中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

オンラインとオフラインの融合が始まるECサイト

ECサイトが年々成長していく中で、ECサイト路面店スーパーのコラボレーションが始まっている。アリババのECサイト「Tmall」は、路面店スーパー「RT-MART」とコラボし、リニューアルオープンした店舗が続々登場していると中国零售網が報じた。

 

オンライン、オフライン双方にある利点

世界的にECサイトが成長を続けている。一方で、路面店小売は縮小が続いているが、このまま消えてしまうわけではない。オンラインにはオンラインのよさ、オフラインにはオフラインのよさがあり、それぞれがその強みを活かし、適切なバランスになり、消費者は両方を使い分けできるというのが理想の形だ。

ECサイトには、商品を見つけやすい、配送してくれる、低価格というよさがある。一方で、路面店には、未知の商品との出会いがある、実際の商品を見ることができる、娯楽施設として楽しめる、専門スタッフのアドバイスを受けることができるというよさがある。

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オンとオフの互いの短所を補い合うコラボ店舗

この最適小売環境を実現するために、Tmall(天猫)を運営するアリババは、台湾資本のチェーンスーパー「RT-MART」の株式の36.16%を28.8億ドル(約3000億円)で取得した。中国20都市167店舗のRT-MARTは、TmallとRT-MARTのコラボ店舗にリニューアルされた。

当面は、Tmallで販売されている商品を置くコーナーを設置する。これは2つの意味を持っている。ひとつは、普段Tmallを利用している人に、実物を手にする機会を与えること。ECサイトでは商品を手にして選ぶことができないという課題を解決する。また、ECサイトを利用する人に、路面店に足を運んでもらうこと。ECサイトでは、なかなか新しい商品との出会いを演出することが難しい。しかし、路面店なら、歩くだけで、未知の商品が目に入ってくる。これで、販売機会を拡大することができる。

もうひとつは、普段Tmallを利用しない人に、ネットでどんな商品が受けているのかを知らせること。Tmallの棚できになる商品を見つけても、すでに普段の買い物をすませている人は、荷物が増えるから嫌だという人もいるだろう。そういう来店客にはスタッフが、Tmallの使い方を説明する。もっぱら路面店を利用する消費者は、ECサイトの利用法を難しく考え敬遠しているところがあるので、これを現場のスタッフが教えることで解消する。

オンライン、オフラインは、決して対立するものではなく、互いが互いの短所を補える関係になっている。

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▲RT-MART内に登場したTmallコーナー。ECサイトで人気の商品が並べられる。黒い猫はTmallのキャラクター。

 

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▲RT-MARTの広告チラシ。左上の「天猫超市」のコーナーが、ECサイト「Tmall」での人気商品コーナー。オンラインを使っている人をオフラインに誘導する、オフラインを使っている人をオンラインに誘導する効果がある。

 

IT系のサービスを路面店スーパーでも展開

さらに、今後は、さまざまなIT系のサービスをRT-MARTで展開していく予定だ。すでに始まっているのが、知能母嬰区。赤ちゃんを育てている若いママのための相談室だ。専門スタッフが相談に乗り、ミルクやベビー用品、医療サービスなどの販売につなげていく。Tmallで行われていたサービスを、路面店でも行うことで、より決め細いサービスにすることを目指している。

さらに、VR(バーチャルリアリティ)を利用した商品カタログなど、次々と投入していき、RT-MARTを単なるスーパーではなく、わざわざ出かけていく価値のある場所、買い物もできるレジャースポットに育てていく。

アリババのライバルであるテンセントは、すでに中国ウォルマートとの提携を発表している。ウォルマートもRT-MARTと同じようにオンラインとオフラインが融合していくことが考えられる。

中国のチェーンスーパーは、今、変わろうとしている。

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▲RT-MART内に設置されたTmallの「ママさん相談室」。専門知識を持ったスタッフが、子育てなどの相談を受け、ベビー用品などの販売につなげる。オンラインサービスをリアル化したもの。