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「おすすめの検索エンジンはグーグル」。中国大使館の発言に波紋

駐日本中国大使館がウェイボー上で公開した文章が問題になっている。文中で、検索サイトに、中国産の百度ではなく、海外産のグーグルやヤフーを推奨しているのだ。その理由を、多くの中国人ネットワーカーが推測して、話題になっていると観察者網新媒体が報じた。

 

なぜか中国大使館がグーグルを勧める

駐日本中国大使館がウェイボーに公開したのは「ネット予約でよくある問題」というもの。パスポートの申請や日本のビザを申請するときにありがちな問題をビデオでわかりやすく解説したものだ。

このビデオの中では、まず中国の検索サイトである「百度」で「中国領事服務網」「中国駐日本大使館」などと検索して、申請サイトを見つけて、そこで必要な申請をする内容になっている。

ところが、駐日本中国大使館のウェイボーでは、わざわざ「グーグル、ヤフーなどの検索エンジンを使って」という説明がある。多くの中国人が「なぜ中国の百度を使わずに、海外のグーグルやヤフーを推奨するのか」と大きな話題になっている。

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▲駐日本中国大使館が発信したメッセージ。ビデオの中では百度検索が使われているにも関わらず、文章では「グーグルやヤフーなどの検索エンジンを使って」と記されていることが波紋を呼んだ。

グレートファイヤーウォールは無関係

あるネットワーカーの説明によると、中国政府が設置しているグレートファイヤーウォールの関係ではないかという。中国は国内から国外サイトへのアクセスを制限しているために、国内から百度を使って検索をすると、国外の大使館へのアクセスができないのではないかという。

しかし、この話は多くのネットワーカーから「そういう事実はない。国内からでも海外の中国大使館にはアクセスできるし、百度からもちゃんと検索ができる」という声が上がった。

 

百度検索のジャンク広告が問題か?

では、なぜ、駐日本中国大使館は、中国人に馴染みのある百度ではなく、グーグルやヤフーを推奨したのか。

多くのネットワーカーが指摘をしたのが、百度にまつわるジャンク広告の問題だった。昨年の9月、中国で有名な作家である「六六」が、百度を使って大量のジャンク広告に悩まされたことをウェイボーで発言し、大きな話題になった。六六氏は、上海の米国大使館のサイトにアクセスしようとして百度を使って検索したところ、大量の広告が表示され、その中には領事館であると誤解させるようなサイトの広告もあり、非常に不愉快な経験をしたと発言したのだ。

そのようなジャンク広告の多くが、領事館、大使館のサービスであると誤解させ、有料の代理ビザ申請などのサービスに申し込ませるものだった。駐日本大使館の職員は、市民がこのような違法とは言えないまでも、誠実さに欠くサービスを誤って利用しないように、そのような広告が表示されないグーグルやヤフーを推奨したのではないかと推測している。

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百度検索で、iPhoneのアプリストアを検索してみると、有料アプリも無料でダウンロードできるという怪しいアプリの広告や検索結果が表示される。グーグルやヤフーでは、このような問題のあるサイトは検索結果から排除されている。

 

海外在住の中国人はグーグルを使う

また、別の指摘をするネットワーカーもいる。それは、海外にいる中国人にとって、もはや中国国内の百度や360といった検索サイトはほとんど使われていないというものだ。グーグルやヤフーであっても、中国語で検索をし、中国語のサイトを見つけることができる。もちろん、英語でも日本語でも検索ができる。

海外で暮らす中国人は、英語と中国語、現地語の3つぐらいは日常使うので、利便性の高いグーグルなどを使うことが多い。大使館の職員も日常的にグーグルやヤフーを使っていたため、ウェイボーの文章を書くときに、うっかり自分が日頃使っているグーグルやヤフーの名前を挙げてしまったのでないかという指摘だ。

 

国産にこだわる意識は薄れてきている

記事はここまでしか踏み込んでいないが、この記事に寄せられたコメントの多くは「当然だ」という主張のものが多い。以前は、中国人だから中国産サービスを利用すべきという感覚があったが、それはもうかなり薄れているというのだ。現在でも、中国人の多くは、ウーバーではなく滴滴を利用し、アップルではなくファーウェイを使う。しかし、それはたまたま国産品の方が優れているからで、国産にこだわっているわけではない。検索エンジンは、百度よりもグーグルの方が優れているので使っているだけで、それは自然なことだという。

 

意外に不満が多い百度検索

また、多くの人が口にするのが、「最近の百度は使いづらい」ということだ。「目的のサイトがうまく検索されないのに、ジャンク広告ばかりが表示される」と口をそろえる。

近年の百度は、伸び悩んでいる。自動運転技術「アポロ」の開発に力を入れているため、既存事業である検索やデジタル広告で大きな進歩が見られなくなっている。一方で、成長をするためにマネタイズに直結する施策は進める必要があり、それが広告の強化などにつながり、一部のユーザーから不評を買っているということなのかもしれない。

10年前に、もしこのようなことが起きたら、駐日本中国大使館の発言は「反愛国的だ」だと炎上したことだろう。しかし、今回は「そりゃ、海外にいたらグーグル使うよね」という意見が多いのだ。中国のテクノロジーだけでなく、中国人の意識も猛スピードで変わっている。

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