中国の大学の図書館が、積極的に人工知能、IoT、ビッグデータなどのテクノロジーを取り入れ始めている。大学図書館の蔵書は、専門書などが多く、電子化が簡単ではない。そのため、図書館員の業務をテクノロジーで自動化する試みが進んでいると個人図書館が報じた。
図書運搬に無人カートを採用した清華大学
北京の清華大学では、無人カートを図書の運搬に使っている。2018年3月から試験導入を始め、同年4月29日より正式運用を始めている。清華大学の図書館と自動車工学部が共同開発したものだ。
従来は書庫とカウンターの間を人が台車を使って運んでいた。その代わりをすることになる。もちろん、人を感知すると停止あるいは回避をする。
▲清華大学で導入された図書運搬用の無人カート。開発は、同大学の自動車工学系の学生たち。図書館のテクノロジー導入は、理工系学生の挑戦しがいのある研究課題にもなっている。図書館は、低コストで導入できるというメリットがある。
蔵書整理作業にロボットを導入した南京大学
南京大学では図書ロボット「図宝」(トゥーバオ)を導入している。南京大学図書館では、ほぼすべての本にRFID電子タグがつけられている。図宝はこの電子タグの情報から、本が正しい棚に収められているか、なくなっている蔵書がないかどうかを検査して、その結果を図書館員に伝える。図書館員は、図宝の画面で問題のある棚を検索し、その棚だけで整理作業をすればよくなる。
また、図書館の利用者が図宝を利用することもでき、蔵書の検索ができ、どこの棚にあるかを教えてくれる。万が一、間違った棚に返されていても、そちらの棚を教えてくれるし、閲覧中の場合も棚にはないことを教えてくれる。さらに、必要があるのかどうかはともかく、歌を歌う機能もあるという。
図書館員は、常に棚が整理されているかどうかを点検しなければならなかったが、現在では図宝が教えてくれる問題のある棚だけで整理作業をすればよくなった。作業時間が大きく効率化され、図書館員の本来の業務であるブックコンシェルジュ、研究などの作業に時間を割けるようになった。
▲南京大学で導入された図書ロボット「トゥーバオ」。常に巡回していて、電子タグがつけられた書籍の位置を確認し、整理されていない書棚を図書館員に伝える。図書館員は未整理棚だけで整理業務をすればよくなった。
顔認証で図書貸出業務をセルフ化する浙江理工大学
浙江理工大学では、百度(バイドゥ)の顔認証システムを導入して、図書の貸出を顔認証で自動化をした。
浙江理工大学では、すでに学生証をICカード化していて、そのカードをタッチすることで、図書館に入ったり、セルフで図書を借りたりすることができていた。しかし、学生証の紛失あるいは盗難が起こり、その学生証カードを使って、図書館の図書が盗まれるという事件が起きた。これを防止するために、学生証と顔を紐づけて顔認証で入館、図書の貸し出しが行えるようにした。
▲浙江理工大学では、顔認証とIC学生証で図書を借りることができる。以前は、IC学生証だけでセルフ貸出を行っていたが、学生証の紛失、盗難により、図書が盗まれるという問題が起きていた。
電子書籍化が難しい大学図書館は、紙の本でIT化を進める
大学の図書館の蔵書は、古い書籍であったり発行部数の少ない専門書が中心になる。そのため、ほとんどが電子書籍化されてなく、今後も大半は電子書籍化されないと思われる。希少本はスキャンをして電子化されつつあるが、閲覧をするにはある程度の大きさのタブレット端末などが必要で、決して見やすいとは言えない。大学の図書館は、今後何十年も紙の本を扱っていかなければならない。
そのため、図書館員の作業負担を減らすために、IT化に熱心なのだ。図書館員は、本来は書誌情報に熟知をして、利用者に必要な本をすぐに紹介できるブックコンシェルジュ業務が主要な業務のはずなのだが、本の整理という仕事に時間を取られて、本来業務がなかなかできない状況になっている。
これをテクノロジーで解決をしていき、図書館の本来の機能を強めようということから、大学図書館でのテクノロジー導入が進み始めている。しかも、工学部の学生にとって挑戦しやすい研究課題になっている。今後も、他の大学の図書館でもさまざまなテクノロジー導入が進んでいくことになる。
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