中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

モバイル革命で衰退したものワースト10(上)

2007年にiPhoneが登場して以来、モバイル革命が進行しているが、その中で、売れなくなった商品、消えゆく商品もある。尋空的啓示録が消えゆく商品、現象を10挙げている。今回は、そのうちの5つを紹介する。

 

キャンディー、ガム

米国でiPhoneが登場してから10年で、スーパーでのキャンディーの売れ行きは15%も落ちている。レジ前の棚に置かれているキャンディーやガム、電池といった小物商品が売れなくなったからだ。

レジ前商品は、レジ待ちの行列に並んでいるときに目につき、ついついカートに入れてしまう。それが、スマートフォンが普及してから、行列しているときにスマホをいじるようになり、レジ前商品に注意がいかなくなったからだ。

さらに、中国ではスマホ決済が普及をし、レジ待ちの行列自体がなくなりつつある。余計に売れなくなっているという。

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▲スーパーレジ前の棚にはガムやキャンディー、電池などが置かれることが多いが、この棚の商品が売れなくなっている。行列している時に、みなスマホをいじるので、商品に目がいかないのだ。

 

カップ麺、インスタントラーメン

世界ラーメン協会の統計によると、世界的にはカップ麺、インスタントラーメンの売れ行きは安定しているのに、2014年頃から中国での売れ行きが落ち込んでいる。2013年には年間462.2億食も食べられていたのに、2017年は389.7億食と72.5億食も減少している。

理由は外売サービスの普及だ。外売は、好きなお店の出前をしてくれるサービス。提携している既存の老舗レストラン、チェーン店のメニューが注文できる。中国人は「暖かくないものは食事ではない」という観念があるため、時間がないときでも菓子パンやおにぎりで済まそうとせず、せめて暖かいカップ麺を食べようと考える。しかし、外売サービスが登場してからは、暖かい料理を注文する人が増えている。「カップ麺はコンビニに買いにいかなければならなけど、外売なら出かけずにスマホで注文できる」という点も歓迎されている。

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▲中国だけインスタントラーメンの売れ行きが下がっている。外売サービスにより、暖かい本格的な料理が簡単に出前注文できるようになったからだ。世界ラーメン協会「インスタントラーメンの世界総需要」より作成。

 

物乞い

地下鉄の駅前、地下道などに今でもいる物乞い。多くの都市で、免許制度にしていて、物乞い活動できる場所を定めている。免許を取得するには、収入が得られない合理的な理由が必要。日本人の感覚からはなんとも切なくなるが、中国では福祉政策のひとつと考えられている。

多くの市民は、物乞いを無視する(中にはけっこう豊かな生活をしている人も言われる。自家用車で現場に通勤する物乞いがときおり報道されたりする)が、心優しい人は財布に入っている小銭をあげたりして、なんとか生活できるようだ。

しかし、スマホ決済が普及をすると、多くの人が現金を持たなくなった。あげたくても小銭がないのだ。

そこで、スマホ決済に加入して、QRコードを見せて、お金を恵んでもらうという物乞いの姿がたびたびネットで拡散するが、スマホ決済が使えるということはスマホを持っているということで、本当に困っているの?と感じてしまうため、お金を恵む人がめっきり少なくなっているという。

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▲最近は物乞いもQRコードを見せることが多くなっているという。しかし、スマホ決済が使えるということは、少なくともスマホを持っているということで、お金を恵む人は少なくなっている。

 

置き引き、強盗

中国人の誰もが、置き引き、強盗がめっきり減ったと口にする。治安は急速によくなっている。彼らが狙うのは、基本的には財布、現金なので、スマホ決済が普及をして、現金と財布を持たない人が増え、このような犯罪が成立しなくなった。スマホを盗んだところで、すぐに携帯電話ショップに駆け込めば、スマホをロックしてもらえる。犯人もGPSなどで位置情報がすぐに知られてしまう。スマホの置き引きはいまだにあるが、それは高級機を盗んで、すぐにリセットし、転売する目的だ。古い低価格スマホを使っていたら、誰も盗もうとはしない。

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▲置き引きや強盗も減った。いまだに地方都市では、みせしめ効果を狙って、強盗犯を民衆の晒し者にする習慣が続いているが、国内からも野蛮だと批判は多い。大都市では、スマホ決済の普及により、置き引き、強盗が減っている。

 

青少年の薬物中毒

米国の国立薬物乱用研究所の研究によると、青少年の薬物使用が世界的に少なくなっているという。特に、中学2年生、高校1年生、高校3年生では、使用率がここ40年来最低になっている。

理由は明確に解析ができているわけではないが、薬物乱用研究所のノラ・フォルコー主任研究員は、スマートフォンのゲームが、代替刺激物の役割をしている可能性を指摘している。

 

次回は、残りの5つをご紹介する。