中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

高速道路の路肩走行違反車は、巡回ロボットが自動で取締り

上海から西安までを結ぶ全長1490kmの濾陝高速の六安北インターチェンジ付近に取締ロボットが登場した。このロボットはガードレール上を移動し、路側帯駐車、路側帯走行をする車両を発見すると市井茶客が報じた。

 

ガードレール上を走る取締ロボット

この取締ロボットは、路側帯での停車、走行をした車両を発見すると写真を撮影し、4G通信で情報を警察官に送信をする。大きさは旅行用スーツケース程度で、重さは約20kg。高速道路のガードレールをレールにして、時速5kmで走行する。1回の充電で約5時間から8時間走行でき、監視範囲を自動的に往復をする。頭部には360度カメラが備えられ、これで路側帯に違法停車している車両を発見する。

警察官のスマホには、制御用のアプリがインストールされ、映像などはこのアプリに送信されるので、警察官が違反切符を切りに急行する。また、このアプリから、取締ロボットの走行などを制御することも可能だ。

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▲ガードレール上を走行する取締ロボット。上部の360度カメラで違反車両を撮影する。

 

中国の高速道路で問題になっている路側帯走行

高速道路の発達とともに、路側帯への停車、走行といった違法行為が大きな問題になってきた。緊急車両が走行できなくなるからだ。

路側帯に停車をして、子どもに用を足させる、食事をとる、写真を撮る、休息するといった行為が日常的になっている。走行車両が追突をするという重大事故を招きかねない行為だ。

渋滞時には深刻な問題が起きる。少しでも前に行こうとして、空いている路側帯を走行する車両が出てくる。そのまま、渋滞が激しくなると、路側帯を含めて、車両がぴたりと動かなくなってしまう。こうなると、緊急車両がまったく進めなくなるという事態になる。

六安市公安局交警支隊では、パトカーの巡回などをして、路側帯の違法駐車の取り締まりを行っているが、路側帯停車の影響の大きさがまだドライバーに理解されていなこともあり、交通警察官による取締りには限界を感じていた。このため、この自動巡回ロボットを投入することになった。

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▲取締ロボットは専用のスマホアプリから制御できる。違反発見の通知もスマホアプリに送られてくる。

 

事故時には急行してカメラで現状把握

違法駐車車両の取締だけではなく、事故時には現場に緊急車両よりも早く到着できるため、事故現場の状況を映像で本部に送信する機能もある。

また、音声を発し、光を発する機能もあるため、事故、渋滞、工事、悪天候などの場合は、音声と光で、走行車両に警告をすることもできる。

路側帯の停車は、罰金200元、減点6と意外に重い違反になる。違反摘発を行うことで、路側帯停車の危険性、問題をドライバーに認知してもらうのが目的だ。

路側帯を走行するのではなく、車両の走行に影響を与えないように、ガードレールをレールにして走行する取締ロボットは、他の高速道路でも採用されそうだ。

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▲1回の充電で5時間から8時間ほど動作する。取締重点地区に運搬し、ガードレールに設置をする。

 

 

中国のプログラマーはなぜウインドブレーカーばかり着ているのか

中国のITエンジニア、プログラマーたちのウインドブレーカー着用率は飛び抜けて高く、よくネット民からからかわれるばかりでなく、プログラマー自身も自虐的に認める。なぜ、揃いも揃ってウインドブレーカーを着るのか。西二旗生活指北がその理由を解説している。

 

ウインドブレーカー着用率が高いプログラマーたち

中国の街中では、人ごみの中でもプログラマーがいたらすぐにわかる。なぜなら、彼らは揃いも揃ってウインドブレーカー(アウトドアジャケット)を着ているからだ。撥水加工をしたポリエステルやゴアテックスなどでできたフード付きのジャケットだ。

なぜ、プログラマーはウインドブレーカーを好むのか。西二旗生活指北が8つの理由を挙げている。

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▲典型的なプログラマーのスタイル。間違いなく同じチーム。

 

1)服を選ぶのが煩わしい

夏以外の季節であれば、朝起きて、外の天気を見ることもなく、ウインドブレーカーを着ていける。雨であっても、晴れであっても問題ない。暑ければ脱げばいい。寒ければフードをかぶって会社まで我慢をすればいい。プログラマーバックパックを背負っているのが基本なので、脱いだらコンパクトにたためてバックパックにしまえるウインドブレーカーは機能的なのだ。プログラマーは服にも機能性を求める。

