緯度経度のように、地球の1点を示すコードになると言う。平面ではなく、地球の空間を立体分割してコード化することで、中国だけでなく海外も指定できるようになり、マンションやオフィスビルの階数などもコードで指定できるようにする。

数値としての桁数はかなり長くなるが、数字をそのまま使うのではなく、バーコードやQRコードなどの表示方法を使うので問題はないと言う。

このような個人用郵便コードは、身分証番号などに紐づけられ、名前などから簡単に配送場所が検索できるようにすると言う。

 

送り状に文字情報を記載しない方向へ

このようなコード化を進めるのは、宅配便の量の問題の他に、プライバシーの問題と配送拠点の無人化の問題も背景にある。

宅配便の送り状に記入されている名前、住所などの情報から、宅配便スタッフなどが犯罪を犯す事件も報道されており、各宅配便企業は送り状にQRコードしか表示しないようにし始めている。このQRコードは暗号化されており、専用端末でなければ解読することができない。そして、どの端末がいつQRコードを読み取ったかはすべて記録される。個人用郵便コードが利用できるようになれば、宅配荷物にはQRコードをひとつつければいいようになる。

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▲京東の無人配送車。宅配企業はすでにキャンパス内などの閉鎖区域内で走る宅配ボックスとして無人配送を始めている。

 

手書きの送り状が効率を下げている

また、配送拠点、仕分けセンターなどでは無人化が進んでいる。無人化されていない仕分けセンターもあるため、送り状には手書き文字の情報もある。無人の仕分けを行うために、この手書き文字を自動判別しなければならないが、そこで読み取りミスが出て、効率を下げている。すべてQRコードだけになれば無人仕分けセンターの効率は大きく上昇する。有人仕分けセンターでは、人間は端末でスキャンをして情報を表示すればいい。

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▲国営の中国郵政も、湖北省仙桃市で、郵便局から官公庁などへの配達を固定路線を走る無人配送車で行い始めている。

 

個人ID導入で、配送コストは44%に減少との試算も

北京郵電大学の周暁光教授は、郵便番号が個人ID化された場合の効率を試算していて、その試算によると、輸送車は71%に減り、末端の配送車は77%に、宅配スタッフは41%に減らすことができるという。最終的な配送コストは44%に減らすことができる。

消費者にとっても、宅配企業にとっても大きなメリットのある改革だ。逆に言うと、郵便コードの仕組みが古いままであるために、現在は大きな無駄をしていることになる。

ミドリ 便箋 きれいな手紙が書ける便箋 お礼状用 20528006

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ペット飲料の蓋の裏には当たりがある。企業と羊毛党の戦い

数年前まで、ペット飲料の蓋の裏には「当たり」の文字があることがあった。もう1本もらえるというものだ。しかし、最近、その当たりキャンペーンが行われなくなっている。羊毛党対策をしたためだとチタン媒体が報じた。

 

ペットボトルの蓋の裏には「当たり」がある

数年前まで、中国では、ペットボトル飲料を飲み終わっても、すぐに捨ててはいけなかった。蓋の裏側を見なければならない。そこに「もう一本」と刻印されていたら、どこの店でも同じ飲料をもう1本もらえるのだ。

この「もう1本」キャンペーンは、台湾発祥で、中国で飲料、食品などを販売する「康師傅」(カンシーフー)が1998年からペットボトル飲料で始めた。当時、康師傅はペットボトルお茶市場の50%を占めていたが、そこにコカコーラが茶飲料で参入しようとしていた。コカコーラは豊かな資本を活かして、大キャンペーンを始めた。

これに対抗するために、康師傅が始めたのが「もう1本」キャンペーンだった。これは大好評だった。蓋という小さなパーツが当たりくじなので、その場で交換する必要はない。ポケットに入れておいて、お茶を飲みたくなった時に、その当たりの蓋で飲料に交換すればいいのだ。

康師傅にもメリットは多かった。同じ飲料を再び飲んでもらうことで、康師傅のお茶を飲む習慣づけをすることができる。また、当たりくじを入れる割合は、キャンペーンや季節、状況に応じてコントロールすることができる。

コカコーラは「原葉茶」の宣伝にジャッキー・チェン親子を起用して、大キャンペーンを行い、1億本以上を売り上げ、ペット飲料市場の15%を占め、トップシェアの康師傅に迫る勢いを見せた。しかし、康師傅はこの「もう1本」キャンペーンで、トップの座を明け渡すことはなく、コカコーラのお茶飲料市場への参入を撃退したのだ。

