中国でザリガニが3回目のブームとなっている。インフルエンサーが主導し、“インスタ映え”する食べ物と認識されているようだ。スタートアップが続々登場するだけでなく、既存ファストフードもザリガニメニューを出し始めたと投中網が報じた。
人工知能の3倍の市場があるザリガニ経済
調査会社IDCが公開した「中国人工知能ソフトウェア及びアプリケーション(2018年下半期)追跡」によると、2018年の中国の人工知能市場は17.6億ドル(約1900億円)に達し、2023年には119億ドル(約1.3兆円)に達すると見られている。また、CSG科大智能研究院の龍偉則院長は、2020年には中国の人工知能産業は1000億元(約1.6兆円)市場になると見ているという。
ところが、投資家たちの熱い視線が注がれているのは、人工知能ではなく、ザリガニだ。中国農業農村部が公開した「中国ザリガニ産業発展報告(2018)」によると、2017年のザリガニ産業の市場規模は2685億元(約4.2兆円)に達し、2016年よりも83.15%増加した。このまま推移するとすると、2019年は3000億元(約4.7兆円)を突破する大きな市場となる。
つまり、ザリガニ産業は、人工知能産業の3倍の市場規模があるのだ。この大きな市場に無数のスタートアップが登場して、そこに投資家の資金も流れ始めている。
▲中国で3回目のブームとなっているザリガニ。中華風の甘辛の味付けで、けっこう美味しい。手袋をつけて、手で剥いて食べる。そのスタイルも楽しまれているようだ。
W杯で火がついた第3次ザリガニブーム
2018年夏、ロシアで開催されたワールドカップの中国人観客のために、数十万匹のザリガニが武漢からロシア各地に列車で輸送された。ワールドカップの観客たちが喜んでザリガニを食べている姿が中国国内で報道されると、中国国内でも一気にザリガニ人気が高まった。美団はワールドカップ初日に全国で153万匹のザリガニを出前をした。ワールドカップ期間、フーマフレッシュなどの新小売スーパー、美団、餓了麼などの外売などを合計すると1億匹のザリガニが中国で食べられた。サッカーを見ながら、ザリガニを食べるというのが一種の定番の楽しみ方になったようだ。
▲外売(デリバリー)を利用して、自宅でテレビを見ながら、スナック代わりに食べるというもの受けている。
若い世代に浸透した“インスタ映えする”ザリガニ
現在はザリガニ3.0時代に入っている。最初のザリガニブームは2001年に始まった。甘辛く煮たザリガニは、ビニール手袋をつけて殻を開けながら食べるその姿の面白さとあいまって、各地にザリガニ専門レストランが生まれた。手頃な価格で、美味しく、味付けは中華風というところが受けた。
2013年からはO2Oのザリガニ2.0時代に入る。外売サービスが普及し、自宅で映画やスポーツを見ながら食べる人が急増した。お腹が膨れるスナックの感覚だ。この間に、大資本のチェーンがザリガニ市場に参入し、個人商店が淘汰された。
そして、2015年からは網紅(ワンホン)がザリガニ3.0時代をリードした。大規模チェーン店が網紅と契約をし、ザリガニを食べている姿をライブ配信させる。これを見た若い層がザリガニを食べ始めるというサイクルが生まれている。大資本のチェーン店が店舗展開を加速している。
深圳では、2015年に13のチェーンが800店舗を出店していたが、2018年には3541店舗と4倍以上に増えている。
▲ザリガニ大食い大会に出場した網紅(ワンホン=インフルエンサー)の密子君。ザリガニ3.0ブームは、このような網紅が牽引している。
▲密子君は大食いで有名な網紅で、20kgのザリガニを食べて優勝した。過去には4kgのお米を水だけで食べて、大食い大会に優勝したこともある。大胃王と呼ばれている。
▲ザリガニ3.0ブームは、若い世代に受け入られている。インスタ映えする食べ物として認識されているようだ。
スタートアップだけでなく、ファストフードもザリガニ
この状況を見て、スタートアップも続々参入している。「熱辣生活」(B+ラウンド)、「堕落蝦」(Bラウンド)、「信良記」(Bラウンド)、「松哥油燜大蝦」(Aラウンド)、「大蝦来了」(Aラウンド)などが主なプレイヤーだ。
いずれも若者向けに味付けを変えたり、スマホから席の予約や注文ができるなどの工夫をしている。
また、既存の飲食チェーンもメニューにザリガニを加えている。ケンタッキーはザリガニハンバーガーを発売し、ピザハットはザリガニピザを発売した。ザリガニは過熱気味のブームになっている。
▲ファストフードもザリガニメニューを出している。投資資金も流れ込み、投資家の間ではザリガニが熱い話題になっている。
早くも始まる淘汰整理。生き残りをかけるザリガニ経済
例によって、中国の常として、ブーム=淘汰整理の時期に入っている。ザリガニの旬は5月から9月で、問題は冬の間は冬眠してしまうということだ。そのため、冬はザリガニの供給量が減り、仕入れ価格が高騰する。そのため、ザリガニレストランは「4ヶ月儲け、4ヶ月損をする」と言われている。
生き残りのポイントは、長期の持続力だ。ザリガニをメニューの中心にして、いかにサイドメニューで固定客をつかむか。そこが生き残りのカギになると見られている。
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