 

2)恋愛に振り回されたくない

ウインドブレーカーは撥水加工が施されているので、液体をこぼしても、拭けば跡も残らない。恋人に抱きつかれて泣かれるような状況があったとしても、拭けば涙の跡は消えてしまう。プログラマーは独身でなければならない(と著者は主張する)し、感情に振り回されて、プログラミングの妨げになることを好まないのだ。

 

3)冬の寒さが何よりも嫌い

プログラマーが冬になって思うことは「寒い」。それだけだ。寒いことを何よりも恐れる。中国北部の冬の寒さは厳しく、最もつらいのは耳だ。「冬の寒さは耳をもぎ取る」と言われ、「餃子は寒さで取れてしまった耳なのだ」というジョークもあるほど、寒さで耳が痛くなる。フードのついているウインドブレーカーは耳を守ることができる。プログラマーは耳を覆うことで、寒さをしのごうと考える。

 

4)洗濯をする必要がない

ウインドブレーカーは撥水加工が施されているので、気軽に洗濯をしてしまうと撥水加工が落ちてしまうので、こまめに汚れを拭って手入れをするのが基本だ。プログラマーはこのことを曲解して、ウインドブレーカーは洗濯をしてはならないと言い張る。

プログラマーの中にはジーンズもワンシーズンまったく洗濯をしない人がいて、「味を出すため」だと言い張っている。ウインドブレーカーも洗濯をしないことで「味を出す」のだという。

その代償は、なんとも言えない臭いを放つことだ。どんな臭いかを知りたければ、朝のラッシュ時に、北京の地下鉄13号線(北部の環状線で、IT企業の多い地域を通る)に乗ってみれば知ることができると西二旗生活指北は言っている。

 

5)モールに行くのが嫌い

プログラマーはショッピングモールに行くのが嫌いだ。人が多すぎ、どこに何の店があるかがわからないからだ。案内パネルやマップを見ても、似たような店舗が脈絡なく点在しており、プログラミング言語のようにきちんとクラス化されていない。これは悪いコードの典型であり、プログラマーをイライラさせる。

ウインドブレーカーはモールに行かなくても買える。同僚から「このブランドがおすすめだよ」という話を聞いたら、すぐにECサイトで購入することができる。選ぶべき属性も「色」と「サイズ」ぐらいで構造化されている。しかも、ウインドブレーカーなら、多少サイズが違っても着ることができる。プログラマーは買い物という作業に最小限の労力しかかけたくないと考えている。

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▲ウインドブレーカーは選ぶのが簡単。好きなブランド、サイズ、好きな色。この3つのキーで絞り込みをすれば、買うべきものが自動的に決定する。ここがプログラマーに好まれる。

 

6)価格に大きな差がある

ウインドブレーカーは性能によって価格が大きく違う。高価なものでは1万元(約16万円)もするが、安いものでは800元(約1万3000円)で買える。価格の高いものはそれだけ性能が優れているのだが、それは実際に登山をしてみて初めて意味がある。登山やアウトドアが好きではないプログラマーにとって、そこまでの機能はいらないので、安いもので構わないのだ。それでいて、けっこう高い服を着ているように装える。

 

7)男性用のカジュアルウェアの種類が多くない

中国でも女性の服については、さまざまなブランドが入り、他国と変わらないバラエティがあるが、男性のカジュアルブランドは多くない。また、IT企業でスーツのようなかっちりした服装はそぐわない。オフィスの入り口で、保険の販売員だと勘違いされて排除されてしまうこともある。

結局、カジュアルでプログラマーらしい服装といったらウインドブレーカーぐらいしかないのだ。

 

8)みんなが着ているから

プログラマーは、チェック柄のシャツ、ジーンズ、速乾性素材のTシャツ、黒のライトダウン、ウインドブレーカーといったところが定番になっている。さらに、プログラマーだけでなく、中国人は仲間で同じ服装をしたがる傾向がある。プログラマーのチームで同じデザインのウインドブレーカーを特注することもある。それで帰属意識を確認する。