これを見て、他の飲料メーカーも続々と「もう1本」キャンペーンを始め、蓋の裏にはくじがあるというのが当たり前になっていった。

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▲ペットボトルの蓋の裏には、「再来一瓶」と書いてあることがある。これが出ると同じ飲み物をもう1本もらうことができる。

 

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▲コカコーラがお茶飲料「原葉茶」でお茶飲料に参入するとき、ジャッキー・チェン親子を起用して大々的なキャンペーンを行った。お茶飲料市場でトップシェアを持っていた康師傅は、蓋の裏に当たりくじをつけることで対抗した。

羊毛党に利益をしゃぶり尽くされたレッドブル

ところが2015年頃から、このキャンペーンをやめる飲料企業が相次いだ。ひとつの理由は、今時、ペットボトル飲料の「もう1本」の当たりくじでは、消費者を惹きつけることができなくなったからだ。

もうひとつの理由は、羊毛党たちの手によって、飲料企業が大きな損失を受けるようになったからだ。羊毛党というのは還元キャンペーンなどを合法だが組織的に行い、儲けようとする人たち。時には非合法な手段を使うこともある。羊の毛を少しずつ集めてセーターを編んでしまうというところが生まれた言葉だ。

2017年、レッドブルは中国での売上目標を6000万本に設定していた。これを達成するために、瓶の蓋の裏、缶のプルトップの裏に「もう1本」の当たりくじをつけた。当たる率は20%に設定したため、1200万本に当たりくじを入れた。ところがこのキャンペーンが終わってみると、戻ってきた当たりくじがなんと2000万本分を超えている。約1000万本分もの作った覚えがない当たりくじがどこからか湧いてきたのだ。

疑いもなく、当たりくじが偽造されたのだ。当たりくじの蓋を作るコストはだいたい0.2元程度。当たりくじの偽装は、レッドブルほどの大量生産ではないので、製造コストが上がるが、それでも0.4元程度で製造できる。これで6元ほどするレッドブルが手に入るのだから、割に合う仕事だ。

それどころか、販売店が積極的に偽造をしていた可能性も指摘されている。販売店は当たりくじを仕入れ先に送ると、1本分の仕入れ代金が無料になる。飲料はだいたい1元から2.5元程度で仕入れるので、0.4元で作った偽の当たりの蓋を送れば、かなり利益が出ることになる。

こうして、レッドブルは売上目標を達成したのに、さっぱり利益が出ないということになった。

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▲ペットボトルの当たりくじを探す人たち。当たっていても、気がつかずに捨ててしまう人がいるので、それを拾い出すのだという。

 

羊毛党に対抗した東鵬特飲

この羊毛党に対抗したのが、東鵬特飲だ。東鵬特飲も2015年までは、蓋の裏の「もう1本の当たり」を行なっていた。しかし、偽造の当たり蓋により損失を受け続けていた。東鵬特飲が公開した数字では、当たりくじの5%近くが偽物だったということになっているが、テンセントセキュリティの試算によると、さまざまな状況から8%から10%が偽造だったと推定できるという。


Chinese Click Farm

▲ロシアのメディアが取材した中国のクリックファームの映像。大量のスマートフォンを並べ、STFツールなどを使い、スクリプトで自動化をしている。当初は、依頼を受けて「いいね」を押す、ツイッターアカウントを使って依頼主をフォローするなどのビジネスをしていたが、最近は還元ポイントを毟り取る羊毛党行為を行なっているところが多い。

 

当たりをQRコード化したことにより、羊毛党を排除

当時、東鵬特飲にはIT部門は事実上存在しなかった。しかし、2016年には50人のIT部門を作り、テンセントのクラウドと契約をして、基幹システムのクラウド化を進めている。その中で、この当たりくじについても、経営を圧迫する要因を排除するため、クラウド化が進められた。

端的に言えば、蓋の裏に「もう一本」という当たりの文言を刻印するのではなく、QRコードを印字する方式に変えた。このQRコードをスキャンすると、モバイルサイトが表示され、そこでくじを引く。当たると、1本分に相当する金額がアリペイやWeChatペイに入金される。いわゆる紅包(ホンバオ)機能を利用している。

