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アマゾンはなぜ中国で失敗をしたのか。5つの要因

アマゾンが中国市場から撤退することを公表した。調査会社Televisoryはアマゾン中国の失敗の理由を分析している。このレポートは、中国撤退が公表される前に公開されていることに注意していただきたい。

 

中国での存在感が薄いアマゾン

アマゾンはもはや誰もが知っているEC企業だ。米国、英国、ドイツ、日本といった先進国でECのトップシェアを握っている。しかし、EC市場規模が米国とほぼ同じである中国では、存在感が薄い。調査会社iResearchの調べによると、中国BtoCECサイトの2017年第3四半期の取引総額は9620.8億元(約16兆円)。その中でトップシェアはTmall(アリババ)であり、第2位が京東(ジンドン)。アマゾンはわずか0.7%しかない。これは一体なぜなのか。

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▲iResearchが公開している2017年Q3のBtoC型ECサイトの販売シェア。アマゾン中国のシェアは1%以下になっていて存在感がほとんどない。

 

失敗の理由その1:先行者として戦えなかった

アマゾンは、現在トップシェアを握っている米国などの国では、先行プレイヤーとして競争をしていた。市場参入が最初であったかどうかはともかく、黎明期に参入し、その国のEC市場の成長とともにアマゾンも成長をしてきた。

しかし、アマゾンが2004年に中国市場に参入しようとしたとき、すでにビッグプレイヤーが存在していた。アリババの「タオバオ」(BtoC部分がTmallとして分離)、また今日ではシェアを落としている当当網の2社が1999年に事業を始め、すでに激しい競争をしていた。黎明期にライバルを蹴落とし、優位に立ってはからその優位さを最大限に利用して成長するというアマゾンのスタイルを取ることができず、挑戦者として市場参入しなければならなかった。

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▲アマゾン中国の総収入はアリババ、京東(JD)にも負けている。アリババは手数料収入のみであるため、EC販売額で見れば図抜けて多い。アマゾンは販売額シェアの割には収入が多く、健闘をしている。

 

失敗の理由その2:パートナー企業の失策

当時のアマゾンは、まだオンライン書店の色彩が強く、そこから取扱商品を広げて、総合ECサイトに転換するという戦略をとっていた最中だった。そのため、2004年に中国のオンライン書店卓越網を7500万ドル(約84億円)で買収し、アマゾンに衣替えすることで、中国市場に参入した。

しかし、この卓越網が問題を抱えていた。いわゆる海賊版の販売が発覚をし、アマゾンはその再発防止に追われることになる。

 

失敗の理由その3:中国市場の理解不足

アマゾンのグローバルなアクティブ会員数は約3億人。一方で、中国が中心のアリババ(Tmall+タオバオ)は5億人もいる。これは同じ消費者が頻繁にアマゾンを利用する習慣化をしていることを表している。しかし、中国人は同じECサイトでたびたび買うとは限らない。セールやクーポンなどを利用して、そのときそのときで価格の安いサイトで買おうとするため、顧客の流動性が高い。

アマゾン中国は、この中国市場特有の状況に対応せず、価格戦略、クーポン戦略に甘さがあり、プライム会員戦略など既存会員にプロモーションするというグローバルスタイルを通してしまった。

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▲各ECサイトの年間利用者数(グローバル)。アリババはほとんどが中国向けであるのに利用者数がアマゾンよりも多い。つまり、アマゾンは既存会員の単価、購入回数が多い。アマゾンはリピーターによって支えられているビジネスであることがわかる。

 

失敗の理由その4:物流コストの負担

アマゾンは、物流システムでもグローバル方式を貫いてしまった。中国国内に17の物流センターを作り、メーカーから納入された商品在庫を持ち、そこから注文に応じて全国に発送するというスタイルだ。この運営コストは、営業収入の8%にあたるという。

一方、市場リーダーのアリババのTmall、タオバオは在庫を持たない。あくまでも、メーカー、商店と消費者を仲介するだけなのだ。商品は商店が自ら消費者に発送する。このため、物流システムを拡大するための費用が不要となり、物流システムを改革するための研究投資ができるようになっている。

また、アマゾンと同じように自社物流網を構築している京東は、130カ所近い物流センターを構築している。運営コストは莫大だが、消費者の側に小規模の物流センターを設置することで、きめ細かい配送を実現している。アマゾンは、アリババのように物流を委託するわけでもなく、京東のように密度の高い物流網を築くわけでもなく、中途半端になってしまっていた。

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▲中国内の物流センターの数。京東(JD)はきめ細かく物流センターを配置している。アリババは在庫を持たない。アマゾン中国はそのどちらでもない中途半端な形になってしまっている。

 

失敗の理由その5:サプライヤーの拡大戦略

アマゾンには全世界で200万社が商品を供給している。しかし、アリババのサプライヤーは850万社もある。これにより、価格を軸にした激しい競争が起きている。同じ商品を複数業者が販売することは当たり前であるため、多くの消費者が価格順に並べて最安値のところで買う。

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▲在庫回転日数の比較。何日間で、在庫が総入れ替えになるかを示したもの。短いほど回転が速い。アマゾン中国は京東(JD)よりも在庫を長く持ち、運営に課題があることがわかる。

 

コンテンツサービスは成長可能

つまり、アリババもアマゾンもEC企業であるとはいっても、アリババは商店と消費者のマッチングサービスなのだ。ここにアリババの強さの秘密がある。

一方、アマゾンはオンライン大規模商店だ。中国で第2位の京東もこのタイプであり、アマゾンはアリババではなく、京東をモデルとして追いつき、追い抜く戦略をとることもできる。

そのため、アマゾンはライバルであるTmallに旗艦店を出店するという面白いことをやっている。Tmall経由で、アマゾンの商品を購入した場合、アマゾンはアリババに手数料を支払う必要がある。それを支払ってでも利用者数を伸ばし、従来リーチできなかった顧客を取り込もうとしている。

2014年には、中国でゲーム実況プラットフォームTwitchを9億7000万ドル(約1085億円)で買収している。また、アマゾンは、プライムビデオ、アマゾンミュージック、Kindleといったコンテンツサービスを持っている。Televisoryの筆者は、アマゾンがECの分野で成長できなくても、このようなコンテンツビジネスで中国市場での成功を勝ち取る可能性は残されていると結んでいる。

 

追記:4月18日にアマゾン中国は7月18日を持って、販売を停止することを発表した。しかし、海外製品の販売(越境EC)とKindleなどのコンテンツサービスは継続するとのことだ。Televisoryの見通し通り、コンテンツビジネスで再起を図ることになる。

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