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プログラマーのクローゼットには、ウインドウブレーカーとライトダウンが入っている。春、秋、冬はウインドブレーカー。ものすごく寒くなるとダウンに切り替える。中はTシャツとジーンズ。これだけで1年を乗り切る。

 

この8つの理由は、西二旗生活指北が感じたこと、Q&Aサイト「知呼」のコメントなどをまとめたもので、正確な分析というよりは、ジョーク寄りの読み物にすぎない。しかし、中国のプログラマーのウインドブレーカー着用率が高いことは間違いない。IT企業の玄関あたりにいれば、ウインドブレーカーを着た人が出入りしていることがわかる。この話が本当かどうか、機会があったら、朝のラッシュ時の地下鉄13号線に乗って確かめてみていただきたい。

 

道路とバスターミナルに5G。スマート化される成都市の公共バス

成都市では、二環(第2環状高架道路)全線と金沙ターミナルに5G基地局を設置し、バスが5G通信を利用できるようにした。高精度の顔画像がやり取りできることになり、顔認証でバスに乗れる世界が実現すると期待されていると成都発布が報じた。

 

道路とバスターミナルに5Gを敷設

成都市の公共バスを運営する成都公交集団と中国電信は共同して、二環道路と金沙ターミナルに5G基地局を敷設した。乗客は、WiFi経由で5G通信を利用することができるようになった。5G対応スマホを持つ人が増えてくれば、直接5Gによる高速通信を利用することができ、バスの車内でVRなどを楽しむことができるようになる。

国電成都支社によるによると、金沙ターミナルの5階の発着所フロアに4基の5G基地局を設置し、同時に500人が利用できるという。ターミナル内に設置されたモニターでは、成都各地からの5Gによる8K映像のライブ中継が楽しめるようになっている。現在、ターミナル全体に5G信号が行き渡るように増設を進めている。

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▲「hello 5G」をキャッチフレーズにして、成都市を「5Gの都市」にしようと、成都市政府も積極的に5G敷設を支援している。

 

当面の狙いは顔認証決済によるバス乗車

成都公交集団がターミナル、高架道路に5Gを敷設するのは、乗客に対するサービスだけが目的ではない。バス交通をスマート化させることが本来の目的だ。

ひとつはバスに顔認証決済で乗れるようにすること。3D顔認証決済をするには、端末から高精細の画像とデータをクラウドに送信し、クラウド上で認証を行わなければならない。飲食店、地下鉄改札などの固定した場所であれば有線でクラウドに接続をすればいいが、バスのように移動する物体に顔認証決済端末を設置するには、大容量の通信回線が必要になる。5Gによって、移動体でも顔認証決済ができるようになる。

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▲5G基地局が設置された金沙ターミナル。監視カメラ映像で客の流量などを解析し、バスを適宜増発させるなど、人工知能による運行管理を取り入れていく。


長期の狙いは人工知能による運行管理

もうひとつは人工知能による運行管理だ。すでに金沙ターミナルの運行管理室では、AI運行管理が始まっている。

このAI運行管理の目的は2つ。ひとつはバスの乗車人数、下車人数、金沙ターミナルの乗客流量などを、バスの決済端末、監視カメラ映像の画像解析などから把握をし、乗客が多い場合には適宜増発をすることで、過剰な混雑を防ぎ、定時運行を実現するというもの。

もうひとつは金沙ターミナル内の監視カメラで行動解析を行い、バス専用道への立ち入り、柵を越えるなどの異常行動を自動的に発見し、警告を発するというものだ。

定時運行とターミナルの安全管理に人工知能を役立てている。

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乗務員の体調も人工知能が管理

顔認証は、乗客の決済だけでなく、乗務員にも将来的には行われるという。乗務前に顔認証を行い、過剰勤務になっていないかどうかをチェックする。また、運転中の乗務員の映像を分析し、病気の発作などによる異常事態を事前に予測するという。

5G通信が可能であるため、運行管理室から遠隔操作をし、非常時にはバスを路肩に安全に停止させるというようなことができるようになる。

 

