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外売サービスから離脱する飲食店。手数料負担が経営を圧迫

中国で、もはやなくてはならないサービス「外売」。ほとんどのレストランの料理を出前をしてくれるサービスだ。ところが、最近、この外売サービスから離脱するレストランが目立ち始めているという。外売に取られる手数料負担が厳しくなっていることが原因だと中国新聞週刊が報じた。

 

外売から離脱する飲食店が目立ち始めている

中国で、なくてはならないサービスになった「外売」。スマホでメニューを見て注文すると、自宅やオフィスまで料理を届けてくれる出前サービスだ。すでに、多くの飲食店、ファストフードが加盟している。

大手の外売サービスは、美団(メイトワン)と餓了么(ウーラマ)で、この2社で外売市場の95%のシェアがある。しかし、最近、外売のメニューから消える、つまり外売サービスから離脱する飲食店が現れ始めた。手数料が飲食店の経営を圧迫し始めているからだ。

 

手数料の上昇が離脱の原因になっている

外売サービスのビジネスモデルは、飲食店から手数料を取る方式だ。飲食店が例えば95元の料理を出して、配送料を5元に設定したとする。すると、消費者は合計100元を支払い、飲食店はいったん100元を受け取ることができるが、外売サービスに、この100元から契約した割合の手数料を支払わなければならない。

その手数料は当初10%以下であったために、多くの飲食店が加盟をした。しかし、徐々に上がっていき、2018年半ばには15%になり、最近では20%で契約せざるを得ない飲食店が増えているという。

手数料が15%程度までは耐えられた飲食店も、20%になった時に音をあげて、外売から離脱する飲食店が現れ始めた。

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▲外売用の料理をパックする飲食店。このような街中の小さな飲食店ももはや外売に対応しないと営業していけない。しかし、今度は手数料が大きな負担となり、経営を圧迫している。

 

手数料の上に割引クーポンが経営を圧迫

飲食店の平均的な利潤は、30%から40%であると言われている。そのため、利益率の高い飲食店ではまだ余裕があるかというとそうではない。割引クーポン戦略があるからだ。

消費者はさまざまなクーポンを利用して料理を注文する。多くの場合「◯◯元以上の注文で××元割引」というものだ。うまく利用すると、半額ほどで料理を注文することができる。この時点で、飲食店には利益は出ていないどころか、赤字になっている。そこからさらに20%の外売手数料が取られる。もはや、利益を出す商売ではなくなっている。

クーポンを配布するかしないかは、飲食店の自由なので、割引をしなくてもかまわない。しかし、まったくクーポンを配布しなければ、消費者から忘れられてしまい、如実に注文が減っていく。競争から落伍しないためには、クーポンを配布しないわけにもいかない。

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▲外売アプリ「美団」。配送料が9元かかるが、初めての利用なので17元の割引がある。この他、さまざまな割引クーポンが配られ、多くの場合、配送料を支払っても、お店に行くより安く食べられる。その分、飲食店の利益が圧迫されている。

 

値上げを避けたい飲食店の工夫も無駄に終わった

当初、人気店などは配送料を高くすることで耐えてきた。例えば、20元の料理に配送料を60元という高額に設定し、外売手数料を支払っても利益が確保できるようにした。しかし、当然ながら外売りの注文はほとんど入らなくなる。

また、店の価格と外売の価格を変える飲食店も現れた。店内では20元の料理を、外売用には30元にし、さらに5元程度の配送料を取る。しかし、店内の価格と外売の価格を変えるのは、規約違反であり、発覚をすると外売サービスからクレームをつけられる。

結局、飲食店ができることは、料理全体の値上げしかない。しかし、値上げをすればするほど、外売だけでなく、店舗の客も減っていく。

有力な飲食店が集まって、独自の出前プラットフォームを立ち上げる試みも行われているが、うまくいっているところはほとんどない。飲食店は打つ手がない状況だ。

・新規開店の飲食店は黒字化する前に破綻する店舗も

外売サービスとの手数料契約の期間は、ケースによって異なるが、通常は1年から数年の契約期間があり、契約更新の時に手数料利率が見直される。中国新聞週刊の記者が、飲食店を取材してみると、外売との契約が3年以上にわたっている飲食店では手数料15%のところが多く、苦しいもののなんとか経営を維持できている。

問題は、新たに開店する新店舗だ。手数料20%が標準で、業態によっては22%の契約をしているところもある。新しい飲食店は、消費者に認知をしてもらうため、外売サービスをしないわけにはいかないし、クーポン類も大量に配布しなければならない。開店後しばらくの間は、まったく利益が出ないどころか、赤字経営になってしまい、黒字化する前に体力が尽きてしまう飲食店も目立つようになっている。

 

収穫の時期に入る外売。競争の時期は終わった

中国新聞週刊は、外売市場が美団と餓了么の2社に支配されているのが問題の根源だという。2社は資本を使いながら、赤字覚悟のサービスを展開し、外売サービスを普及させてきた。市場の体制が固まった今、両者は相手の出方を見ながら、利益を収穫するステージに入っている。そのしわ寄せが、飲食店と消費者にきているのだ。

中国新聞週刊は、ここで、第3の外売企業が登場し、競争が起きることが必要だとしている。しかし、現実には、大企業になった美団と餓了么に対抗していくのは簡単なことではない。

配送料以上に割引され、お店に行くより安く食べられた「外売」。しかし、そのツケを消費者が支払う時期が訪れているようだ。

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