中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

電子化された障害者手帳。必要な機能をオールインワン。

北京市は障害者に発行している身分証を電子化する。単なる電子身分証ではなく、交通カード、銀行カード、デビットカードなど複数の機能をオールインワンにまとめたものになると今日頭条が報じた。

 

日本とは異なる中国の福祉に対する考え方

中国に福祉に対する考え方の基本は、自助努力だ。政府は、その自助努力を支援する。逆に言えば、障害者といえども努力をしない人には手を差し伸べない。日本人の感覚では、冷たいようにも厳しすぎるようにも見えてしまうが、多くの中国人は、障害者にも普通の人と同じ努力を求めることこそ、公平なことであり、障害者の人格を尊重することにつながると考えているようだ。

民間の支援活動も、意外に各地で盛んで、支援するNPO団体が多く存在する。その中でも、国際的に評価が高いのが、1987年に設立された中国障害者芸術団だ。スタッフ100名全員が何らかの障害を抱えており、多くは聾唖者で耳が聞こえない。千手観音という腕を使った芸術表現で、世界各地を公演し、2007年にはユネスコ平和芸術家に選ばれた。

パフォーマーは耳が聞こえないので、音楽を聞いてタイミングを合わせることができない。そこで、舞台袖に演出家がいて、身振りでタイミングの合図を送っている。パフォーマー同士は、体に息を吹きかけることで、互いに微妙なタイミングを取り合っているという。

中国の障害者政策の基本的な考え方は、「稼ぐ道は自分で探してもらう。それを政府が支援する」というものだ。


2005年央视春节联欢晚会 舞蹈《千手观音》 中国残疾人艺术团| CCTV春晚

▲世界的にも有名になった「千手観音」。スタッフ全員が障害者で、パフォーマー聴覚障害の人が多い。舞台袖の監督の合図を見たり、互いに息を吹きかけることで、タイミングをとっている。

 

身分証、交通、銀行が一体になった電子身分証

3月に「北京市科学技術奨励大会2017」が開催され、そこで「障害者電子身分証」が2等を受賞した。これは、身分証、障害者手帳だけでなく、交通カードやデビットカードの機能を1枚にしたものだ。

北京市では以前から障害者に障害者用交通カードを配布していた。これを利用すると、市内のバスと地下鉄が無料になる。49万枚が発行され、1.2億回利用され、補助金額は10億元に達している。

しかし、視覚障害者の一部から不満が出ていた。というのは、他にも銀行カードや身分証などを持ち歩かなければならず、点字やエンボスマークで触って区別がつくように配慮されてはいるものの、すべてが同じサイズのプラスティックカードであるため、必要なカードを出すときに、時間がかかってしまう。

そこで、生活に必要なカードを1枚にまとめ、このカードさえ持ち歩けば、ほとんどのことが済むようにした。

また、表面は銀行のキャッシュカードとほぼ似たようなデザインになっており、カードを出すたびに障害者であることが知られてしまうことがないように配慮されている。また、協力店舗では、障害者手帳を提示することで優待割引される制度があるが、このカードの場合、一般の人と同じように銀行カードで支払うだけで自動的に優待割引精算がされる。

現在すでに6万枚が製造され、順次配布が始まっている。

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▲表面は、一見すると銀行カードにしか見えない。これで身分証、銀行カード、デビットカード、交通カードの役割をする。

 

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▲裏面は赤と青がある。赤は視覚障害者用。

 

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▲裏面が青は、視覚以外の障害者用。