成都市が挑戦する「5G都市」

中国は都市間の競争が激しく、どの都市もITの「顔」を持とうとしている。北京の自動運転、上海の人工知能杭州の顔認証決済などは、すでに各都市の「顔」になりつつある。成都市は、バス路線、バスターミナルに中国で最初に5Gを敷設しただけでなく、地下鉄、鉄道の成都東駅や、川沿いの公園地区「夜游錦江」などにも5Gを敷設した。いずれも地下鉄、鉄道駅、公園地区に設置される5Gとしては、中国初となる。

他の都市に先駆けて「初の5G」を並べることで、成都市は5Gという顔を持つことに挑戦しようとしている。

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▲イルミネーションが施された「夜游錦江」公園。ここにも5Gが敷設されていて、遊覧船や川沿いで利用ができるようになっている。

 

杭州市の渋滞を5位から57位までに改善した「都市ブレイン」が他都市展開へ

人工知能が交通信号の明滅時間を制御することで渋滞を解消する。杭州市で展開していたアリクラウドの「都市ブレイン」が大きな成果を上げ、クアラルンプールやマカオ、蘇州など国内外の10都市への横展開を始めていると都市快報が報じた。

 

交通信号を人工知能が制御して渋滞を解消する「都市ブレイン」

中国の多くの都市が交通渋滞に頭を悩ませている。都市への人口流入の速度が速すぎて、公共交通の整備が追いつかないのだ。全国の人口上位32都市のうち、27都市が、一人当たりの道路面積が全国平均以下となっている。

この問題の決め手として注目をされているのが、アリババ傘下のアリクラウドが開発をした「都市ブレイン」だ。

都市ブレインは、交通監視カメラ映像を画像解析することで、各道路の交通量を算出し、人工知能が各交差点の交通信号の明滅時間を制御することで、渋滞を解消しようというものだ。簡単に言えば、交通量が多い道路の信号の青の時間を長くして、車の流れをよくするというもの。

また、交通事故なども画像解析から把握をし、救急、警察に、その被害程度も概算して、自動的に通知する。また、緊急車両に対しては、最短経路が示され、移動中の信号はすべて青になり、ノンストップで現場に到着できる。

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▲道路に設置された交通監視カメラの映像から、車両を認識し、交通量を算出する。これに基づいて、信号の明滅時間を制御する。

 

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▲赤枠は停止車両。ここから追突事故であることを判別し、事故の程度を推測し、救急、交通警察などに通知を送る。市民からの通報が入る前に、緊急車両が出動できる。

 

渋滞ランキングは5位から57位まで改善

杭州市が、この都市ブレインの導入を決めたのが2016年。まず蕭山区の渋滞の激しい区間に導入してみたところ、車両の平均速度が最大で11%上昇することを確認。翌2017年7月には、蕭山区の128カ所の交通信号を人工知能で制御してみると、試験区間の通過時間は15.3%減少し、救急車の現場到着時間は半分以下となった。

2018年には、都市ブレインの提供区域を大幅に拡大した。面積で420平方キロの地域をカバーする。

2016年、導入前の杭州市の渋滞度ランキングは、全国5位だったが、2018年末には全国57位まで下がっている。杭州市の渋滞は大幅に改善をし、もはや「渋滞の街」ではなくなっている。

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▲緊急車両には、事故現場まで、渋滞などを考慮した最短経路を提示する。緊急車両の走行に合わせて、交通信号はすべて青になる。現場到着時間は半分以下に短縮された。

 


ET大脑详情页 城市大脑

▲都市ブレインの公式プロモーションビデオ。どんな機能があるか、わかりやすく1分30秒にまとめられている。

 

杭州市全域に拡大。国内外10都市にも横展開

2019年、杭州市は都市ブレインの提供地域を市中心部から郊外市区へと大幅に拡大する。臨安区、富陽区、建徳市、桐盧県、淳安県にも拡大し、杭州市全域の交通信号の制御を都市ブレインに任せる。

一方、開発元のアリクラウドでは、杭州市での都市ブレインの成果を元に、他都市展開を進めていく。蘇州市、衢州マカオ、クアラルンプールなど国内外の10数都市が、導入を検討、決定している。

クアラルンプールではすでに試験導入が始まっていて、試験導入地域では、救急車の現場到着時間が48.9%に短縮されるという成果が上がっている。

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杭州市は東側の数字で示されている4区が中心地。都市ブレインは今年、杭州市全域に拡大される。