このQRコードをどこに印刷するかについては、試行錯誤があったようだ。QRコードによる当たりくじキャンペーンが行われていることがよくわかるように、蓋の外側やラベルの表側にQRコードを印字する方法も試された。しかし、当然ながら、店頭に並べられている時に、こっそりとスキャンしてしまう心ない人が出てくる。くじのシリアル番号はクラウドで管理され、一度引いたくじは無効にできるということがこの仕組みの利点だ。しかし、店頭でこっそりスキャンされてしまうと、正規の購入者から「くじが無効になっている」というクレームが入ることになる。

結局、店頭で勝手にスキャンできないように、蓋の裏またはラベルの裏側にQRコードを印刷することになった。これは悪くないアイディアだった。ペットボトルを分別回収する時は、フタとラベルを剥がして、ペットボトルだけを回収ゴミとして捨てる。くじを引きたいがために、ラベルを剥がし、蓋を取るため、自然と分別回収を促すことができるという効果もあった。

このような変更を行い、10%近くあったと推定される不正率は1%になった。

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▲猫池(モデムプール)と呼ばれる装置。IoT用SIMカード、海外から入手したSIMカードなどを多数挿すと、1台のPCから次々と携帯電話のアクセスが可能になる。羊毛党の必須ツール。これも最近では、eSIMを使うことが増えているという。

 

スターバックス、拼多多も羊毛党の被害を受ける

中国の小売業の場合、このような羊毛党対策が必須になる。羊毛党は違法なことばかりをしているのではなく、合法的な範囲で活動することもあるが、なにしろ組織的に動く。羊毛党にとって、それはビジネスなのだ。スマホのエミュレーションプログラムとIoT用や海外から入手したSIMカードを使って、数千台の仮想スマホをPCの中で動かし、還元ポイントを得られる操作をスクリプトにして自動化をしている。

中国スターバックスも被害にあっている。2018年のクリスマスに、専用アプリリリース記念として、新規ユーザー登録をした人にコーヒー1杯が無料になるクーポンを配布することにしたが、登録情報の90%はデタラメだった。スターバックスは、新規ユーザー登録を中止するまでの1日半で、1000万元(約1億6000万円)の損失を出したと言われる。

まとめ買いECサイト「拼多多」は2019年1月に、会員に向けて100元のクーポン券を配布したが、これが1人1枚のはずが、システムのバグにより、何枚でも取り放題の状態になっていた。数時間のうちに、ネットはお祭り状態となり、1日足らずの間に2億枚のクーポンが発行されてしまった。

拼多多では、クーポンの配布を停止するとともに、クーポンの無効を宣言して、会員に謝罪をした。しかし、遅かった。羊毛党たちは、そのわずかな時間に、クーポンを取得しただけでなく、プリペイドカードなどの換金性の高い商品を買っていたのだ。この取り戻しようがない損失だけでも数千万元(数億円)規模だと言われている。

中国の小売企業にとって、還元キャンペーンはただ話題になればいいというものではない。あらかじめ、羊毛党につけいられる隙がないかどうかをしっかりとテストしなければならない。還元キャンペーンは、真剣勝負なのだ。

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▲羊毛党は、個人の趣味などではなく、ビジネス化されていて、サプライチェーンが確立している。「羊毛党産業報告」(同盾科技+FreeBuf)より引用。

 

 

 

テック×スポーツ。杭州市にアリババのテックスポーツセンターが開館

浙江省杭州市江干区にアリババスポーツセンターが開館した。ただの体育館ではなく、テクノロジーとスポーツが融合したスポーツセンターだと話題になっていると江干発布が報じた。

 

8階建てのアリババスポーツセンターが開館

アリババスポーツセンターが開館したのは、杭州市の江干区。地下鉄1号線九堡駅または客運中心駅から徒歩10分の位置にある。また、地下駐車場も300台分用意されている。ナンバー読み取りによるアリペイ自動決済であるため、駐車チケットの発券や精算なども必要ない。

このスポーツセンターは8階建で、8階は屋上になっていて屋外のサッカーコートになっている。バスケット、テニス、バドミントン、卓球、水泳、ヨガ、テコンドーなどの競技スペースが用意され、さらにジムや中国ダンス、ラテンダンス、ヒップホップなどのスペースも用意されている。

