中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

効果が薄いポイントカードの電子化。来店回数、客単価ともに増えたdicos

中国で、マクドナルド、ケンタッキーに続く第3のファストフードチェーンであるdicos(ディコス)が、アリペイ芝麻信用の新機能である「信用チャージ不要」の機能を利用し、割引になるVIPカードの機能をスマホ決済「アリペイ」に内蔵した。消費者はごく普通にアリペイで決済するだけで、自動的にVIPカードと同等の割引が受けられる。これにより、来客回数、客単価ともに大きく伸びたと東北新聞網が報じた。

 

割引されるプリペイドカード「VIPカード」

dicosは、中国国内系のファストフードチェーン。ハンバーガーとフライドチキンの他、中華風のお米を使ったメニューもある。飲み物とのセットで20元(320円)台前半が多い。すでに中国国内に2000店舗以上を展開している。

このようなファストフードチェーンでは、VIPカードと呼ばれるものを導入していることが多い。VIPカードは、プリペイドカードで事前にチャージをしておき、そこから支払いをする。「1ヶ月以内に3回以上来店する」など一定の条件を満たすと、商品が割引になるという仕組みだ。日本のプリペイドカードとポイントカードを合体させたようなもの。目的は、日本と同じで、顧客の囲い込みで、リピーターを作ろうとするものだ。

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▲中国では各チェーンがVIPカードを発行している。事前にチャージしてもらい利用すると、一定条件で割引がされていくというものだ。しかし、持ち歩かなくてはならない不便さがあり、効果がじゅうぶんにあがっているかどうかは疑問視され始めている。

 

疑問視されるVIPカードの効果

しかし、このVIPカードの効果がほとんど見られなくなっている。理由は明らかだ。決済そのものがアリペイ、WeChatペイのスマホ決済になっているのに、レジでいちいちVIPカードを取り出して支払うのが煩わしく感じられるようになっている。

もうひとつは、さまざまなチェーンが独自のVIPカードを発行するために、一人で何枚ものVIPカードを持つ必要があり、これが煩わしい。さらには、VIPカードを持っていないときには、その店に行くのは損をする感覚もあって、かえって来店を遠ざけてしまっている。

さらによくないのは、VIPカードのような面倒なものは利用したくないという一般客にとっては、同じ商品を高く買っている感覚になる。そのため、別のチェーンに行くという現象が起き始め、来店するのは割引客ばかりとなり、実質的な値下げになってしまい、収益を圧迫してしまう。

VIPカードは、リピーターを作ることに役立ってはいるものの、一定の顧客を遠ざけている結果になり、その効果が疑問視されるようになっている。

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▲dicosは、中国ではポピュラーなファストフードチェーン。規模もマクドナルド、ケンタッキーに続く第3位。

 

アリペイで決済するだけで自動的に割引される機能

そこに登場したのが、アリペイの「事前チャージ不要」機能だ。これは芝麻信用スコアが650点以上(ほぼ平均点)あれば、このようなVIPカードの機能をアリペイに内蔵できるというものだ。

dicosのVIPカード機能を内蔵するには、店頭や広告などのQRコードをスキャンして、現れた画面で「開通」を選ぶだけ。以降は、アリペイで普通に決済するだけで、自動的にVIPカードと同等の割引待遇が受けられるようになる。1ヶ月以内に3回決済をすると、それ以降、1割引になる(割引率、条件などは随時変えられる)。

他のチェーンのVIPカード機能も同様に開通させることができ、行くチェーンすべてを開通しておけば、通常通りアリペイでスマホ決済をするだけで、割引が効く条件になっていれば、自動的に割引処理がされるようになる。


来店回数、客単価も大きく伸びる

dicosでは、2018年10月からこの機能を導入して3ヶ月で、営業数字に大きな変化があった。平均の来店回数は2.07回から2.94回と42%増加し、平均客単価も43.02元から64.85元と32%増加した。

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▲VIPカード機能をアリペイに内蔵する電子化を行ってから、客単価、来店回数ともに大きく伸びた。

 

ファストフードは料理ではなく店内体験で勝負する

dicos上海地区の責任者である李経理は、東北新聞網の取材に応えて、このアリペイの機能は、dicosにとって大きな武器になると語った。

dicosでは、外売(出前)の売上が伸び、すでに売上の40%が外売によるものになっている。それはそれでありがたいことだが、ファストフード店にとっては大きな不安がある。それは、料理だけで、ライバルに勝ることはとても難しいからだ。

ファストフードは本来、店内でお客を待たせないために調理方法を効率化して、短時間で食事を提供することを目的にしたレストランだ。そのため、冷凍食材や保存性の高い食材を利用し、調理方法も効率化をしている。料理だけでは、コックが手間暇をかけて調理をする本格レストランにはかなわない。

そのため、店内体験を重視している。ファストフードが普及したのも、「モダンな店内でモダンなフードを食べることがおしゃれ」という流行を作り出したからだ。それが外売りで、自宅で料理だけを食べられたのでは、いずれ本格レストランに負けてしまう。特に外売では、消費者からは調理時間の長短は見えないので、ファストフードはさらに不利になる。

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▲dicosのメニュー。ハンバーガーを中心にしたファストフードチェーンだが、中国風の味付けのメニューもある。

 

電子化したVIPカードで来店してもらい、リピーターを作る

そこで、消費者を店舗に足を運ばせる施策として、VIPカードを導入していった。しかし、dicosのメインターゲットである10代から20代半ばまでの若者層には、このVIPカードがあまり普及しなかった。各チェーンごとのポイントカードを持ち歩くなどという煩わしいことは若者から嫌われるからだ。若者層は、バッグすら持たず、ポケットにスマホだけ入れて、手ぶらで外出するというのが定番スタイルになりつつある。

アリペイからこのVIPカードの電子化の話があった時に、dicosはすぐに導入を決めた。dicosの抱えていた課題を一気に解決する機能だったからだ。しかも、信用スコアが平均点以上の人限定の機能なので、優良な消費者がリピーターになってくれることが期待できる。

消費者からも、いろいろなチェーン店のカードを持ち歩かなくて済むようになったと好評だ。しかも、面倒なことを考えずに、普通にアリペイで決済するだけで、割引条件が達成されていれば自動的に割引がされる。

今後、この「信用チャージ不要」機能は、急速に拡大していくと思われる。

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