 

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▲すでにマレーシアのクアラルンプールで、都市ブレインの試験導入が始まっている。アリクラウドは、中国を代表する輸出品に育てたいとしている。

 

都市ブレインを中国の戦略輸出品に育てる

アリクラウドでは、中国各都市に横展開をしていくのはもちろん、海外への戦略的な輸出品にも育てたいという。ロンドンは世界に地下鉄を輸出した。パリは下水道を輸出した。ニューヨークは電気網を輸出した。中国は都市ブレインを輸出するというわけだ。

渋滞は都市の病気だ。渋滞に悩まない都市は存在しない。それを、人工知能が交通信号を制御するというシンプルなアイディアで杭州市は大きな成果をあげた。都市ブレインそのものが採用されるかどうかは別として、海外の都市でも交通信号を人工知能が制御することが当たり前になっていくだろう。

 

地下鉄も顔パス。地下鉄改札に3D顔認証を導入。進む脱QRコード

4月1日、山東省済南市の地下鉄1号線に顔認証改札が導入された。中国では初の顔認証決済で乗れる地下鉄になるとDOITが報じた。

 

3D顔認証技術を地下鉄改札に応用

顔認証ユニットには、深圳市のメーカー「オーベック」が開発した3D顔認識デバイスを採用。18000点のスポット光を放射し、3Dで顔認識をするため、誤認識率は100万分の1以下になるという。

そのため、通り抜ける感覚ではなく、改札前でいったん立ち止まる感じになる。済南地下鉄では認識にかかる時間は「2秒以内」と説明している。ただし、乗客が改札に近付き始めた時点で、スポット光を放射し、認証を始めるので、実際に改札の前に立ち止まらなければならない時間は、0.5秒程度になる。

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▲済南市の地下鉄1号線に導入された顔認証改札。専用アプリに顔を登録しておくだけで、スマホがなくても地下鉄に乗り降りができるようになる。

 

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▲顔認証デバイスはかなり手前から認識を始めるため、まっすぐ歩いてくれば立ち止まる時間はほとんどゼロになる。混雑時などでも立ち止まる時間は0.5秒以内で、1分あたり30名から40名の乗客が通過できる。

 

チャージが面倒なNFC交通カード

これまで、各都市の地下鉄では、NFC交通カードやQRコードによる認証を行ってきたが、それぞれに一長一短があった。

交通カードの場合は、チャージを原則窓口やチャージ機で行わなければならない。交通カードのアプリ化も進んでいて、これであればスマホ内でチャージができたり、オートチャージ設定ができるが、NFC対応のスマホ所有者はまだまだ主流ではない。交通カードの場合、チャージをする面倒がついて回る。

 

改札で渋滞を引き起こすQRコード

QRコードは、チャージなどもスマホ内ででき利便性は高いが、スマホを取り出して、QRコードを表示しなければならない。改札前で思い出したように、QRコードの表示操作をする人も多く、ラッシュ時には渋滞を引き起こす原因にもなっている。

さらに、QRコードは認証のたびに通信を行う。このため、ラッシュ時などでは通信が混雑してしまい、QRコードのスキャンに時間がかかったり、駅構内では他のスマホ通信がしづらくなるなどの問題が出始めている。

このため、ラッシュ時にはQRコードの使用を控えるように呼びかけている駅も出てきているという。

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▲オーベックの3D顔認証システムは、企業や施設の出退勤管理などにも広く使われるようになっている。

 

QRコードよりも効率が大幅に上がる顔認証

これが顔認証になると、スマホを取り出す必要はなく、チャージもスマホ内で完結する。決済認証のための通信も、顔認証デバイスから有線で行うため、処理遅延も起こらない。将来的には5G通信を利用して、より設置コストが下がると期待されている。

済南地下鉄によると、顔認証では1分あたり、30名から40名の乗客が改札を通過することができ、QRコードに比べて、大幅に効率が上がるという。

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QRコード決済の「アリペイ」「WeChatペイ」も脱QRコードに走り始めている。仏系スーパー「カルフール」では、テンセントが開発した顔認証セルフレジの導入が始まっている。顔認証でWeChatペイ決済ができる。アリペイ、WeChatペイとも、POSレジに接続できる安価な顔認証ユニットを大量に販売し始めている。