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杭州市に開館したアリババスポーツセンター。アリババの企業施設ではなく、誰でも利用できる。

 

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▲夜間にはイルミネーションにより飾られる。近未来的な施設だ。

 

日本発のARスポーツHADOの専用コートも

その中でも、話題になっているのが1階のHADO(ハドー)スペースだ。HADOは日本のスタートアップmeleapが開発したテックスポーツで、ARとモーションセンシングテクノロジーが使われている。ヘッドマウントディスプレイとモーションセンサーを装着し、CG映像を重ね合わせることで、ドラゴンボールかめはめ波のような波動弾を打つことができるというもの。競技方法は数種類あるが、一般的なのは3人チームの対戦だ。すでに世界大会が開催されるほどの盛り上がりを見せている。

アリババスポーツセンターでは、この新しいテックスポーツをいち早く取り入れた。

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▲HADOの競技の様子。テックとスポーツ、ゲームを融合した競技として、ワールドカップも開催されている。

 


HADO WORLD CUP 2017 PV

▲HADOワールドカップのプロモーションビデオ。映像はもちろん合成だが、ARグラスを通して見ているプレイヤーには、映像通りの映像が見えている。

 

韓国発のテック×スポーツ施設レジェンドスポーツヒーローズも

2階は、レジェンドスポーツヒーローズ。デジタル技術を駆使して、野球、サッカー、オリンピック競技まで室内で楽しめるというもの。こちらはゲームセンターとスポーツの融合だ。日本でもモールなどに店舗があるが、韓国では大人気で、それがアリババスポーツセンターにも取り入れられた。2000平米の大型施設になっている。


レジェンドスポーツヒーローズ 新PV

▲屋内体験型スポーツテーマパーク「レジェンドスポーツヒーローズ」のプロモーションビデオ。日本のラウンドワンがアナログ的な娯楽施設だとすると、こちらはデジタル的な娯楽施設だ。屋外スポーツがデジタルの力で、屋内で楽しむことができる。

 

入館は顔認証、支払いはアリペイ

3階以上は、テニス、サッカー、卓球などのスペースになっていて、1時間20元(約300円)前後で利用することができる。

利用するには専用アプリから予約をすることが必要。予約をすると、顔認証による各エリアに入ることができる。予約をしていなければ、顔認証ではじかれて入ることができない。決済は予約時に自動的に行われる。

キッズスペースも用意されていて、本格的にスポーツを楽しみたい人から週末の娯楽感覚でも楽しめる施設になっている。他都市展開については触れられていないが、同様の施設は他都市にも展開されると見られている。

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▲アリババスポーツセンターのディレクトリー。伝統的なスポーツとテックスポーツの両方が楽しめる。

 

 

高級人材に起こり始めているUターン、Jターン現象。人材は新一級都市へ

中国の大学生は、誰もが北京、上海、深圳、広州などの一級都市での就職を希望する。しかし、一級都市の人材が供給過多になり、新一級都市との給与格差も縮まってきたことから、大都市の大学卒業者が地方の新一級都市に職を求める現象が起こり始めていると趣排行が報じた。

 

高級人材の飽和が始まった大都市

中国のテック企業の拠点と言えば、北京(百度、小米、バイトダンス、京東)、上海(拼多多)、深圳(テンセント、ファーウェイ)、広州(網易)などの一級都市が中心。しかし、地方都市にすぎなかった杭州を拠点とするアリババの成功により、地方都市を拠点とするテック企業が増え、人材も一級都市から、このような新興の新一級都市に流れる傾向が生まれている。

就活サイト「猟聘」は「2019上半期高級人材就職現状ビッグデータ報告」を公開した。これによると、著名大学の卒業者の年収は上がり続け、一級都市ではすでに高級人材(大学院卒業者や優秀な学部卒業者)が飽和をしている。これにより、高級人材が新一級都市と呼ばれる杭州成都武漢重慶西安などに流れ始めている傾向が明らかになった。

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▲各業種別の人材の需給関係。テクノロジー関連は需要が多いのに、供給が少ない人材不足になっている。そのため、報酬が増え続けている。その他の業種では概ね供給過多になっている。

 

