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福建省と福州市が生鮮ECの購入比較テストを実施。配送の温度管理に課題

コロナ禍により、大幅に需要が増えた新小売スーパー、生鮮EC。福州市の消費者員会は、6つの業者に対して、購入テストを実施した。過去、メディアなどが購入テストを行っているが、公的機関が行うことのは初めて。その結果、配送の温度管理に課題があることが指摘されたと彩虹科技が報じた。

 

需要が急増して品質クレームも増大

新型コロナの感染拡大期に大きく伸びたのが、新小売スーパー、生鮮ECだ。スマートフォンで注文をすると、自宅まで30分程度で宅配をしてくれる。買い物に行くだけでも感染を心配しなけれならない状況で、野菜や肉、魚といった生鮮食料品を配達してくれる新小売スーパー、生鮮ECの需要が、3倍から5倍に増加した。

同時に、消費者からのクレームも比例をして増えている。そのため、福建省消費者委員会と福州市消費者委員会は、協働して、福州市で利用できる生鮮ECの比較試験を行った。

試験対象となったのは、生鮮ECの永輝生活、朴朴超市、京東到家、及び新小売に対応したスーパーの盒馬鮮生(フーマフレッシュ)、ウォルマート、大潤発の6つ。

消費者委員会に協力してくれるボランティアが、消費者の身分で通常通り注文をして、配達にかかる時間や価格、重量、品質などをチェックする。

注文したものは、豚バラ肉、鴨肉、レタス、トマト、卵、びわの6品目。

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▲購入した商品は、レジ袋に入れて、電話通知の後、ドア前に置き配される。

 

6つの業者に対して、4人が購入テスト

消費者委員会に協力したボランティアは4名で、それぞれ福州市の鼓楼区、台江区、倉山区、晋安区に住み、全員が同じ時間に注文、消費者委員がボランティア宅にお邪魔し、一緒に品質などの検査をする。品質については、主観によるところも大きいため、他の委員にも確認し、2/3以上の委員が異常と認めたものだけを記録に残した。

このテストは、6つの生鮮ECに対して、22回、126商品の買い物を行った。4人のボランティアが6つの生鮮ECすべてに注文を入れるのが原則だが、そのボランティアの居住区が配送地域になっていないケース、また注文を試みたが売切れ、欠品になっているケースなどもあった。具体的には、永輝生活鼓楼店、京東到家鼓楼、フーマフレッシュ鼓楼店ではトマトが欠品になっており、京東到家鼓楼、京東到家台江、ウォルマート台江ではびわが欠品になっていた。

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▲テストは、購入を担当したボランティア宅に消費者委員会委員が出向き、2人で行う。主観が入りやすい品質に関しては、委員全員で判断をした。

 

配送料は実質無料が多い

注文は、平日の午前9時に行われた。配送時間は、各ECとも30分から120分と異なっている。ただし、永輝生活とフーマフレッシュは「最短30分」と表示され、最大何分なのかは明示されない。永輝生活はいずれも30分以内に配送されたが、フーマフレッシュ鼓楼店では59分かかった。

配送料はフーマフレッシュが0元で、その他では3元から6元が必要になる。ただし、一定額以上購入すると配送料が無料になる。その額は最高でも39元であり、食材を買うのであれば、配送料はどこも実質無料になる。

京東到家は、地区によって配送業者が異なり、配送料も各業者が設定するという仕組みなので、地区によって配送料が異なる。今回、4地区平均で4.8元の配送料が必要だった。またウォールマートでは、梱包料0.5元が必要だった。

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▲配送料と配送時間。多くが実質配送料無料で、30分程度で配達してくれる。

 

配送は電話通知の後、置き配が基本

いずれの生鮮ECも、配送時に電話で通知をしてくれた。コロナ禍以降、玄関で受け渡しをするのではなく、玄関前に商品を置いて、電話で通知するのが基本のスタイルになっている。

商品には注文票が貼り付けてあり、商品一覧の他、購入者の名前、電話番号、住所などが記載されている。朴朴超市は、このような個人情報すべてを隠す処理がしてあった。永輝生活、フーマ、大潤発、京東到家は電話番号のみを隠す処理がしてあった。ウォルマートはすべての情報について隠す処理がされていなかった。