QRコードに走り始める中国

このデバイスを開発したオーベックは、深圳のスタートアップ。スマホOPPO Find Xの顔認証や銀聯に顔認証自動販売機などの技術を提供している。この他、アリペイ、WeChatペイも低価格の顔認証決済デバイスを提供し始めており、2019年は各局面に顔認証決済が普及する年になると期待されている。スマホQRコードの1歩先に進み始めている。

 

スマホ決済普及で、強盗事件数が半分以下に。一方で、詐欺被害額は増加中

スマホ決済が普及をし、現金を持たなくなる人が多くなったため、強盗事件が5年前の半分以下に減少したと超盟金服が報じた。しかし、一方で、スマホ決済を利用した詐欺事件被害額は急上昇している。

 

強盗事件は5年前の半分以下に

アリペイ、WeChatペイなどのスマホ決済が普及をして、都市部では現金を持ち歩かないスタイルが当たり前になっている。それに伴って、強盗事件が大きく減少している。

最高裁判所が公開した統計によると、強盗事件の裁判数は5年前の1万3556件から2017年の5512件と半減以下になっている。

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▲強盗の裁判数とアリペイの利用者数のグラフ。スマホ決済が普及するとともに、強盗の件数は減少している。

 

失敗強盗がニュースになる

メディアも強盗事件を報道する機会はめっきり少なくなり、その代わりに失敗をした強盗事件を報じている。

3月27日、雲南省の若者2人が杭州市に出てきて強盗を働いた。逃走用の電動スクーター、帽子、ナイフ、手袋などを4000元(約6万3000円)で購入し、コンビニに強盗に入る計画だった。

ところが、2人は、杭州市がアリババのお膝元で、すっかり無現金都市になっているということを知らなかった。3軒のコンビニに強盗に入ったが、どこのコンビニにも現金がほとんど置いていない。結局、現金は1800元(約2万8000円)程度しか得られなかった。

大赤字であるだけでなく、監視カメラ映像から犯人はすぐに捕まってしまった。

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杭州市の強盗が事前に用意した道具。全部で6万円以上のお金がかかったが、3件のコンビニ強盗で得た金額はわずか3万円弱だった。

 

アリペイ強盗も実名制であるためにすぐに逮捕

また、南京市ではある女性が帰宅途中で強盗にあったが、現金は、スマホが壊れた時用に500元をバッグの中に入れているだけだった。それを差し出すと強盗は少ないと言い、アリペイで2000元を転送するように命じた。女性はそれに従って2000元を転送し、ことなきを得た。

数時間後、アリペイは実名登録であるため、犯人の身分がすぐに特定され、逮捕されることになった。

 

一方で、ネット詐欺事件の被害額は10倍以上に急増

スマホ決済が普及をして、現金を持ち歩くことがなくなり、強盗事件は減少している。しかし、一方で、ネットや電話を使った特殊詐欺は横ばい状態だが、一人当たりの被害額が急増をしている。セキュリティ企業「360」が公開した「2018年ネット詐欺情勢研究報告」によると、2018年の一人当たりの詐欺被害額は2万4476元となり、5年前の2014年の2070元の10倍以上になっている。

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▲この5年間の詐欺通報件数と一人当たりの平均被害額。通報件数は横ばいだが、平均被害額が急速に増加をしている。明らかにスマホ決済で、簡単に送金ができるようになった影響だ。

 

儲け話、信用スコアが餌となり釣られる

資金の転送がしやすくなかったことが原因だ。そのため額が大きくなっている。

非常に利回りのいい理財商品を勧めてお金を振込ますというパターンが圧倒的に多い。また、スマホ決済に連動している芝麻信用(ジーマクレジット)などの信用スコアに関心がある人も多く、信用スコアを上げるという餌で釣るケースも増えている。信用スコアを短期にあげるには、消費者金融でお金を借りて、期日通りに返済をするという方法が最も効果がある。と言うより、信用スコアそのものが借金の限度額を算出することが目的なのだ。

