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スマホ決済普及で、強盗事件数が半分以下に。一方で、詐欺被害額は増加中

スマホ決済が普及をし、現金を持たなくなる人が多くなったため、強盗事件が5年前の半分以下に減少したと超盟金服が報じた。しかし、一方で、スマホ決済を利用した詐欺事件被害額は急上昇している。

 

強盗事件は5年前の半分以下に

アリペイ、WeChatペイなどのスマホ決済が普及をして、都市部では現金を持ち歩かないスタイルが当たり前になっている。それに伴って、強盗事件が大きく減少している。

最高裁判所が公開した統計によると、強盗事件の裁判数は5年前の1万3556件から2017年の5512件と半減以下になっている。

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▲強盗の裁判数とアリペイの利用者数のグラフ。スマホ決済が普及するとともに、強盗の件数は減少している。

 

失敗強盗がニュースになる

メディアも強盗事件を報道する機会はめっきり少なくなり、その代わりに失敗をした強盗事件を報じている。

3月27日、雲南省の若者2人が杭州市に出てきて強盗を働いた。逃走用の電動スクーター、帽子、ナイフ、手袋などを4000元(約6万3000円)で購入し、コンビニに強盗に入る計画だった。

ところが、2人は、杭州市がアリババのお膝元で、すっかり無現金都市になっているということを知らなかった。3軒のコンビニに強盗に入ったが、どこのコンビニにも現金がほとんど置いていない。結局、現金は1800元(約2万8000円)程度しか得られなかった。

大赤字であるだけでなく、監視カメラ映像から犯人はすぐに捕まってしまった。

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杭州市の強盗が事前に用意した道具。全部で6万円以上のお金がかかったが、3件のコンビニ強盗で得た金額はわずか3万円弱だった。

 

アリペイ強盗も実名制であるためにすぐに逮捕

また、南京市ではある女性が帰宅途中で強盗にあったが、現金は、スマホが壊れた時用に500元をバッグの中に入れているだけだった。それを差し出すと強盗は少ないと言い、アリペイで2000元を転送するように命じた。女性はそれに従って2000元を転送し、ことなきを得た。

数時間後、アリペイは実名登録であるため、犯人の身分がすぐに特定され、逮捕されることになった。

 

一方で、ネット詐欺事件の被害額は10倍以上に急増

スマホ決済が普及をして、現金を持ち歩くことがなくなり、強盗事件は減少している。しかし、一方で、ネットや電話を使った特殊詐欺は横ばい状態だが、一人当たりの被害額が急増をしている。セキュリティ企業「360」が公開した「2018年ネット詐欺情勢研究報告」によると、2018年の一人当たりの詐欺被害額は2万4476元となり、5年前の2014年の2070元の10倍以上になっている。

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▲この5年間の詐欺通報件数と一人当たりの平均被害額。通報件数は横ばいだが、平均被害額が急速に増加をしている。明らかにスマホ決済で、簡単に送金ができるようになった影響だ。

 

儲け話、信用スコアが餌となり釣られる

資金の転送がしやすくなかったことが原因だ。そのため額が大きくなっている。

非常に利回りのいい理財商品を勧めてお金を振込ますというパターンが圧倒的に多い。また、スマホ決済に連動している芝麻信用(ジーマクレジット)などの信用スコアに関心がある人も多く、信用スコアを上げるという餌で釣るケースも増えている。信用スコアを短期にあげるには、消費者金融でお金を借りて、期日通りに返済をするという方法が最も効果がある。と言うより、信用スコアそのものが借金の限度額を算出することが目的なのだ。

そこで、「ウチでお金を借りて、すぐに返済をすると利息も不要で、信用スコアだけが上がる」と話を持ちかける。この時、正規の口座に返済するのではなく、別の指定口座に返済をすると、より信用スコアが上がると相手を嵌め込んでいく。借りるのは正規の消費者金融だが、返済のために送金する口座は消費者金融業社とは関係のない犯人の口座というわけだ。被害者には正規の借金だけが残される。

お金を借りる時も、返す時も、窓口や業者のところに行く必要はなく、すべてスマホ内で送金、受け取りができる。このようにして、被害額がどんどん大きくなっているのだ。

現金であっても、キャッシュレスであっても、犯罪リスクに大きな違いはない。ただ、リスクの種類が違うだけだ。中国では強盗は減ったが、詐欺が増加をしている。