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チベット高原鉄道の線路脇の棒は何のためにあるのか。ラサまでの鉄路を開いたすごい発明

世界一高い高原を走るチベット高原鉄道=青蔵鉄道。その線路脇には等間隔で、金属棒が挿さっている。乗客は、この鉄棒が何のためにあるのか不思議に思っている。それは、ラサまでの鉄路を開く重要な役割をしたと背包旅行呀が報じた。

 

開通は不可能と言われたチベット高原鉄道

中国青海省西寧からチベット自治区ラサまでを結ぶ総延長1944kmの青蔵鉄道。世界一高い高原を通ることから世界一の高原鉄道とも呼ばれる。1979年から工事が始まり、2006年7月になってようやく全通をした。

しかし、当初「鉄道が崑崙山脈を超えてラサに到達することは不可能」と言われていた。崑崙山脈が高いからではない。それはトンネルや迂回をする方法がある。問題は約550kmにもわたる永久凍土地帯だった。

青蔵鉄道の線路脇には、このような金属棒が挿さっている。獣避けにしては間隔が空きすぎているため、多くの乗客がその役割について不思議に思っている。

 

永久凍土地帯に鉄道が通せない理由

永久凍土とは、土壌が通年にわたって凍結をしているとうものだが、問題は、冬には氷が増え、夏には一部分が溶けるということだ。つまり、土壌表面が1年の間に上下をする。このため、鉄道を敷いても地面が上下をすることにより、レールが歪んでしまう。ましてや、重い列車が走行をすると、土壌が緩くなる夏にはすぐにレールが歪んでしまうことになる。この難題を克服できなければ鉄道を敷くことはできない。悪路になることは承知で、未舗装の道路を通すことが限界だ。

チベット高原の永久凍土。冬は氷が成長し地面を押し上げ、夏は溶けて、地面が沈む。そこに鉄道を敷くことはできない。

 

熱棒を挿すことで永久凍土を克服した

青蔵鉄道では、線路脇に金属棒を挿すという方法でこの問題を解決した。青蔵鉄道の線路脇には、35kmにわたる区間に1.5万本の金属棒が刺さっている。

この金属棒は「熱棒」と呼ばれていて、永久凍土の状態を安定させるためのものだ。ただの金属棒ではなく、中は空洞になっており、液体アンモニアが封じ込められている。長さは8mのものと12mのものがあり、いずれの場合でも地上に見えているのは2mほどだ。

冬になると、永久凍土の温度(0度以下)よりも、大気温の方が低くなる。熱棒の下の部分、氷土に刺さっている部分には液体アンモニアがあり、液体アンモニアの沸点は-33度であるため、気化をし、熱棒の地上に出た部分まで登っていく。そこで大気によって冷やされ、液化をして下に落ちていく。つまり、熱棒は、凍土の熱を吸い取り、大気中に放出する。これにより、凍土の温度は下がり、硬く締まることになる。

一方夏になると、凍土の温度よりも大気温が高くなる。気化したアンモニアは液体に戻ることができず、熱棒の中を満たすことになる。凍土と大気の熱交換は停止をする。これにより、凍土は冷たいままになり、冬の間にじゅうぶんに温度が下がっているため、夏の間も溶けることがなくなる。

つまり、この熱棒は、冬の間に凍土をじゅうぶんに冷やし、夏になっても溶けないようにしているのだ。

▲熱棒の仕組み。中には液体アンモニアが入っていて、永久凍土層と大気の間で熱交換を行い、永久凍土層を冷やす役割をしている。

 

熱棒のアイディアがラサまでの鉄路を開いた

この熱棒は、傾斜角25°から30°で挿すと、周囲1.8mの温度調節を効率的に行えることが実験から確かめられている。そのため、青蔵鉄道の線路脇には3m間隔でこの熱棒が挿されている。さらに、中に封じ込める液体アンモニアの成分を調合することで、沸点を変えることも容易で、その地域の気象条件に合った熱棒が使われている。

この単純だが巧みな道具が開発されたことにより、青蔵鉄道はラサにまで到達することができた。

▲その区間の状況に合わせてさまざまなタイプの熱棒が用いられている。