そこで、「ウチでお金を借りて、すぐに返済をすると利息も不要で、信用スコアだけが上がる」と話を持ちかける。この時、正規の口座に返済するのではなく、別の指定口座に返済をすると、より信用スコアが上がると相手を嵌め込んでいく。借りるのは正規の消費者金融だが、返済のために送金する口座は消費者金融業社とは関係のない犯人の口座というわけだ。被害者には正規の借金だけが残される。

お金を借りる時も、返す時も、窓口や業者のところに行く必要はなく、すべてスマホ内で送金、受け取りができる。このようにして、被害額がどんどん大きくなっているのだ。

現金であっても、キャッシュレスであっても、犯罪リスクに大きな違いはない。ただ、リスクの種類が違うだけだ。中国では強盗は減ったが、詐欺が増加をしている。

 

北京で始まっている無人運転車の一般道路走行試験。累計走行距離は15万km

北京市が「北京市自動運転車両道路実証実験2018年度報告」を公開した。北京市としては初めての自動運転実験の報告書になる。自動運転試験は、大方の予想通り、百度がリードしていることが明らかになったとDONewsが報じた。

 

無人運転の試験走行距離は累計15万km

北京市では、早くから自動運転車の実験を認めている。車両そのものに運転免許試験を実施し、人間と同程度の機能があるかどうかを確認し、合格後は閉鎖区間内での走行実験が可能になる。この閉鎖区間内での走行実験が5000kmに達すると、市内の指定された一般道路での走行実験が可能になる。当然、一般車両も通行する中での試験となる。

今回の報告書によると、現在54台の自動運転車両が路上試験中で、その試験距離はすでに15万kmを超えている。

このうち、車両台数では45台、試験距離では13.9万kmが百度バイドゥ)によるものだ。

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▲北京での路上試験の現在状況。百度が本格的な試験を行っている。

 

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▲2018年の月別の試験車両数と走行距離。2018年の9月頃から試験走行が本格化していることがわかる。

 

5段階の難易度に分類される試験解放道路

試験用に開放されているのは、44路線123kmになる。また道路を自動運転の難易度別にR1からR5まで分類し、各社とも段階的に試験を行っている。報告書によると、現在R3までの試験が進んでおり、百度、小馬智行、滴滴の3社がR3での試験を行っている。

また、スマート道路施設の設備も一部の道路に設置されていて、こちらはRXに分類される。RXで試験を行っているのは、百度と北汽新エネルギーの2社になる。

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北京市の試験用の解放道路は、44カ所、123kmに渡っている。2022年までに2000kmに増やす予定だ。

 

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▲解放している試験道路は、状況によって難易度別に分類されている。

 

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▲解放道路は5段階の難易度に分類され、難易度ごとに試験が行われている。

 

ウェイモーに大きく遅れをとる百度

百度は北京だけでなく、全国各都市で試験走行を行なっている。長沙市では、すでにL3、L4の自動運転試験を行っており、2019年後半には自動運転タクシー(L4)の営業運転を目指している。

国際的には、グーグル傘下のウェイモーが最も試験走行が進んでおり、カリフォルニア交通局が公開した2018年のデータによると走行距離は127万マイル(約204万km)で、百度は大きく遅れを取っている。

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▲試験道路ではさまざまな状況にどのような対応をしたかが記録される。一般の車両も通行する状況での試験を行っている。

 

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百度無人運転車プラットフォーム「アポロ」を搭載した車両。オープンプラットフォームであるため、中国内外の多くの企業が参加をしている。

 

世界で初めて無人運転車が走る都市を目指す北京市

北京市は、「世界で初めて無人運転車が走る都市」を目指していて、国内の試験走行距離の半分以上は北京市でのものだ。国内では最も自動運転に積極的な都市になっているが、世界を見るとまだまだ遅れていることは否めない。

北京市南東郊外にある北京経済技術開発区内に、約12kmのV2X(Vehicle to Everything)設備を備えたスマート道路を開放し、時間によりセンターラインを変えて、車線数を変化させる実験も始めている。

また、2022年までに試験に開放する道路延長を2000kmに増やす計画で、世界に先駆けて、自動運転の試験手法を確立することを目指している。


百度Apollo自动驾驶车队首次亮相雄安新区,让您安全出行!

▲河北省の国家開発区「雄安新区」でのアポロの路上走行実験の様子。