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電子も紙も。両方を読む1.5億人の中国読書人

中国でECサイト経由で紙の書籍を購入した人、電子書籍を購入したの合計が1.5億人に達した。この数年、読書人口は20%前後、毎年増えている。多くの人が、紙の本も電子書籍も読むという。ネットで無料で読める電子書籍が大量にあることが読書人口を増やすことにつながっていると新華網が報じた。

 

中国の読書人口は1.5億人、1年で平均5.5冊を購入

「2018年中国人読書報告」によると、電子書籍が急速に普及し、読書人口が増えているという。タオバオ、Tmall、閑魚、阿里文学などの書籍販売サイト、読書プラットフォームで読書をした読書人口は2018年に3000万人近く増加し、1.5億人となり、紙の本の購入冊数も2018年は一人平均で5.5冊になっている。アリババの運営するECサイト「Tmall」は紙の本を購入する最大のプラットフォームになっていて、中国で買われる紙の本の3冊に1冊はTmall経由になっている。

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▲アリババが公開した「アリババ2018中国人読書報告」。読書人口が増え、その多くが紙も電子も読むことが明らかになった。

 

世代により異なる読書傾向

新しく増えた読書人口の3000万人は、割合で言うと約19%の増加になる。この新読書人口の大半は、80年代生まれ(30代)と90年代生まれ(20代)だ。00年代生まれ(10代)はまだ少ないが、今後読書人口が増えてくると思われる。

各年代ごとに読まれる本の傾向は違っている。80年代生まれは子育て指南書や学習補助教材が多く、子どもの教育に力を入れている。90年代生まれは英語の学習教材、公務員試験の教材など、自分のスキルを高める本が多い。00年代生まれは、英語の入門教材と青春小説が多い。

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▲阿里文学のサイトでは、多くの小説が無料で読める。日本のラノベ投稿サイトに近い。この中から人気作家が登場してくるのが当たり前になっている。

 

電子も紙も両方を読むのが一般的なスタイル

中国の読書人口の半数以上が、電子書籍と紙の本を両方読む。一般には、紙の本は時間がある時に耽溺してじっくりと読み、電子書籍は時間の空いている隙間時間に、つまみ食い読みをする傾向がある。

紙の本では、純文学や社会科学、童話などがよく読まれる。電子書籍では小説、人文科学、ビジネス書などが読まれる傾向がある。

若い世代の方が電子書籍を好む傾向があるが、それでも紙の本と大きな差はなく、両方を使い分けると言うのが中国読書人の一般的なスタイルのようだ。

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▲多くの人が利用している百度文庫。古典文学や学生、社会人の教材などはほとんどが無料で読むことができる。スマートフォンが大画面化したことで、スマホが読書端末としても使えるようになっている。

 

無料で読める電子書籍が、読書人口を増やす呼び水になっている

中国には阿里文学、百度文庫など、無料で電子書籍が読めるプラットフォームが多数ある。スマートフォンの画面が大型化したことで、このようなプラットフォームを利用して、いつでも電子書籍が読める環境が整っている。内容は古典文学だけでなく、学習教材、専門書など多岐にわたっている。特に、日本のライトノベルに相当する青春小説は、一般の人が投稿をし、その中で人気を得た作家がプロになるという流れができあがっている。

知り合いからSNSで作品を紹介されて、そのままリンクをタップすることで読めることも大きい。隙間時間にこのような電子書籍を読み、それが呼び水となって、有料の電子書籍を購入したり、紙の書籍を購入することにつながっていると思われる。