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テンセントの最大の強みは法務部。裁判で負けない最強の「南山必勝客」

現在、WeChatはTik Tokへのリンクの遮断を行なっている。Tik Tokの運営元であるバイトダンスは、この遮断措置を停止するように裁判に訴えた。しかし、テンセントの法務部は、中国最強と言われ、過去数々の訴訟を勝ち抜いてきた。今回の裁判がどう決着するのか注目されていると石某人的雑談日記が報じた。

 

法廷で争うことになったWeChat vs TikTok

Tik Tokを運営するバイトダンスが、2021年2月2日に、WeChatを運営するテンセントを訴えた。2018年4月から3年近くにわたって、SNS「WeChat」はTik Tokへのリンクを遮断しており、この遮断措置を停止して、損害賠償として9000万元(約14.7億円)を求めたものだ。

テンセントは、Tik Tokは不当な手段で、WeChatユーザーの個人情報を収集していると主張しているが、バイトダンスはこれはまったくの濡れ衣だと主張している。

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▲WeChatのメッセージの中に、Tik Tokのリンクを挿入することはできる。しかし、タップをしてもこのような画面が表示され、リンク先には飛ばない。

 

テンセントには中国最強の法務部が存在する

この裁判の結果がどうなるかは不明だが、ネットでは、テンセントが勝つのではないかと予想している人が多い。なぜなら、テンセントの法務部は中国一有能で、次々と訴訟に勝っていき、「南山のピザハット」という異名を持っているからだ。ピザハットの中国名は「必勝客」(ビーシェンカー。必勝はピザと音が似ており、客は帽子のネットスラング)。南山というのは深圳市南山区裁判所のことで、テンセント法務部はこの南山区裁判所を舞台として数々の訴訟を行い、高い勝率を誇ってきた「必勝客」だという意味だ。

バイトダンスとテンセントの過去の訴訟案件は500件を超えており、その多くはテンセントの勝訴になっている。バイトダンスは難しい挑戦をしていると見ている人が多い。

 

テンセント法務部を有名にした360裁判での勝訴

テンセントの法務部が有名になったのは、セキュリティ企業「360」とテンセントの間の訴訟に勝ったことからだ。

2006年、360はPC用のアンチウイルスソフト「360安全衛士」を無償で公開した。当時は、多くの人がコンピューターウイルスなどのマルウェアに悩まされていため、360安全衛士は歓迎され、瞬く間にセキュリティソフトのスタンダードになっていった。

2008年、当時のテンセントの主力サービスであったSNS「QQ」は、「QQ医生」というセキュリティソフトをリリースする。当初は、QQのアカウントが乗っ取られるのを防ぐ機能しかなかったが、次第にマルウェア対策の機能も搭載をしていった。

2010年、QQ医生がバージョン4.0になると、名称が「QQ電脳管家」という名称に変わり、360安全衛士とほぼ同様の機能を搭載するようになった。

一方、360は「プライバシー保護器」という新しいソフトウェアをリリースする。これは当時問題になっていたQQのアカウント流出を検知するものだった。しかし、QQ内での行動を監視するものであったことからテンセントが問題にした。

2010年11月3日、テンセントは360安全衛士の遮断を始める。360安全衛士がインストールされているPC上では、QQが起動できないようにしたのだ。QQを利用するには、360のソフトウェアをすべて削除しなければならない。多くの人にとって、QQはもはや必須のSNSとなっていたため、360のソフトウェアを削除せざるを得なかった。

2010年から2014年にかけて、テンセントと360は互いに訴訟をするという状態になった。この泥沼の戦いに勝利したのがテンセントの法務部だった。最終的に360は謝罪公告を出し、500万元(約8200万円)の賠償金を支払うことになった。ここから、テンセントの法務部は「南山のピザハット」と呼ばれるようになった。

 

テンセントはTik Tokへのリンクも遮断

その南山のピザハット=テンセント法務部は、3年前からバイトダンスと戦っている。

2018年5月22日、第42回国際博物館の日に、Tik Tokは、制作集団MadMonkeyが制作した2分の動画を公開した。国内の7つの博物館と協力をし、兵馬俑など著名な宝物がダンスをするというユニークなものだった。動画の最後には、Tik Tokの名前とバイトダンスの名前が表示され、タップするとTik Tokのインストールができる。

WeChatは、この動画へのリンクを遮断した。WeChatの規則の「誘導シェア」違反にあたるという理由だった。WeChatには、メッセージにリンクを貼ることができるが、誘導シェアをすることは禁じられている。例えば、ポイント進呈などの利益を与えてリンクをタップさせることや、誇張した表現でタップさせようする行為が禁じられている。特に誇張表現は厳しく「これをタップしないのは中国人とは言えない」「タップすれば一生安泰」など、事実に基づかない文言でリンクをタップさせることをを促す行為が禁止されている。

WeChatのTik Tok公式アカウントが掲載したこの博物館の動画へのリンクが誘導シェアだとされた。

なぜ、誘導シェアにあたるのかははっきりしない。無理に解釈をすれば、国際博物館の日という国際キャンペーンを支援しようという文言であるのに、その実はTik Tokの単なる広告にすぎないということのようだ。

多くのネット民は、Tik Tokの最大のライバルであるショートムービー共有サービス「快手」(クワイショウ)が、テンセントの系列であることを指摘している。

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Chinese Antiques that Can Dance! Cutest video by Chinese Museums 第一届文物戏精大会

▲国際博物館の日にTik Tokが公開した動画。中国の国宝級の仏像などが動き出し、踊り始めるというユニーク内容。それがWeChatからはリンクが遮断された。ここからテンセントとバイトダンスの法廷闘争が始まる。

 

さらにゲーム画面の著作権侵害でTik Tokを攻める

2000年7月になると、テンセントが開発したヒットゲーム「王者栄耀」のゲーム画面が、ゲーム中継動画に使われ、著作権が侵害されているとして、Tik Tokに王者栄耀のゲーム中継やゲーム画面を使った動画投稿を禁止するように通告した。

また、2021年1月には、バイトダンス傘下の飛書(フェイシュー)が開発したリモートワークツールのWeChatミニプログラムが突然、テンセントにより削除された。テンセント側は「セキュリティ面で審査中」だと回答した。テンセントには、飛書のライバルとなるテンセント会議などのサービスがある。

 

独占的地位を最大限に利用するテンセントvsテックジャイアントに挑戦するバイトダンス

つまり、南山のピザハット=テンセント法務部は優秀であるため、それぞれに正当な法的理由が用意をされているが、側から見れば、テンセントと衝突するサービスを排除したい、WeChatの貴重な流量を利用されたくないということであるかのように見える。

一方で、アリババとテンセントの2つのテックジャイアントは、ほぼすべてのサービスを提供しているため、どのようなテック企業が自社のサービスを伸ばそうとしても、アリババとテンセントに潰されるという独占を問題にする声も上がり始めている。

今回、バイトダンスがTik Tok遮断で、テンセントを訴えたのは、単なる訴訟ではなく、このようなテンセントの独占行為に耐えに耐えてきて、耐えきれなくなった行動のようだ。ある意味、2大テックジャイアントにバイトダンスが挑戦をしたとも言える。この訴訟の結果や世論の変化によっては、中国のテック業界の地図が大きく変わる可能性もある。