ファーウェイでは、新卒高級人材に報酬3000万円の例も

中国テック企業の高級人材の年収は今でも上がり続けている。ファーウェイの任正非が発信した内部文書によると、ファーウェイでは2019年の新卒生から、研究職、幹部候補生など8名の高級人材を採用する計画で、その報酬は89.6万元(約1360万円)から201万元(約3000万円)であるということが報道され、世間の大きな話題になった。

これは特別な例だとしても、有力大学の卒業者の年収は上がり続けている。各大学とも、初任給50万元(約760万円)以上の高級人材の割合が高くなってきている。

各大学によって、学部の関係から、就職する業界には違いがある。北京大学中国科学技術大学では、3割以上がテック企業に就職する。清華大学も1/4以上がテック企業だ。復旦大学では金融業界が多く、同済大学では不動産や建築業界が多い。これは復旦大学には金融系の、同済大学には建築系、土木工学の優れた学部がある関係だ。

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▲各有名大学の卒業者の年収分布。10万元(約150万円)から20万元(約300万円)が多いが、50万元(約760万円)以上の高級人材の割合も多い。特に清華大学の卒業者は報酬が高い傾向がある。

 

中高級人材で顕著な地方都市への人材拡散現象

このような状況の中で、中級人材、高級人材の新一級都市への移転が始まっている。中国でも、一般人材はどの業種でも人手不足だが、中級人材、高級人材はすでに飽和状態にある。特に不動産、金融、製造、化学などの旧経済業種において顕著だ。例外なのは、成長し続けているテクノロジー関連ぐらいだ。

また、年ごとに中高級人材の需給を見ると、北京と上海ではすでに過剰供給になっている。成長空間が残されている深圳、広州ではまだ供給不足だが、すでに杭州などの新一級都市でも供給不足が起こり始めている。

新一級都市は、地方の中核都市で、成長の過程にあるが、経済規模はさほど大きくないため、以前は中高級人材の需要がさほど強くなかった。しかし、成長が軌道に乗り、いよいよ需要が増え、供給不足気味になり始めている。

このような状況から、一級都市の著名大学を卒業した中高級人材が、新一級都市で職を求めるというJターン現象が起き始めている。

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▲都市別の中高級人材の需給関係。すでに北京、上海では供給過多になっている。そのため、中高級人材が不足している杭州以下の新一級都市へ人材が流れ始めている。

 

報酬格差も減少。生活実感はほぼ同じ

この中高級人材の拡散の背景にあるのは、報酬の格差が縮まってきたことがある。各都市の中高級人材の平均月給は、1位は北京の2万2306元(約34万円)だが、新一級都市トップの杭州でも1万7503元(約27万円)と格差は小さくなっている。新一級都市は、物価が安く、生活費も抑えられるため、生活感覚はあまり変わらなくなっている。

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▲一級都市、新一級都市の平均給与。数値的にはまだ格差は残っているが、新一級都市は家賃や物価が安いため、生活実感としては大きな違いはなくなってきている。新一級都市では、中心部を再開発している例が多く、そのような場所に住めば、生活の利便性も大都市とあまり変わらない。格差が縮まったことが、新一級都市への人材拡散の要因のひとつになっている。

 

新一級都市の中でも二極化が起き始めている

ただし、新一級都市すべてが中高級人材を惹きつけているわけではない。新一級都市各都市の中高級人材の流入率を見ると、最高は杭州の8.82%だが、天津や東莞のようにマイナスとなり、むしろ流出をしてしまっている都市もある。

流出が多いのは青島、蘇州、東莞、天津で、近隣に大都市がある新一級都市では流出の傾向があるようだ。

テクノロジー関連では、どの新一級都市も流入をしているが、電子通信、交通貿易、金融の3分野については、却って大都市に流出をする傾向にある。

新一級都市とは、以前は二級都市であったものが、成長が著しいために、二級都市の分類にはそぐわなくなった都市のことだ。しかし、その中でも、成長には濃淡がある。杭州のように一級都市と肩を並べる都市もあれば、二級都市に逆戻りしかねない都市もある。新一級都市も二極化していくのだと見られている。

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▲各新一級都市の中高級人材の流入流出量。同じ新一級都市でも、杭州や寧波、長沙、西安などは中高級人材が外部から流入しているが、青島、蘇州、東莞、天津などではむしろ流出をしている。

 

 

 