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▲配送された商品につけられているレシート。ドアの前への置き配であるのに、個人情報をマスクしていない生鮮ECもあった。

 

温度管理による傷みが課題

びわでは、19の注文中、4つで問題が生じた。接触痕があったのが、フーマ、ウォルマート。大潤発では裂け目がついていたもの、割れていたものが入っていた。

レタスでは、22の注文中、4つで問題が生じた。大潤発では3店のものが茶色く変色をしている箇所があった。京東到家では、葉全体に変色が広がり、剥いてから使わなければならないものがあった。

卵では、22の注文中、4つで問題が生じた。2つは重量不足だ。京東到家では、500gと表示されているのに497.4gしかないもの、「10個600g」と表示されているのに583.6gしかないものがあった。また、朴朴超市では1つが殻が汚れているもの、1つは割れているものがあった。

鴨肉では22の注文中、5つで問題が生じた。京東到家は2つで重量不足があった。大潤発ではドリップが出ていた。永輝生活では軽い異臭があった。永輝生活のもうひとつでは重量不足の上、異臭があった。

トマトでは、19の注文中、6つで問題が生じた。永輝生活、大潤発×2、京東到家、朴朴超市の5つで接触痕があった。ウォルマートでは「450g-500g」と表示されているのに324.4gしかなかった。トマトは冷蔵庫で冷温保存した後、取り出して、長時間常温に置いておくと、表面が黒く変色しやすく、簡単に接触痕がつくようになってしまう。各社とも、保存から配送の温度管理にまだ課題があると考えられる。

豚バラ肉では22の注文中、8つで問題が生じた。朴朴超市、フーマ×2、永輝生活×2で、重量不足があった。また、京東到家では豚バラ肉の皮膚面に毛が残っていた。ウォルマート、京東到家では、軽い異臭が感じられた。

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びわでは、われ、裂け目が入っているものがあった。

 

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▲レタスでは表面が変色しているものがあった。

 

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▲卵では割れているものがあった。

 

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▲鴨肉ではドリップが出ているものがあった。

 

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▲トマトでは接触痕があるものがあった。

 

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▲豚バラ肉では毛が残っているものがあった。

 

梱包と温度管理に課題があると指摘

自分が足を運ぶスーパーであれば、自分の目で商品を確かめて購入することができる。しかし、生鮮ECでは配達された食材を使うしかない。どの生鮮ECも、三無返金制度を導入している。三無返金とは「理由なし」「レシートなし」「現物なし」でも返金に応じるというものだ。そのため、品質に問題があると感じたら、スマートフォンで写真を撮り、クレームを送信すれば返金をされる。

しかし、だからと言って、品質の悪い商品を販売していいことにはならなない。消費者委員会は、配送の方法にさらに改善が必要だと提言をしている。例えば、トマトでは直線型の接触痕がついていたものがあった。これは包装をするときに、はみ出ていたたため、容器の縁に接触をしたたま、圧力が加えられたため生じたと推測できる。

また、温度管理にも改善が必要だと提言する。多くの生鮮ECでは、温度管理された店頭陳列、倉庫などから商品をピックアップし、梱包をした後、電動バイクのクーラーボックスに入れて配達をする。この際、常温の状態におかれる時間が長いか、クーラーボックスの温度がじゅうぶんに下がっていないのではないかと推測される。低温から常温に置くことで、トマトやレタスは変色をし、接触痕がつきやすくなる。また、肉類、魚類ではドリップが出やすくなる。

消費者委員会は、このテスト結果を各メディアを通じて公開している。ただし、あくまでも、1回のテストの結果のみで、すべてを判断しないでほしいとも言い添えている。たまたま、悪い結果が出ることもあるからで、消費者委員会では、今後も必要に応じて、テストを継続していきたいという。

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▲左下のトマトに直線状の接触痕が残っている。これは包装パックの縁に接触した状態で、ラップ包装されたものだと考えられる。