荷物タグを電子化。カウンター手続き不要、チケットレスで搭乗可能に

中国東方航空は、上海・北京路線で、預け入れ荷物の電子タグの運用を始めた。チケットも電子チケットとなり、カウンターでの手続きは不要となり、チェックイン、荷物の預け入れ手続きがスマートフォンから行えるようになると中国民航報が報じた。

 

預け入れ荷物の200個に1個はトラブルに遭遇

航空機に乗る時に、荷物を預ける時は、カウンターで申請をして、荷物タグをつけてもらう。そこにはさまざまな記号、バーコードが印刷されているが、乗客にとっては必要のない情報ばかりだ。しかも、乗客は、カウンターで荷物を預けたら、到着地で受け取りをするまで、自分の荷物がどう扱われ、どういう状態にあるのかはまったくわからない。航空会社を信頼するより他はない。

航空機の運航データを収集し、安全と定時運行の確保に寄与するサービスを提供している企業SITA(シータ)のBaggage Report 2018によると、預け入れ荷物1000個のうち5.57個が何らかのトラブルに遭遇している。その78%は到着の遅延、17%は荷物の破損、盗難、5%が紛失となっている。

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▲航空会社スタッフは、スキャナーで荷物タグのバーコードを読み取る他、電子タグも内蔵され、空港内の各ポイントで感知される。搭乗客のスマホには、荷物の現在位置がリアルタイムで表示される。

 

上海・北京間で電子荷物タグが始まる

中国東方航空は、上海虹橋・北京首都空港路線で、電子荷物タグの導入を正式に始めた。この電子タグは、東方航空アプリに会員登録をすると無料でもらうことができる。この電子タグは、電子ペーパー表示でNFCチップ、RFID電子タグなどが内蔵されている。

最大の特徴は、近接通信のすべてがパッシブ型であるために、電源が不要だということだ。そのため内蔵電池やバッテリーなどは搭載されていない。東方航空では、以前からバッテリー内蔵型の電子タグを試験運用していたが、航空機に発火の可能性が否定しきれないバッテリー搭載機器を乗せるという安全性が大きな課題になっていた。今回の電子荷物タグは、この問題をクリアした。破損をしなければ、永久に繰り返し利用することができる。

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中国東方航空が運用を始めた電子荷物タグ。預け入れ手続きはスマートフォンから行え、リアルタイムで荷物の位置がスマホに表示される。

 

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▲電子荷物タグはそのまま持って帰り、次の搭乗のときに自分で付け替える。スマホで手続きをすると、電子ペーパーの表示内容が自動的に変わる。

 

荷物の現在地がリアルタイムでわかる電子荷物タグ

電子荷物タグは、航空機の予約を済ませ、東方航空アプリに搭乗情報が表示されている状態であれば、どこでもスマホから預け入れ手続きをすることができる。自宅ででもかまわないし、空港に向かう途中でもかまわない。

空港に着いたら、手荷物預け入れカウンターで荷物を渡すだけだ。そのまま重量が測定され、安全検査が行われ、その情報もアプリに表示される。

搭乗客にとって、この電子荷物タグの最も優れた点は、空港設備の各ポイントに電子タグリーダーが設置されていて、荷物の追跡が可能になることだ。自分の荷物がどこにあるかは刻々とアプリに表示される。東方航空側でも、乗客の搭乗券情報と荷物情報の照合を行なっているので、万が一積み忘れ、積み間違いなどがあれば、すぐにわかるようになっている。

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中国東方航空の専用アプリを使うと、チェックイン、荷物の預け入れ手続きがスマホから可能になる。カウンターでは荷物を渡すだけで、すぐに安全検査に向かうことができる。

 

カウンター手続きが不要になる電子チケットと電子タグ

到着地で荷物を受け取ったら、帰りも同じように、好きな場所でスマホから預け入れ手続きをすることができる。電子荷物タグはそのまま自宅に持って帰り、別のスーツケースを使う場合は付け替えればいいだけだ。

東方航空アプリを利用すると、搭乗券も電子チケットになるために、スマホがあれば、チケット類を持たずに飛行機移動ができるようになる。さらに、カウンターでの手続きも不要になる。空港に向かう途中で、荷物の預け入れ手続き、チェックインを済ませ、空港ではカウンターに荷物を渡すだけ。すぐに安全検査を通って、搭乗口に向かうことができる。

現在、この電子タグは4000個用意され、利用できるのは上海・北京路線のみだが、順次、路線と個数を拡大していく予定だ。